2020/08/30 のログ
アネラ > 「はい。魔力で工作するくらいのものって思って下さい。それくらいのが一番わかりやすくて近いかも」

あくまでそのものはそのもの。もし、物の有り様を、永遠に根本から変えようとするならば、些細なものでも莫大な代価を支払うことになる。
目の前にやってくる顔、その。えと。太陽が目の前にあると目がくらむというか。
その。可愛い女の子がすぐ近くにいるのは照れる。とっても。ああ、どうしたものか。

「あはは。永続だとお高いですよー。それに一晩用だと、すぐ僕を呼べないとだめですよー。
ですから、日々のご飯をちょっともらえるなら、生きていくにはいい代価です。
ちょっとちゃっかりものですからね。挨拶一言でお金もらえるくらい手軽ですよ」

今まで会ったことのないような、明るさの塊に戸惑うところはあるものの
やっぱり、とても気持ちがいい。明るくてすっぱりした声。市場でもないのに、こうして気持ちのいい声。

「はい……」

それ以上そのことについて聞くことは――なかった。

「いえいえ。今日はのんびりで終わるなあっておもってたから、だぶついていた魔力です。それで救えたんですから、すごくいい使い先でした。
はい、力ぬいてー……ん、ふー……っ……ん、うー……♪
ああ、気持ちいいですね……すごく、体のおくまで柔らかくなる。
うーん、やっぱり、魔法使いはそうなるのかなー?
ふ、へ……ん~~…………♪」

すごくすごく、身体がほぐされていく。揉み手、叩き手、どれも筋肉のいいところを捉えてくれる。
すっごく、すっごく優しい手付き。だらしなーい吐息がふーっと身体から抜けていく。

「はあい、ねまーす。本気ですか、楽しみですねそれは……」

うつ伏せにぺたんと、薄い身体が脱力ねころび。
初めてのマッサージ。もし自分が犬だったら、尻尾がぶんぶんぶんぶんすごく振られているだろう。
それくらい気持ちよくて嬉しい。脱力した声だけど「気持ちいい、うれしい」と声色に乗っている。

ティアフェル > 「なるほど、工作か……いい表現ね」

 うむ、確かに判り易い。得心したように腕組みしてふんふん肯いて。
 そして、具合が悪くなってきたのだろうか、と誤認しながら、徐に額にそっと手を当てて計ってみる。喉の渇きや眩暈などはないか、危惧する様子は真顔。

「そっかあ、一緒に行動してたりしないとダメかー。
 ちなみに、永続だと……どれくらい? 欲しいっちゃ欲しい。安眠できそう」

 一応食い下がってみた。貯金して買えるくらいならいいけど、貴族級の高級品なら涙を呑んで諦めるしかあるまい。
 ぐいぐいいく女と控えめな少年。対比で一層ゴリラに見えそうで懸念が過る取り合わせ。

「そー? やーそんなことさらっと云えちゃうところがいい子だねえー。お姉ちゃん感心する。
 そんな君にはサービスだー! 時には正直者が得もする、そんな社会であって欲しい。
 ここ、らへん、が、とく、に……えいえい。
 気持ちいい? 良かった良かった、はーいこのままごろんしてー。
 そうそういい子いい子ー」

 ぐいぃ、と少し強めに押し込んでみる。一応ツボ、とされている箇所を抑えるが、ツボなんて効けばそこ、というくらい多少曖昧なものなので、反応を窺いながら親指に圧を掛けて解していき。
 色よい反応が返るので、一指入魂モードに移行。俯せになる姿勢に跨ぐような姿勢になって、上から、結構に沿って指や親指近くの掌やら、五指全体やら軽く体重も掛けながら全体的に揉み解していき。
 
「どこがいーかなー? ここかー、ここがええのんかー」

 しっかり解しながらも、反応の良い箇所を攻める仮あんま師。
                     ※しつこいようだが崖下の光景である。

アネラ > 「はい。夕飯を頂きに行けるくらいの距離でないと。
永続ですと、うーん。たぶん一般家庭1年分の支出よりちょっと多いですね。上等な武具くらいはしそうですね」

自分をのぞくのは真剣な顔。額に当てられる手。健康確認の動作。
ああ。きっと僕は頬を赤らめているから、ヒーラーのティアフェルさんからすれば「風邪では?」と思われていたのか……。
その……こうされることが、真剣なのに悪いけれど、体に悪いです。なんて内心で申し訳ない。

「そうですよねえ。正直に人と接していたら、それが報われるような。そういうのが、いい、ですね。ん。む。ふうう
ううん、こんなに、気持ちがいいんですねえ……
びっくりするけど、身体はふにゃふにゃで……ふへぇええぇぇ」

鍛錬の後の筋肉を各自ケアするための動作とはちがって、自分で届かない場所を徹底的に触ってもらう、圧をかけてもらう。
この気持ちよさにふにゃーと、ふにゃーととろけていく。

「ん、んーー……♪ そこ、ですー……もっとぎゅーって……
ふはぁあ…………」

なんて、ぜーんぶ按摩師さんに委ねているからリラックスだが、女の子に跨がられているのである。
女の子に跨がられて、いっぱい自由にされているのである。言い方が悪いが。
だれもしらない崖下でこんなことをーなんて自覚しちゃったら、偉いことになってしまうのではなかろうか。
ああそこ。

ティアフェル > 「ああっ…キツイ、それはキツイ…ッ。
 速やかに夢が砕かれてしまった……わたしには買えなかった……」

 うく、と息を詰まらせてほとほとと嘆いた。寝具にそんな大枚はたけぬ…。
 この時期だからどちらかというと熱中症を懸念中。大丈夫かな、と窺うが一応症状は赤面くらいしか確認できない。ぽむ、と励ますようにその頭に手を伸ばして掌を置き。

「そうそ、世の中世知辛いばっかじゃいけないわ……。
 とゆー訳で、わたしは受けた恩は返すぜ。
 んー? あんまりマッサージとか受けたことない? 結構凝り気味なのにねー」

 若いかどうかで凝ってないかどうかは決まらない。生活習慣次第だ。普段意識していない人ほど隠れ凝りストだったりする。
 ふにゃんふにゃんになっていくので、わたしここで本領発揮しないでどこでするの、と使命感に燃えて指先に魂が篭る。

「ここかー、ここはどうよー? えい、えい。
 わたしの指でイかせてやるぜー。昇天しなー」

 科白だけ拾うと卑猥でしかないが、やってることのど健全振りのコントラストの強さときたらない。
 ぐいぐい、と要望にはきっちり応えて凝りポイントを徹底的に攻めまくり。あと、凝り箇所とその周辺のケアも忘れない。凝っているところばかりだと逆にそこで筋肉が固まってしまうので、押し付けた掌を回すようにして圧を掛けながら揉み解し。
 大分解れてきたところで、おまけにヘッドマッサージ。こめかみやら側頭部や頭頂部やらに五指を這わせて圧し。

「はあーい。どう? 楽になったー?」

アネラ > 「ふふふ。いいものって高いんですよ。どれでもこの法則は……残念ですが」

赤面。まあ、その、ええと。理由はわかってもらえるのだろうか。解られるとそれはそれで恥ずかしいのだけれど。
年頃の男子というあたりが。

「はい。柔軟運動で押して貰うくらいで、誰かからこういうほぐしをうけたことは……
ふはあう。あううふ……」

中性的な声がそういう感じの吐息をつきつづけているので、この場を音だけ切り抜けば何事かと思われるようなかんじ。
しかしほんとに健全で、思いっきり癒やされている。

「あ、う。そこ。です。……っ。っ……んっ…………」

自分で声を出すのが恥ずかしくなるくらいに声がでる、というかここまで来るとエッチな声じゃないかと男子センサーにひっかかる。
ティアフェルさんの声は冗談そのものだし、動作はめいっぱいこちらを癒やしてくれる健康健全やましいところ全くなしだが。
ポイントの周辺もきっちりとほぐしてくれることに、なんとなく術理を理解する。人の体をちゃんとしてくれる。
……正直、ものすごく嬉しい。
と思ってるところにヘッドマッサージいままでそういうの意識したことがないところに刺激が来て、みよぁあーーーと小動物めいた声。

「ぷは…………ふはぅ………。身体かるい……むちゃくちゃに気持ちがいいです……。ティアフェルさんすごいです……」

べっちゃりと空気の壁の上に突っ伏したまま言う。耳が真っ赤すぎる。ああ、きもちいい。蕩けすぎてみせられた顔ではない。男子として。

ティアフェル > 「うーん…多少善意に捩じ込む形で割り引いてもらえたとしても、そんだけ高いと手も足もでないなー……。
 ちなみに半年とか一年スパンで持つ、とかだったらもう少し勉強できたりします?」
 
 永続版は諦めた。しかし、期間限定版はいかがか。と性懲りもなくまだ食い下がる。
 ていうか、自分が触ったり見つめたりしたくらいでこんなリアクションは誰もとってくれやしないので、真意はまーったく読めない。

「そっかそっかぁ。じゃあ懇切丁寧にやんないとねー。
 そんなに喜んでもらえるとやりがいしかないわ。
 存分にわたしの手技で喘ぐが良い」

 吐息に悩ましさすら混じっている気がする。なんかこの子揉まれ方がエロいなーと思わないでもないが、別にそこは個人差なのでさして気にせず。
 指先にほんのりとヒールも宿して揉むので血行はかなり改善したと思われる。

「ここを、もっとー? もっとして欲しいのー? 欲張りさーん」

 悪乗りにもほどがある。科白を全力でおかしな方向にもっていきながら、施術はきっちりと。仮にも命の恩人でかなり性格の宜しい男の子相手なのだから生半可なことはできない。
 喜んでもらえると使命感が煮えたぎってしまったので全身全霊で揉み解した。
 頭の方へ移ると小動物めいた声があがって、思わずくすくすと肩を揺らし。

「お気に召して頂けてなによりです。っふっふっふ。わたしの技の前にひれ伏すがよい。
 また凝ったらいつでも。代わりにベッド作ってもらうかもだけど」

 脱力して突っ伏した様子によしよしと頭を優しく撫でて笑い。
 うちの弟もこれくらい素直でかわいいのが混ざってたら楽だったのになあ、と痛感し。
 弟には決してしないようなかわいがり方をする姉ゴリラが一頭。

アネラ > 「寝具にそういう額は、ちょっと出せないですよねー……。
ああ、一年なら……普通の出来の剣くらいですねー。量産品の」

触媒とかが少なくすむから、一年くらいならちょっとした贅沢ですむくらいだろう。
すくなくとも、一般的に多い藁を包んだ敷き布団とはくらべものにならないだろう。
……自分が赤くなってる理由はわかってもらえないようだ。なんでかな、可愛い人なのにそのあたり無自覚なのかな。

「へ、ふう……ふうう……」

僕の声がなんか変なことになってる自覚。うん、だいぶその、手のひらの上というか。まいった。参った。色んな意味で。
背中からぽわぽわとあったかくて、全身に回っていく感触。
すごいなあ。人を癒せる人って本当に凄い……。突っ伏しながらとろとろ情けない顔で思う。

「それは、ベッドづくりくらいでなんとかなるなら……
いつでもお邪魔しにいきそうですね。むむむ。やっぱり癒し手の人ってすごいですね」

艶っぽい声から小動物のなきごえまでひねり出されて、今は優しく頭を撫でられる。
……背中だけじゃなくて、胸の奥からほわっとあったかい。
一人っ子じゃわからなかった感触。感覚。感情。
ああ、今、可愛がってもらってるんだな。すごく、その、照れくささもあるけれど、それ以上に嬉しい。

「その……ティアフェルさんは、なんだか、お姉ちゃんってかんじですね」

姉ゴリラなんて状況で育ってきたなんてつゆ知らず。
自分にこの場で振る舞ってくれたのは、優しい姉の動きだから。
ああいや拳はだいぶゴリラとかそういう類の武だった。

ティアフェル > 「そ、それなら、それならわたしにも買えるかもー!
 ちなみにティエフェル割引、ありますか…?!」

 そんなもんある訳がないが、捩じ込んだ。わたしのよしみで、と恩がある分際で。
 はいはいはい、と主張するように挙手で訴えるおかしな女に――照れてくれるような奇特者は彼くらいのものである……。

「っふふ、こんなに効果あれば、こっちも本望だわ。
 あー、いー仕事したって気になるー」

 むしろやった方が満足げ。いい感じに解れてくれたようで仕事人として悔いが残らぬ。
 一応本職癒し手としてはこうして施術で楽になったり喜んでもらえたりすると充実感。
 そんなに気に入ってもらえたのならば、いつでもやってやろうじゃないかという気にもなり。

「うんうん、ギブアンドテイク成立だねー。
 いーよいーよ、アネラんならいつでもおいでー。わたし、平民地区の冒険者ギルド近くに住んでるの。遠くないようなら訪ねて来てね」

 ちょっと妙な呼び方を勝手にしつつも、気安く請け負う姿勢で、にこにこ笑い掛けつつ。
 こんな弟ばかりだと、姉もゴリラにならずに済むという好例。現実にはないもんだったが。
 こういう弟だといていいなーと感じながらなでなでして。

「あ、やっぱりそう見える? わたし長女なの。下には5人、弟がいるわ。
 全員アホな野猿だけど。君のような弟だったら良かったのにねー」

 本音も滑り落としつつ、脱力気味の彼の背中でぽんぽん軽く手を弾ませて。
 こういうタイプだとかわいがったり甘やかしたりする気になれる。
 ってか、これが年上ウケするタイプの人間か…?うっすら察し始める年上。

アネラ > 「ふふふ、そうですねー。こうして沢山おはなしもして、癒やしてももらって……。
ちょっとくらいの割引、当然しちゃいますよ」

助けたのは自分の勝手と、居合わせた偶然。そこに恩を売るような発送はない。自活できるから旅をできるのだし。
微笑ましいなという声で、大丈夫ですよと、ふわりと告げる。その、うん。男の子は女の子に弱いというのもある。

「ほんとに、身体が軽くって温かい……
癒し手さんってこういうこともできるんですね。施療院とかいったことないんで、わからなかった」

こうして旅をしているのは「世界を知って楽しんでこい」という師の教え。
また一つ知って、また一つ楽しくなった。それが人との繋がりなら、極上の宝にもなる。

「ん、ふふ。それで成立しちゃっていいのかな。もっとこっちもサービスしなきゃかもだ。
ふん、ふん。あのあたりなんですねー。結構近いです。 ……えへへ」

普通に言葉をかわすけれど、自分への呼び名がニックネームじみていたから、最後はちょっと普通のかわが剥がれて照れる。今日はよく照れるなあと、ちょっと男の子の心がブーイング。
自分の術がそんなに気に入ってもらったのなら、自分だってやってやるぞという気にもなる。
本当に、ギブアンドテイク成立だ。

「わ。お姉さんだー。すっごい。5人も。僕一人だから、憧れるなあ。
あはは、男の子は元気な方がいいですよー。僕はもやしっこですしー」

憧れるのは家族構成全体か、姉という存在かどっちなのか。
背をぽんぽんとされると、なんだかあやされてるみたい。
温かい時間だな。危機一髪からはじまったけれど、すごくあたたかい。
実は年上うけがいいというよりも、お姉さんに弱い側面のある弱点持ち男子である。もう大人にもなろうという歳なのに。

「……えと、森で日が暮れるとあぶなくないですか?
僕は野営は得意ですけども。ティアフェルさんは……?」

ティアフェル > 「わっはぁー、やったー! 云ってみるもんだー。
 そうだ、せっかくだ、とりま友達になろう!ね!」

 友情割引。それなら正当な気がしないでもなかった。ここでも捩じ込んでくる。
 割引適用が通って、わーい、と無邪気に嬉し気に声を弾ませ。
 早速こんな女にカモられちゃって気の毒過ぎる。

「それはねー心がこもっておりますのでねー。
 あー…そーね……みんながやるって訳でもないかも。わたしは治癒術もまあまあ我流なところもあるし……魔力消費せずできる回復の方法を持っておきたいから」

 ヒーラーの基本的な技かと云えばそこはまた別かもと小首を傾げ。
 取り敢えずここで活用できて気に入ってもらえたのならやっぱり習得しといて正解だと。

「いーのいーの。せっかく仲良くなったんだし。――でもサービスしてくれるなら喜んで。
 近い? それなら今度ご飯でもしよ。好きな物作るよ!」

 大雑把な家庭料理程度だが、ここぞと主張。素直な年下を前にして久々に姉気質が首をもたげた。
 ふとはにかむ感じも微笑ましい。

「あはは、弟たちからはゴリラとかボス猿って呼ばれてるよ……むしろ一人っ子に憬れたもんさ…。
 元気過ぎるのも考えものよー……大人しい子のがかわいい……」

 隣の芝生…なのかもしれないが痛感した。ふー、と嘆息しつつ遠い目をして。
 家族と離れてのびのび出来ているが、多少こういうやり取りに飢えているところもあったのかも知れない。すっかり姉ちゃん気分でさらにかいぐりした。

「あ、そうね、結構時間食っちゃった……そろそろ行かなきゃね。
 アッ君は? 今日は野宿コースなの?」

 帰るならばせっかくなので御一緒に。そうでなければここでお別れだなーと考えつつ。

アネラ > 「あはは。等価で取引するのが魔法ですが、でもそこに気分が入って帳尻があいます。
はい。友達、です。……ちょっとこそばゆい」

せっかくなんだから。声もかわさずすれ違っていく王都。誰かを信じればバカを見る王都。
そういうわけではないから。ちゃんと友達になれてると、そう思えた。
まあ、あまちゃんもいいところなので、師がいればケツを蹴られるだろうが。

「心かあー。僕の分野じゃできないことだから、なんか憧れちゃいます。
我流で成立するって、それだけですごいことですね……。魔法じゃなくて人の身体を知っていくタイプの人も珍しいから、なんだか信頼できます」

ただ魔力的な作用に頼るのではなく、人をどうすればどうなるかをちゃんと理解している人。
つまるところ、医者だ。少年は、この癒し手をそう分類した。だから、ちょっと尊敬の眼差し。

「あはは。できるサービスはちゃんとしますからね。がんばらなきゃ。
わ。いいんですかっ。ご飯かあ。ずっとその辺の安食堂だから、なんか、わあ。楽しみ……」

料理はそれこそ、無毒なものをぶっこんで煮るような旅人料理しかできない。だから、大家族のお姉さんである人の料理というものが楽しみで、ちょっとそわそわ。
平穏を装っているというのも、もしかしたら不得意分野なのかもしれない。

「えええ。こんな優しいお姉ちゃんを?……それくらい弟さんたちが元気だから、もっと元気にお姉ちゃんしなきゃだめってことなのかな
あはは。じゃあ、欲しいもの一緒ですねえ」

何の因果か、隣の芝が青いとおもっていたら、お隣さんから譲り受けられるようなことに。
普段は商取引くらいでしかだれかと会話なんてしない。だから、こうした温かくて血の通った会話に、心がぽかぽかだ。
頭をくしゃりくしゃりとしてくれる手。お姉ちゃんの手だ。なんか、嬉しいとくすぐったいがミックスされて。ほんのり甘い味。

「うーん。最初は野営してぶらぶらしようかなーっておもってたんですけど
ティアさんが帰るっていうなら、送っていきますよー。女性の独り歩きは危ないですからねー」

こっちも、呼び名を変えて。
一応これでもちゃんと男の子なんだから、男の子しようって。

ティアフェル > 「そうそう、友情の前には割引は致し方ないのよ。
 その代わり、わたしも割引するし」

 それは治癒術なりなんなり、必要があれば、の話になってしまうが。
 お互い様なのが友達。年下の男の子の友達はそう云えば故郷を離れてからはできてなかったかもなーと感じてなんだか新鮮な心地で、よろしくねーと親し気に笑い掛けて。

「そうかな? 魔法でも治癒でも、心を込めてやるのって大事だと思うんだけど。
 ほら、魔法って精神とかかわりが深いものだし。
 ありがと…実際は弟達が怪我ばっかりしてくるから……実践で鍛えられて来た感じなんだけど。そう云っていただければ嬉しいわ」

 入り方がそんな感じなので癒術だけでなく、基本的な医術も齧ってはいる。向いているのが癒術ではあったが。そんな眼差しを受けてさすがにこちらが照れる番。はにかんだように笑みを零し。

「期待しております。何せ便利技の持ち主だからなー。
 そんなに凝った物はできないけど、家庭料理なら一通り。食べたいもの教えてねー」

 基本目分量の家庭料理だが、そんなもので良ければ腕を揮いまくってやろうと楽しみにしてくれるという純粋な子を前にしてなんだか俄然やる気。
 姉心をくすぐられた。

「そーよねー。優しいお姉ちゃんだよねえー。家に来て云ってやって欲しいわ。
 うん、私をゴリラにするのはサルどもよ。
 そうみたいね。ない物強請りかしら」

 ともあれ、初対面だが、サルのような弟に疲れ切った心をそれこそ癒すようなかわいい弟みたいな子が。今日の所はそれで満足。
 けれど、男の子らしい科白も聞けて、少々くすぐったげな笑みを零して肯くと。

「さすがは男の子。それじゃあちょっと悪いような気はするけど…お言葉に甘えて道中お願いします。――それじゃ、行こ」

 ティアでいーよ、という前に呼び名が自然と変わったので、よーしと納得するように小さく笑みを刷いて。それから、行こうかと自然と手を差し出した。
 まだ弟も小さい頃はこうして帰ったものだ。一番下の弟以外それもしなくなって久しいが、何だかそんな懐かしい気分がもたげて繋いで帰ろうと。
 そうして、手を取ってくれれば姉弟のように親し気に共に帰途を辿り――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からアネラさんが去りました。