2020/11/01 のログ
燈篭 > ガタゴトガタゴト ガタゴトガタゴト
奴隷市場へいく馬車が通る
乗り手は幼子 仕込み 初物 売り文句に買い文句が並べられるだろうか
馬車の中では絶望 理解 そして逃避で埋まる思考の中で頭を膝に埋めるものばかり

そんな中、操り手である馬車主らは、今回のタダで仕入れた商人
いかに商品価値が普通と変わらずとも、今はまだ埋まらぬ懐
温めた石を埋めたような心地というものだろうか

ただ唯一の誤算は、途中で拾った変わった身形の女童を拾ったことだろう
角の生えたそれは暢気に寝ており、適当に縛り上げて放り込んだまではよかった
しかし当の本人はといえば―――

「15でねぇやは嫁へいきぃー お里の便りもたーえはーてたー♪」

抜け道の無い壁で仕切られた馬車の中 酔いどれた声で歌を歌いながらケラケラと笑うは鬼
馬車に揺られ、今から売られに行く者らには丁度いい歌だろうか

嫁に行くと騙って売られて行ってしまった姉からの便りはもはや無い などと
回りの涙目の子らも笑えない状況でいる それだけわかりやすく酷な歌を歌っているのが鬼なのだ

『うっるせぇぞぉっ!!』 ドンッ!

乱暴に叩かれる声に対し、周りはひぃっと喉を鳴らす
小鬼はといえば、ケラケラと笑うまま、叩かれた方向に対し

「おぅよぉっ!」ドゴシャッ

壁に亀裂一発 拳の腹でノックを返したそれで馬車の壁が一枚駄目になる
キレ果てた馬主
馬を止めるや鍵を開けて引きずり出そうと明かりが漏れて

「ぉあ?もう着いたか?」

大口開けた天仰ぐ口元に、どべんどべんと注がれる酒
引きずり出そうとする二人に、両の手がメシリと手を籠めるや

「おらよっ。」

吸う力 放つ力それを操る鬼、容赦もなくどてっぱらに五指を広げた手がびったんと。
そのまま空気の塊を突き飛ばすかのように、壁が砕けながら馬主ら二人は顔からいろいろなものをまろびさせ。

「あっひゃっひゃ、着いた着いた。
 お前さん方も好きにしなよ。 もうここは地獄だ。 どこだろうと々だよ。」

そう言って馬車から降りれば、既に中へ入っていたらしい。
入口のやり取りが省けたというもの あの箱の中の者らがどうなろうと知ったことでもなく
鬼は気ままに散策を始めようか。

燈篭 > 人生気儘に 鬼の我が儘に。
ふらりふらりと脚は未だ馬車の中のように揺れている
おっといけねぇ まだアタシはそんなに呑んじゃいねぇぞ、と脚をしっかり踏みなおし
ふと鼻で深呼吸する 辛口な澄まし酒から一転した、この地獄の匂いが匂ってくる。

「嗚呼、地獄の匂いだ 好いなぁ 懐かしいなぁ
 アタシ以外の鬼らも過ごしたかのような匂いだぁ。」

涙の乾かない味が浮かぶ 嗚咽震える喉の音が聞こえる 何度も裂かれる血の匂いがする。
地獄の匂いがする。

鬼はその瞳を、酔いどれながらもこの場に相応しい鬼の眼で迎えていた
後ろへ悲鳴が聞こえる 酒を片手に 地獄に突っ込んだままの“アタシ”以外が鴨られた声だ
嗚呼、嗚呼 酒からちゅっぽんっと口を外す、その幼げで柔らかそうな唇 八重歯を覗かせながらケラケラと笑う

「弱いからいけないのさ。」

言ったろうに、此処はもう地獄だと。
酒を片手に助ける義理なんてありゃあしない
鬼が泣くのも急くのも童に追われた時と決まっている

ぺたりぺたりと、角を生やした異形な女童
酒の追加を求めて市場の中へ深まっていく
此処までくると連中、鼻も利く
鬼を簡単に、仕入れようとは想うまい

「おっちゃーん。酒くれぇー。」

そう言って、市場一角
市場の味見通いな連中に向けているのだろう酒を多種に並べる店を鼻で見つけ声をかけ。

燈篭 > さて、地獄へ参り 地獄からの使者を吹っ飛ばし
おまけその他は美味しくその辺の小悪党に頂かれていった
後に残った小鬼といえば、この地獄の酒を味わおうと、手に携えた大ぶりな酒瓢箪

鼻で見つけた酒屋と何の酒がいいか議論する
だまし取ろうとした最初の店主 角と雰囲気を見てすぐに、適正な金額と酒を明かした
地獄で活きてきただけの鼻が利くのだろう 気分を損ねたら潰されると 文字通りを悟ったか
小鬼はといえば、琥珀色に色づく焼き酒を目にし、興味を持った

「いーい色だ。茶色たぁ珍しい。 焼き酒かい。」

蒸留、煮詰め酒とも呼ぶ火を使って度数をつけた酒のこと
貯蔵して味香も増すだろうそれを見られ、味も度数も良きものと進める。
鬼、懐からゴルドではなく金の大粒を取りだした。
それを3つばかり。

「こいつで足りるかい。おっちゃん。」

じゃらりと並べた金の大粒。 ゴルド単位の支払いではなく、変わった支払いながら釣りがくると瓢箪に移し替え。
並々注がれたそれは振るっても音が出ないほどきた 鬼はこれにはご満悦 ずっしりと重い愛瓢を片手に後にする。

「どれ、焼き酒の味は……。」

蓋を開け、直接口をつける。
グイっとあおった酒の味。 一瞬澄まし酒に比べ、なんとも変わった味ながら、悪くない
喉を焼く熱も中々な媚びない味だ。 木の匂いか、それがいい塩梅で鼻を抜けていく。

「ぷはぁぁ……おぁぁ‥‥…なんだこの香りはぁ? まぁまぁだね。」

そう言って、市場をぶらつきながら琥珀酒を、口端から零すように傾け、ぶらぶらと。

ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にアイゼンさんが現れました。
アイゼン > 運びが襲撃された。その知らせを受けた商人雇いの武装集団が、今はその虚ろな馬車を取り囲み、その一人の眼が無人となった馬車の痕をなぞっていた。
輸送品積み込み内部は赤く塗装され、乱暴に見晴らしの良い窓が開けられた跡。積み込み品同士が争った形跡、強姦の残滓。
眉間に彫り深くした顔の上、羽飾りのついた黒いフェルト帽子の中で数々の証拠を時系列に組み上げていく
「わからないな」
幾筋もの推察を辿り直しても、馬車に開いた大穴で行き詰まる。
異形だ―――穴の大きさ、打ち破った壁の厚さ、かほどの事を起こす力を持つ者、その全てが異形。
黒コートの男が手を挙げて宙に指示の印を描くと、やがて集団は馬のいななきを共に、街道が向けられた方面へと馬蹄を奔らせる。
眼には冷徹、胸には鉄片、腰には鈍く輝く得物を携えて。

辿り着いた街の門番の誰何をひと睨みで押し返すと、乗馬のままに市場通りを睥睨する集団。その眼は休みなく配られている。ただその騎馬団の前に、一人のみずぼらしい男が追い立てられられるようにして歩いていた。その男が縄を掛けられた手で指し示す、水気のない声を震わせる―――あいつだ、あいつがやったんだ。この目で見たんだ。と、その声が向かう先の小柄に向けて喚く。集団は、前を歩かせている馬車の事件現場にいた奴隷の言葉に疑問を抱きながらも、戦場でもよく通るであろう声を飛ばした
「そこのッ!とまれ!その小さいやつだ、夕陽みたいな髪の!」

燈篭 > 嗚呼 嗚呼 美味い
偶には命じゃない酒も悪くない
これは生きる為じゃない 浴びる為の酒 酒の本当の使い方だ
嗚呼、嗚呼、美味い

口を開け、注がれていく酒。
口と言う杯に注がれるたびに喉は勝手に動く
それは意識が無くても勝手に動く 人体の不思議の一つ
一定まで注がれたそれを、喉が邪魔だと言わんばかりに臓腑に押し込める

 ごぎゅん ごぎゅん ごぐんっ

「ふはぁぁぁ……。」

舌をべろりと出す
口の中が辛い 嗚呼 辛い 小柄な体に見合わぬ、大人のような舌がべろりと空気で冷える
辛く薫る酒は鬼をいい気分なままにさせ、そして聞こえた静止の声

止まれ 小さい 夕陽のような髪
嗚呼?そりゃあ―――

「アタシのことかい。」

ぐるぅりと首を振り向けた
雄の声。 酔いどれた身体に刺さる剣呑な空気 文字通り剣を呑むかのような空気が奔る

「あっひゃっひゃ! 集って寄ってどうしたってんだい。
 アタシ一匹相手にさぁ……。」

酒を傾けるまま向き直るや、馬を走らせた集団と対峙するは大通り
市場の目貫を走るそれらが定めるは鬼への意識
鬼は歓喜した こんな地獄の中で、鬼に、気を向ける大馬鹿野郎がいるだなんて 一体だれが想像できただろう?

「なぁなぁ、まさか、まさかと思うけどさぁ。」

鬼はうれしくて、楽しくて、こんな地獄の中で、両手を広げて向か入れた。

「殺ろうってのかい。 “鬼退治”」

目を凶悪に歪ませ、側頭部にそびえる片角
右肘に尖る片角を剥き出しに見せつけて。
そうして始まる合図は何と足らんや。

鬼をその気にさせてしまった相手が良くなかった
相手にその気になってしまった鬼が好くなった

アイゼン > 対象の人を喰った物言いに、集団の空気が張り詰めた。このような少女が犯人とは、奴隷の妄言かとも思われるがしかし、馬車の赤さと人智を越えた破壊の跡、それが油断を振り払った。
馬上の集団が並びを変える。その場で真横に動く馬の歩き法は乱れ無い。整然と並んだ馬列を割って、黒馬に乗った帽子頭が馬を進め出てくる。帽子の鍔の下で冷たく光る瞳を覗かせ、両手は鞍の前に組んで下ろしている。その猛獣が飛び狩るにも似た、前に腰を曲げて顔だけは獲物を見据えた姿勢。妙に白い顔は能面のように感情を落としていた。

「これはこれは小さなレディ。数多の男に追いかけられるのは、良い女の宿命だとは思わないか?多少、口から吐く言葉に品性が疑わしいが、野性的なレデイじゃないか」

ご挨拶は氷を思わせる緊張のもと、瑪瑙を思わせる硬い瞳を向けながら、薄い唇が少女に口上を垂れる。諍いの気配、それも戦場の匂いがする。大通りは、ひとつの集団とひとりの少女を中心に、波紋をうったように人が避け広がり始める。人垣の壁で囲われた闘技場だ。

やがて黒帽子の左右の男が兜のまびさしを下ろす。後方では弓弦が軋む音が聞こえる。馬ですら急に温度を落としたかのように静かに、しかし力を足に貯める。

燈篭 > 張り詰めた空気
始まる一触即発のそれ
火薬をたんまりわざわざ寄せ集めて、火をつけようだなんて真似をしようというのはそっちだ

鬼はそれに乗ってやっているだけでしかない
酒を片手に、冷たい空気の中、鬼だけは熱かった
こんな冷たい空気の中 意識を込めてれば吐息すら凍る
白くなるだろうそれは、鬼は既に胃の中は熱で淀み、酒気は唾に混じる

ふはぁぁぁ、と辺りに白く霞、吐き出され続ける吐息
鬼は鬼らしく、この人の囲いの中で無駄に真っ直ぐに励む男を好ましく見る

「鬼に雌を求める馬鹿がどこにいるってんだい。
 嗚呼、此処にいたか。」

鬼は嘘なんてはかない 吐く必要すらない
ケラケラと酔いどれるままに酒を傾け、見上げるは列を分けて佇み、口頭を述べる男
―――あれが頭か
鬼は腕で口元を拭い、ひっくっ うぃっくっと喉を鳴らす

「で、こんな地獄に何の用だい益荒男。
 アタシは“タダ乗り”以外、とんと記憶がありゃしない。」

指先を角につけ、トントンと叩いて見せる
鬼は笑みを浮かべるまま、八重歯を舐めあげた
弓の引き絞る音 今すぐにでもかかろうという音が聞こえる中で 

嗚呼 とうとう 鬼の酒がきれてしまった

「嗚呼ー……こいつぁいけないねぇ……せっかくの益荒男だっていうのにさ。
 理由なんざどーぅだっていいんだよ。 なぁ、そうだろう?」

今アンタは、アタシを見てんだろう?
ならそれだけでいいよな?

鬼は目で語りながら、空になった愛瓢を振るう カラカラ 空々 と聞こえる鈴なり
瓢箪酒の残りを示す中の音。

すぅ

鬼は一つ息を吸った。

燈篭 > 「 ば ぁ っ ! 」
燈篭 > 一言声をそう張り上げた
空気がビリビリと震える中で、脚も一歩踏み出す
引き金を引いた合図に周囲は弓を弾き絞った合図を強引に決められてしまい、鬼に向かって槍の襖にしようと向けられた。

「ほいっ。」

鬼は右の手を広げ、全てを吸い上げてみせる。
そのまま束になったそれらを左の手が横合いからかっさらった。

「お ら 、よ っ !」

そしてそれを、吸うとは逆の、放つ力で、集団馬団向けて、ぶっ放す。

アイゼン > 「ああそうだ、”真性”は皆そういう物言いをする。―――ちょっと借りただけだ、いつか返す。―――拾っただけだ―――相手が先に仕掛けてきたんだ。」
少女の言い分というには開き直りすぎた態度に、言葉だけは嘆かわし気に頭を振る。
口の端には笑みに持ち上げているが、しかしてその眼は表情を忘れたままだ。
年端もいかぬ少女に大の男が陣を組み、嘲りもなしに突撃をしようとするなど馬鹿げている。
されど城壁に対するが如き面持ちは少女の暴跡がためか、はては集団の戦慣れした勘がそうさせるのか、或いは両方か。

「私も日銭雇いの仕事でこんなことしたくはないんだけどね―――」
黒い長袖の片方が空を指差し、眼前で止まる。戦の幕が切り開かれる一瞬。世界が息を止める一瞬

腕が少女の方を指して指示が振り降ろされた

左右に控えていた男が、馬上で鞍を蹴った。
自らを空に押し上げるようにして上空へとその身を躍らせる。
右の男は手には盤刀。それを既に真横に掲げ、地上に届く頃には首と胴をふたつに分けようと横薙ぎに鈍い銀色を閃かせる。
左の男は総鉄身の長槍。天の頂より鷹の急降下を思わせる一突きを狙い、橙色の獲物に向かう。
両、共に飾りげの無い鉄兵器。それが手に馴染むほどに振るわれ、いかに疾く人の身体を破壊するかだけを求めてきた結果の得物。人が人を殺める業を練り重ねた器。
天に差す陽を背にして蔭る二つの顔。手にした鉄よりも冷たい二対の眼だけが蔭の中で光り迫りくる。

アイゼン > 戦場に吹いた一陣の―――暴風。それは吹き付ける方向も理を外れ、それも禍々しく、こちらが放ったはずの殺意の結晶を宿し、産み返そうとしている―――こちらにだ。
精鋭の穿つ矢が理解を越えて集団に降りかかる。その研ぎ澄まされた角錐が装甲に滑り、隙間に着する。鉄の驟雨を受け竿立になった馬。弓矢を放っていた兵らは馬上から振り落とされた。放矢の後、正しい姿勢を取っていたがためだ。

燈篭 > 「おーおー、意外と逝ったなぁ。」

額に手をかざし、酔いどれた頬
幼げな貌 八重歯覗く口元
全てが幼いまま しかし言動 格 それらは革を被った怪物そのもの

矢が鎧の隙間を通り、刺さり、矢を放った後の姿勢のままで矢の衝撃を受け、倒れ込む
馬も同じく、倒れ込む。

回りの鉄槍 刃槍なんぞに要素はない
あの能面益荒男こそが鬼の喉を潤す酒となる。

嗚呼、しかし喉が渇いた
浴びる酒ではやはりだめだ 飲めど汲めど、喉がちっとも癒えやしない
命が満ちない

「なぁ、能面益荒男よぅ。」

そう言って右手をかざす。
“二体” 引きずられ始めた 『『ひ、ひぃっ!』』

「アタシをその気にさせている割に、冷静だのなんだのつまらないなぁ
 そんな鉄でアタシを殺しつくせるなんて、思っちゃいないよね?」

鬼は引きずる力を籠める。 こっちへ来い こっちへ来い 吸い寄せる力はその二体にのみ使われた。
矢を受けた二体 まだ生きているというのに、悲鳴と共に強く引きずられ鬼の手元にやっていく
馬に又がりゃ助けもできない 手負いに掛ける情など、あれらにありはするのか。
矢を打ちたくは打てばいい。
どのみち肉の盾にされるとわかりきっているだろう?と。

「おうおう、若々しいねえ
 悲鳴を上げる酒も好いもんさ。」

そう言って、鬼、吸う力 最大限に利用してみせた
“吸われた” ただその愛瓢に。 酒を満たす相棒に。
どんな力を使えば吸われるというのか。
バリバリと頭から喰われてしまうかのように その酒瓢箪の中へと吸われてしまった

嗚呼、嗚呼、良い重さだ だっぷんっ いい音だ
命が崩じた音がする。 生きたまま酒に代わる音がする。

キュッポンッ

閉じていた栓は、振るわれた後で開けられた。
中から出るのは涙のように透明な酒 塩辛い悲鳴と蜜の味
嗚呼、嗚呼、美味い

「嗚呼   美味ぃ。」

目の前で、人を呑み、命を崩じさせた鬼。
命を酒に変えて呑んでいきながら、目の前で魅せつける おい 仲間が二人美味しく呑まれているぞと。

回りも悲鳴だ 人を売り買い たらふく遊ぼうというだけの地獄だったはずなのに
この鬼と益荒男がその地獄を引っ掻いた 此処を本当の地獄に変えた

「なぁ益荒男よう」

ジャボンッと酒を鳴らしながら、酔いどれ酩酊な小鬼
能面益荒男と渾名した相手に回りを見やる。

「回りに得物持たせてお前だけ素っ気ないなんてなぁ そりゃあないだろう?
 アタシは有象無象なんざ腐るほど“呑んでる”
アタシは目の前にいる、能面益荒男の味が知りたい。」

ベロリと舌なめずりをして誘い掛けた 一騎打ちを。 もちろんこの能面益荒男はそれに応じないとわかっている
しかし、しかしだ 目の前にいるのは  鬼   だぞ

「でもあれだなぁ 益荒男が相手にしてくれないなぁ……アタシもどうしようか
 嗚呼、ここら一体全部摘まんでしまおうか。 一つはお前の代わりになる酒があるかもしれない。」

全部を脅しに変えた 全部を由々しくさせた なぜなら鬼だからだ 鬼だから それができる。

アイゼン > 集団は今や、馬上どころか遠巻きに見守る群衆より低い位置に身を並べていた。
地面の上に横たわっていた。
その兵だった身柄どもから、思い出したように赤黒い液が地に滲み広がっていく
火薪を投げ込まれて飛び退くかのように群衆が輪を広げた中、血の池がその淵を伸ばす
―――その中央、身を持ち上げる影がいづる。
黒い外套に血の艶を湛え、帽子の下に覗く鼻と頬の白が、滴る血に対比鮮やかながら色模様を華開かせる。顎の上あたりで赤いものが増したように見えるのは、口元が笑みに歪んだのか。
やがて肩が持ち上がり、そこから帽子頭が首元を晒して背筋を正した。
目深く被った帽子がためか、未だ鍔元から目だけ隠された頭が左右を睨めつける

「相当な精鋭達だったんだがな。この有様か」

肩が揺れる―――笑っているのか。その身体が少女に向きを変える―――怒っているのか。

「陽も高いうちから”夜這い”に来たのに、押し倒されたのはこちら側ばかりじゃないか。
 とんでもない淑女じゃないか、お嬢さんは。お転婆が過ぎる」

男の黒靴が血溜まりを跳ね上げて少女へと向かう。舞踏会にでも向かうように膝は軽く
外套の内側に生白い手が差し込まれる。何かが握られて引きだされる。
白いハンカチーフ。それを両の手で慎ましい仕草で開いていく。ゆっくりと、花の蕾をそうするようにそれが―――少女に向けられた

「無理だ、勝てない」
帽子の角度がわずか上を向くと、白い顔は生気を失っていた。手に広げるハンカチは様々な言語で”降参”の言葉が羅列されていた。

燈篭 > 鬼、それをチラリとみると、目は嗤うままに、場所を変えだし
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」から燈篭さんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からアイゼンさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にアイゼンさんが現れました。
アイゼン > 足がもつれて部屋を行き来しつつ立ち去って
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からアイゼンさんが去りました。