2023/05/18 のログ
ヴァン > 冒険者であれば青年の言葉に鼻白んだろうが、男も報酬ではなく魔物と戦うこと自体を目的として訪れていた。
被害者がいなくてよかったとの言葉に何度か頷いた。

「どうかな……王城の役人にも文官と武官がいるだろう。
騎士団は武官に相当する者が多いが、そればかりじゃ組織は回らない」

立場が上か、という質問にはこう言ってごまかした。
団長直属といえば聞こえはいいが、色々あって図書館に左遷もとい出向の身だ。
ナンバーツーのはぐれ者をどう評価すべきか、少し迷った後考えるのをやめた。
苦笑する姿に不思議そうに首を傾げる。

「とはいえ装備は消耗品だ。特に盾は攻撃を受け止めるものだから武器よりも早くガタがくる。
山脈か……竜系の魔物が一番だとは聞くが。さっきも言った通り、俺はその場にあるものばかり使ってたから、詳しくないんだ。
あぁ、そうそう……」

話の流れから、何かとの戦闘で壊れたのだろうと予想した。
魔物を素材とする装備にいくつか思い当たったものの、自前で素材を集めようと思ったことがないために中途半端な言葉に留まる。
話ながら思い当たることがあったのか、ぽんと手をうった。腰にさげていた打刀を両手で掲げた。
鞘を見ただけでも魔剣・妖刀の類だとわかる。

「この打刀……今の俺の相棒だが、九頭龍山脈にあるダンジョンで出会った。
このあたりにほら、地下図書院ってダンジョンがあるだろう?そこでテレポーターの罠にかかってね。
山脈のダンジョンにとばされて、色々あって手に入った。あのあたりは魔族もうろついているからあまりおすすめはできないが……
何人かでパーティーを組んで、討伐と迷宮探索をセットで行うのもいいかもしれない。
もっとも、自由騎士の仕事と兼ね合いをつけられるかはわからないが」

サウロ > 「そうですね。自由騎士団の方にも非戦闘員として事務処理などを担当している人もいます。
 王国騎士団でも……」

(そう言いかけて止まったのは、彼の言う通り武官の多い中でも文官と汚職に励む上の者が多かったためか。
 まともな倫理観と正義感を持つ者は王都から左遷され、あるいは危険な任務地へ飛ばされたりしていたことを思いだした。
 サウロもまたそのような現実に葛藤し、結局は騎士団から去った身だ。
 彼が曖昧に誤魔化す様子から、おそらく言いたくはないのだろうと察して、それ以上尋ねるのは止めておく。
 今この時、ひと時の縁で互いに己の身の上を語り尽くすことでもないのだろう、という分別なので、説明がなくとも気にしないだろう。)

「そうですね。絶対に壊れない武具なんてものは存在しないとはわかってはいるんですが…。
 ……────竜、ですか」

(候補として、考えなかったわけではない。九頭龍山脈に住まう竜種。
 あるいは北方の帝国領にある山にも竜種は棲むと聞いたことがある。
 とは言えその存在は強大で、サウロ一人で敵う存在とも思えない。
 不意に腰から持ち上げた彼の獲物を見れば、異質な雰囲気を纏うそれがただの武器ではないと気付き、食い入るように見つめる。)

「それは、ダンジョン産の武器ですね。不思議な力が宿っていたり、特性があったりすると聞いたことがあります。
 なるほど……ダンジョン同士のテレポーター。古い遺構なら、そういうのもあるんですね」

(ダンジョン探索を生業にしているわけではない為、冒険者ほどの知識がない。
 王都からは遠い九頭龍山脈へ行くには時間も費用もかかるし、それだけの為に仲間と共に向かうわけにもいかない。
 彼の言う通り、自由騎士に所属している以上、遠出をして迷宮探索を行うのは現実的ではなく、
 サウロはままならないと言った様子で眉尻を下げながらため息を吐いた。)

「どちらにしても、すぐに行動は出来なさそうです。
 こればかりは私事なので、皆に迷惑もかけられませんから。
 ……けど、冒険者のように、自由に旅をして、迷宮や強敵に挑むという生き方は、少し憧れます」

(表情を緩めながら、危険とは隣り合わせだけれども自由な生き様で活動する彼らを話題に出す。
 サウロには出来ない生き方だが、彼はそういう冒険者たちをどう思っているのだろうと首を傾げて。)
 

ヴァン > 言いかけた言葉が止まったので、焚火に向けていた視線を一度青年の顔へと戻す。
騎士風、というだけではなく、実際に騎士の経験もあったように思えたが、詮索はしない。
こちらが詮索すれば、青年もそうするだろう。

「竜だな。ワイバーンや各種ドラゴンの牙、骨、翼、鱗……
言葉が通じる竜と交流、商談?して、友好的に素材を得た、という伝承もあるな」

書物に記された伝承はどこまで真実かはわからない。まったくのでたらめかもしれない。
竜と相対するのは危険どころの話ではない。種によっては軍隊が必要になる。
青年の言葉にはゆっくりと頭を横に振った。

「いや……経緯はわからないが、誰かが置いていったらしい。
テレポーターも双方向なら助かったんだがね……ま、今の武器に慣れつつ、偶然手に入るのを待つのもいいんじゃないか」

己自身がこれまで武器にこだわらなかったためか、楽観的とも言える物言いをする。
青年の言葉から、自由騎士団もそれなりに多忙であることが伺えた。溜息をつく姿に軽く笑いかける。

「冒険者か……一時期似たようなことはやったし、今もギルドに登録してはいるが、歳をとると辛そうだ。
若い頃は賊を討伐するとか、お尋ね者を追うとか賞金稼ぎじみた事をしていた。少し、今の君に重なる所があるかもしれない。
屋外で長時間過ごすのは辛いな。一人ではどうも限界がある」

仕事柄、彼等と接する機会がないわけではない。過去と今を比べ、ゆっくりと言葉を選びながら紡ぐ。
外を眺め、陽が落ちる時刻と雨模様を計算し、渋い顔をした。いくつか呪文と思しき単語が漏れる。
どうしたものか、と呟いてからゆっくり立ち上がる。

「どうやら陽が落ちるまで雨は止みそうにないな。思ったより風の流れが弱い。
北に四半刻ほど歩いた所に村があるから、そこに向かおうと思う。脚力強化の呪文をかければなんとかなるだろう。洞窟よりはいい。
君はどうする?ここで会ったのも何かの縁だ。スタウト2杯もらえれば君にも呪文をかけられるが」

ただで人に呪文をかけるほどお人よしではないが、さりとて破格ではある。
もっとも、青年が洞窟で野営することに慣れていれば、この場に留まるのもおかしなことではない。

サウロ > (竜人種という存在だろうか。ミレー族やエルフ、ドワーフといった種族なら知っているが、
 竜人種には未だ出会ったことがない。王国には様々な人種がいるのでいたとしても不思議ではないが、
 出会える確率はといえば低い方だろう。竜人種でそれなら、語れる竜と知り合うのも難易度が高い。
 遠い何処かの国では戦士一人が竜種を狩って生計を立てる、なんて話も聞いたが、
 いささか現実的ではないのでそれこそおとぎ話や吟遊詩人の作り話に思える。
 そんなことを考えつつ、楽観的な慰めの言葉には微笑を浮かべながら「そうします」と頷いた。
 罠に掛かって飛ばされて無事に戻って来れているのだから、やはり彼は相当な腕前なのだろうと思いつつ。
 続いた言葉には、面食らったように目を瞬かせた。)

「神殿騎士で、冒険者も兼業している、ということですか?」

(彼が若い頃していたことは確かに今のサウロも経験していることだが、一人と集団とでは話も変わる。
 神殿騎士に所属して冒険者もやる、というのが、サウロの堅い思考では思い浮かばなかったのだろう。
 成程、彼が同じような騎士の身分でありながら柔軟な思考や戦術、行動を取るのも、
 若い頃の経験が影響しているからなのかと目から鱗が落ちる心地だった。
 そこで外に視線を向け、立ち上がる姿を見れば、サウロも同じように立ち上がった。
 十分とは言わないが濡れて冷えた体も温まった。)

「流石にここで寝泊まりしたら風邪を引きそうなので、僕もご一緒させてください。
 強化の術は扱えないので、かけてもらえると助かります。お代は、スタウト二杯で」

(彼が提案した破格な代価にありがたく頷き、すっかり打ち解けたのか一人称も無意識に変わって。
 湿ったまま生乾きのジャケットを軽く羽織り、鎧を手早く身に着けてから、剣盾を装備し直す。
 焚火を消し、準備を整えたら術を掛けて貰って、風と雨脚の弱まっているタイミングで洞窟を出よう。
 強化された脚力、あとは若さと体力と持久力で彼と着かず離れずの距離を走り抜けながら、
 日暮れ前には雨の中、村へとたどり着く。
 約束通り術の代価に強めの黒エール(あるいはラガーか)を奢り、
 断られなければ宿で夕食も共にしてから、互いに別れの挨拶を交わしただろう────。)

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からサウロさんが去りました。