2021/09/10 のログ
ロイス > 森の中、羊皮紙と下敷きを器用に使い、男が一人書物をしている。
ただ集中して書くのではなく、時折周囲を見渡して、何かを確認している。

「"暴れ牛"の生息数は例年通り……
餌となる植物も不足はしていないので、単位期間の間に問題が起こる見込みはなし。
但し、ゴブリンの生息域が近くにあるのが懸念材料である……と」

今回の仕事は……というか、今回の仕事も儲からない仕事であった。
内容、魔物の生態域の調査だ。
冒険者と言えば、魔物退治……というのが一般的なイメージである。

しかし、見境なく魔物を退治した結果、生態系が崩れたり、もっと強い魔物が現れたりする事も多い。
故に、魔物を敢えて討伐せず、魔物の生態系を探るという仕事が産まれているのだが……

「うーん、目が疲れてきた……」

とにかく、目を酷使する。書き物の為に近くを見て、数を遠くから確認するために遠くを見るのダブルパンチである。
おまけに、森の中であることに代わりはないので、常に警戒も怠れない。
これを後3日4日続けないといけないとなると、うんざりしてくる。
おまけに、この仕事の性質上、戦闘は推奨されないので、その分"命の危険がない仕事"として報酬も安い。

「もうちょっと上げてくれないかなあ、報酬。
一応、保存食とか入れても黒字だから良いけどさあ……」

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からロイスさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 丘」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 空に雲一つない月夜。
自然地帯の奥にある丘は、時折森を抜けてきた風が丈高い草を揺らして、月明りの下波立つように騒めく。
風が収まれば、虫の音が喧しい。時折夜行性の動物がだろうか、草を揺らす影が草原を駆けて行くと一瞬途切れるが、すぐに合唱は再開される。

そんな、喧しい筈なのに不思議と耳心地の良い音で満たされたその丘に、森から姿を現す人影ひとつ。

「――…」

草原に踏み入れて辺りを見回す、月明かりに照らされたのはエルフの女。
何の影も見当たらないことに満足そうに笑みを浮かべると、丘の頂のほうへと昇って行く。草を掻き分けている筈なのに、不思議と大きな葉擦れの音はしない。それでいてするすると登る足取りは、弾んでさえ見えただろう。

「♪――――♪♪」

虫の音さえも遮らないその足取りが、やがて頂へ辿り着く。
足元へ荷物を降ろすと、緑の色濃い風を胸いっぱい大きく吸って、大きく伸びを。

「はぁぁ~……きもちいい」

吸った香りも心地よく疲れた身体に吹く風も、虫の音も葉擦れの音も、その姿勢のまま十分に満喫してから両手を降ろし、腰を降ろす。
足を投げ出すと、そのまま大の字に寝転がった。

昼間から薬草採取やら地形探索やらで自然地帯を動き回って、森に慣れている身といえど流石に草臥れた。
見るでもなく目に入る真っ黒な夜空にちかちかと星が瞬いて、吸い込まれそうなその景色の中、虫の音が耳に染み入る。

「ああん……サイコー…」

ぐぅ
と密かにお腹は鳴るが、花より団子、より今はちょっとだけ花を選びたい気分。