2018/07/14 のログ
カイル > 男はしばらくするとタバコを踏み消して去っていった。
ご案内:「奴隷市場都市バフート/奴隷市場」からカイルさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にナナカマドさんが現れました。
ナナカマド > 奴隷市場都市バフート、”奴隷市場”として名を冠されている以上
ここに来るのは奴隷を売買する商人かもしくは客となる富裕層かと思われていた。
が、そんなところに世間知らずのエルフが一人、キョロキョロと周りを見渡しながら大通りを歩く。

これも見聞の旅の一つとして、この都市を訪れたはいいものの人が商品として売り買いされている光景に言葉もない様子で。
時折檻の中の奴隷と目が会う。そのたびにナナカマドはぎくしゃくとした笑みを浮かべるが
檻の中の奴隷たちは皆生気のない目か、目線を逸らすか
そんな消極的な反応しか返さない。

『お嬢ちゃん、奴隷をお探しかい? いい奴が入っているよ』
そんな風に商人に呼び止められるが、ナナカマドは困ったような笑みを浮かべたまま
慌ててその場を離れるを繰り返す。

ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」にスナさんが現れました。
スナ > ナナカマドの歩く先に、ところどころ錆びつき歪みながらも頑丈さを保った奴隷用の檻がある。
その中には、ナナカマドの見知った様相の人影が力なくへたり込んでいる。スナだ。

近くには小さな木の札が置かれ、『性奴隷用 多少乱暴に使っても大丈夫 詳しくは○○通りの□□まで』と書かれている。
付近には、その奴隷の主と思われる者も含め、人影はない。ただ檻と奴隷だけがぽつりと。

「……買って……ください…………なんでも………しますから………」

付近に人の気配を感じたのか、檻に飼われたスナは力なく首を上げ、声を漏らす。
ナナカマドが聞いたことのある低い男声だが、その声色に生気はなく、相当打ちひしがれているようだ。
纏う衣類も腰回りを隠すだけの布1枚で、露出した腕や背中には赤いミミズ腫れがいくつも浮かぶ。
近づいてきたのがナナカマドであることすら気づいていないかもしれない。

……先に種明かしをしておくと。これは『幻覚』である。
この檻は本来、持ち主のいない打ち捨てられた檻。中にいるやつれたスナは幻像であり、発せられる声もまた幻音。
そして本物のスナは、そう離れていない裏路地の入り口から半身を覗かせ、幻術を行使しつつ檻を見張っていた。
いつもどおりの平民の衣服、傷ひとつない腕を胸の前で組み、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべつつ。
果たしてナナカマドは気づくかどうか。

ナナカマド > チラチラと檻を見ながらもどうすることも出来ないナナカマドは
檻の積み重なった通りを足早に通り過ぎようとする。
と、ふと目に入る一つの檻。その中には哀れなミレー族がぽつねんと取り残されている。
ここの光景はそんなのばかりだ、そう思ってまた視線を逸らそうとするのを記憶が引き止める。
見間違いでなければそれはスナの姿であった。
一瞬ぎょっとして慌ててその檻に近寄り鉄格子を掴む。

「す、スナさん……?! どうして……」

いつも見る飄々とした笑みは鳴りを潜め、今は擦り切れたボロの様になった有様に思わず胸が締め付けられる。
この檻の持ち主を思わず探し出すために、左右に首を巡らせる。
側に立つ商人と思しき男に声を掛けると
「この、檻の人はわたくしの友人なのです!出して下さい!」
そう頼んでみるが、商人の目には空っぽの檻を指差すばかりのエルフ。
頭のいかれた奴だと思われたのか、シッシッと虫を追い払うように追い返されると、
ナナカマドは困ったように立ち尽くしてしまう。

スナ > 「ククク……カッカッカ!! ひっかかったひっかかった!!」

慌てふためくナナカマドの背後で、人を食ったような飄々とした男声が響く。
下卑た笑みを浮かべながら腹を抱え、可笑しさに肩や背を揺らしながら、五体満足のスナがすぐそばに立っている。
そして、ナナカマドがもう一度檻の方を見れば、中にいた哀れなスナの姿も、その周囲にいた人影も忽然と消えている。
まるで元から何もいなかったように。数カ月は放置されていたであろうホコリまみれの空の檻が置かれているのみ。

「ったく、俺みたいな処世術に長けた奴が奴隷に堕ちるハズもなかろーが。お前さんはともかくとしても。
 つーか何じゃ、ナナみたいな奴がこの街に何をしに来ておる? 奴隷を必要とするような奴とは思わんかったが」

ひとしきり笑い終えた後、スナは自分よりわずか背が高いエルフの目を真っ直ぐ見ながら、そう問いかける。

ナナカマド > いよいよとなってはこの檻を力尽くで壊すしか無いかもしれない……。
そんな事を考えていたナナカマドの背に低く渋い男の笑い声が響く。
腹を抱えて高笑いする、人をおちょくったような、否、おちょくっているスナの元気な姿がそこにあった。

「す、スナさま……!!」

感極まったエルフの大きな瞳にみるみるうちに涙が溜まる。
五体満足な姿に、思わず駆け寄ってその体を抱きしめた。
どうやら無事な彼の姿を見たせいか、騙されたとかそういった事はすっかり聞いていないらしい。
それくらい、スナの事を心配していたのだ。

「ああ、もう!良かった!本当に良かった!
 あんな所でボロボロにされているスナさんはいらっしゃらなかったんですね!」

純朴なエルフの瞳から感激の涙が流れ落ちる。
今暫くはスナの体をがっちりと抱きかかえて、喜んでいるのであろう。
と、スナの問いかけにはっとして、慌てて腕の力を緩め、しげしげとスナを見下ろした。

「いえ、ナナは……奴隷市場というのを見に来ました。
 里の長老さまに言われたのです。多くの物事を見聞すべしと……。
 でもここは、……あまり良いところではありません……・。
 奴隷というものが、いかようなものか、ナナは初めて知りました」

しょんぼりと肩を落としてスナの問いかけに答える。
そうすると次に湧いてくるのはスナはどうしてこんなところにいるのか、ということだ。

「スナ様はどうしてこのような場所にいらっしゃるのですか?」

キョトンとした顔でそう腕の中のスナを見つめた。

スナ > 「……お、おい、やめんか! 街なかで抱きつくなど……誤解されるじゃろが!
 あと股間のデカブツが当たっとるぞ!」

突然抱きつかれると、その暑苦しいスキンシップに若干辟易としながらも、しばし素直に身を委ねる。
ナナカマドの『股間のデカブツ』が実際に押し付けられたか否かは定かでないが、スナはわざとらしく声を張って言い放つ。

「ククッ、騙してしもうてスマンの。アレは幻じゃよ。
 自分で自分のひどい姿を作るっつーのもムズがゆかったが、ナナをどうしてもおちょくってやりたくなっての。
 ……ん、俺か? 俺は奴隷を見に来たんだよ。王都の貴族の代理人としての。忙しくてバフートまで来れないってんでな。
 依頼されたとおりの奴隷がいるかどうか探して、いれば買い付けの先約をしておくってわけよ。
 いまのとこ、まだいい感じの商品は見つかっとらんがの」

街路をぐるりと見渡し、あちこちに展示された哀れな奴隷の姿を見やる。

「ふぅん、お主は社会科見学ってやつじゃな。大事ではあるが、一人で歩くとはなかなか度胸があることだ。
 ……で、『良いところではない』という学びを得たと。フン。そんなことは来る前から分かっておったろう?
 他に何か学びは得たのかぇ? 俺に何か説教たれてみておくれ……奴隷とは何か、その制度の良い所や悪い所は何か、等。
 学びは言葉にできないと『見聞』とは言えまい?」

細い顎を指で掻きながら、ニコニコと笑みを浮かべつつ、そう要求する。

ナナカマド > スナに大声で喚かれてしまえば、往来の真っ只中、周囲の人の目も突き刺さるもので
慌ててその小さな体からぱっと離れる。
「ナナはそんな大きくありませんっ!」そんな事を付け足して真っ赤になって否定する。

全てがスナの幻であったと聞かされて、ほっとした次に沸き起こるのは
相手の意地悪に怒りたくなる気持ちであったが、
スナがどうしてこの場所に来ているのかを聞いているうちにその気持はみるみるうちにしぼんでいった。
スナもまた、形は多少違えど、ここの奴隷たちを買い付けに来たのだと知れば
またぞろしょんぼりと表情を曇らせる。

「だって……ナナは奴隷ではありませんし、奴隷になるつもりもありません。
 だから一人でも大丈夫なんです」

そこら辺の危機感は相変わらず無いのか胸を張ってスナに言う。
そこまでは威勢が良かったものの、何の学びを得たか教えろと言われれば難しげに少し考え込み

「……どうして人は同じ人を奴隷とするのかが、ナナには分かりません。
 ヒトは、皆同じ命のはずです。その重さや大きさに価値の違いは無いのに。
 どうして勝手に階級を作り、支配と被支配関係を作りたがるかが分からないのです」

そう自問するように、あるいはスナに尋ねるように不可解な表情を浮かべてまた周囲の奴隷たちを見やる。

スナ > 「……ん、この話はあまり奴隷本人や売り手に聞かれてもいいことはない。
 こっちから聞いといてなんだが、ちょいと場所を移しながら話そうや」

自分の問いに答え始めるナナカマドを軽く制し、彼を手招きしつつ建物と建物の間の路地へと誘う。
場を移そうという提案はもっともらしいが、向かおうとする先は街の奥へと続く道……ナナカマドは気づくだろうか。
着いてくるなら路地を歩きながら、着いてこないなら仕方なくその場で、話を続ける。

「で、なるほど、命に貴賤はないと。たしかに『命』はそうかも知れぬ。じゃが、コトはそう単純でもなかろ。
 俺が想うに、階層とか支配関係っつーのは、そうしたくて作ったものじゃない。いつの間にかデキちまった物なんだよ。
 作物を作るのが上手い者がいる。政を行うのに長けた者がいる。人を使役するのが得意な者がいる。
 そうした『適材適所』で社会が造られるうち、『金の在処』とか『社会性』に貴賤が生じるのは仕方がなかろう?」

スナはどこかムッとした印象も与える仏頂面を浮かべながら、淡々と語る。

「食べるもの、衣類、屋根のある家……そういった社会に必要なモノはすべて、それを作るのが得意な者が作っている。
 誰も彼もが『他者の支配を受けない』社会があったとしたら、きっとそこでは、衣食住すべて己で賄わねばなるまい。
 その場合、何も能力を持たない者はどうなる? 一人では家も作れず衣類も仕立てられない者は、そう長くは生きられまい。
 支配というものが存在しないのだから、他者を自分のために働かせることもできぬのだからな。
 ……ちぃと極端な話になったが、支配・被支配が存在する理由は、そういったハグレ者を出さない為だと俺は思う」

ナナカマドの発した意見に対し、スナは所々言葉を選ぶように黙考しつつも、そう反駁した。

「じゃあもう一つ問おう。ナナはここで多くの奴隷を見たのじゃな。可哀想とも思ったじゃろう。
 では、一人で生きていけるナナは、ここで売られている奴隷たちに、彼らのために、何をしてやれる?」

ナナカマド > 余程スナに問われたことを集中して考えているのだろう。
スナに誘われるままのこのこと街の奥へと付いて歩いていく。
エルフとミレーの子供二人が並んでこの街の奥へと入っていく姿は珍しいのだろう。
ジロジロと通行人や奴隷商達が視線をくべる。

スナの常ならざる真面目な言葉に思わずナナカマドの背筋が伸びる。
彼の言っていることはところどころナナカマドには難しいが、理解できる部分もあった。

「そのう、スナ様……支配されたり、支配したりをしない方法がもう一つあります。
 それはお互いが出来ることを対価に協力し合うことではないでしょうか?
 現にナナの里でも得意と不得意のあるもの達が寄り集まって生活していました。
 でも里では出来るものは出来ないものを手伝って、皆で仲良く協力しあっています。
 そうすることは人間たちの社会では不可能なのでしょうか?」

真面目な生徒が教師に質問するようにナナカマドは問いかける。
対してスナがもう一つ問いかけた言葉には再び考え込むもすぐに答えが出ず暗い顔をする。

「……い、今のナナが彼らにしてやれることは……何もありません……。
 だってナナはお金を持っていませんし、彼らの面倒を見てあげることも出来ません。
 それに、生きる意欲のない者を……自分の足で立つ意志がない者に他者が出来ることは限られています……」

それはエルフの里でも同じだった。すっかり生気を失った奴隷たちがもう一度生きられるかどうかは怪しい。
世の無常がこんな所で突きつけられることにナナカマド自身戸惑っていた。

スナ > 薄暗い路地を2人の小柄な人影が歩く。
物陰に何か悪いモノが潜んでいるかもしれないが、そもそもこの街は表通りからしてあちこちに悪徳が蔓延っている。
『ヒト』のいない裏路地のほうが、表の道よりもある意味では安全なのかもしれない。

「……ふむ。ナナの言うことはもっともじゃが。おそらくナナは、いくつか前提を勘違いしておる」

歩きながら、スナはナナカマドの言葉をひとしきり聞いた後、そう切り出す。

「まず。奴隷と主人という関係……そこに協力関係がないということは決してない。対等ではないとしても、な。
 奴隷は労働力を提供し、その代わりとして対価を得る。それは、食べ物だったり、寝る場所だったり、雨をしのげる屋根だったり。
 極端な話、普通の労働者との違いは、生活にとって根源的なモノが対価になってるという点だけといえる。
 そして、その対価が保証するものは、『命を永らえさせる』ことに他ならん。
 ほぼそれだけに限られてる、という点で平民と違うというのは認めざるを得ないが、の」

ナナカマドを導きつつ、スナは躊躇ない歩みで裏路地を進む。まるで知った道であるかのように。

「『生きる意欲のない者』と言うたな。ナナには彼らがそう見えたのかぇ。じゃが、俺にはそうは見えぬ。
 貧困や無学の星の元に運悪く生まれ、もしくは悪いやつに騙され、『自分で立つ意志がない』と見られかねない境遇に陥り……。
 それでも『生きたい』と思うておる奴らこそが、ここに居るんじゃよ。そうでない奴らはとうにどこかで野垂れ死んでおる。
 それほどに、この国は弱者にとって世知辛いのじゃ。ま、俺の故郷よりは数段マシじゃがの」

職能が優遇され、金を稼ぐ者と稼げない者が居るなら、そこに『強者』と『弱者』が存在してしまうことは、ある程度は仕方ない。
ましてや、戦乱で内外に混乱が満ちているこの国では、その差は顕著にならざるを得ない。

「ナナ、俺の言うことを鵜呑みにする必要もないが、一度こういう見方でこの街を歩いてみるとええ。
 彼らは『生きたい』んじゃ。そうして彼らを見てみれば、お前さんにもできることは湧いてくるかもしれん。
 少なくとも、俺に仕事を依頼した貴族は、このことを分かって奴隷を買ってるよ」

ナナカマド > 「彼らは『生きたい』のですか? ……虐げられモノのように扱われてもなお?」

そう言われてもう一度ナナカマドは薄暗い路地のそこかしこに覗く檻を見る。
やはりそこには鎖に繋がれ、じっとうずくまる老若男女の人々がいるばかりで
覗き込むナナカマドの視線にはなんら反応がなかったかもしれない。
いや、何人かは自分を売り込もうと必死にこちらへ呼びかけるかもしれない。
あるいは鉄格子を揺さぶって何やらこちらへ侮蔑の罵詈雑言を投げつけてくるものもいるかも知れない。
スナの言う通り、まだ『生きていたい』ものは少なくともいるようだった。

ごくりとナナカマドは息を呑みこんで、もう一度真面目に考え込んでみる。
ならばスナに代理を頼んだ貴族のように彼らを買ってやるべきか?
それもなんだか違う気がする。
命を永らえさせる対価に受け取りたいものがナナカマドは無かった。
スナの出した問いかけにすぐに答えられる言葉をナナカマドは持ち得なかった。

「スナ様……、やはりナナにはわかりません。
 ナナが彼らに出来ること……、しばらく、考えさせて下さい」

うなだれながらそうつぶやいた。

スナ > 「………ククッ。本当のところは、彼らが『生きたがってる』かどうかなんて分からんよ。俺は他人の心なんぞ読めぬ。
 そう考えてる奴もいるかもしれないし、ホントは死にたいのに死なせてすら貰えない奴もいるかもしれぬ。
 あるいは、そういったふうにモノを考える力すら残ってない者も……な。
 ……じゃが。誰しもが、俺やナナと同様に『生きたい』と思ってる、奴隷だってそれは変わらない……そう考えたほうが、前向きではないかね?」

路地に入りてもなお奴隷たちの視線を感じ、束の間スナの声は低く抑えられる。そういえば別の大通りがもう近い。

「もしかすると、明日には戦乱が終わり、平和な政が敷かれるかもしれぬ。ミレー達の信ずる神が力を取り戻し、下剋上が起こるかもしれぬ。
 死んだらそんな明日を見ることもできぬ。『生きる』ということはそういうことじゃ。
 奴隷になったからといって、彼らからそんな気概すらも抜き取るような輩がいるとは……本当はいるかもしれんが……いないと思ったほうが良い。
 俺やお前さんが彼らを救う者になれるのであれば、世の中も良くなるじゃろ。独善的かもしれんが、小さな思考から始めたほうがええ。
 とはいえ……うむ、すぐに答えを急ぐ必要もない。ナナもまだ若い、できることも限られておる。それを悔やむこともない」

うなだれるナナカマドに、スナは柔和な笑みを作って向けつつ、そう応えた。

そうして歩くうち、また広い通りに出る。先程の通りと同様に、やはり奴隷商がひしめき合うように商品を並べている。
路地の出口のすぐそばには、首枷で上半身を固定され、馬のように腰を突き出した体勢の全裸の女性がいる。
日に焼けた臀部には、顔料で『前穴のみ・1発50ゴルド』と雑な字で書かれている。
その説明のとおりに、奴隷の女性の性器は無残に犯され、ぽっかりと空いた膣穴から様々な体液をだらりと垂らしている。

「……っと。別のとおりに出たの。さてナナよ。答えを急ぐなと言った矢先じゃが、もう一つだけ問うてみよう。
 あそこの全裸の奴隷の女。いまのお前さんなら、どう扱う?
 お金は持ってきておろう。ナナにはチンポもある。書かれたとおりに使ってやることもできようが、どうする?」

表情すら伺いしれない哀れな性奴隷を遠巻きに見つつ、今度は嫌らしい笑みを浮かべて、ナナカマドを唆す。

「……ああ、俺のことは気にするな。アレはさっき使ったから」

親指でくいっと女性を指しながら、さらりと言い放つ。

ナナカマド > 確かに考え方としては、奴隷の身にやつしてもそれでもなお生きたいという風にも思える。
ならば彼らを奴隷の地位であっても生かしておいたほうがいいことなのだろうか?
そんな事をスナに煙に巻かれるように悶々と考え込むナナカマドは大通りに出たことにすら気づかない。
スナが指し示してやっと、哀れな女性が卑猥な姿で奉仕していることに気づいて顔を真赤にした。
慌てて目をそらして、やっぱりこのスナという人は自分に意地悪だと思うに至る。
あんな高尚な学をぶっておいて次に出るのがそんな下賤な問いかけとは。
しかも自分は使用済み。ますます酷い。
赤くなった顔のまま、ついに怒ったような仏頂面を出すとスナを睨みつけ

「……~~~~!! スナさんの助平! しません!ナナは!公衆の面前では!そんなコト!致しません!」

ぷりぷりと怒りながら今度はスナの後ろを付いて歩くではなく、反対の方向へ歩き去って行ってしまう。
奴隷の女性を辱めるのはもっての外、かといって彼女を買い付けてその場に放置してもきっとまた元の木阿弥になってしまうだろう。
世の中は難しい、もっと物事を知らなければならないとナナカマドは強く思った。

ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からナナカマドさんが去りました。
スナ > 「……ククッ! そうさ、おれはスケベさ。お前さんよりも遥かに長く雄をやっとるからの!
 じゃあの、ナナ。気ぃつけて帰れよ!」

ある意味で思ったとおりの反応を返し、怒って去っていくナナカマドを、スナは追いかけもせずに見送る。
奴隷の女に対して、何もしない、というのもまたひとつの答えだ。

「……そうじゃな、世の中っつーのは難しい。そんな世の中を捉えて飲み込むっつーのは、もっと難しい。
 世の中を良くしようと考えるのは良いが、それで目の前の奴隷の明日の衣食住が満たされるとは限らぬ。
 奴隷に駄賃を与えても、あるいは買って身の上を保証したとしても、それはその者のみを救ったに過ぎぬ。
 世の中がこうなって、あそこの彼女がこうして全裸で繋がれているっつー現状は『結果』であって、是非もなし。
 この3つを切り分けて考えることこそが、世の中を『見聞する』ということ……ナナ、分かっておくれよ。
 お前さんがああならないように、の……」

それでも、世間知らずのエルフの少女の身を案じる気持ちはスナにはあって。
この剣呑な世界で、いまだ学足らずのまま彼女が危険に巻き込まれることは、スナの望む展開ではない。
いわゆる『目覚めが悪い』というやつだ。

「……さて、と。おい、そこの雌奴隷。もう一度使わせてもらってええかの?」

そんな心配事もほどほどに切り上げて、スナは枷に繋がれた全裸の奴隷に優しく声を掛ける。彼女から反応はない。
スナは構わずズボンを下げ、片手でペニスを扱きながら、もう片方の手で小銭を取り出し、傍らの皿に放り込む。

「俺もまた、俺に今できることをするだけじゃよ……ククッ」

ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市場」からスナさんが去りました。