2018/06/04 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市」にヒマリさんが現れました。
■ヒマリ > 奴隷市が開かれている通りを馬車がゆっくりと進む。
窓のカーテンを少し開け、中から市の様子を見つめているのはライムグリーンの瞳であった。
その表情は苦々しい。否、苦々しさをどうにか平常心で隠そうとしているのだが隠しきれていない。
此度少女がこんな場所を訪れることになったのは、隣に座る王族から上等な奴隷を数人買ってやると言われたからだ。
少女の呪詛により、彼にとって目障りだった存在が床に臥せた―――褒美に。
たしかにこの辺りは奴隷の中でも見目が整っていたり、高貴な立場だったのだろうが
落ちぶれた結果ここで売られていることが分かる者だったり、値段の張りそうな商品ばかりである。
問題は少女が屋敷の使用人ですら奴隷を使わない方針だということ。
そして、それを言えないままに来てしまったこと。
「…………」
話したこともない、実物を見たこともない実母を思い出す。
彼女もこうして売られていたのだろう。
もっとも、もっとみすぼらしい姿で。痛々しい状態で。
「………男を。男が欲しゅうございます」
母に少しでも遠い存在を。
せめてもの妥協で呟くと、了承を得て一人、馬車を降りる。
上客だと思った奴隷商が異国の衣を着た小娘を確認し、怪訝そうな顔をしたものの、すぐに営業スマイルへと戻る。
小娘は気にするそぶりもなくゆっくり、ゆっくりと歩いて品定めを始め。
ご案内:「奴隷市場都市バフート 奴隷市」にカルニーツォさんが現れました。
■カルニーツォ > 「さてと、丁度いい出物がいるとよいのですがね...」
人混みの中、黒ずくめの男が店先に並べられた檻の中を覗き込みながら、通りを進んでいく.
ここに来たのは新しい淫具や媚薬の実験台にと、色事とは縁遠そうな奴隷を探すため。
弱り切った娘やすでに色事に関する調教を受けたものでは物足りないと、
なかなか眼鏡にかなう商品が見つからず、溜息をつく.
「やはり直接調達するしかないですかねぇ?」
ぼやきながらさらに道を進むと、このあたりには珍しい女の客を見つける.
好奇心から、その店に近づき、店先で奴隷を検分する風を装いながら耳をそばだてる.
しかし、なかなか商談が始まる様子もないため、店主にこちらの希望の品がないかと声を掛ける。
「ご主人、強情そうな女奴隷はいませんかね?騎士様や貴族様といった上玉は望みませんが、
冒険者崩れの体の頑丈そうなのが欲しいんですけどね。
ああ、間違ってもミレーのようなひ弱そうなのはだめですよ?」
そう言いながら、目の前のミレー族の娘の入った折をつま先で軽く蹴る
■ヒマリ > 消去法だ。
これといって目ぼしい商品が見つかるわけもなく、少女の瞳は空を切る様なもの。
しかし目を掛けてくれている王族に奴隷を避けているなどと
妙な勘繰りをされても面倒だし、適当に見繕うのが賢い選択だろう。
打算に満ちた少女が不意に空虚な視線を向けたのは、己とは違い奴隷を買い慣れているらしい男だった。
「………」
べつに自身に掛けられた言葉ではない。事情も知る由はない。
だが、店主への言葉と檻を蹴る仕草だけで、少女にとって男は不快な存在となる。
「そこの」
だから男と店主の会話にわざと割り入るような形で、指を差す。
檻の中の男二人。青白い肌に金糸の髪と、似た容貌の男が身をすり寄せあっている。
まったく好みではないのだが、他には女ばかりなのだから仕方ない。
「そこの寄り添ってる男二人を連れて行く。すぐに用意しろ」
いかにも時間がないといったイライラした様子で店主に命じる。
今はミレー族に無礼な態度をとった男の邪魔を出来ればそれでいい。
■カルニーツォ > 店主と話をしていると急に先ほどの少女が話に割り込んで来る。
別に腹を立てるほどのことでもない。金をたくさん、早く払う客の相手を先にするのは当然のこと。
それでもここに似つかわしくない少女に好奇心を持った男の生来のいたずら心が
ムクムクと頭をもたげてくる.
少女の方に向き直ると、ニコニコと店主に負けない笑みを浮かべながら声を掛ける.
「お嬢ちゃん、ここにお人形でも買いに来たのかな?
お母さんから、人の話に割り込むんじゃありませんって教わらなかったかい?
...ああ、ごめんごめん。この程度の躾も出来ないようなお母さんだったのかな?」
貴族が婢を孕ませるのはよくある話。カマを掛けるつもりで
わざと幼い子どもに話しかけるような口調で話しかける。
「ほら、これであめ玉でも買ってお家にお帰り?」
不機嫌そうな少女の姿を見て、さらに神経を逆なでするようにポケットの銀貨を指で弾くと、
ニヤニヤしながら少女の様子を覗う.
■ヒマリ > 最初に感じた男への嫌悪感は些細なものであった。
王国に住めば、物同然の扱いを受けているミレー族など吐いて捨てるほどいることが分かる。
だから多少のイラつきはあろうとも、少女自身ありふれた怒りだとも感じていたところである。
――――男から投げ掛けられた言葉を聞くまでは。
「今、何と?」
ざわ、と肌が粟立つ怒りに硝子玉の様な瞳が冷えきる。
弧を描いて地面に落ちた銀貨を踏みつけ、憤懣をぶつける様に力を込めると――
銀貨は数十年雨にでも晒されたかの様に朽ちていく。
「女の肉を貪らんがために奴隷を買い付ける賎陋な者が、私に口を利くのか。
その首、惜しくないのだな」
関わりたくないと空気を読んだ店主が、少女の機嫌をこれ以上損なわないようにと男二人の鎖を解きに行った。
剣呑な雰囲気だろうが、片方は飄々としていることもあり、店主以外に慌てる者はまだいない。