2022/04/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > ―――死にたいなんて、一度も思ったことはない。少なくとも本気で思ったことなど。
むしろ、死にたくないとそれしか思えない――
のに。
何故今、およそ助けも期待できない樹海の奥で血を流し満身創痍で勝てない敵と対峙しているというのか。
オークが出る、とは納得ずくだ。だが、変異種だとまでは。
親が狩られたかどうかで、まだ幼生のオークが縄張りから弾かれて人里まで迷い出てきたという。それを駆除するというパーティクエストであった。
幼体であれば、討伐の難易度はさほど高くもない。3人もいれば充分多いくらいだ。と編成された剣士と弓士と回復術師の俄か仕込みパーティ。朝方に落ち合い昼日中の樹海の奥。オークの出没地点に辿り着いたまでは良かった。
けれど、まさか幼体とは思えぬ膂力と幼体ならではの素早さ、成体以上の知能、刃物のように鍛えた爪――といったはぐれオークに、口先だけの腕なし剣士が瞬殺されて首が転がり。そこからすべてが狂うなんて予測は……していなかった。
まだ経験の浅い15歳の女弓士は恐慌状態に陥り矢を乱射して悲鳴を上げて一目散に逃亡した。
乱れ飛ぶ矢をかわして身を伏せたもので逃げ遅れ――その後は弄ぶように顔と云わず腕と云わず足と云わず胴と云わず全身に鋭く手入れした爪で裂傷を刻まれ、失血し貧血状態で生殺しに遭いながら今に至る。
対峙した魔物が、確かな知性――悪知恵と云えるもの――を宿した双眸を可笑し気に光らせ逃がす気も殺す気も生かす気もない、玩具を見る眼差しでこちらを観察していた。
「――ッ! ………っ動きも、お見通しって訳……?」
ワンステップで跳躍、肉薄しスタッフを得物としてオークの右脇を狙ってスイングするが見切ったように軽くかわされる。
まるで格闘術を覚えた野生動物のように厄介な動き。力が足りない分スピードと急所を突く攻撃で魔物と渡り合っていた特攻型ヒーラーには相性最悪な相手だ。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にワルシュミスタさんが現れました。
■ワルシュミスタ > ボウ・・・とわずかな音立ててオークと女性のいる場所のほど近くに出現した黒檀の扉。
風もないのにカタカタと音がする看板に書かれた文言は、内容こそいささか不穏なれど誰かが中にいる事は確実であろう。
もっとも中にいる女には外の喧騒など知った事ではなく「あら、今日はやけにうるさい事・・・」程度の認識でしかなかったりするのだが。
■ティアフェル > 生地を裂いて流れ出た血が白衣を赤く染める。真っ赤に、まるで血で彩られていない場所を失くすように魔物の爪が白衣の胸元を大きく裂いた。辛うじて直撃をかわして、鎖骨辺りでぱっくりと切り裂かれ傷口と肌が露出する。
「――ッ、遊んでくれてんじゃないわよ……!」
浅裂きを繰り返しては、飛び散る鮮血を面白がっているような悪質なオークにいい加減募った苛立ちに声を荒げ、スタッフを振りかぶり、側頭部にヒットさせた、瞬間――、
「え……? ――きゃあぁ!!」
不意に出現した奇妙な扉に刹那意識を持っていかれ、その隙を突かれて幼オークに引き倒されてまた新たに悲鳴が上がり、それは黒の扉を伝ってその奥へも響いたかも知れない。
■ワルシュミスタ > 「・・・?」
扉通した音の異常さに、おかしい・・・これは喧噪などどいう生易しいものではないと思い当たると、魔法・・・正確には魔道具の力を借りたかりそめの部屋から鍵を使って扉を開け。
まず目に飛び込んだのは、異様な変態遂げた恐らくはオークであろうバケモノと、それに押し倒された金の髪の・・・もろに性的対象ストライク圏の女性。
一切の迷いなく外へと飛び出た女は、僅かに眉をゆがめたまま布地面積は十分だが、あまりにも体のラインにピッタリなため服の用途を果たしていない白いドレスでずかずかと近づきながら右の人差し指を曲げてから口元に当て。
「ピーーーーーーー!!!!」
かん高い音の指笛を吹き。やや間があって森のあちこちから獣・・・おそらくは狼の唸り声が周りから聞こえ始め。
女性にとっては救いの神というより、厄介事を増やしてくれた疫病神と映るだろうか。
■ティアフェル > 「っふ、っく……んん!」
小柄なくせに膂力の半端ない魔物に引き倒されて、締め上げられないようにスタッフで制しながら藻掻いていたのだが。
そんな時、騒ぎが耳についたか開く扉の向こう。
そちらへ意識を向ける余裕もないまま、地べたでもみ合う攻防を続行していた。
しかし、扉から出現した大柄かつおうとつの激しい体躯の女性が近づいてくると、
「……!?」
なにごと、とオークとそいつに押され気味なヒーラーも一瞬視線を奪われ。
そうかと思えば続けざまに起こる異変。
扉から出現した女性が樹海の森閑を高い指笛で劈くと、
「――?! い……いーやああぁぁぁぁああぁぁ!!!」
そこかしこから響いてくる獣――狼の唸り声に早々と恐慌状態に陥る女。
突然今日イチの悲鳴を上げ、無我夢中で身体の上に圧し掛かっていたオークを全身の力で押し飛ばし、
「いぬー!!」
狼だけど、どっちでも苦手。怖い。個人的に恐怖の大王。
扉もやたら肉感的な女性もオークも全て振り切って唸り声から逃げまどい始めた。
■ワルシュミスタ > 恐慌に駆られて逃げだそうとする女性・・・しかしその行く手にも、別方向見ればそちらにも・・・狼は牙をむいてたちふさがっていて。ガタガタと震える女性の肩を何者かがつかんだかと思うと、ぐいぐいと扉に向かって引っ張ろうと。
その相手を見定めようとするなら、運動苦手とするせいでゼイゼイと荒い息ついながら肩を抱く大柄な女の姿が映るだろう。
「あ、あの・・・いきなりその態度はあんまりではございませんか!?わたくしこれでもあなたをお助けしようと思ってましたのに!!」
大きく息つきながら一気にまくしたてる女の剣幕は女性にどう届くだろうか。
まあその間にも変異オークと狼の臨時連合軍はじりじりと2人に迫りつつあるのだが。
■ティアフェル > 恐怖過ぎていく当てもなくダッシュで逃亡していたが、
「ぎゃあぁぁー!! こっちにもー!! いやああぁぁー!!! 取り囲まれたー!!」
何せどちらに行ったら正解か分からないまま駆け回っていたもので、四方八方狼まみれになっていることに、叫んだあと、気絶しそうになり。
狼に牙を剥かれて、卒倒しかけていたのだが、
「きゃ…?! え、え…?! なに、なに…んんんっ??」
怯え切っていたその時、肩を掴まれてどこかに引っ張り込もうとされていて、驚いて涙目になりつつ。振り返ると肩を掴むのは自分の目線より40センチくらいは上にあろうという大柄な女性で。
彼女の言に耳を傾ければ、ようやく状況を理解し。
「た、助け……?! え、そうなの? で、でも、お、おおかみ、狼が…!! てか、どこ行くのー!? そっち?! そっちは大丈夫なの?! 犬とか狼とかいない……?!」
良く分からないが、突如出現した扉から現れた不可思議な女性。扉の方へ誘導しようとしているようだが、果たしてそこに犬はいないのか、と確認する最重要事項はそれだった。
いないと云われればその瞬間、全力疾走で扉に駆け込む。
■ワルシュミスタ > 女性が扉へ向かおうとするのなら、その行く手にも狼どころか変異オークが待ち受けており黄色い牙向いて笑みのようなもの浮かべているだろう。しかし女は一向に慌てた様子もなく。
「あちこちにいる・・・から好都合ですのよ、わたくしの使う呪文には、ね?」
そう答えると、おもむろに呪文の詠唱をし始め。夜の森に響くそれは女性の普段聞いているだろうものに比べるとややいびつに聞こえるやもしれず。その間にも包囲の輪は狭まっていき、ついに二人の体に狼の鼻先かオークの手が届かんとしたところで。
「さあ、皆様!存分に御覧なさいませ!!
<あの物は敵>ですわ!!」
女がおもむろにオークを指さしたかと思うと、女性の体を文字通り横抱きにしながら扉へとダッシュ。連れ去られかけている女性の目に映るのは、女と女性には見向きもせずにお互いに対する敵意むき出しにしながら牙と爪をふるうオークと狼の群れの姿だろう。
■ティアフェル > とにかくイヌ科のいない世界へ!と扉に向かって猛ダッシュしていた足が急ブレーキを踏む。
オーク、そうだこいつがいた。威嚇されて慌てて停止し、
「ぎゃーっ、こいつのこと忘れてた…! 八方塞がり!……って、ん? んん……呪、文……?」
見た感じでもすでに一般的人類には見えない謎の美女から、自分には意味の良く分からない科白が聴かれる。
理解できないが、何か策があるような雰囲気なのは察した。
そして聞き覚えのない発声での詠唱に入る様子をスタッフを握りしめたまま、無意識に息を詰めて聴き入り、その間にも包囲網が狭まってくると、小さく震えあがりながら、ぎゅっと覚悟するように目を閉じ。
「――っ?! わ、ゎゎっ…!?」
オークへ向かって毅然と命じるような声を放ったかと思えば、横抱きにして運ばれていた。
一瞬で流れて行く視界に映る、諍い合う獣と魔物。一瞬でターゲット切り替えが行われている様子に、彼女が命じていた言葉を想起させる。
魔術的働きかけを行った結果なのか…と察している内にもう扉に中にいるのだろうか。
■ワルシュミスタ > こんな緊迫した状況にもかかわらず、女性抱えたままわざわざ真鍮らしき金属の鍵取り出して扉を開け、中に滑り込むようにして入り込んでから急いだ様子で背中で扉を押し付けるようにして閉め。少しの間、ガリガリとひっかくような音していたがじきに収まり。
どうやら危機は去ったようだと確信すると、まず女性を床に降ろしてから、へたりこんでゼーゼーと息吐きつつ。
「ちょ・・・ま・・・とりあえず・・・そちらに菓子等ございますから、適当につま・・・わたくしは・・・息を整えてから参りますので・・・」
今日一日で運動神経と体力をフルに使ったであろう女は、床に手をついて心底疲れた様子で。
指し示された方には空のカップに少し冷めた様子のティーポット、それとチョコクッキーが白いテーブルの上に乗っており、椅子も一脚手つかずで空いており。
■ティアフェル > 器用だね、と自分を抱えたまま鍵で扉を開ける動作に感想を抱く。
口にしたら邪魔をするような気がしていたので控えたものの。
首尾よく扉の中に入れてもらえば、外から扉をひっかくような爪音に、ひーっと血の気を引かせるものの。
それもややあって静まると、ほーっと胸に手を当てて安堵の息を吐き出し。
そして、床に降ろしてもらったはいいけど、そこで手をついて満身創痍気味な様子に。
こちらもこちらでオークに襲われて裂創各所で衣服もところどころ破けてぼろっちいが、彼女のように差し迫ってはいないので、その傍らに屈みこむと、
「や、うん…ありがとう……? それより、大丈夫……? なんかすみません……ごめんなさい……めっちゃわたしのせいよね、申し訳ない……」
よしよし…とでも云いそうな雰囲気で。彼女の背中に掌を当て擦りつつ、示された方向にティーセットが用意してあるのを見ると、後で一緒にいただきます、と一礼し。