2019/03/21 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にカナンさんが現れました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にネイトさんが現れました。
カナン > 前回までのあらすじ。行方不明だった先輩が奴隷市場に!?
慌てて全財産+借財を突っこんで確保したのはよく似た別の人でした。あらすじおしまい。

――――。

ここは奴隷都市バフートでの活動拠点。
一ヶ月の連泊をしている定宿に、先輩のそっくりさん略して先輩を連れてきた。
それなりに悪くないグレードの旅籠だ。それこそ、女の一人旅でも不安はないくらいには。
今となっては、一か月分の宿代を先払いしておいて良かったと思う。

私の部屋には本が多い。古書に特有の匂いが充満している。
いくつもの言語で書かれた様々な時代の本が生活空間を圧迫して山を成している。
多くは奴隷都市バフートの地誌であったり、私人が書き残した帳簿や手記のようなものだ。

「触っても構いませんけど、古いものは脆くなっているので気をつけて下さいね」

荷物を置いて振り向きながら、部屋の散らかり具合にため息をつく。
誰かを連れてくるなんて考えもしなかった。溜まりに溜まった洗濯物も雑に寄せてあるだけで。
一方先輩はといえば、同じく汚れ放題のひどい有様だ。
さっきは気にならなかったけれど、汗臭いというだけでは済まないような臭いもあって。

ネイト >  
結局、売られて犯されるという最悪の結末は免れたのだろうか。
僕には流されることしかできないわけで。

彼女の宿に連れてこられると、古書の匂いが満ちていた。
と、同時に自分の臭いが気になった。
今までまともな扱いを受けていなかったからな。

「これ……全部本か? 読書家なのか?」

もじもじと体を捩じらせて。

「悪いが体を洗わせてくれ。このままじゃ君の部屋に臭いがうつる」

僕の家に戻れれば風呂くらい望む時間に入れるのにな。

カナン > 違うとわかっていても、先輩と一緒にいる様な錯覚に陥ってしまう。
立ち姿も雰囲気も、今は戸惑いの色が濃い声さえも記憶の中のそれとよく似通っていて。

「ええまあ。きっと人並み以上には」
「本というよりは記録。ひとつひとつは大した価値もありませんけど……」

この人は先輩じゃない。わかっていることはそれだけだ。
そんな人を部屋に連れてきて良かったのかな。誰なのかさえわからないのに。

「はいはい。そちらの部屋にどうぞ」

浴室と呼ぶにはあまりに慎ましい部屋付きの水場を指差す。

「一日に一度だけ、バケツの水をかけられておしまいって本当ですか……?」

奴隷商人の中には商品を手荒く扱う人もいて、中にはそんなケースもあるとかないとか。

ネイト >  
横目で女を見る。
豊満な肉体だ。しかし今では自分も負けていないのが恨めしい。
女は好きだが、女にしてくれとは言ってない。

「記録か……」

本なんてまともに読んでいない。
そんな時間があるなら馬に乗ったり女を口説いたりしていた。
自分と住んでいる世界が違う女の部屋。

「ああ、ありがとう。その通りだ、お前が見た醜悪な男はそういうところで雑な奴だったよ」

服を脱ぎ捨てると水場に足を踏み入れる。
ようやく。ようやく体を洗える。
この際だ、お湯じゃなくてもいい。
今までの環境は、耐え難いものがあった。

「…使い方がわからん」

そわそわしながらあちこちを見ている。

カナン > ミレー族―――帝国風にいえば神獣族には、おそらく種族の特性として、肉体的にも恵まれた人が多い。
獣のすがたに似通っているのは耳や尻尾だけでなく、その影響は骨格や筋肉のつき方にまで現れるという。
売り物としてボディラインを露わにしている、煽情的な衣装を眺めればよくわかる。
単純に力が強いし、瞬発力も比べ物にならない。そういえば足も早かった。
もしもこの人が自由になりたい一心で、死に物狂いで襲ってきたら私は抵抗しきれないかもしれない。

だとしても。
助けたいと思った気持ちに嘘はなかった。先輩じゃないからと、差しのべた手をひっこめるつもりもない。
第一、もうお金を払ってしまっているわけだし。

「魔術結社。暗殺教団。あるいは非合法の政治団体。噂くらいは聞いたことがあるでしょう」
「誰がいても不思議じゃない街、というのは隠れ蓑には好都合。そういうものを探しに来ました」

先輩が脱ぎ捨てた衣装もクリーニングに出す用の山に突っこんで。

「冗談きついですね。そんなことしたら病気になりません?」

ミレー族は病気に強いそうだけれど。私も服を脱いで浴室に入る。
錆びた鉄の首輪が痛々しくはまった先輩が文明の利器と格闘していた。

「お風呂に入ったことがない……わけないですよね」
「ここを触って。お湯が出ます。フロントには言っておきましたから」

熱いお湯が驟雨のような勢いで降りそそぎ、汚れを洗い流しはじめる。

「近くで見たらひっどいですよ先輩。髪ベタベタのバサバサじゃないですか!」

ネイト >  
ああ、なるほど。
好奇心が強いタイプのインテリか。
やっぱり僕とは住む世界が違う。
好奇心はミレーを殺す。

いや殺されてたまるか!! 今の僕はミレーじゃないか!!

「男に品定めするような視線を送られる時点で心の病気になる寸前だったよ」

首輪は外れない。
もうこういうものと割り切って、家に帰れたら強引に外してもらおう。

「まさか、既に湯が張ってある風呂にしか入ったことがなくてだな…」
「それにお湯を出す機構も随分と家のとは違……ああ、出た出た」

お湯! お湯だ!! 気持ちいいぞ!! ちくしょうめ!!
なんで僕が奴隷に身を窶して風呂を我慢しなきゃいけなかったんだ!!

「女の体ってこういう風にお湯が流れていくんだな」

体のラインに沿って流れる湯に目を細めて。

「しょうがないだろ、バケツから水を引っ掛けられるだけの生活で髪も衛生もあったもんじゃなかった」
「それに僕は先輩じゃなかったんだろ? 僕の名前はネイト・オルブライトだ」

カナン > 先輩の様子からして、人に買われたのはこれが初めてだったに違いない。
心の病気。あるいは尊厳の破壊。売られて買われて転売されて。そういう目に遭わずに済んだということだ。
この都市にひしめく多くの奴隷たちとは違って。

「壊れちゃう前に私に会えてよかったですね先輩。毎日三度は私のいる方角に五体投地して下さい」
「足に口付けをして頂いても構いませんけれど」
「貴族がどうとかいう設定でしたっけ。オルなんとか家の……男の人だったとか」

先輩が勝手に言っていることだ。証拠は何もない。突飛な話すぎてにわかには信じられない。
せまい浴室で一緒に熱い雨を浴びる。

「まるで今までずっと女じゃなかったみたいな。貴族さまがどうして人買いに売られたんです?」
「髪のお手入れは大変なので、ちゃんと覚えて下さいね」

先輩と同じ藍色がかった長い黒髪をひと房ずつ手にとり、泡を揉みこんで汚れを洗い落としていく。

「カナンです。カナン・ファールバッハ。覚えましたね? 先輩度98%くらいってほぼ先輩じゃないですか?」
「その道の専門家にも判別できないレベルですし、先輩以外の呼び方はちょっと……」

ネイト >  
僕の新しい飼い主サマは無茶苦茶を言ってくる。
だが無茶苦茶をされないだけマシかも知れない。

「君がいる方角がわからない場合は?」
「君の美脚にキスというのはそそられるな……男のままだったら」
「設定じゃない、オルブライト家だ! 知らないのか?」

一緒に湯浴みをしながら、ナチュラルに一緒になっていることに今更気付く。
なんなんだこの女は。

「今までは男だったよ、魔術師の恋人に粉かけたらマジギレされて女にされたんだ」
「あーあー、男に戻るまでは苦労が続きそうだな」

髪を洗ってもらいながら、名前を復唱する。

「カナン。カナン・ファールバッハ。いい名前だ。ってその割合はどこ統計なんだよ」
「そもそもなんで君は僕と一緒に湯浴みしているんだ…?」

何分、狭い部屋なのでお互いの体が当たる。ちょっとエロいな。

カナン > 「私の居場所がわからないときは……心の中で私を讃えてみるとか?」
「私がこの世に生まれたこと、この私と出会えたこと、そして私が健やかにあることを言祝ぎましょう」

まだ言ってる。オルブライト家。悪名高きオルブライトと一緒じゃないですか。

「あれ……オルブライトってあのオルブライトですか?」
「お仲間の不良グループの中でも女癖の悪さで頭ひとつ抜けた遊び人……放蕩息子の若さまがいるとかいう」
「でも、あの家の人々にはわんちゃんの耳も尻尾も生えてませんし、やっぱり作り話でしょう?」

髪の汚れをすっかり落として、お湯をくぐる黒髪のサラサラ感が復活したのを確かめる。

「私調べです。99%に上がりましたね。先輩はいつも身奇麗にしていましたから」
「先輩と同じ顔をしているのに汚れ放題だなんて、見過ごせないに決まっているでしょう」

お湯をたっぷり含ませたボディタオルを泡立てる。
汗と老廃物でぬるついた肌を容赦なく磨きはじめる。

「付きあってたんですよ。帝都で勉強していた頃に。ある日突然いなくなっちゃいましたけど……」

ネイト >  
「はいはい我が神、我が祈り、我が希望」

肩を竦めて言っておく。
緊張がほぐれてきたようだ。
さっきまで死ぬような思いをして走っていたので若干具合が悪いくらい緊張していた。

「なんだ知っているじゃないか、そのオルブライトだよ」
「って誰が放蕩息子だ!? 女癖が悪いんじゃない、愛が多いんだよ僕は!!」
「作り話じゃないから! その風評を流してる奴を教えろ!!」

ガーッと吼える。クソッ、ミレーの体で吼えるってなると無性に笑えるな。
元の男に戻るまでどれだけこの体で過ごすことになるんだか。

「ほぼ先輩とやらに一致しているじゃないか、僕はネイトだ」

体を洗われるとくすぐったさに身をよじる。
変に敏感だな、この肉体は……

「昔の彼女ってわけか。それで借財してまで助けようとしたと……」
「そりゃ気の毒に。僕が実家に帰れたら全額返すよ」

カナン > 「………思い出したらむかむかしてきました。あんちきしょうは弄んだんですよ。私の純情を!」
「書置きのひとつも残さないでどういうつもりですか先輩!!」

私よりすこし年上の丸みを帯びた身体。お腹をぎゅっとつねる。

「あ。ごめんなさいつい。先輩は先輩じゃないのに」
「オルブライトの若さまのご乱行については、私の父が教えてくれました」
「おとぎ話の悪党でももっとスマートにやる……人を人とも思わない、甲斐性なしの見下げ果てた男だと」
「間違っても、あんなならず者に近づいてはいけないと言われました」

お腹をぎゅっとつねる。

「私には、あなたが先輩じゃないということしかわからない。それさえも半信半疑なのですけれど」
「身元不明の謎ミレーを洗ってあげてる私偉すぎません? 神対応では??」

起伏に富んで引き締まったお腹も、すらりと長い脚に支えられた腰つきもごしごしと泡立てて。

「性別を変える魔術なら、存在しないこともない。けれど種族を変えるなんて聞いたこともありません」
「もしもこのお姿が、魔術的に矯正されたものだとしたら……術者は先輩を知っている人かもしれません」
「この胸だって、気味が悪いくらい一緒で……本当に先輩ご本人としか」

私より大きな胸はぬるぬると泡にまみれて。後ろから鷲掴みにして、指を食い込ませて揉みしだく。

ネイト >  
「僕ぅ!?」

いや、それ、僕関係なくない!?
お腹をつねられて慌てて抗弁する。

「なんかややこしい話になってきたな…僕は君のお父さんの誤解を解かなければならないぞ」
「僕はちょっと、その……たくさんの愛をたくさんの女性に届けるために身を粉にしてだな…」
「あいたっ!?」

お腹をぎゅっとつねられて呻く。

「ぐうー……た、確かに君が僕にしてくれていることには感謝しているさ…」

泡だらけになりながら項垂れる。
今は何を言われても仕方のない立場だ。

「なにぃ…? 魔術には詳しくないけど、そうなのか?」
「じゃああいつは僕をハメ…あっ」

胸を揉まれると甘い声が漏れた。

「ちょ、何をしているんだ、僕は男だぞ…っ」

カナン > 「オルブライトのお家に帰ったら、そこには先輩じゃない別の若さまがいたりして。可能性はありますよ」
「もしもあなたの話が本当だとしたら、存在すら捻じ曲げる力を行使する人がいるわけで」
「そうしたら、どうします?」

しおらしくなると変に素直になるので、可愛らしいところもあるんですよねこの先輩は。

「今は女でしょう? ああ、いいえ、男の人なら何ともないですよねこんなの」

たぷんっ、と波打つ胸を下から持ち上げれば自重で指のあいだに食い込んでくる。
こんなに柔らかくてよく伸びるものを私は他に知らない。胸の頂の桜色を細指で挟んで押し潰す。

「こうすると悦んで下さったんですよ。ちょっと乱暴にされるくらいがいいと」

私の胸が先輩の背中に押し当たって形を変える。重なりあう。
両手にたっぷり泡立てて、下腹部へと細指を這わせる。押し開いて、わざと下品な音を立てて洗う。

「当然、ここも触ってみたんですよね。男の人のモノと比べてどうでした?」

ネイト >  
「パパとママなら本当の僕を見抜いてくれるはずだ」
「た、多分……きっと…」

そういえば両親のことを省みてきたわけでもなく。
クソッ、こんなことなら親孝行しとくんだった!!

「う、あ、あぁ……っ」

赤くなって羞恥と快感に耐える。
こんなの嘘だ。こんな感覚を僕は知らない。

「そ、そこは……っ」

自分の音に。気が狂いそうなくらいの羞恥に悶えた。

「あ、あんまり触ってない……」

怖いからな…でも、今は未知の快感を体に伝えてくる。
ちくしょう、女の体って誰もがこうなのか!?

カナン > 「偽物の先輩が、自分こそがネイトだと言っても?」
「………いえ、今のはちょっと意地悪でした。先輩の顔がいいのがいけないんですよ」

シャワーヘッドに当たる部分を壁から外して、全身の石けんを洗い流す。
汚れ具合の酷かった尻尾も本来の白さを取り戻せた様で、特に念入りに揉み洗いをしておく。

「肌も荒れていませんし、だいぶ綺麗になったじゃないですか。よかったですね先輩」

弱めた水流を下腹部に押し当てて、体の内側へと熱いお湯が流れこむ。
指を二本揃えて、石けんの洗い残しと指に絡みつくものを丁寧にかきだした。

「オルブライトの若さまは女の子が大好きなのに。ご自分では触らないんですね。本当に?」
「それはそれとして、かなり不衛生な状態でしょうから毎日ちゃんと洗って下さいね」

キュ、とお湯を止めて水の滴る音だけが残る。手をとり正面同士で向き合って。

「キスしてくださいよ。先輩。お上手なのでしょう?」

ネイト >  
「クソっ、褒めてる割りに扱いがぞんざいだな…!」

尻尾に触れられると、特に背筋にゾクゾクくるものを感じる。
体が跳ねそうになるのを必死に堪えた。

「あっあっ……この、中は洗わなくていい…!」
「い、今までプライバシーも何もない空間にいたんだ、当たり前だろ…!」

舐められている。そう感じた。
向かい合うと少し拗ねた風に眉根を顰めて。

「腰を抜かすなよ」

そう言って唇を重ね、彼女の舌を蹂躙した。

カナン > 「………っ……ふ、んん……ぅ……」

記憶の中の先輩の、優しく慈しむような口付けとはかけ離れたやり方に目を白黒させる。
迎え入れた舌は暴君のように振舞って、知らず吐息が荒くなっていく。
まるで人が変わってしまったみたい。これはこれで。

「………………ふー……ふっ、ぅ………!」

癖になりそうな陶酔感にうっとりと目をつむり、ぬるぬると濡れてのたうつ舌のまぐわいに集中する。
壁に押し付けられて、逆に押しつけ返して。唇と唇のあいだに隙間ができた時にだけ新しい空気を取り込んで。
底なしの快楽へと誘い、紅い目を細めて笑う。
幾たびも繰り返される交合の果てたあと、唇のあいだに伝う銀の糸を舌で絡めとった。

「…………はぁ……はぁっ、よかったですよ。なかなかでした。さすがは女の敵の若さま」

思いがけない拾い物、といっては失礼かもしれないけれど。後悔はすっかり消えてなくなっていた。

「先輩を助けたかった気持ちは本当ですが……」
「文字通りに、先輩が私のものになるなら悪くないかなって。あまり褒められたものじゃない下心もありました」
「私は私で報いを受けたのだと思っていましたけれど……いいお買い物だったかもしれません」

鉄の首輪に手を伸ばし、くい、と手前に引き寄せる。

「どんなにたくさんの愛を持っていたって、今はひとつ残らず私のものです」
「余所の子に手を出したら……どうしましょうかね。わんわんに抱かれて頂きましょうか」
「ええ、ミレーではなく。ですのでどうか、そのおつもりで」

ネイト >  
キスには自信がある。
この体でも、それは変わらないみたいだ。
口腔に舌を侵入らせ、気持ちいいところを刺激する。

「ん……ぅ………ふ、ぅ…」

二人分の呼吸が官能的で。
うん、キスをするならむさ苦しい男よりこういう娘だよ。
名残惜しそうに離れると、にっこり笑って。

「気に入っていただけたようで何より」
「でもその女の敵ってのはやめないか……」

合ってるだけに刺さって痛い。
首輪を引っ張られると、彼女に接近したまま目を見る。

「ぐ、ぐえ……」

わんわんに……ミレーだからってあんまりだ。
いやミレーじゃないし、僕は人間男だし。
で、でもとりあえず……今はこの子に付きっ切りになりそうだ。

カナン > 「ひとたびやると言ったことは、必ずやってのけることに定評のある私です」
「本当にしますからね!」

冗談とも本気ともつかない笑みを残して、一足先に浴室を出る。

「せんぱーい。服出しときますから。あとでちゃんとしたのを買いに行きましょう……」

ネイトにはひとまず、クリーニングから戻ってきたばかりの服と下着をあてがうことにして。
そのことでまたひと騒動あったのは別の話―――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からカナンさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からネイトさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
チェシャ=ベルベット > 午後もバフートの奴隷市場は活気に満ち溢れている。
市場を埋め尽くす檻にそれぞれ入れられている奴隷たちは
人種も性別も問わない入り乱れよう。
チェシャはフードを深くかぶってなるべく顔を見られないように通りを行き来する。
手には鎖を数本持ち、その先には奴隷―――同じ年頃のミレーもいる―――
が括り付けられて引っ張られるようにして歩いている。

馴染みの商人を見つけたならそちらに交渉をして金や情報とともに奴隷を売り渡した。
これで彼らは新たな商品として市場を賑わせるのだろう。
罪悪感が無いわけではないが、自分の身を守れない奴にかける情けは無い。
鎖を商人に渡して、チェシャはその場を足早に去る。

一仕事の後は、娼館にでも行こうかな、なんて考えながら
ついさっきまで一緒に居た奴隷のことは頭から忘れてしまった。

チェシャ=ベルベット > 娼婦に声をかけられ、二三、言葉を交わした後に一つの娼館へ入っていく。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からチェシャ=ベルベットさんが去りました。