2021/10/16 のログ
メイラ・ダンタリオ > 月明かり 松の幹が長く伸びる先だけが松の林を立てている
まるで五指を広げて手を伸ばすがごとく それをメイラは眺めながら
メイラも又、半魔と蔑まれる一族の内なら、その月明かりで浴するのを心地よく感じるだろうか

日向の中で浴びる血糊が髪の先まで滴る、まるで違う世界を重ねて味わうような時間も
月の光で冷やされるように固まっていくだろう血糊の濃さが黒くなっていくのも
どちらもメイラなら、ダンタリオならば同じように口元には三日月が刻める

刀を携えて当てもない、誰もが知るような自然地帯の一本松の丘
メイラは三日月の笑みのまま 時折草の香を感じる風で背中を覆うような量の膝丈の黒髪が
ふわりと浮き上がる中で刀の柄 大刀の白灰色の糸巻き柄を撫でる

やがては身体は存分に月の光を浴びて、三日月のそれがまだ頭上で鋭さを失わないまま照らすならば
メイラはそれを今一度じっくりと眺めるように顎を持ち上げている
そして気が済んだように、一本松の丘を離れると どこに潜んでいたのか
辺りの魔性や賊の目にも止まらずに過ごしていた 影にとっぷりと身を鎮めるような色の黒馬にまたがり
蹄の音と共にその場から立ち去っていくだろうか

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 一本松の丘」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都の北部に広がる喜びヶ原との異名を持つ広大な平野。
樹々が折り重なる森林地帯にて野営を行なう冒険者一行が存在した。
ギルドで同じ依頼を受けた彼らは全員がパーティに属している訳でもなく、
共通目的の為に一時的な協力関係にある、レイドと呼ばれる即席チームを組んでいた。

そのため、火熾しを終えて歩哨の順番を決めた後は各自気儘に思い思いの時間を過ごしている。
同じパーティの者達は装備や荷物を融通し合い、道中で気が合った若い男女は木陰にしけ込み、
そうでない者達は自身の天幕で食事を摂ったり、装備の点検をしたり、早めに休んでいる事だろう。
冒険者は個人事業主で、得てして個人主義だ。個人が何をしようが無関係な他人が口を挟む事はない。
そんな仲間と呼べるかも怪しい同業者達を横目に中年冒険者が焚き火の前で革袋の酒を呷っていた。

「オークの討伐、か……。
 キング級やジェネラル級の変異種が発生していないと良いんだが」

彼らが受けた依頼は近隣の村々を襲い、略奪や時には娘の誘拐に至るオークの討伐。
経験者が多いチームではあるが、連携も取れない状況では全員が無事に帰れる保証は何処にもなく、
何事も起こらなければ良い、と熟練冒険者にあるまじき臆病とも取れる思考を抱きつつ酒に口を付けた。

トーラス > 其の侭、森の中でも警戒態勢は続き――――
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  川が流れ、木々が茂り、所々に岩場や切り立った崖もそそり立つ、陽が傾くにはまだ数時間ほどある、午後の樹海の片隅で。
 その女は、死に物狂いで爆走していた―――

「い゛い゛や゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛!゛
イヌ! イヌイヌイヌイヌー!!!」

 ザザザザザ、と藪を掻き分けつつ絶叫し滂沱を小雨のように散らしながら猛ダッシュする背後には、けたたましく吠えたてながら追いかけてくる野犬が三頭。
 野生動物に対して、そんな風に出くわしたら一目散に背中を向けて泣き叫びながら猛ダッシュなんてすると――獲物として十割方追いかけられますのでやめましょう、という好例。
 頭では対処法として最悪と分かってはいるのだが……怯え切った心がとにかく離脱させようと走らせてしまうようだ。
 倒木を飛び越え、大樹を避け、泉を迂回し、全速力で突っ走っているが、二本足のこちらに対し相手は四本足の瞬足。
 単純な身体能力も野生の本能も森林の間に間を駆け抜ける能力の差はとにかく大きい。
 逃げ切るのは容易ではなく、徐々に距離が詰められて行き、一層悲鳴が大きく迸った。

「いや! いや! いやああぁぁぁぁぁ!!! こーなーいーでー!!」

ティアフェル >  脚力の差を知恵で補ってどうにか空けていた多少の距離も、獣にギアを上げられて勢いよく地を蹴りバネのような跳躍を持ってして進撃された瞬間、ないものになった。

「っきゃああぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」

 どっ…と一頭の野犬に肩口から引き倒されてほんのり色づく紅葉を揺るがすような悲鳴が迸る。後続の二頭も好機と捉えて一斉に跳びかかり、犬ダルマと化した女の、断末魔に似た喉が引き裂けそうな叫びが連続して鳴り渡った。

 死ぬ――これは死ぬ――錯乱状態に陥りながらも、死の壁と直面して足首や腕に食らいつかれ、何とか頸動脈など急所を守り、痛みと恐怖の渦中、とにかく握ったスタッフを揮い我武者羅に抵抗。
 ギャン、というスタッフで打たれて響く鳴き声と低く吠えたてる声、犬恐怖症である女の悲鳴が混然と絡み合っていた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にタツミさんが現れました。
タツミ > 女性の叫びと犬の咆哮が響く中、草叢をかき分けて飛び出す影が一つ。
状況を確認し、一気に犬に襲われている女性に近づくと。

「はぁぁぁぁっ!」

長めの棍の中ほどを槍のように持ち、繰り出される刺突が、野犬の頭を打ち据えて。
女性の近くから吹き飛ばすと、女性を庇う様に立ち野犬たちに向かい構えなおす。

二人の周りを警戒するように唸りながらいまだ襲い掛かろうとする野犬を見て。

「『炎』」

少年が利きなれない言葉をつぶやくと、棍の先端に火が燃え上がり。
ブンっと一振り、火を恐れる本能からか、野犬は踵を返し逃走を開始する。

「…間に合ってよかった、大丈夫ですか?」

ハードレザーに冒険者がよく来ている少し丈夫な副、背丈ほどの白い棍を持った黒髪、黒目の少年が、息を吐き声を掛ける。

ティアフェル >  三頭に群がられては堪らない。狩の巧みな山犬三頭、見事なチームプレイを発揮して襲い掛かられては一瞬でズタボロに成り下がる。
 身体の前面を死守するように亀の子のように背を丸めて防御体勢を辛うじて取りながらも、腕や脇腹、足……あちこちに咬みつかれて痛みと犬への恐怖で気が遠のきそうになるのを堪えて反撃の手立てを必死に模索する、悲惨な局面。そんな折に――

「っ……?!」

 不意に茂みを揺らして響く誰かの足音と気配、それを認識したかどうかと云う頃には、丸めた背面に乗っかるようにして襲い掛かっていた野犬がふっ飛ばされて感じてた重みが一気に消える。
 唐突な出来事に処理が追い付かない中さらなる追撃。
 未だ犬に圧し掛かられながら辛うじて挙げた横目にごぅ、と閃く焔が映る。
 ほんのりとこちらにも炎の熱が感じられた次の瞬間にはもう、怯えた啼き声を立てて火棍に打ち払われるように遁走する山犬。そして。

「………え、あ……?」

 服は一部裂けてボロボロ、髪はぐしゃぐしゃ、あちこちに咬み痕を引っ付けて顔には涙の痕と云った控えめに云ってボロカス状態で顔を上げる女の顔は、見知らぬ相手からすれば犬に襲われて頼りなく泣き叫んでいた娘にでも見えるかも知れない――ひとたび本性が垣間見られればゴリラだったが。
 それは、唖然とした今の表情からはまだ読めないはずで。

タツミ > 少女の状態を見て、安堵と心配が同時に浮かぶ。
命が助かっている事への安堵。
その傷と服の状態などへの心配。

「悲鳴が聞こえたんで、急いだのですが…森の中で、方向が少し判り辛くて遅れてしまいました」

そんな言葉の後で、少年は背負い袋の上に丸めてあった毛布を少女に掛ける。
その顔は複雑な表情を浮かべて、最終的には申し訳なさそうな顔に落ち着いた。

「その、怪我とか…結構酷そうですけど、すいません、薬草くらいしか持ってなくて」

少女の前にかがみこみながら、更に申し訳なさげに顔を変えて。
腰にあった布で、少女の顔を拭き始める。

ティアフェル >  助かったと感じたと同時に目に映ったのは見知らぬ東国風の……体格はいいが青年と云うには少々顔立ちに幼さを残した少年。
 犬に散々咬みつかれて、逃げる途中や引き倒される際に木っ端や土くれに塗れてしまい薄汚れた女はそんな惨状へ気づかわしそうに声を掛けてくれる彼に、何度か目をぱたぱたと瞬いて見上げてから。

「あ、や……そんなそんな、駆けつけて下さりありがとうございます! お陰様で助かったぁ~……。
 いや、それにしても……ぼろっぼろだな、わたし……」

 まずは助けてもらったことへの礼、わざわざ樹海を分けて駆けつけてくれたことを心底感謝して深々と頭を下げ。
 そして毛布を肩に掛けられて、「毛布が汚れちゃう」と少々慌て。

「ん-ん。大丈夫……急所は無事だし、これっくらいどってことないわ。――わたし、ヒーラーだから……こんなのちょちょい…っと……」

 嘯くように口にしながら薬草、と気を利かせてくれる科白にふる、と首を振り。腐っても冒険者の端くれでヒーラーの身の上。
 汚れた顔を拭いてくれる手にくすぐったげに肩を揺らして、ありがとうと小さく笑った後で。
 軽く目を閉じてスタッフを取り出し己へ向けて詠唱を口ずさむと、淡い光を杖先から産み。それに包まれた箇所から咬傷や創傷が癒えて消え失せ。

タツミ > 今さっきまで野犬に襲われていた割には、明るくしっかりした受け答えをする少女を見て。
心が強いのだなと感心しつつ。

「ヒーラー…あぁ、治癒の術が使えるんですね、それは良かった」

腰に布を戻して、自分に治癒術を掛ける少女を見つつ。
治癒系の術は、どの属性だったかをふと考え、今は傷が治っているのだし問題ないかとその考えを一旦停止。

そして、周りには他の気配がない事をふと疑問に思い。

「すみませんが、もしかして一人で此処まで?」

大半のヒーラーはパーティーを組むのが普通だと思っていたので少し驚きながら訪ねる。
と、いうか…この少女、武器は一応持っているけど、防具らしい防具を付けていない事に気づき、更に驚きが増していく。

ティアフェル > 「うん、そうなの。助けてもらったし怪我とか病気の際には今度はわたしが助けにいくよ。何もないのが一番だけど、何かあればお気軽に!
 そうそう……あなた名前は? わたしはティアフェル。よろしくね」

 自分より少しばかり年下に見える少年ににこにこと親し気に笑いかけて。すっかり傷を癒した後は払える木っ端や汚れをぱっぱと払い落し、乱れた髪を簡単に纏めて直して、乱れた衣服を整え。
 彼に掛けて貰った毛布を丁寧に畳んでどうもありがとうとお返ししつつ、問われた言葉にこくりと首肯して。

「そうよ。わたしこれでも冒険者なの。ここいらは樹海でもまだ浅瀬だからね、今日はソロ活動中です。そういうあなたもお一人ですねえ、ここで会ったのも何かのご縁――ってか、犬が怖いのでもしも宜しければ、ぜひ、あの、ご一緒してくださると……なんて……」

 うっかり野犬の生息地に踏み込んでしまった大の犬嫌い。なるべく狼、野犬の出没区域は避けていたつもりがリサーチ不足で恐怖体験してしまい、遠慮がちながらもご同行を願うという冒険者としていかがなものかと云う体たらく。

タツミ > 「あ、すみません…名乗るのが遅れて、僕はタツミといいます。
ティアフェルさんですね、よろしくお願いします。
そうですね、治癒が必要な時はお願いします」

名乗られれば丁寧に一礼を付けて、名乗り返す。
真面目というか律儀というか、そんな性格の様子で。

畳まれた毛布を受け取って、背負っていたバックパックを降ろし結びなおしながら。

「僕としては同行するのは問題ありませんが…依頼かなにかでしょうか?」

応えながらバックパックを背負いなおして。
浅い場所で出る魔物や動物などを思い浮かべながら、頷きの後で首を傾げる。
さすがに、攻撃力がどうみても低そうな少女を放置するのは自分の精神的に無理だとの判断はあったが、相手も何らかの理由がなければここにはいないだろうという事から、質問につながったのだ。

ティアフェル > 「タツミ君? 東洋の人かな? っふふ……礼儀正しいんだねえ。
 向こうの人は控えめで律義な人が多いよね。
 あ、ティアでいいよ。役に立てることがあれば呼んでー。犬から助けてくれたんだからッ」

 一礼を受けてこちらも軽く腰を折っておく。外見的には少年に見えるので至って気さくににこにこと笑みを浮かべ。

「いいのね! ありがとう! よっしゃ助かったぁぁあー! 犬が出たらこう、迷わず君を盾にしてしまうようなわたしだけど、赦してくれるかしら…?!
 ――あ、えーと今日は依頼じゃなくってポーションの材料探し……薬草を採取しに来たのよ。
 タツミ君は? どうしたの?」

 装備からして前衛系に見える彼に向って初対面にも関わらず盾(犬のみ)に、と云い出す、恐怖骨髄に入るほどの犬嫌い。
 樹海へ入った理由を答えては、ぽん、と見た目はさほど大きくはないウェストバッグを叩く。魔法が掛けられていて見た目の容量よりも中には多く物が入る仕様のそれにすでに採取した薬草は収まっていて。
 ついでに彼がここへ用事が合ってきたのか否かを尋ねてみた。

タツミ > 「では、ティアさんで…近くにいて間に合ってよかったと思います。
大きな悲鳴だったので、浅い場所で出ない様な強力な魔物かと驚きましたし」

そういって苦笑しする。

「もしかして犬が苦手…いえ、恐怖症とかですか。
僕は採取依頼です、たしか薬に使うキノコとか集めてくれというもので、一応集め終わって戻る途中でしたけど」

バックパックに括り付けた革袋をとって、真っ赤なキノコを取り出して見せる。
依頼にキノコの名前は載っておらず、色と特徴、形などが詳しく乗っていたらしい。

薬の知識のないタツミ走らないが、このキノコ…特定の薬に混ぜると性力増強の効果が。
そして特定の薬は、所謂媚薬で…たまに秘密裏に集めたい人間が真実を混ぜた依頼を出すことで知られていたり。

ティアフェル > 「ほんとにね! もう怖過ぎて死ぬかと思った……走馬灯が過るところだったよ……。
 っは、ということは結果的に命の恩人的な……ありがとう、本当にありがとう、非常にありがとう、そしてありがとう」

 命の恩人、とまで云ってありがとうの連呼。物のついでに、彼の手をぐいっととってぎゅっと握って謝辞を表しておこう。
 ――死にかけていたなんてことは冗談みたいなけろっとした態の女であった。

「………………。だって怖いんだもん……」

 ぼそ、と気まずげな犬恐怖症。日頃から『ワンコロごときで情けない』と評されまくっているためにどこか据わりの悪そうに目を泳がせて。
 それから、採取と聴いて同じ理由ということでいくらか興味を惹かれたように取り出して見せてもらった茸を覗き込んだ。
 薬師には及ばないが一応基本的な薬剤やポーションも精製する職業なので。その茸の効能は一応存じ上げており、「あー…」と何とも云えないような声を洩らすと。

「お盛んなクライアントねえ……」

 頬に手を当てて微苦笑気味に肩を揺らした。