2020/12/27 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にメアリ・オーガスタさんが現れました。
メアリ・オーガスタ > 「は、なして……! 離せ、此の、無礼者………ッ!」

鋭く投げつけた声に、返るのは下品な囃し声と哂いばかり。
其れも其の筈、陽光の入る余地の無い地下室の薄暗い空間の中央、
天井から下がる黒い鎖に両腕を吊り上げられた己の姿は、余りにも脆弱に見えた。
マントやジャケット、仕込み杖、ブーツまで奪われて、身に着けているのはシャツとスラックスのみ。
其のシャツですら、前を大きく引き裂かれてたわわな乳房の谷間を暴かれている有り様だった。

『吸血鬼』
『化け物』
『珍獣』

そんな単語が周囲の男たちの間で飛び交い、己が今や彼らにとって、
単なる『少し毛色が変わった商品』でしか無いことを知らしめる。
何処かへ秘密裏に売られるのか、其れとも地上に引き摺り出され、
残酷な見世物となる運命か。
何れにせよ――――己の意志など、誰も確認する気は無い。
ランプの明かり程度で消耗はしないが、捕縛される際に散々暴れた為、
ペンダントにしていた小瓶が割れて、聖水が己の胸元を焼いていた。
然して深い傷では無いが、じくじくと痛みはする。
其の痛みが、というより、聖水で損なわれてしまう己の身体が、
――――其の事実が、己の精神を摩耗させようとしていた。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にトーラスさんが現れました。
トーラス > バフート市内の奴隷商人の館の地下室にて。
女に対する仕打ちを壁際にて見守る一人の男の姿がある。
彼女を捕縛するのに一役買った、より正確には、彼一人で女と刃を交えて、
打ち倒して捕縛に至った男は女の姿を遠巻きに眺めている。

『吸血鬼の捕縛』

その依頼が退治ではなく捕縛であった時点で依頼主は、彼女の素性を掴み、
後々の商売に発展させる算段も付けていたのであろう。
当初、吸血鬼の紳士と思われた相手は一皮剥けば、紛れもない女性であった。

「――――なぁ、あの女はこれからどうするんだ?」

依頼達成の話を聞き付けて地下室に降りてきた奴隷商人に、男はそのように話し掛ける。
金ぴかの指環や宝石類を身体のあちこちに身に着けた悪趣味な成金趣味の依頼主の商人は、
彼女の行末に関して、悪趣味極まりない幾つかの選択肢を挙げながら嗤って見せる。
金銭と欲望が飛び交う裏の世界に似付かわしい悪趣味な話に、うへぇ、と貌を顰めつつ、
あられもなくたわわな乳房の谷間を暴かれた女の姿を一瞥すれば、
男が差し出してきた報酬の金貨袋へと片手を差し出すと遮って見せる。

「あの女を一晩買いたい。その金で十分、足りるだろ?」

依頼報酬は破格の金額。それを自ら蹴るような提案に商人は如何に答えるだろうか。

メアリ・オーガスタ > 赤味を帯びて次第に昏く、澱み始めた視界に映る人影。
いっそ其れら全てを衝動の儘に縊り殺し、血も精も啜り尽くしてしまえれば、
――――普段は決して従うまいと律している、忌まわしい渇望すら顔を覗かせてしまう程、
己を消耗させた張本人の声が、ふと、部屋の片隅から聞こえた。
反射的に其方へ視線が、意識が、神経が引き寄せられて、
御蔭で二度と見たくなかった男の顔を、そして、聞きたくも無かった会話を、
己の目が、耳が、はっきり認識してしまう。

「――――――――っ、………」

勝手なことを、と唸るように呟いて唇を噛めば、容易く膚が破れて口許へ紅が滲む。
成金趣味の権化の如き、醜悪な容貌の商人が、其の計画のどれかを実行する前には、
必ずや、此処から逃げ出してやる、と決意を新たに。

然し今、現在、己は捕えられた無力な獲物に過ぎない。
生殺与奪の権利は其の、醜悪な男の手に在った。

彼は商売人である。
当然、コストは抑えられるなら抑えられる程望ましい。
女吸血鬼を生かして捕えた手練れの男、其の働きに対する報酬が、
たったひと晩、此の獲物を貸し出すだけで賄えるのなら――――

商人は下膨れの顔を歪めて嗤い、功労者たる男に首肯で応じる。
野暮は言わないが、吸い尽くされないように気をつけな、という、
下世話なアドバイスを添えて。
当然、ひと晩だけとは言え、館から外へ連れ出すことは許さない。
代わりに男が望むならば、女の拘束を解き、奥の部屋を使うことは許されるだろう。
今までにもそうして、冒険者への報酬を女で支払ったことがある。
或いは売買契約の前に、味見と称して一夜を過ごして行った客も。

勿論、行儀良くベッドで、というのを望まないなら、此の儘此処で始めても構わない。
何しろ相手は化け物なのだ、多少手荒に扱われたところで、
商品価値は下がらない――――寧ろ翌朝には、ずっと艶やかな姿態を取り戻している可能性もある。
兎にも角にも、女の所有権は今宵一夜、冒険者の手の中へ委ねられた。
爛々と双眸を煌めかせて男を睨めつける、傷つき弱り蒼褪めた女だけが、
男とただ二人、其の場に残されることになり――――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からメアリ・オーガスタさんが去りました。