2023/04/08 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にカジャさんが現れました。
■カジャ > ――メグメール自然地帯の何処かで1頭の狼が姿を消した。
1頭の野生動物が姿を消す事は自然界において不思議な事ではない。
冒険者に倒れされか、他の獣に狩られたか、或いは同族同士の縄張り争いで敗れたか、と理由は幾つも考えられる。
しかし、今宵姿を消した狼はどれにも当て嵌まらない、強引に当て嵌めるとしたら、他の獣に狩られたが近いだろう。
黒く大きく広がった染みに飲み込まれた哀れな獣。
鳴き声をあげる隙さえ与えずに黒い染みはカジャと呼称される呪詛の塊である何かに飲み込まれ、摂りこまれ、カジャの新たな肉体の設計図と変えられる。
飲み込まれ、飲み込んで、数分。
黒い染みが周囲の雑草を飲みこみながら湧きあがり、揺れて歪んで暴れながら生み出した肉体は犠牲となった狼の姿。
ただ体毛などなく、背から側面部は微細なヘビの鱗に包まれ、腹部や間接は柔軟な肉と皮膚で形成され、本来なら眼がある部分はただ落ち窪み、代わりに鼻筋を上がったところである額に該当する部分に真っ赤な目玉がギョロりと蠢いている。
そうして特殊な方法で『形』を得た呪詛の塊は直ぐにも大地を踏みしめて歩き始める。
ここ自然地帯ではなく、なるべく街道の近くへ、餌となり贄となり交尾相手と母体となる獲物を求めて、始めて得た四肢に慣れないか、多少ふらつきながら向かっていく。
その足跡に黒い粘液を残し、その足の裏と地面に粘液が残す糸を引く薄気味悪い橋を残し、1頭は真っ直ぐにと森の中を進むのだった。
■カジャ > 最初は言葉通り生まれたての獣の歩みのようにフラリ、ユラリ、ユラリとおぼつかない足取りだあったが、次第に大地と接する足裏は確りと大地を踏みしめ、左右に揺れている身体はしっかりと大地を踏みしめた事でブレる事無く、真っ直に。
のそり、のそり、のそりが次第にタタッ、タタッと軽快なリズムへと変われば呪詛の塊は1頭の狼の魔獣となり、森の中を進む速度は飛躍的に上がる。
駆ける速度は疾風の如くにまで至る。
足を取られそうな濡れた大地も物ともせず、行く手を阻む木の根を踏み砕き、駆け抜けていくその道は魔獣の額に輝く赤い眼の残光が示すだろう。
こうして新たなカジャの亜種が生まれ、呪は多種多様な方法で撒き散らされていく、幸いな事に今はまだ魔獣は獲物を探す段階であり、獲物が得られていないという事は呪は振りまかれずにすんでいるという事である。
もし仮に呪詛が呪が巻かれていたら辺りに瘴気が漂う事になっていただろう。
そうなればまずは植物から、次に虫が枯れて死んでいく。
オオカミの肉体を得たカジャは今のところ其処までの力は無い。
だからカジャはそうあるために贄を探し彷徨うのだった………。