2018/09/12 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にツァナさんが現れました。
ツァナ > 困った事に。現在非常に、王都へと戻り辛い。
何でもカミサマの使いを模した存在が、街道に近い原野を彼方此方闊歩して。
危険な為に軍隊も出動し、実に物々しい状況らしく。
…そんな所を通行するのも。まして突っ込んで強行突破するのも。
危険過ぎて愚の骨頂だった。

「やっぱり。この国の、カミサマ、って。…私達、には、不親切。」

そう考えて膨れっ面。
街道途中で足止めを喰らってしまい、結果、立ち寄らざるを得なくなった最寄りの街は。
…ミレー族という存在にとって。あまりに、心象宜しくない。
これが転の采配、神の思し召しであるというのなら。
ますますもって天に唾したくなるのも、当然という物だろう。

「ホント、何なんだ、コレ……」

歩けど歩けど。目に付くのは、同族が強いられている虜囚の憂き目。
檻に入れられ、首輪に繋がれ、で済んでいるなら。まだマシな部類。
中には白昼堂々客寄せとして犯される者や。
狭い馬車に童謡宜しく詰め込まれ、きっと人目を憚る場所へと運ばれていく者達、等々。
ぎゅっとフードを強く下ろし、出来得る限り、顔と頭を隠すようにして。
足早に道を歩いていく。
…こんな街でも。街は街。何処かに泊まって、王都へと戻る為の、交通機関を。
潜り込んでもバレずに済みそうな、規模の大きな交易隊等を。探さなければいけなかった。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > ここに直接来るのは久しく、そして古傷を抉るような痛みを感じる土地でもあった。
黒塗りのヤモダチで作られた装甲馬車が二台、ガラガラと大きな物音を立て、市場の門をくぐると、彼女の目の前を通り過ぎていく。
そのまま向かった先は、人目につきにくい市場の片隅。
馬車が動きを止めると、車体から数人のミレー族の少女達が降り立ち、周囲の様子をうかがう。
ブラウスにハイウェストスカートの制服に、ケープには首輪と鎖を断ち切る組合の紋、小銃らしき武器を携えた格好と、奴隷とは異なる姿。
周囲の安全を確かめると、御者の男へ少女達が何かを喋りかけると、言葉を遮るように駆け出し、市場の中央へと向かっていく。
その様子に男は小さくため息をこぼすと、小さな本を取り出し、読みふけりながら積み荷が来るのを待つばかりである。
ヤモダチの木を使った、堅牢そうな大型の荷馬車といった車体は、後ろ側に幌布を垂らした簡易的な出入り口が一つだけと出入りは簡単なもの。

(「……あまり無理はしないでもらいたいものだが」)

普段は祟り神という偽りの顰めっ面を貼り付けている男だが、今日はただの御者として積み荷の帰還を待つ。
ミレーの里を一つまるまる潰して収穫した奴隷達を回収すべく、大枚を先にはたいたばかりだ。
後は、証書と共に受け取りを終えるだけなのだが……妙に気合の入った、組合の少女達が自分達で行くと出ていってしまい、今に至る。
組合の格好に武器を携えた彼女達へ、そうそうちょっかいを出す輩はいないだろうと思えば、止めることはしなかった。

ツァナ > 「…?ん、んー…?」

大きな馬車が目の前を行く。先程の、例えば鉱山等に奴隷を送り込む荷馬車とは異なり、実に立派で頑強さを感じる造り。
ひょっとすれば。それこそ王都からやって来たような、偉いヒトでも乗っているのかもしれない、と。そう考えると。
自然何者なのか、気になるというものだった。
…目の前でこの国のお偉いさんが、奴隷を買っていく、とでもいうのなら。ますます良い気はしない、という面も有る。
するりと裏路地に潜り込み、直接は後ろを着けず…壁を蹴り、建物の屋根へと登り。上から様子を窺えば。
続々と降り立つのは、予想に反した、ミレー族の姿だった。
それも、奴隷達とは似ても似つかない、しっかりとした身なりをした者達。
何がなんだか、どうにも見当を付けかねて。首を傾げた侭、屋根の上で身を低く。彼女等が馬車から遠離るのを待った。
少女達ではあったが、姦しく笑いさんざめきながら、とはいかず。
明らかに大半が、緊張の面持ちを浮かべていたような…場所が場所だから、仕方ない、とも思えるが。
彼女達が離れたのを確認すれば。バネを活かし音を立てず、地面へと。
するするとその侭足音を殺しつつ、馬車の後方から近付いていくのなら。どうやら、一人、其処に残っているようで。

「…お邪魔、サマ。…お買い物?」

少し離れた所から、声を掛けてみる事にした。
理由は幾つか。…先ず。先程の少女達の身のこなしを見れば。明らかに、素人ではなくて。
残った男も、きっと同じだろうから。
それを裏付けするように。男の格好自体も、機能性を重視し、実戦を鑑みて、設えられているようで。
明らかに荒事を想定して見えたから。
…結論、奇襲を仕掛けたとしても、返り討ちに遭う可能性と。万一車内に残っている者が居れば、包囲される危険も有ったから。
先ずは、相手の素性を知る所から、始めるべきだと結論づけて。

アーヴァイン > 屋根の上へと移動していく気配に、少女達は気づく様子はない。
彼女と同じぐらいの年頃の少女達は、降りた瞬間には小銃を構えていたものの、安全と思えば不必要に構える必要もなくなり、スリングを肩に引っ掛けていく。
構えをといたまま歩いていく合間も、時折言葉をかわす様子はあるも、普段のように和気藹々といった様子はない。
やはり、自分達の同族が売られる場所である事には変わりなく、少しだけピリッとした雰囲気をまといつつ角を曲がれば、姿は見えなくなっていった。

「……あぁ、そんなところだ」

音もなく降り立つ姿、そして猫のような静かな歩みに気づく様子はない。
そして、呼びかける声に、ページを捲る手がぴたりと止まると、代わりに本を両手で挟むように閉ざしていき、そちらへと振り返る。
小柄な体つきをすっぽりと覆うフード付きのローブ姿を見下ろしながら、身体もそちらへと向けていく。
彼女の見立て通り、見た目こそ派手さはないが、挙動と最低限の防御に割り振った防具に、斥候の様な細く引き締まった体付きは素人というには無理がある。
だが、素の表情が出せる今となれば、薄っすらと浮かべる笑みは、荒事に常に身を置く存在にしては妙かもしれない。

「君は……ここの客というわけではなさそうだな。中には誰もいない、気になるなら確かめてくれていい」

改めて姿を覗き込むように確かめるも、奴隷を買い漁る貴族や王族とは見えず、奴隷商と関わり合う風貌でもない。
尻尾や耳も隠れていたとても、考えられるのは、商品にされる側といったところか。
なにか警戒している様子は感じ取ったのか、両の掌を顔の両端に持っていって晒し、戦闘の意志がないことを伝えていく。
言葉と重ねるように、荷馬車の後方を指さし、不安ならと確かめる様に勧めていく。
無論、中を確かめても人影はない。
あるのは、ステップ状の腰掛けが両脇に備えられているのと、小さな樽と大きな木箱が一つ、その上には大きなケトルが一つ置かれているぐらいだ。

ツァナ > 少女達が…見た事はないが、武器らしい物を、構えていたのは。こんな街である事を考えれば、当然の筈。
そして、彼女達が通り過ぎていった後、様子を窺ってみた男も。
ぱっと見では窺えなくとも、多分、同じような武器を持っているか。
或いは、武器が無い状態でも、危険に対処出来るような手段を、有していると考えた方が良い。
だから、先に彼方が、敵意は無いというように。両手を挙げる素振りを見せた後も。
はいそうですか、と安堵しきって、直ぐに近寄る事はしない侭。

「そ?此処で、買えるの、なんて。ロクでもないのに。
…そだね、何だか、ソッチは。一人、みたい、だけど。」

指摘された通り。どうやら、馬車内に居たのは。先程の少女達だけらしく、今は無人。
さっと覗き込んだ其処から、直ぐに、男の方へ。視線を戻して。

「あのコ達、何?此処で、何かお仕事とか、させる気?」
…危ないのに。何されるか、解らない、のに。」

勿論、先程の様子からして、素人でない事は解る。
それでも、万一は在り得るし…遙かに強い力と、悪意を持つ存在も、皆無ではないのだろうし。
何より。ミレー。女。それだけで、この街だと大勢から付け狙われるような…多勢に無勢となりかねない、気がする。
其処に少女達を送り込む、買い物を使用という、男の意図を。
疑ってしまい、声に棘が滲むのは。仕方ない事だろう。
……きちりと。マントの下、微かに。刃に手を掛ける音。

アーヴァイン > 丁度自身の隣の席には筒状のケースに収められた、折りたたみ式の弓が入っているが、身体で影となって見えないだろう。
普段なら脇差や小道具の装備類も持っているところだが、そこまで激しい戦地へ赴くつもりはなかったのもあり、それらは装備していなかった。
警戒しきった様子も、まるで野良猫の様に思わせられながらも、荷台を確かめに行く様を見送る。

「あぁ、ろくでもないものだ。だから、買い戻さないと行けないモノが多い」

小さなニュアンスの違いで言葉を紡ぎながら、こちらへと向き直る彼女へ答えていく。
買い戻す、奴隷を手に入れるためならそんな言い回しはしないだろう。
矢継ぎに重ねられる問いは、棘と共に淡い怒りが混じって聞こえた。
何より、こちらを見つめる視線は敵意が混じって感じる程鋭い。
僅かに響いた金属の擦れる音に気づいても、武器を手にとることはせず、確かにと言うように小さく頷くと口を開く。

「あの娘達は俺が作った組合のメンバーだ。戦闘を主体とする班に所属しているからな、ならず者程度なら何もさせずに倒せる。だが、そもそも余程の自信過剰家か、怖いもの知らずしか手を出さない。ケープに入っていた紋を見ればな」

いつ攻撃してくるか分からないという中、懇切丁寧に彼女達の所在を答えていく。
首輪を否定し、鎖を断つ者、その願いを込めた紋を掲げる組織はある意味、彼女が属していた組織と近いようで遠い。
彼女らの中にも、チェーンブレイカーという名が知られているかは定かではないが。

「あの娘達だけで行ったのは、本人達の意志だ。それと、仕事というか、支払いが終わった奴隷を引き取りに行ってもらっているだけだ。」

そう告げると、掲げていた右手をゆっくりと下ろしていき、腰元のポーチの蓋を開いていく。
ゆっくりとそこから折り畳まれた羊皮紙を取り出すと、広げていき、彼女へと向けていく。
それは契約書の写しの一つ。
記載されている内容は、ミレー族の奴隷を20人程纏めて買い取るという内容。
相当な額の支払いが済み、引渡日の記載には今日の日付が書かれている。

「申し遅れたが、俺はアーヴァイン。ミレー族が平等に過ごせる土地、ドラゴンフィートの維持と、王国との軍事契約の仕事をしているチェーンブレイカーの長だ」

チェーンブレイカーの名も、彼の名前も羊皮紙に書かれている通りのもの。
これで少しは刃を向けるほどの憤りは静まるだろうかと思いつつ、じっとその様子を伺っていた。