2022/02/13 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にエンデさんが現れました。
■エンデ > ありとあらゆるものが売られている、どんな物でも手に入る。
けれど、この街をその名で呼ぶ者の大半が、ここへ買い求めに来るものといえば。
広場にほど近く、豊富な品ぞろえを誇ると噂の「その店」で売られているような、
見た目も用途も様々な、奴隷、であろう。
大小まちまちな檻が並ぶ店頭の片隅、ほかの商品同様、
靴を奪われ、首輪をつけられ、手首をからだの前で金属の枷に戒められている、
エルフの血を引く小娘もまた、そんな商品のひとつである。
檻のなかでぺたりと力無く座りこみ、怯えきった眼差しで周囲を見回している、
その姿にも、表情にも、常の気の強さは感じられない。
「ぃ、いや……… こわ、い、……たすけて、かあさ、ま………」
うわ言めいて繰り返される、か細い嗚咽交じりの呟き。
さほど大きくもない檻のなか、出来る限り、隅っこに縮こまろうとする態度。
薬、あるいは何某かの術によって、小娘は恐ろしい夢を見ている。
おぞましい魔物の巣窟に囚われ、頭から食らわれるのを待つばかりの運命。
虚ろな娘の目が見ている極彩色の幻影は、しかし、遠くない未来、
現実のものになるかも知れない悪夢だった。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にトーラスさんが現れました。
■トーラス > バフートの奴隷市場を訪れたのは独りの中年冒険者。
彼のような職業の者が奴隷を買い求めるのは何も珍しい事ではない。
ソロでの冒険には制約が多く、例えば、荷物を持たせたり、単純に戦力として扱うのに
一党を組んだり、ポーターや傭兵を雇い入れる代わりに奴隷を利用する者は多い。
何しろ、仲間であれば報酬は山分けしなければならないが、奴隷であれば独り占めとなるし、
金銭関係によるトラブルでの一党解散や刃傷沙汰は此の界隈では珍しい話ではなかった。
勿論、それのみではなく、冒険に出ている際の居住地の管理や、
もっと直接的に性欲を晴らすために奴隷を飼う人間は少なくないだろう。
特に精力の強い戦士系の冒険者などは力加減が出来ぬ場合が多く、
娼婦に嫌われて娼館から出禁を喰らう等と云う事も儘ある話。
「珍しいな、エルフか……、おい、そっちのを見せてくれるか?
そいつは生娘か? 病気持ちを押し付けられたら叶わないぞ」
奴隷商人に声を掛けて虚ろな瞳の少女を指差しながら問うてみる。
彼の説明よりも先制での質問は、値下げ交渉の基本であった。
■エンデ > 冒険者と呼ばれる職種の男が、客になることも珍しくはない。
羽振りの良い者も多いし、その逆も、また。
好事家の貴族などのほうが、客としては望ましいのが本音だが、
基本、この商人は客の選り好みをしないことでも知られていた。
用意していた口上を述べる隙を封じられて、やや鼻白みながらも、
壮年の商人は男のほうへ、訓練された愛想笑いを向ける。
いわく、檻のなかの娘は紛れもなく生娘である、と。
性奴隷に相応しく躾けられてはいない代わり、
新雪を踏み荒らす悦びは保障する、と。
血筋からか、娘自身の特性か、それはそれは頑丈であるから、
どんな手荒な扱いをしても大丈夫だ、とさえ。
じぶんのことを言われていると気づかない娘は、それでも、
こちらを指さしてなにか言っている男に、恐れを抱いたものか。
びく、と大きく身震いして、ますます身を縮こまらせた。
胸の前で枷に戒められた両手が、祈るかたちに組み合わせられている。
そんな娘につけられた値段は、手つかずの生娘、にしても、少しばかり高い。
交渉の余地はありそうだが、そのあたりは男次第だ。
■トーラス > 愛想笑いを浮かべる商人の口上に口端を緩めながら相槌を打ちながら、
視線は値踏みするように身を縮こまらせる少女に向けられる。
細身の体躯は控えめの凹凸しかないが、彼女の年齢からすれば相応であり、
時間を掛けて躾けるのであれば、将来的には存分に楽しめる程になるかも知れない。
虚ろ目がちではあるものの、その容貌は血の成せる業か、整っており。
「成る程なぁ。……頑丈なのは確かに都合が良いな。冒険にも連れ歩ける。
だが、少しばかり、目が虚ろ過ぎないか?
魔法か、薬か知らないが、それが抜けても、病んでいるようでは困るぞ」
提示された金額は生娘であるという言葉が真実でもまだ高い。
何しろ、一度、払ってしまったならば、商人の言葉が真実でなかったとしても、
払い戻しも返品も叶う筈がなく、精々、安く買い叩かれ直すが関の山。
難癖めいた指摘をしながら、値引き交渉を吹っ掛けて、相手の出方を待ち。
■エンデ > 男の指摘はいちいちもっともであり、商人にとっても想定の範囲内。
ゆえに、商人は薄気味の悪い笑みを浮かべたまま、何度もうなずいて。
『とっ捕まえるときに、少しばかり難儀したもんでね。
チビで細っこいくせに、こいつがまた、えらく暴れてねぇ、
だからちょいと、こわぁい夢を見せてやってるんでさ』
気になるようなら解毒剤も付ける、と言い添えて、商人は客人のへほうへ半歩近づき。
やや声を落として、内緒話でもするように。
『首輪で封じてありますが、この娘、魔力タンクとしても優秀でね。
旦那がお気に召さなけりゃ、下取り価格も弾みますよ。
アナとして役に立たなくても、人間のガキと違って、使い道はあるからねぇ』
値段は下げない、代わりに、下取りオプションをつける。
それでも渋るというのならば、別の客を探すだけだ、と。
■トーラス > 本職の商人と冒険者に過ぎない彼自身。
指摘に対して待ってましたとばかりに反論されると準備周到さに舌を巻く。
ついで耳打ちされた内緒話に、ふむ、と肯けば、此処が落とし所と肯いて。
「良いだろう。その値段で買おうじゃないか。
解毒剤も付けてくれるか、用意しているんだろう?」
値引き交渉は諦める代わりに解毒剤はサービスで、とちゃっかりした一面を覗かせつつ、
懐から金貨袋を取り出せば、其処から彼女の代金を取り出して商人へと握らせる。
勿論、奴隷である少女自身の意志などは、その遣り取りの間には一寸たりとも存在しない。
所有者である奴隷商人から新しいご主人様である彼へと金銭にて売買されるのみ。
この奴隷市場の何処でも行なわれている、ごく有り触れた日常の光景で。
「いい買い物ができた。今後も贔屓にするから宜しくな」
売買証明の書類や税の遣り取り等、必要な取引を終えれば、冒険者の方は満悦顔で。
買ったばかりの奴隷を引き連れて、宿泊中の宿へと引き上げていく事だろう。
先ずは何はともあれ、商人の口上の真意を確かめるべく、意気揚々と去っていき――――。
■エンデ > 解毒剤――――そう請われて、商人は丸薬をいくつか入れた袋を掲げてみせる。
頼まれてもいないうちから、袋の口を開け、中の丸薬を示して。
正気に戻すならば一錠だけ、からだを『ほぐして』やりたいならもう一錠。
生娘らしからぬ狂いかたをさせたいのなら、三錠以上を、との説明を加えた。
男と商人が着々と取引を進めるあいだに、店員が檻を開け、
首輪と手枷をつけたままの娘を、首根っこを掴んで引き摺り出しにかかる。
「や、やだ、ぁ、食べ、食べないでえ、っ……!
たすけ、て、かあさま……いや、こわい、しに、しにたく、ない、ぃ……!」
娘は未だ夢のなか、いよいよ食われるのだと泣き叫ぶ。
商人がわずかに顔を顰めて、とにかく一錠は、ここで飲ませようかと告げるだろう。
金を払い、手続きを済ませた冒険者の手に渡されるのは、
怯えた小娘と、その首輪と手枷の鍵、そして、薬袋。
男が薬を何錠飲ませたとしても、飲ませるのを後回しにしたとしても、
無力な娘は男の所有物として、宿に連れ込まれるばかり―――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からエンデさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からトーラスさんが去りました。