2018/02/11 のログ
■ヤシュタ > 周囲は猥雑な享楽と熱気に満ちていた。
泣き悦ぶ奴隷の、はたまた、人なのか家畜なのかすら曖昧な動物めいた嬌声は
どこからともなく聞こえてきて、もはや空間の雑音のひとつに過ぎない。
そんな中。
娘は、とある奴隷の競り場であるテントに面した路肩の暗がり。階段に座り込んで。己が主を待っている。
時々、同行させられる。娘の主人は、奴隷を買いに出向くのに奴隷を侍らすのが好きなのだ。
競り場に消えた主を待ちぼうけて、既に一刻ほど過ぎただろうか。
きっと今、男は眼鏡に適った売り物の“商品価値”を試しているのだろう。
待てと言われれば、娘はただ待つだけ。寧ろ下手に動き回れば自分が売られかねない。
だから、襤褸の内側に表情のすべてを隠し、
狭い視界から、悪徳の栄えに賑わった通りに行き交う人々をぼんやりと見るだけ――だったの、だが。
雑踏は、娘の目の前で、俄に色むきを変えた。
あっという間に通りと――座り眺める先とを隔てる人垣がうまれる。
見えずとも判る。聴衆の囃し立てる卑しい言葉に、奴隷の公開陵辱がはじまったのだと
察する事が出来たから、娘は襤褸布を引き摺るように―…立ちあがった。
「――――… 。」
これが此処の日常。彼女を救出したがるほどに身の程知らずでは無いけれど。
それでも、少なくとも彼女と大して変わらない立場であるからこそ、
心穏やかではいられないから… 琥珀色は視線を逸らし。足は自然、人気の減る脇道へと一本折れて。
■ヤシュタ > やんやと喚く野次馬に背を向け路地に入り、足取りを緩める。
結局、道を折れたとて、――壁の薄いそこらの小屋からすすり泣きと淫らな嬌声は何処ともなしに鼓膜に届き。
客引きの奴隷商とすれ違えば、刺さるほどに凝視されているのがひしひしと判る。
自分の退避が如何にその場凌ぎであるかを痛感する心地。
佇もうにも… それすらも、舐めるような値踏みの人目に晒されているようで。
とはいえ、主が競り場から帰るまで、場を遠離れられる訳でも無くて。
「――――… ここは、何処に居ても、落ち着かない…。」
目深に被ったマントのフードの奥、…眉を寄せる表情。隠れた獣耳も悄気て伏せていたりした。
折角得た、待機場所を失った痛手を今更噛み締めて、ひっそりと溜息を落とし乍ら。
ふらりふらりと身の置き場を探して暫し過ごし――――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からヤシュタさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にエルフィリアさんが現れました。
■エルフィリア > 刀で斬って解決する話は、斬り捨てて終わるので実に楽。
そうは思っても、世の中には切って解決とはいかないお話も実に多く。
余計なのに絡まれぬようにと、これ見よがしに帯刀して虫除けをしつつもひとりで出歩く女性という事で向けられる視線は感じられる。
場所柄か、よからぬ感情を感じさせる視線も多く。それらを鬱陶しいと思っても、視線の主を斬り捨てて解決とはいかない。
「…………」
口元が不機嫌そうに引き締まり、足取りもやや早め。そんな感じで移動していても、奴隷や奴隷に使う品を取り扱う店が並ぶ通りに入ると足取りは遅くなる。
いかがわしい話ばかりが聞こえてくるこの都市の噂話が、噂話通りかそれ以上の光景。
公開実演とばかりに、様々な調教器具を路上でその身で強制的に味わされているうら若い女性。性奴隷としての使い勝手の確認とばかりに店先で輪姦されている少女。
奴隷としての調教中なのか、四つん這いで主人とおぼしき男に連れまわされている女の股間には淫具が突き刺さり蠢いているのが目に映る。
(あんなに大きなモノが……)
ちょっとばかり、顔が赤くなるのを自覚しつつも衝撃的な光景に思わず見入り。
お上りさんよろしく、視線をあちらこちらへとうろつかせながらゆるりと歩く。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にルシアンさんが現れました。
■ルシアン > 少女が周囲の刺激的な光景に目を奪われ、歩いていれば、ほんの少しでも気を取られてしまうはず。
そんな間の悪いタイミング、丁度道の向こうからやってきた怪しい黒フードの姿――とはいえここの「客」たちは皆似たような姿であり、違和感はあまりないのだが――が、不意にゆらりとよろめいて。
すれ違うはずだった少女へ軽くぶつかってしまいそうに。
「……っ、と。すまない」
小さく言葉を発し、そのまま立ち去ろうとする姿。
ただ――もしかしたら、少女には見えたかもしれない。黒いマントが翻った一瞬、それをまとった人物の他に、もう一つ。
小さな人影のような姿が、その中にあったのを。
「………」
すぐに翻ったマントは元通り。外から見れば、特に違和感もなくなって。
辺りの様子を伺いつつ、歩み去っていこうとする黒マントの男。
気になるなら追いかける事も出来るだろう、が―――