2017/02/20 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にセラさんが現れました。
セラ > 戦争はいい。
負け戦はともかく、勝ち戦は実にいい。砦をめぐっての小競り合いなどで手にした人間の捕虜を、目ぼしい者がいないからと金に換えてこちらの懐が潤い。奴隷商人も安く商品を仕入れてにこにこ。
弱肉強食は世の摂理と、奴隷堕ちした捕虜達の行く末に少しばかり思いを馳せながら、この街らしく背徳的で退廃的な商品を売る店が並ぶ通りをゆっくりとした足取りで歩いていく。
買う価値があるような奴隷が売られてはいないか、調教用具で面白そうな新商品が店先に並んではいないかと、店先を眺め歩く。
王家の血筋。血統証明付きの入荷したての美少女奴隷。お手軽淫紋術式。調教済みの美少年。

「うむ。実に悪徳の街らしい」

うむうむと、並ぶ商品の数々のラインナップにここならではだと感想を抱きつつも。いまいち、食指が動くような物がないなとぶらつき。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にダンテさんが現れました。
ダンテ > この国に舞い戻ったのは、つい先日の事であった。
先の戦乱、と言っても既に1年を超える年月は経っているが、ともあれあの戦乱の直後に国を離れてから、戻ったのはこれが初めてだ。
そろそろ一度戻ってみるかと思っていたところで、いい具合に招待の護衛だの何だのの依頼が上手く繋がって、最後にこの奴隷市場までの隊商護衛の仕事へ到達した訳だ。

「変わってないなー……。いや、もしかしなくても激化してんのかな?」

依頼も終えて、いくらも温かくなった懐。その重みを認識しながら、懐かしき奴隷市場を行く。
まずは宿にでも行こうかと思ったのだが、しかし何となくうろついてみたくなったのだ。
その空気は、少年にとっては本当に心底懐かしい空気の一つであるのだから。
だから、相変わらずの最悪な街並みも、決して心温まりはしないけれど、それなりの感慨をその胸中へと去来させる。
少年もまた、相変わらずの仕草でショートソードを肩に担ぎなおしながら、道を進んで。
立ち並ぶ、あらゆる『商品』と『サービス』に視線を向けながらそうして歩いていたが、路地の角を曲がったところで――、

「おっと、すみません。」

誰かと肩がぶつかった。
人の量を考えれば、さほど珍しい事ではない。事ではないが、その相手は小柄な少女に見えた故に。
とっさにそんな言葉を向けてから、視線を改めて注ぐ。
すぐに、あれ?と首を傾げる事になる。
その姿には、見覚えがあったから。

セラ > ゆるりと散策するような無防備な足取りで、目を引く商品が何かないかと注意散漫に通りを歩く。
この街らしい商品が多種多様に売られてはいるが、どうにも目新しさが無いし、これはと思うような趣味に合う物もない。
掘り出し物のひとつでも見つけられればよいのだがと、視線を彷徨わせていたところで誰かと肩がぶつかり。

「ん? いや、大丈夫」

かけられた謝罪の言葉に、大丈夫。気にしなくていいと、言葉を返し。相手がこちらを首を傾げながら眺めてくるのに合わせて、何事だろうかと首を傾げて見つめ返し。
どこか、記憶に引っかかるものがあるなと相手の顔を眺め。
ここではないが、ここと同じように奴隷を扱ってたところで見たようなと首を捻りつつ、指先に引っかかる記憶の欠片を引っ張り出そうと、記憶を振り返り。

「ううむ? えっと、だ……だ?」

誰だっけ? 覚えがあるが、即座に出てこぬ記憶のもどかしさにぐぬぬとしながらも、この程度の記憶なら深い付き合いの相手では無かったはずと改めて相手の顔を見つめ。

ダンテ > 言葉が返って来る。声にも、やはり聞き覚えがある。
とても、魅力的な声だ。そうそういる声ではない。
見つめ合うような形で互いを認識し合い、そして互いに首を傾げ合うような形に落ち着く。
ただ、少年の方に関しては、しっかりと憶えているようであった。ただ、確信が持てなかっただけ。
だから、声を聴き、見つめ合えば、それは確信へと変じて。

「ああ、やっぱり。セラさん。――あはは、いや、うん、憶えてない?前も確か、奴隷市場だかで会った思う。俺、ダンテ。」

笑顔を浮かべる。喜ばしい、という感情の発露。
彼女の名を呼び、己を見て首を捻るその様子に少し声を出して笑ってから、更に言葉を続けて最後に名乗る。
元気のよい笑い声。しかし、それはコロコロとどこか鈴がなるような声でもあって。
喜色にほんのりと赤らむ頬。同じく紅い唇は、うっすらと三日月のような弧を維持して。

「まぁ、ちょっと話しただけだったから、憶えてなくても無理ないかなぁ……?」

そして、少しだけ残念そうに眉をハの字にして小首を傾げて見せる。
口元には笑みが残ったままである。

セラ > 互いに見つめ合い、首を傾げあう。
そんな、ちょっとした奇妙な状態で先に記憶をしっかりと掘り返した相手の言葉に、記憶が引っかかり。連鎖的に記憶がよみがえる。

「あぁ! どおりで憶えのある顔だと。久し振りだな」

喉につかえていた物が取れてすっきりしたような気分で、満足そうに笑みを浮かべてうむうむと頷き。
残念そうに眉を寄せて首を傾げられて、気まずげに少しばかり視線が泳ぎ。憶えている。思い出したと、忘れてないからと憶えてない事を否定するように手をひらひらと振り。

「ここも奴隷市みたいな場所だが。やはり、アレか。年若い男の子だし?」

観光地というには、ここは物騒である事を思えば。買い物に来たというのがすぐに思いつく可能性。
そして、この街で取り扱っているメインの商品を思えば少年が何を買いに来たのかという発想が行き着く先は言わずもがな。
しっかりと憶えていると主張するには怪しい記憶に突っ込まれるより先に話題をそらすべく、周囲の店先で売られている商品を横目に眺めながらこういうのを買いに来たのかと。

ダンテ > 暫し眉毛をハの字にしていたものの、彼女が己を憶えていたような事を言うと、ぱっ、とまた顔を輝かせる。
表情に満ちる喜色。目元口元、共に笑みが深まって。

「よかった!あはは、うん、いやでも、うん、嬉しいです。あらためて、お久しぶりです、セラさん。」

笑顔のまま頷いて、言葉を返した。長い睫毛が揺れる。
何だか気まずそうに手を振る彼女には、はい、と頷いて。一転、にこにこと機嫌よさげ。

「ですね。というか、まんま奴隷市場ですねー。あはは、いや、俺は今日は仕事帰りですよ。実は、ついこないだまで別の国にいまして。ちょうどここに向かう隊商の護衛についてきて、さっきようやく解散したトコなんですよ。」

彼女の問いかけには、いやいや、とこちらも彼女のように片手をひらひらと振って見せて。
肩越しに振り返るようにして己が今来た方向を振り返りながら、大雑把な事情を彼女へと説明した。
それからまた己も同じように、周囲をぐるりと見回して。

「いやー、まぁ、懐もあったかいので、そーゆーのもナシではないんですけどね。セラさんと逢わなきゃ、案外買い物してたかもしんないですが。けどまぁ、セラさんとこうして喋ってからじゃあ、もう今日は何見てもダメでしょう。」

また彼女に視線を戻しながら、ひょい、と肩を竦めて見せてそう続けた。
見劣りしてしまって、と。

セラ > 自分の言葉ひとつ。反応ひとつで、くるくると表情が変わる様は微笑ましく可愛い。
自分よりも背が高いが小動物的というか、あるいは人懐こい大型犬を思わせてくれる。

「この都市全体が奴隷市みたいなものだ。ここに来るような隊商となれば奴隷商人か?
解散したところで、そのまま商品にされなくてよかったな」

くすくすと悪戯めかせた笑いを忍ばせ、冗談めいて言葉を投げかけ。改めて、相手をじっくりと頭の天辺から爪先まで眺めて、見た目はいいし。意外と冗談にはなってないのでは、少しばかり真顔に。
男性味には欠ける気がするが、顔立ちは整ってるし、体つきもいい。
この街では、うっかりひとり歩きをしていたら翌日には奴隷として店先に並ぶなんてことは珍しくもない。
だが、隊商の護衛などをしていたのなら腕には自信はあるのだろうし、大丈夫なのかと悩む様子で首を捻ってから、売られてたら買えばいいかと結論を出して思考を止める。

「え? あぁ、うむ。その、なんだ……そう言われると照れるな」

やはり、男の子だしそういうモノを買いに来るかと、からかう様ににやつきながらふむふむと耳を傾けていたが、続く言葉に狼狽えて目線が泳ぎ。
自分の容姿に自信があるのは確かだが、だからと言ってこういう風に褒められると気恥ずかしく。微妙に相手から目線を反らしつつ、言葉を返し。何を買いに来たのだとネタにしてからかうつもりが、何か調子が狂うと息をつき。

ダンテ > 彼女の心配も他所に、少年は興味津々といった風情できょろりと、また周囲を見回す。

「ですね。いやー……ここまでくると壮絶ですね。世も末、って感じが割と漂って来ますねー。あ、はい。こう、絵に描いたような奴隷商人のオッサンでした。
って、あははは、そうですね。それは確かに思いつかなかったです。次から気を付ける事にしますよ。――と、ああでも、それならセラさんも気を付けないといけませんね。」

うーん、と首を傾げながら依頼主の事を思い出しつつ返答を向け。
しかし、心配の言葉が投げて寄越されると、一瞬キョトンとしてから、また声を挙げて笑った。変わらず、鈴が転がるような声。
声変わりの済んだ少年の声であるし、決して女性的な声と言うのではないのだが、どうにもそんな印象の声であった。
最後に、ありがとうございます、と付け加えて、少し頭を下げた。
笑顔は愉快そうなもので、更に先ほどより喜の色が深まっている。

「そうですか?セラさんの容姿であれば、言われ慣れているかと思いましたけど。
ふふ、うん、でも、照れたところも可愛いですから、良いものが見れて眼福です。――まぁ、その分さらにヨッキューフマンが溜まりそうですけど。」

照れる、との言葉には、また首を傾げて。不思議そうに言葉を向けた。
だがそれもすぐに、ニッコリとした笑みへと転じて。少しふざけたような色が声へと混ざるものの、変わらず真っすぐで素直な言葉を彼女へと向けた。
特に、最後に付け加えた言葉については、悪戯めいた色が特に濃い。しかし同時に、その言葉がやはり素直な心中である事を示すように、仄かな情欲もまた込められている。
逸らされた彼女の目線を追うかのように上体を動かして、彼女とまた目を合わせようとしてみたり、と画策しながらの言葉だ。
無論彼女がそれを避けようとすれば、それ自体は容易であろう。
また目があったのであれば、そこには弧を描く紅い唇と、薄っすらと紅を差したような頬、そしてやはり弧を描く双つの眼を飾る長い睫毛が、先ほどよりもやや近い距離に、見える。
そんな貌が、言葉を紡いでいる。そして、言葉が終わると、最後にチロリ、と他のどこよりも赤い、真っ赤な真っ赤な舌先が、弧を描く唇を少し舐めた。
てらり、と唾液の塗られた唇が、赤味を増す。

セラ > 「世も末と言うか、欲望の見本市だな。理性の虚飾を剥ぎ取った悪徳の都という味わいがあって、後ろ暗い欲望を満たすにはいいところだとは思うが。
誰か信用できる伝を介して受けたとかなら大丈夫だろうが、そんなに典型的な奴隷商人が相手ならそれぐらいの警戒はしておいた方がいいぞ」

なんというか、妙な艶があるし。場合によっては、その……掘られるかもしれないしな――と、のんきに笑う姿に余裕があるのはいい事なのか、悪い事なのかと息をつき。
なぜ自分が気をつけるのかと、首を傾げ。

「大丈夫、問題ない。こう見えてもわたしは強いからな。
この街をひとり歩きする程度、どうという事もない。少なくとも、そこらの相手ならどうにかするさ」

歩いていて下卑た視線を感じるのは珍しくないし、欲望を実践に移そうとする相手にあったことがないわけでもない。
だが、こうして無事だしと肩をすくめて自身の実力への自負を見せ。

「いや、もうちょっと欲望一直線な感じの相手なら相応に返すだけなのだが……
そういう風に持ち上げられて、褒められるのは……その、なんだ……察せ」

下劣な行動で欲望をぶつけてくるなら普通に叩きのめせばいいし、下世話な言葉をかけてくるなら遠慮もいらないが、素直な称賛を向けられるとやはり気恥ずかしさが先に立つ。
追い打ちのように照れて可愛いなどと言われて乙女的なあれこれを刺激され、薄っすらと頬を染めて目を合わせようとする動きから逃げるようにそっぽを向きながら言葉を濁し。
ちらりと、横目に様子を窺えば思ったよりも近い距離に見える艶を感じさせる顔立ちに、ちろりと舌先が蠢く蠱惑的な仕草。

「よ、欲求不満が溜まるというのなら……その、どうする気なのだ?」

目を惹きつける何かを感じて、少年の口元に吸い寄せられる視線。
なにか、淫魔の血でも引いているのではなかろうかと頭の片隅で妙に艶を見せるところに疑問を感じつつわざとらしく、怯えたように自分の身を自分で抱きしめてみせ。

ダンテ > 欲望の見本市という言い様には、なるほど、と頷いて見せる。言い得て妙である、と。

「あは。ほんと、ありがとうございます。
うん、ふふ、そうですね。セラさんなら、大丈夫そうだ。」

尚も心配の言葉を寄越してくれる彼女。
やはり変わらず笑って、しかしまた礼の言葉を続ける。
彼女自身の事については、大丈夫、と言われれば否定はしない。できる筈もない。故にそれにも、首を縦に振って応じるのだった。
ニコニコと、少年は機嫌よさげである。

「あはは、でも、俺だってセラさんの言う通りに男ですから。欲望、しっかり向けてますよ?」

察せ、と。
気恥ずかし気な彼女の言葉。応じるのは、鈴の転がる音。
愉快げで、とても上機嫌。そこには彼女を嘲るような、そんな気配はなく。ただただ単純に、楽しくて、嬉しくて、という色だけが充ちている。
否、違うか。それだけではない。確かにそこには、少年自身の言葉通り、欲望が滲んでいる。
言葉の終わり、最後に、感じませんか?と、確かめるような声が続いた。込められる情欲の色は、増している。
別段、魅了であるとか、そうした類の魔力や異能が乗っている訳ではない。それはただの声であり、言葉。

「やだなぁ、どうもしませんよ。そんなに命知らずじゃありませんから。」

すぅ、と。
表情も、声も、言葉も、何ひとつ変えず。しかし、少年は身を引いた。文字通り物理的に、少し近づけていた上体を後ろへ引き戻したのだ。
こちらに向いている彼女の視線を、引っ張るように、身を引く。
言葉もまた、引かれた身同様、怯えたような所作を見せる彼女を追い詰める類のものではない。
潔く、あっさりとしたもの。
だが、ちょうど言葉を追えて、三拍の後。

「――――でも、セラさんが望むなら、命、賭けられますよ。」

濡れたような黒い瞳が、彼女の紫の瞳をまっすぐに見つめていた。
長く豊かな揺れる睫毛に彩られ、弧の形に細められた眼の奥から、まっすぐに。
声に気負いはなく、ただそこには本気があった。
彼女を求める為に、求める事に、命を賭する、という意思。
まるでそれが当然の事であるかのように。
己が養母にも通ずる気配を持つ強大なる彼女を、組み伏せ、蹂躙し、凌辱せんとする為に、命を賭すと、そういう意思だ。
真っ赤な三日月が如き唇から、そうして言葉と意思は紡がれた。
情欲に、底なしの情欲に濡れた吐息を、存分に孕んだ声で。

セラ > 「確かに、欲望を感じないと言えば嘘になるが」

欲望が先に立ち。下心満載の口説き文句であるならば、かえって気楽に対応できる。欲望をしっかりと隠しているのか、制御しているのか。素直な称賛が先に来ている風に感じる言葉は久しぶりだからな、と向けられる情欲に意識を向ければその色が濃くなっているのは感じとれ。
しっかりと感じていると、問いかけに頷きを返し。

「命知らず……か」

どこまでこちらの事を察しているのか。見た目に騙され、ただの小娘と侮った対応をするわけでもなし。本人の善性によって、紳士的な態度を取っているのとも風情が違う。
少年の仕草に釣られるように、目線は動き。

「ふふ……。命を賭けられたら、わたしとしても真面目に対応するしかないが。
だが、欲望任せに蹂躙しにくるのでなく、普通に口説いてくる相手をいきなり殺しにかかったりはしないさ」

淫気だ、何だと能力によるものとは違う技巧による言葉と態度による艶の乗せ方。色の見せ方。
見つめてくる瞳の奥底を覗き返すように見つめ返し。その奥底に見える意思。あるいは覚悟の色合いに、耳に届く声や吐息に滲む情欲にふるりと身を震わせ。

「礼儀正しく口説くなら、礼儀正しく返事をするし。一夜の戯れを求めるなら、こちらもその程度に応じるさ。
力尽くで征服したいというのなら、相応に抵抗するが。あるいは、征服されてもよいと思わせてくれてもいいが。
こう見えても、存外乙女だからなわたしは」

最後には悪戯めかして乙女を主張しながら、間のはかり方だのが上手いし。生得的な資質だけでなく、実践で磨いた技術だろうなと惹きこむ仕草と艶の見せ方に少年の背景にあるモノを考え。

「愛が欲しければ命を賭けろ。欲を満たしたいだけなら、戯れてやる――といったところか」

さあ、どうしたい。どうであれ、受け入れて応じてやろうと両手を広げてみせ。

ダンテ > 返って来る言葉。
少女の形をした脅威から、返される言葉。
いずれも拒むような類のものではない。言葉そのものも、そしてそこに込められた意思も。
だから、少年は、少年の形をした情欲は、赤い三日月からまた言葉を返す。
両手を広げ、問いかけて来る彼女へと。

「だったら、全部欲しい。」

さらり、と。
本気の言葉が滑り出る。やはり気負いはなく。
笑みが深まる。
言葉が孕む意思、情欲、そして吐息と、喜色。
そう、喜色。悦びだ。
少年を観察し、考える彼女ならば、気付くだろう。
それは彼女の考える通り、経験によって、実践的に磨かれたものだ。生得的な資質に依存したものではない。
しかし、それは最早『技術』ではなかった。
それは最早少年にとっては呼吸に等しく、決して天然的なものではないにも関わらず、そこに少年の意志は介在していない。
だからそれは、技術というよりはもう、生き様。生き方そのものと言えるものであった。
そのように、歪められていた。そのように、造られていた。

「セラさんが、セラが、欲しいよ。うん、欲しい。だから、――うん、ぶらっと街でも歩いて、美味しいものでも食べて、一緒にお酒でも飲んで、仲良くなりたい。」

向けられる言葉は、素直だ。
変わらず、まっすぐなのだ。情欲の色をしっかりとのせて尚、その赤い舌と唇は、彼女は魅力的だと謳う。
それが故に、仲良くなりたいのだ、と。色や艶とは凡そ無縁とも思えるような、ある意味幼い口説き文句を、しかし照れた様子もなく紡いでいって。
だが、表情は変わらない。彼女が色と艶を認める、あの表情だ。
否、頬の色がまた少し赤みを増している。睫毛が、震えた。
そこでまた、数拍。たまった唾を音もなく嚥下する。喉仏が、静かに上下した。
そして。

「それから、グチャグチャに犯したい。犯してあげたい。」

変わらない調子でその言葉は紡がれた。

「力づくで、強引に、組み伏せて。抵抗も、反撃も、殺意も、何もかも、全部ねじ伏せて、蹂躙したい。凌辱したい。
それで、征服する。したい。そう、そう、命、賭けて。」

少年の頭が揺れた。小首を傾げたのだ。
瞳だけが、すぅ、と首とは逆に動いて、少し流し視るように彼女の瞳に対して視線を固定する。
全部欲しい、と。
その言葉は、やはりそのままの意味で。
愛を欲して、そして情欲の充足を欲して、そしてその上で、蹂躙と征服をも欲した。

「セラも、ソレが欲しそうだし。」

そしてそう、結んだ。
彼女もまた、それを欲していよう、と。
それは的外れな言葉かも知れない。彼女が自覚的か無自覚的か、という事もそうであるし、そもそもそうではないかも知れないのだ。
しかし少年は、迷いも疑いもなく、はっきりと断定する。
その傲慢さこそが、強欲さこそが、必要だと言わんばかりに。

セラ > 「全部、か。この欲張り者め」

どれか、ではなく。どれも。
返された言葉に随分と欲張りな返事を返すものだと、称賛の色合いで低く笑う。
返された言葉が孕む情欲の色合いに虚飾は無く、本気でそう思っている。
口説くに際して見せる艶だのなんだのは、先天的な資質を磨き上げて至った一つの粋。だが、至った頂がどこか歪なようにも感じられるのは、磨き上げた環境の問題か。

「そんな風に口説かれると、一緒に遊んで楽しんで、仲良く時を過ごすのも悪くないと思えるな。
そして、できるものなら――わたしを屈服させて、ぐちゃぐちゃになるまで犯し抜いて征服して欲しいかもとな」

口にして宣言された欲望の言葉。躊躇いの色もなく本気でそうしたいと思ってると感じられる蹂躙宣言。
ぞわりと、背筋を駆け抜ける雌として屈服させられるという被虐への期待と興奮。
情欲に濡れた瞳を向けて、小さく艶めく笑みを浮かべながら来るのなら来いと。全てを求めてくる傲慢さを称えて、受け入れる。

「ま、このまま路上でいきなり――というのは見せ物っぽいから、続きはまた別の場所を希望するが。
ダンテは、どういう風にわたしを犯して、征服してくれるのかな?」

どういう場所でどういう風にわたしを征服しにかかってくれるのか、男の。あるいは、雄の欲望をどのように見せてくれるのかと期待していると告げ。
誘うように、媚びるように下から覗き込むように上目遣いで少年の顔を見上げ。

ダンテ > 「それじゃあ、少しぶらっと歩きませんか?」

欲張り者は、ニッコリと微笑んだままそう返す。
どういう風に、と問うた彼女への、それが答え。

「この街じゃあいかにも落ち着かないですし、ちょろっとダイラス辺りまで出て行きましょう。
それで、美味しいものでも食べて、美味い酒でも飲みましょうよ。」

向けるのは、そんな言葉。
誰が利こうが、逢引の誘いであり、デートそのもの。
このまま悪徳の都で遊ぶという手もあるが、それよりは移動した方がよかろう、と。
ダイラスならばここから近いし、到着が遅くなっても、眠らぬ歓楽街もある故の提案。
文字通りの徒歩でなくとも、乗合馬車なり何なり使えば、まか構わぬだろうという、そんな様子。
誘うような、媚びるような、魅力的な目前の少女に笑いかける。
傍から見れば、微笑ましき少年少女のやり取り。

「で、その後郊外にでも出て行くか――、うん、そうですね、セラの家にお邪魔できるなら、それでもいいかも。
そこで、犯そう。ふふ、どんな風に、っていうのは、うん、ちょっとわかんないなぁ。」

しかし、そう思ってその会話を聞けば、その内容はいかにも狂気的だ。
この悪徳の都市にあっては、それはそうでもないのかも知れないけれども。
少年は、心底愉しそうに、愉しみであると言うように、彼女に言葉を返して。
そしてそっと、片手を彼女の方へと差し出した。

「その時セラが、一番イイように犯すよ。その時セラを、一番したいように犯す。グチャグチャに、踏みにじる。約束するよ。」

そんな言葉と共に。
彼女が少年の手を取れば、逢引の始まりだ。
それは、約束された死闘へとつながる、命を賭した情欲の道。

少年は朗らかに、傲慢に、強欲に、色欲満ちる微笑みで彼女を誘うのだった。

セラ > 「では、とりあえず。ダイラスにでも移動するとしようか。そして、まずは食欲を満たすと」

ある意味、非常に活気がある街ではあるが。のんびりとか、ゆっくりという表現が似合うようなときの過ごし方をするには向いていない。
少年の提案にとりあえずの行先は決まったと頷き。

「そのあとは、わたしの家でゆっくりと……か?
どのようにわたしを犯して、啼かせてくれるのか期待するとしよう」

少年の見せる色艶。それが表面的な物でないのであれば、色事に関してもかなり磨き上げられているのだろう。
それがどれほどのものなのだろうかと、期待に胸躍らせながら差し出された手を取り、囁きかける。

「うむ、それでいい。わたしをぐちゃぐちゃのどろどろに犯し抜いて、踏みにじってくれるといい」

少年の蹂躙宣言の誘い。朗らかながら、この都市らしい色に染まった笑みに対して、うっとりと蕩けるような笑顔を返して誘いに乗って、場所を移し変え。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からダンテさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からセラさんが去りました。