2020/02/09 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にジョージアさんが現れました。
ジョージア > 『逃げたぞ!奴隷が逃げた!』
『あの小娘、見つけたらタダじゃおかねぇ!』

そんな怒号が飛び交う中、身の丈に合わぬほど長い布包みを抱えて、
走る、走る――――何処へ向かうのが正解なのか、どの角を曲がるべきなのか、
何ひとつ解らないまま、ただただ、追っ手から逃れるためだけに。
大きな重い荷物を抱えて、追っ手は屈強な男たちばかり。
はっきり言って無謀な逃避行であろうが、足を止める気は無かった。
足を止めれば、捕まってしまえば、今度こそ売り飛ばされてしまう。
あるいは奴隷商の店先で、悍ましい見世物にされてしまう。

――――だから、走る、逃げる、ひたすらに暗く細い路地を。
追っ手から遠ざかっているのか、それとも逆に懐へ飛び込もうとしているのか、
解らないからこそ、懸命になって。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > 「騒がしいなぁ……いや、割と何時も通りか?」

(迷路通りを形成している、如何にも雑多な建物。その屋根の上。
今先ほどから追加された騒ぎの方角を眺めながら、首をかしげる男が一人。
こんな場所で何をしていたかと思えば、獲物探しである。
やっぱりこういう入り組んだ場所へと、自然に逃げ込んでくる奴隷は割と多い。
もっとも、土地勘も無ければグルグルと回って、最終的には再び捕まることも多いのだけれど)

「さて、どうしたモンかな。
捕まえて突きだして小銭に換えるか……個人的にそのまま貰ってしまうのも、悪く無さそうだが」

(別段契約して行っている仕事でもなく。つまるところ、捕獲してしまえば扱いは自由だ。バレなければだが。
小さく喉元鳴らせば、身軽なバルクールで屋根伝いに移動し始め。
腕を引っ掛けて頭一つ高い場所へとよじ登れば、先回りの位置。
視線の先は薄暗い路地の一角。
待ち伏せを行う猛獣のように、身を屈めて。獲物が来るのを待つ)

ジョージア > 追っ手というものは己と同じ、地上を駆けてくるものと思い込んでいた。
だから頭上を振り仰いでみたりはしなかったし、視線にも、人影にも、
勿論その男の思惑にも気づかない。

つまり、雑多な建物の狭間を縫うように走る細い路地を、
闇雲に逃げ惑う己を待ち伏せすることなど、屋根伝いに進む男には容易いことだ。
男の側からすれば、きっと拍子抜けするぐらい呆気無く――――

「冗談じゃ、ない……奴隷なんて、絶対ごめんなんだ、から、」

そう吐き捨てながら、己は男が待ち受ける路地へ、勢い良く駆け込んでしまうのだった。

アシュトン > 「何か、荷物を抱えているな……逃げるには邪魔だろうに、余程大事なのか」

(事の流れをじっと眺めながら、其方にも興味が湧いたらしい。
普通、全力で逃げるのであれば、あれほどの荷物は捨ててしまうだろう。つまり、自分の命を天秤に掛けられる位、大切なモノ。という事か。
まぁいい、捕まえてしまえば分かることだ。
造りが悪く脆い屋根を慎重につま先が踏みしめ、曲げた足に力が籠る。
双眸細め見据えたままに、狩り場へと、人影が来――)

「――ッ!!」

(追い立てられ、逃げるに必死となれば、流石に屋根へと注意を払うなんてのは難しい所だ。
小さ目の人影が勢いよく転がり込んでくるのと同時に、ボロい屋根材が弾けて飛んで。
蹴り出しに飛び出して、合わせて落下の重力。黒い弾丸のように、向かうは逃亡者のすぐ目の前)

「上から失礼ッ!」

(冗談めかしたような声は、彼女に聞こえたのだろうか。
ほんの一瞬。
着地の勢いそのままに、少女の口元を片手で塞ぎつつ、コートの内側に包み込み。相手の状況判断が追いつくより先に、その場を一旦離脱してしまう心算、の様である)

ジョージア > 抱えているものは、大切な兄の形見である。
どんなに重かろうと、どんなに疲れようと、手放すことは出来ない。
――――しかし、その重みが確実に、己の体力を削っているのも事実だった。

「―――――――っ、んん!?」

頭上で何か、バリバリと弾け散る音が聞こえたのと、同時。
不意に眼前へ落ちてきた――――現れた、真っ黒い人影。
否、それが人影であると認識するより早く、小柄な体躯は漆黒に包まれた。
悲鳴を上げようとした口を塞がれ、抵抗らしい抵抗も出来ずに、
抱え込んだ兄の形見ごと、娘は男に連れ去られて、何処かへ――――。