2017/03/06 のログ
■ネス > ...なんか言った?
(アヤメの呟きはネスの耳には聞こえなかったのか首を傾げながら訪ねる。
道中、誰もネスに声を掛けないのはネスの殺気もあってのことだろう)
アヤメ、ね
お腹、空いてるでしょ?
ご飯食べに行きましょ!
(名前を聞けたことが嬉しかったのか少女の顔を浮かべ、そのまま奴隷市場から少し離れたところにある喫茶店へと共に入っていく)
■アヤメ > 「ううん、なんでもない」
彼女に恨みを零した処で、環境は変わりはしない。
折角自分に楽しみを見出してくれた彼女に、嫌な思いをさせるだけだ。
だから、言葉を飲み込み、ただ歩く。やがて奴隷市場を抜けて、市街のほうへ。
ふと、彼女の告げる言葉には一瞬目を丸くした後、首を横に振り。
「あ、いや、その、だ、大丈夫、だから……」
少女が食事を拒否した理由は、ようやく慣れた凄惨な食生活が再び辛くなってしまうから。
今真面な食事をすれば、戻った後で与えられる物を受け付けなくなってしまう。
それ故の固辞だが、しかし何よりも、くぅ、と鳴る腹の音が雄弁だった。
久しぶりに、ちゃんとご飯が食べられる。それは、元料理人の少女には強すぎる誘惑で。
結局、引っ張られるままに喫茶店へと入り込むと、周囲の客に白い目で見られながら、小さくなって席に収まった。
奴隷が店を使うことなど想定していないからか、店主も給仕も、きっと困惑気味だったことだろう。
■ネス > 何食べるー?
(メニューをアヤメに渡し「なんでも好きなもの、好きなだけ食べていいわよ?私の奢り!」と告げ、自分もメニューに目を落とす。やがて、周囲のアヤメへ向けられる白い目に気づきそれがどういった意味を持つのかわかり、ネスは立ち上がった)
...この子がお店でご飯を食べることがそんなにおかしいかしら?
今この子は私の同伴なのだけれど、もし異論がある人間がいるならば....
(静かな声で、暗く店内に響く声。続けてネスは「ここで、奴隷よりも悲惨な未来を与えるわよ....?」とニヤリと口角を上げ、鋭く尖った牙を見せた)
■アヤメ > 「……それじゃ、パンのミルク粥……ある、かな?」
彼女の言葉は嬉しいが、極限の生活で随分と食が細くなっている。
その上で、美味しいと思える食べ物といえば、お粥くらいしか想像できなかった。
ただ、今はちゃんと味がついてきたもの、と言うだけでも感動できるはず。
やがて彼女が、衆目の視線や気配を察したのか、立ち上がって声を上げる。
その様子を見たからか、冷え切っていた少女の心に僅かな温かさが芽生えた。
「ん、わ、私は気にして、ないから……えっと、あり、がとう。
そんな風に、私の為に怒ってくれる人……初めて、かも」
わずかに声が湿っぽくなり、目元が潤む。
それを隠すように目元を拭うと、長い事忘れていた笑顔を、向けてみようとして。
しかし、突然上手に笑えるはずもなく、出来たのはぎこちなさの残る笑みだった。
■ネス > そんなものでいいの?
まあ、それが食べたいならいいけどね
(きっとアヤメの暮らしは相当辛く厳しいものなのだろうと、少し胸が痛むが、それを悟られないようにと自分もアヤメと同じものを注文した)
あなたが気にしなくとも私は気にするわ。
(ぎこちない笑顔を見せるアヤメを見て少し冷静になったのか再び椅子に座る。しかし、周りの客たちはネスから一瞬発せられたさっきに怖気付いたのか店から逃げる客もいた)
■アヤメ > 「ん、今お肉とかを無理に食べると、多分食べきれないし、後で戻しちゃうから。
だから、お腹に優しいお粥を、ありがたく食べさせてもらおうかなって」
元々は饒舌な少女だ。彼女の優しさに触れて、少しだけ心を許し始めると、言葉数も増える。
彼女が同じものを頼む様に、気を使わせてしまっただろうかと少しばかり煩悶しながら、身を縮めた。
「ん、私の為に、君が敵を作っちゃだめだよ。私に、そこまでの価値はないから。
……私のせいで、君が怪我したなんてことになったら、申し訳ないし、さ」
だから――と言葉を繋げようとした所で、ふと気づく。そして、少しばかりの逡巡ののち。
「……私も、君の名前知らなかったね。教えて。宝物にするから」
また明日から奴隷に戻るけど、彼女のことは忘れないようにしよう。
そう、内心で決意しながら、彼女の名前を胸に刻もうと問いかけた。
■ネス > そっか。
まあ、無理して食べても仕方ないものね
(よしよしとアヤメの頭を撫で、店員が持ってきたミルク粥を見れば意外にもしっかりとしたもので少し驚いた。こんな店でこんなしっかりしたものを食べれるとは...)
敵、ね。
私は敵だらけだし今更1人2人増えたところで何も変わらないわよ
それに私は死なないし、怪我もすぐ治っちゃうから
(試して見せるように手元にあったフォークで思い切り自分の腕を引っ掻く。しかし、傷口は数秒としないうちみるみる治癒し、傷跡は少しも残らなかった。怖がらせてしまうかもしれないと、一瞬思ったが、この様子なら大丈夫だろう)
私の名前?
宝物にしてくれるの...?
ありがとう。
私の名前はネスよ
(心を許してくれたアヤメに飛び切りの笑顔を見せれば自身の名前を口にする)
■アヤメ > 「ん、カチカチのパンと薄いスープしか食べてないから、うれしいよ。
おかゆだけでも、今の私にとっては手の届かないごちそうだから。」
少女がどんなに稼いだところで、このような喫茶店に入れることなど二度とない。
全ての儲けは奴隷商が持っていくし、奴隷の首輪をはめた者など、普通は相手をしないのだ。
今回は、裕福な身なりの彼女が隣にいることで、貴族の道楽かと思われてるはずだ。
目の前、己の腕をひっかく彼女の様子には目を丸くするが、やがて治ってしまう様子に胸をなでおろす。
怖がるよりも驚きが強く、ぽかん、と彼女を見て、そして。
「す、ごい、ね。びっくりしちゃったよ……?」
こんなにやさしい彼女が、怖いはずがない。既に少女は、彼女に確かな好意を抱いている。
こうまでしてもらって、という恩義の念に、彼女の愛らしさへのひとめぼれが混ざったかのような、そんな思いだった。
やがて、給仕が近づいてきて、皿を机の上に置く。やってきたパン粥は予想以上のものだった。
ミルクでしっかり煮込まれたパンは柔らかく、そしてほのかな故障の香りと辛さが舌を楽しませる。
ミルクも濃厚なコクと温かさで少女の体を満たし、わずかに入れられてるだろう砂糖の甘みがパンの塩味を際立たせていた。
一口食べると、それだけで目に涙が浮かび、二口、三口と食べ進めると、ぽろぽろとこぼれて止まらない。
味があるとは、温かいとは、こんなに素晴らしいものだったのか、という感動と、食べ物の有り難さが、何よりも染みた。
「ぅ、ん……おいしい、おいしい、よぅ……とっても、とってもっ……
んっ……ネス、だね……ありがと。君のお陰で、少しだけ、奴隷じゃなかった頃に、戻れた」
そのまま少しずつ、ちびちびとたべすすむ。それこそ、名残惜しいといわんばかりに。
彼女と別れればまた奴隷に戻るのだから、と何度も自分に言い聞かせながら、必死に楽しみから思考を外す。
だが、彼女との時間は、そのような努力を水泡に帰すほどに、嬉しくて、楽しかった。
■ネス > ふーん....そんなに食糧不足にも見えないけれど...
やっぱり、ここは人を人と扱わない街なのね
(肘をついて店の窓から街を眺める。もちろん普通に生活している人間もいるし、貧民街ほど廃れている訳では無いだろう。だとすればアヤメや他の奴隷たちの食生活などに関する貧相っぷりは汚い大人達の悪意によるものだ。ネスにはそれが堪らなく許せなかったのだ...)
ごめんね。
ここだけの話、私魔族なの
(驚きでポカンとした顔を浮かべるアヤメを見て微笑み、アヤメの耳元でそっと囁いた。彼女はきっと自分の正体を知っても大丈夫だと理解した上で明かした。もしここで騒がれたりすれば流石に面倒くさいが、心配する必要はないだろう)
もう、そんな泣くことないでしょー?
大袈裟なんだから...
(よしよしと何度もアヤメの背中を擦りハンカチで涙を拭ってやる。たったこれだけのことで涙を浮かべ、そして名残惜しそうにミルク粥を食べるアヤメにネスは「助けてあげたい」という気持ちを抱いていた。妻と出会って生まれた良心は、辛く苦しい生活を強いられている人達へ向けてきたが、それは本当にその人達のためになっているのかと、自分に言い聞かせてはいたが...、いつの間にかネスは声出していた)
ねぇ、アヤメ。
貴女、メイドにならない?
■アヤメ > 「ん、旦那様は、美味しいもの、食べてたけどね。私達奴隷は、パンがかみ切れればいい方だったかな。
そう、だね。ここの人たちにとって、奴隷は同じ生き物じゃないんだと思う。じゃなきゃ、簡単に殺したり、酷い事したり出来ないよ」
少なくとも、少女の飼い主である"旦那様"は、食べるのに困らない所か、それ以上の暮らしをしているはず。
そして奴隷達は、仕事を得なければ餓死するまで、という追い詰め方をされているから、食事も当然微々たるもので。
だからこうして、一人分の食事を食べられるという機会すら、一年近く経験していないことだった。
会話を続けていた最中、彼女がこちらに顔をよせ、こっそり秘密を打ち明けてくる。
それには少しだけ驚いたが、騒ぐようなことはしない。最早魔族でも人間でも、少女には関係ないのだ。
あるのは、奴隷かどうかと、客かどうか。それ以外の判断基準はとうに捨て去っている。
「そっか。でも、うん、怖くないよ。ちょっと安心したし」
彼女が襲われなさそうなことを確信し、安堵の嘆息。
食事への涙もようやく収まり始めて、彼女のハンカチを汚してしまったことに引け目を感じながら。
「……私、こうなる前は料理人を目指していたから、ちゃんとした料理を食べられるのが、嬉しくて。
きっと、このパン粥の味は死ぬまで忘れないよ。ネスに御馳走してもらった、私の最後の、ヒトらしい食事だから」
そこに浮かぶのは諦観。だから、その後の彼女の言葉には、反応すらできなかった。
ただ、茫然として、唖然として、そして何度も口を開いては閉じた後で、咳ばらいを一つすると。
「……それは、その、私には、過ぎた言葉だよ。
私にそこまでの価値はないから、だめ。君に、そこまで背負ってもらったら、だめ、だから」
そう告げながら、寂し気な笑みを浮かべる。助けてほしいけど、素直に言えない。
彼女にそこまで背負わせちゃいけない。そんな思いが邪魔をして、少女は踏みとどまってしまう。
ただ、何度も、何度も、視線を向けようとしては、そらして、思いを悟られないようにして。
その必死さは、むしろ懸命に、この境遇から助けてほしいと、彼女に訴えかけていた。
■ネス > そう.....
(アヤメの言葉を聞くととても胸が痛む。チクチクとトゲが刺さったかのようなそんな感覚。誰がこんな街を作り市場を作り同じ人間を売り物にして物のように弄ぶような風習を作ったのだろうか。もしそんなやつが目の前にいたら、ネスは我を忘れたかのように怒り狂い、その者を殺しているだろう)
良かった。
大抵の人は皆、このことを知ったら怖くて逃げるんだけれどね
(苦笑いを浮かべながら頬を描く。この街には魔力を感知するような人間は少ないのだろう。人間でごった返しているこの街に魔王がいれば大騒ぎになっているだろうし、奴隷を連れてご飯を食べていることがほかの魔族に知られたりすればそれはそれで面倒なのだが、今更気にすることもない)
料理人、かぁ...
私はアヤメの作る料理食べてみたいなぁ
(アヤメの切なげですごく寂しそうな言葉。最後という言葉を聞くとやはり、どうしてもこの地獄のような日々から助け出したいと心から思ってしまう。自分に出来ることはきっと山ほどあるだろうが、どれをしてあげるのがアヤメに取って一番力になるのだろう...)
....、アヤメ。
私は、背負うつもりなんてないわよ?
だって、アヤメが私の城に来て仕えてくれたら、むしろそれは私の力にもなるってことだもの。
(アヤメの心内に隠れた本心。助けて欲しいという感情は確かに感じた。それは読心術やそういった類の魔法を使わなくてもわかる。この子はとても優しい子で、きっと誰よりもここから抜け出したいんだと。ネスは綺麗な笑を見せ、アヤメに手を差し伸べこう言った。「私のお城に来て、料理人をしてほしいの」と)
■アヤメ > 「人が見捨てた私に、手を差し伸べてくれたから。
そこらの人がなんて言おうと、私はネスの味方になるよ。
奴隷だから何もできないけれど、信じることだけはできるから」
彼女はきっと、とても優しい魔族なのだと結論付ける。
非道に対して怒りを抱ける、そんなまっすぐな者なのだと。
やがて彼女の言葉には、嬉しそうに頷いて。
「私も、ネスに料理を振る舞ってみたかったかな。
これでも、各国の料理を作り分けられたんだよ?」
過去の栄光を言葉にしながら、作る笑みは寂寥が深く。
深く絶望に浸っていた影が、どんよりと滲み出ていた。
しかしそれも、続く言葉に打ち払われる。それは、己が欲していた言葉。
絶望から救い上げて、という言葉にできない叫びが、届いた瞬間で。
「……それは、えっと……でも、うぅ……わ、私、なんかを、拾って、くれるの?
あ、ぅ……どう、しよう……なんだか、その、色んな感情が湧いてきちゃって、言葉に、できない」
困惑と、歓喜と、そして何より彼女への強い思いを得ながら、少女は深呼吸を繰り返す。
そして、気分を落ち着かせると、逡巡の後に、小さく首を縦に振った。
「ネスのために、全部をあげる。私の全てを――命も、心も。
アヤメは、ネスの、メイドさんに、なりたい、です……!」
そう、小さく、しかし確かに宣言し、笑みを作ったその後に、力なくふらりと机に突っ伏した。
絶望から引き揚げられた途端、今までの疲労が全て帰ってきたかのような、急激な体の重さを感じて。
緊張の糸が切れてしまった体は、我慢することを止めて欲求を開放し、少女に強い眠気を生んだ。
「……ごめん、ね。なんか、安心したら……意識、落ちそうかも……」
そう告げると、かくん、と力が抜けたように、少女は意識を失ってしまう。
しかし、その表情は安堵と歓喜に満ち溢れ、安らかなものだった。
その後、少女を買い付けに奴隷証人と話をつけるならば、それはそれは、高い買い物になるだろう。
代わりに得られるのは少女の身柄と、少女が奴隷になる前に所持していた料理の道具、そして、少女の射精管理を解くための鍵。
それらをどうするかは、新しい購入主である、彼女次第なのだった――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からネスさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からアヤメさんが去りました。