2020/08/29 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/川辺」にナイトメアさんが現れました。
■ナイトメア > この頃のこの辺りで良く魚がつれるという噂を酒場で聞きつけ、心許ない懐事情を何とかするために川辺で大岩に腰をかけて釣り糸を垂らしている。
先程来る前に採取した青竹、干物にする為の塩に一通りの調味料を供にして、意気揚々と来たまではいいし、川辺と言う事もあるし腰をかけている大岩は木々の葉の天井があって涼しくもあるのだが、どうにも――……釣れない。
折角釣れたら一夜干しするか、青竹に入れて酢を入れてちょっとした魚の肴に……酒の肴にするように、と色々準備してきたのが無駄になりそうで、ちょっと眉間に皺を寄せた表情でジィッと水面を眼鏡のレンズ越しに眺めている。
こういう事は弟の方が上手かったが、懐も温まってお腹も膨れる方法はこれくらいしか思い浮かばず、じゃあクエスト受ければと思うだろうが、手頃なクエストは全滅していた。
ドラゴン退治、不死者の群れの浄化、巨人の捕獲、無理である。
ドラゴンは飛んでいたらアウト、不死者は夏場は触りたくない、巨人はできないこともないが、対象の巨人がオーガとかその手ならともかく、知性有るヒトであったら捕獲なんぞお断りである。
でー…結局は狩か釣り。
狩は……暑いから動きたくないので却下。
となると現状がベターである。
しかし本当に釣れない。
先程から自前の竹ざおがピクリともしない。
魚がいないわけでは無さそうなのだが?
■ナイトメア > ――矢張り竿はピクリともしない。
だが此処で諦めて帰るには諸々費用が掛かりすぎている。
腰に紐で結びつけた瓢箪を紐から外し、蓋を捻って開けると瓢箪の中の檸檬水を口に含み、口内で十分に檸檬の香りを味わった後に喉に流し込む。
一口、また一口と檸檬水を飲み、また水面に視線を向けると水面下の魚との勝負へ戻る。
せめて一匹、出切れば片手、欲を言えば両手くらいは釣りたい。
「……野営用のも一式持ち込むべきだったか?」
ふむと一つ唸る。
唸った後に竿を指先で上下にくんくんと揺らして、流れる川を泳ぐ魚に美味しいえさは此処だとアピールして見せた。
しかし反応はなく、揺らした事でエサが針から外れそうになる始末。
エサのつけが悪かったのかもしれないが、長い間水の中にさらしているのも悪い。
そろそろエサを付け替えるべきか。
■ナイトメア > 根負けと言う奴だ。
釣り針の傍まで魚が来ているのは見える、がそれ以上は警戒してか食いついてくれない。
もう止めだ!と声を張り上げると座っていた大岩の上で仰向けに寝転がり、不貞寝を始める。
目覚めたときにはもう夜だろうか。
夜は夜でまた釣りを続けることになるだろう……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/川辺」からナイトメアさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 「っ――?!きゃ、ああぁぁぁぁあぁぁ!!」
まだ残暑厳しい午後の森の奥、静まり返った森林の空気を引き裂くように響き渡る悲鳴。
そこは切り立った崖の縁。追って来る魔物を撒いて走る途中、足を踏み外して滑り落ちて行き―――
「――ッ!! んぅっ……!」
ぎりぎりの所で崖肌に突き出た木の根につかまり、まさに命綱たるそれを必死に握り締めながら踏みとどまっていた。
「くぅ、うっ……!」
しかし、そこまではいいがそのまま自力で這い上がるには崖の上は遠い位置にあったし滲んだ汗で手が滑り、しっかりとつかみ続けていることさえ困難だ。
ほとんど直角に鋭く切り立った崖で木の根にぶら下がる格好。せめてもう少し角度が緩ければ足を掛けることも出来ただろうが……。
「ぅ、んん…!!」
ずる、と滑りそうな両手にひやりと背に汗を伝わせながら必死にしがみつき、そして、ちら…と下を見るとなかなかの高さに、さーっと血の気を引かせ。このまま落下してしまったら大怪我は覚悟せねばなるまいし、打ち所が悪ければ最悪の事態もあり得そうに思えた。
■ティアフェル > 「も…、だ、めぇ……」
しばらく這い上がろうと足掻きながらそのまま両腕で自重を支えていたが、じわじわと痺れが襲い感覚が徐々になくなってきた。しっかりと握っていた手が震え、
「あっ――……!」
ずる、っと汗で濡れた手が大きく滑り、重力に引っ張られて崖下に吸い込まれるように――
落ちる、落ちる、落ちる落ちる――
ずささささささささささっ!!
「っ き ゃ あ あ あ ぁ あ あ ぁ ぁ あ ぁ ぁ ぁ ぁ っ っ ! !」
す、ぅ――と腹の底が空くような独特の感覚が本能的な恐怖心を刺激する。目の前の光景が崖肌から雲の散る空、森林が描く緑のコントラストに目まぐるしく切り替わって回っていく。
死ぬ前に走馬灯が浮かぶというのは迷信なのか――ほんの短い瞬間だったにも関わらずそんなことを考える余裕が不思議とあった。
そして悲鳴の尾を引き連れて崖下へ真っ逆さま、落ちていく――
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にアネラさんが現れました。
■アネラ > 深い森の奥を行く。
自分の主な路銀の稼ぎ方は、自然物を変異させて上質のものに変える事。
わかり易い例なら、鉱床をみつければその日のうちに宝石を作り上げるなどだ。
そんなわけで、ちょっと希少な素材があればそれだけで大きなお金に変えられる可能性がある。
なので、自然地帯の奥へ。森の奥へ奥へ。
さらに、地質のわかりやすいむき出しになる崖の側を行く。
「この国の地質はまだ知らないところが多いからなあ。色々あればいいけれど」
なんてのんきにいいながら行く白いローブ姿。
ローブ越しでもなお華奢に見えるその姿は、魔物や獣にからまれればひとたまりもなく見える。
しかしこれでもきっちりと旅人。
そんな、旅する変異術師が、森の深奥に不似合いな高音を聞く。
「……。あそこか。まずい。障壁でもはれないと、落ちたら事だ……!」
崖の木の根にぶら下がる女性の姿。ああ、これは。最悪の事態がありうる。走って居ては間に合わない。
故に、女性の落下地点付近の空気に向かい魔力を向ける。
変異術を向ける。変異。性質変異。弾力化。
「空と気は多くを包むもの也。ならば汝も其れ也。ならばそう在れ。そう在れ。そう在れ――」
大気の弾性化。普段は飛び道具への強力な防御として使う変異術。
強弓ですら防ぐ弾力のある大気の壁を作り出す。
女性一人おちたところで、反力による衝撃こそあるが、岸壁に叩きつけられるよりはずっとましのはずだ。
■ティアフェル > 崖下に一人の術者が現れ、こちらの危機を察知して術式を展開していること――それは落下していく身には知らぬことであったので、
「きゃああぁぁぁぁぁあー!!」
ざざざざざざざっ!
崖肌を転げ落ちていく音と劈くような悲鳴、せめて受け身をとるくらいしか術がなく。
真っ逆さまに崖下の地面に叩きつけられるかと、思われたが――、
「ひっ?! あっ、あ、う゛…!」
受け止めたのは硬い土の感触でも、さくさくとした芝の感触でもなく――予想だにしない弾力。
目に見えぬ大気が障壁となりクッションとなり、全身を受け止めた。
どん、と落下した瞬間多少の衝撃はあったがそれでも、少々打ち身になる程度にダメージで予想よりははるかに軽いもの。
味わったことのない感触と、身体の下に敷かれた目に見えない弾性の壁にその上に天を仰いで倒れた女は、きょとん、と訳が分からず目を瞬き。
「な、に……? なにが……え? なにこれ……?」
少々混乱したようにそろそろと身を起こしながら、弾力に手を当てて確かめるように上下させ。
■アネラ > 「間に合った……!」
見たところ、落ち方も危ないものではない。頭を打ったりしているようには見えない。
それは、受け身のとり方がきっちりとしているからだ。ちゃんと訓練をしている人か。
「大丈夫ですかっ!?」
走り寄る。白いフードがめくれる。やや長めの黒髪が流れる。
安全な落ち方にみえるが、筋肉を痛めている可能性も有り得る。
女性の筋力では、反発によるダメージが後日来ることが多いのだから。首などの筋肉に「元にもどるよう」変異を掛ける必要があるかもしれない。
「よかった……まにあった。
ええっと、その。僕の術式で、ちょっと空気をクッションみたいにしたんです。
走って受け止めるにはちょっと遠かったので」
弾力に手を当てて確かめている女性に、安堵の笑顔を向けながら、走り寄る速歩を、歩み寄るまでおとして。
はーーっと、胸をなでおろして。よかったと、心から。
■ティアフェル > 「えっ……?」
何が起こったのかさっぱり分からず、身体の下にある弾力をやたらにぷにぷにしていたが、響く声に反応して、ぱ、と弾かれたように顔を向け。
そして、そちらから駆け寄って来る様子にぱちくり、と目を瞬き。
緩々と察しがつき始める、そうか、このどう考えても人為的で魔術的なこれは――
考え始めたところで安否を気遣う声に、こくりと首肯して、へーき、というようにひらりと片手を挙げ。
「うん、お蔭さまで…? 大丈夫、みたい……」
フードがめくれてその下から黒髪の少年の姿が見えて、そのいかにも人畜に無害そうな様相にほっとしたように表情を緩め。そして歩み寄りながら説明をしてくれる声に耳を傾けて肯き。
「なるほど……。そんなことできるんだー。すごいね!
助かっちゃった……どうもありがとう」
死ぬかと思った、と微苦笑気味に頬を掻きそして、その見えないクッションがいつまで持つのか分からない為、どこからが地面になっているかな、と確かめながら爪先から降り、立ち上がって身体の具合を確かめるように捻ったり伸ばしたりしつつ。腰に軽い打撲程度のようだ、と認識すると、一緒に落ちて来てたスタッフを手にして短詠唱でヒールを掛け。
「本当にありがとう! わたし、ティアフェル。ヒーラーなの。
君は?」
大分距離の近づいた彼の前に立ち、手を差し出しながら軽く自己紹介し。
■アネラ > 「大丈夫、ですかー。ああ、ほんとによかったー……」
こうして誰かを助けるとか、恐らくは人生で初めてのこと。
いつもは自分のことで、自分のための加減でやってきたから、誰かにそれが適するかは不安だったけれど。
片手を上げる動作からも、元気そうだ。
「ちょっと珍しい術体系ですからねー。すごいというか珍しいですねえ。
いえ。助けたいと思ってのことですから。無事で良かったです」
明るい茶髪、緑柱石の瞳。色彩鮮やかな女性だ。
そして、ヒールの動作をみるに、後遺症のようなものは心配しなくて良さそうだ。
自分は治癒は得手ではないから、鍛冶屋にパンは焼けないということで、任せよう。
「いえいえ、どういたしまして。 僕はアネラ。変異術師です」
差し出される手。この国に旅で流れてきて、とても荒れた国情、荒んだ人間が多く、信じるものがバカを見るというのも大体わかっていたが……。
こんなにまっすぐ差し出される手となると、信じないほうがバカだ。
笑顔で、手を差し出して。
「本当に、大事がなくてよかった」
そっと、自分よりすこし小さなティアフェルさんの手を握った。
■ティアフェル > 自分よりいくらか年下の少年は、見ず知らずの自分の身を案じてくれるほど、イイ奴のようだった。
おー…騙され易そうで違う意味でしんぱーい。と失敬な感想を抱きながらもとにかく助かったのは彼のお蔭。
拝んでおこう。
「ほんと、こんなの初めて見た…世の中には色んな術があるんだね。
錬金術と少し似てるのかな…でも違う見たい。不思議ー」
ほぉぉ……改めて感心しつつ変異術師と聞き慣れない自己紹介に首を捻り。
近づくと良く分かる容姿。線の細い、繊細そうで中性的な少年は、うちのサル(弟)とは違う生き物のようだ…と妙な感想をいだきつつ。
「アネラ君、変異術って初めて聞いたよ。こんなこと出来るなんて便利ー。
野宿の布団にも困らないねー……いやむしろ、こんなベッドあったらいーだろーなー」
ウォーターベッドならぬエアベッドか……弾力も適度な低反発で寝心地がよさそうだ。
お手頃価格ならぜひ欲しい、と妙な妄想までして。
笑顔で握手を交わす彼ににこにこと屈託なく笑い返しながら、がし、と両手でがっつり握る力強い握手を見せ。
ついでにぶんぶんと上下に振り。
「いやー、君が通りかかってくれなかったらうっかり死んでたよ!
何かお礼をせねばね! どうだろう、『肩叩き拳』だよ!
感謝の印として、さあ遠慮なく!」
命の恩人の手に、がし、と握らせたのは『肩叩き拳』(券ではない)と掛かれた紙切れ。
こんなこともあろうかと用意しておいてよかった、と晴れやかに笑いながら押し付けた意味不明な善意。
■アネラ > なんだか拝まれる。珍しい感謝だ。この国の何処かの地方にはそういう習わしがあるのだろうか。
なんにせよまっすぐな感謝はいいものだ。それを向けられる人というのも、とてもいい人だ。
騙されそうで心配されている、などとはつゆ知らず笑顔だ。
「はい。マイナーで適性がいる、流行る理由が何処にもない術です。
でも便利ですよー。あ、確かにちょっと似てるところはありますねえー」
ちょっとじっと見られる。なかなか照れるけれど、こうして浅くない縁を今結べているなら、相手の事を覚えるのもまた必要であり、礼儀だ。
ちょっと頬を赤らめながら、こちらも見返す。
色からも解るほどに、快活な、明るい色の通りの人に見える。
明るさにあたるのはなかなか珍しいから、この明るさだけでも、ひだまりのような温かさに思える。
「たしかにこの国に来てから、同族さんはみたことがないですねえ。
ああ。シートくらいの薄いものなら、一晩の維持くらいなら消耗なしに作れますからね
地面ごつごつでも安心。野営にもべんりですよー」
流石に、空気のような流動的なものを切り取った永続的な変異となると大儀式だろうけれど、なるほどベッドを作ってしまうのは……ちょっとありかもしれない。
握手の手を両手でがっしりされる。えっ。なにこれ。あっ。力強い。僕よりずっと強い。
ぶんぶん上下。なんだろうなんだろうちょっとだけ怖い。
「え、ええ。危ない感じでしたから、ねー。ほんとに間に合ってよかった……
え?かたたたきけん……すごく懐かしい響き………………
じがちがうなあ……」
チケットではない。フィストだ。とても力強い。ガチンコというやつだ。
笑顔が眩しい。さっきひだまりみたいと思ったが、これはうっかりすると干ばつを起こす。
「ええ、と。じゃあ、えと、そうですね……?
一気に緊張してどっと安心したのでー……ちょっと、その。
やさしめに肩たたき、おねがいしたいなー…… 今でもいいのかな……?」
すこしだけこわい。
■ティアフェル > 両手を組み合わせて祈りのように拝む態。
今は生き神様だと思っておこう。絶やされぬ笑顔が眩しいとともにやっぱり不安だ。
どうかどっかでカモられませんようにとついでに祈って置こう。
「うーん…確かにこんな術が世間でバズってたら……経済が滅びそう。
やっぱり錬金術みたいに鉛を金に換えたりなんかもできるの?」
あれもなかなか経済破綻な技だと思っていたが上をいく。珍しい形式の術に興味津々で。
じーっと見てたらはにかんだように顔が赤くなるので、おお、カワイイ、と妙に感動した。
これはうちのサル(弟)とは同じ種族ではないに違いないと個人的な感想。
明るいというかいっそこの陽気では暑苦しいかも知れないタチの女は、だからとてトーンダウンもせず。
「だよねー。この国にはいない、ってことは君の故郷には多くいるの?
まーじかー。いーなー!欲っし!
でも、お高いんでしょう……?」
こんなレアな技を駆使して作ったアイテムとなればきっと売買することになったとて値が張るに違いない……。
独特の云いまわしと目線で窺うようにそちらを見やり。
感謝の念を込めてのアツい握手は……恐れられている。
弟と書いてサルと読む生き物の長女はうっかり実家の猛獣どもと同じノリで扱ってしまっていた。
「そうよ、まさに命がデンジャラス。一歩間違えれば即昇天案件だったわ。
………。合ってるよ?」
前半感謝を込めて語りつつ、謎の券について誤字を指摘されれば笑顔で返した。
「あ、もちろん! 喜んでー!
じゃあえっと…立ったままでっていうのもなんだから……このクッション? まだ持つ?
それならここにはい、どうぞお掛けに」
ご要望を受けて、きらきら輝く笑顔でぴし、と敬礼を極めながら応じた。
もちろんすぐに使えますよー!と爽やかな表情で、先ほど自分を受け止めてくれた大気の障壁。それがまだ持続するようなら利用しようと。
■アネラ > この術士、それなりにしたたかというか……旅をするならそれくらいはないとやっていけない。
なので結構大丈夫だったりするのだ。
……もしかしたらハニトラには弱いのかもしれないけれど。
「あら。いい目の付け所。流石にそう言う都合のいい変異はできないんですよ。
例えば、金を含んだ大岩に術を何時間もかけつづけていれば金を抽出できたりとか、そういうことはできます。
あり方そのものを根本から別物にするのはちょっとむずかしいから、今ある状態からちょっと方向を変えるくらいです」
説明に入るとちょっとだけ照れも下がるけれど、それでも近くに明るいお姉さんがいるとちょっと頬は赤いまま。
最近わかったが年上にはちょっとよわい。
ちょっと陽に照らされ過ぎかもしれない。
「多いわけじゃないですよー。うちの師の元には結構いますが……うーん、ドマイナーな魔法ですねえ。
あはは。一夜だけ存在する敷物くらいなら、夕食のおかずをちょっと多めにしてくれるくらいで大丈夫ですよー」
技法はレアというかマイナー。故に、こうしてちゃんと話せる仲になれればなんてことはない。
しかしちょくちょくと、公告の街頭宣伝のようなことをいうお姉さんだ。明るい人だし、そういうのもやってるのかな?なんて内心小首をかしげる。
……まあ、『永続する』空気布団を作ろうとすれば総コストではマジックアイテムくらいいるだろうけども。
「ね。本当に危なかった。……あってるんですね……」
文化の違いだろうか……。笑顔が眩しいからいいか……。いいのかな……。
「ええ。とっさのことなのでだいぶ魔力をつっこんだので。あと数時間は保つと思います。
はーい。こちらにー」
ちゃきちゃきと楽しく明るく動いてくれるティアフェルさんに、やっぱり笑顔になりながら
大気の壁の端っこにちょんとすわる。無色透明だが、術者からすれば感覚でわかるのだ。ズルい。
「えと、じゃあ、お手柔らかにおねがいしますね」
なんていいながら、こういうのって初めてだから
一人っ子だったから、だいぶ楽しみで、声ははずんでウキウキなのだ。
■ティアフェル > 一番アカンやつに弱いかも知れない彼に心配は持続傾向にあった。
「っはー……なるほど。そこら辺が錬金術とはまた違うところなのねえ。
別物に転換はできないんだ……こういう風に空気の圧力を変異ということはできても」
なるほど、通り過ぎるばかりの大気も暴風となれば押し返す力を持つ。そういう風にそれそのものの持つ特性を引き出したりができるのかと何となく理解して真面目な顔でふむ、と首肯した。
そして、顔が赤いままだったので、ひょっとして熱中症の方か…?と誤解し始めて心配そうに覗き込んだ。
「そうなんだ、やっぱり少ないのね……そうよね、でなきゃ聞いたことくらいはありそうだものね。
えええっ!? ほんとに! そんなんでいいの!? 大丈夫? 生活していける?
例えそれが君の善意だとしても全面的に乗っかってお買い得価格でぜひ欲しいです!」
かなり乗り出し気味に食いついた。無駄に芝居掛かった所作は――天然である。
大家族で育ったゆえの賑やかしい性質なのか、コイツの特殊技能なのかは不明。
「合ってるんですよ……」
にこ……とどこか達観したようにさえ見える笑みを湛えて穏やかに肯いた。
「わあ。それは活用しとかないと逆に勿体ないかもねー。なんかすいません、わたしの為にそんな魔力消費を……
ようし、魔力消費を補填できるような叩きをこのゴッドハンドで…!
今ならサービスで揉みます!」
彼が座った場所はやはり不可視なので、一見空気椅子のよう。そして崖下で肩叩きが始まるというシュール極まりない光景が幕を開けるのだ。
「うん、任せてー。あ、力抜いて、楽にしてー……
では、失礼して……」
下手したらばきべきもき、と音を立てた所だが、そろ、と触ってみた結果。あ、骨格からしてアレ、駄目、家の一族と同等に扱ったら折れ砕ける奴。と職業柄察して。
軽く猫の手拳でたんとん、と肩首腰の方まで窺うように軽く叩き始めそして、むー。と眉を寄せると、
「凝ってますねえ、お客さん……ちょっと本気出すわ。はい、ちょい寝てー」
クッションの範囲が思ったよりも広いもので、座位から臥位へと転じようと身体を倒させていき、ぐ、ぐ、とコリのポイントを探りながら指圧をし始めた。