2018/06/05 のログ
■カルニーツォ > 少女の冷たい怒りを含んだ瞳に男の口元が緩む。
「おや?何か気に障ることを言っちゃったかな?
ああ、君に躾ができないお母さんのことかな?」
さらに火に油を注ぐようにへらへらとした様子で問いかける。
その様子は朽ち果てた銀貨を見ても変わることなく、
ただマントの下で手にした薬がより強いものへと変わる。
「ウーン、このお店でお買い物をしている時点で、同じ穴の狢駄と思うんだけどね?
で、お嬢ちゃん、そういう風に人を傷つけよとする時には自分も傷つく覚悟をしないと
いけないって習わなかったかな?...あ、そうだったね、そういう躾はされるはずなかったね?」
ヘラヘラと笑って話ながら、少女の風上に移動すると、手にした薬瓶の中身を足下に溢す。
無色透明な液は地面に水たまりを作る間もなく蒸発すると、
無色無臭の気体となって少女の方へと漂っていく。
一呼吸でも吸い込めば神経を冒し、体を痺れさせる毒の風となって。
■ヒマリ > 目を細める。
何か視えたわけではない。直感的なもの。
「――――貴様、人間ではないな」
母親を強調されて怒気が強まったことは否めないが、警戒も強まったせいだろう。
女なら、年が若ければ尚更、どこで足元を掬われるか分からない国である。
不遜ではあるが、少女は脈絡なく打ち首にせよと命じる暴君でもない。
奴隷二人を首尾よく準備した店主が、さすがに今の少女に受け渡すことが出来ずか、馬車へと商品を届けたようだった。
そしてそこで、王族は少女の異変を知ったらしい。
命じられ、護衛となる数人が駆け寄ってくる。
―――少女の背に近付いた時。
その者たちが不自然に膝をつく。
「盛ったのか。無関係な者が通る場で」
揺らめく白衣の袖で口元を覆うと、まるで嫌悪感を露わとするような言葉を呟いた。
実際には無関係な者は己にとっても無関係で、どうでもよい。
だが、それを躊躇しない者を相手にするには準備不足である。
片手、五行の印を結ぶと足元に白い影が浮かぶ。
それは虎の姿となり、少女は白い毛を掴んで背に乗った。
少女が男を忌々しそうに睨みつけると同時、虎は下半身をぐっと下げ、勢いをつけて馬車まで駆けていく。
ほんの一瞬の出来事であり、特に魔力の乏しい者には少女が白煙に包まれて瞬時に移動した様に見えるのだろう。
消えゆく虎から馬車へと乗り換えた少女に急かされ、馬車は来た方向を戻っていく。
残された護衛を回収する気がないのは少女なのか王族なのか、どちらにしても男の言う通り。
同じ穴の貉。――――此度の騒動にロクな者はいない。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市」からヒマリさんが去りました。
■カルニーツォ > 「おや、よくお分かりで」
初めて男の表情が変わる。悪魔にしては魔力に乏しいという弱点も、
人の世に紛れるには長所となる。
それにも関わらず正体を見破る相手の力量は認めなければならない。
「なに、命に別状はありませんよ.四半時もすれば子どもでも元に戻りますよ」
表情から笑みは消えぬものの、心の中で舌打ちをする。
次なる薬を手にするも、素早く印を結び、瞬く間にその場を逃れられれば、
人並み以下の体力しかない身にはそれ以上追いかけることもあたわず。
「丁度いい実験材料が手に入ると思ったのですが、残念、残念」
苦笑を浮かべながら、その場を立ち去る馬車を見送ると踵を返し、そのまままた人混みへと姿を消していく.
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市」からカルニーツォさんが去りました。