2020/04/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にイルルゥさんが現れました。
イルルゥ > 【お約束待ち】
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にアレフさんが現れました。
イルルゥ > メグメール自然地帯の一角。
街道から少し外れた森の中に、その遺跡はある。
古めかしい…苔がこびりついた石造りの遺跡。
入口の大きさは、冒険者ギルドの建物程度か。

ここは、初心者用と判断された遺跡の一つ。
敵や罠、宝も…大したものはないと先行した冒険者たちが判断した場所だ。

ただ、遺跡というのは状況が変わりやすい。
例えば妙な魔法を覚えた魔導士がそこで実験を行い凶悪な魔物を生み出したとか。
例えば盗賊や山賊が新たにそこを根城にしたとか。

そんなことも、稀に報告されるのだ。
だからこそ、調査依頼が定期的にギルドに張り出される。

「さ、アレフくん。馬車の中で言った事、覚えてるかな」

街道までは予約していた馬車に乗り、森の中を歩き…入口までたどり着いたところで、フードを被った少女は…そう同行者の少年に声をかける。
真面目な少年が忘れているとは思えないけれど、その確認し忘れが大事故に繋がる場合もある。

揺れる馬車の中で伝えたのは3つ
1つ、イルルゥの傍から離れない事
2つ、無暗に壁や物に触らない事
3つ、体調が少しでも変化したら伝える事

危険な罠は少ないとはいえ、場合やタイミングによっては大怪我に繋がる。
最低限、これだけは絶対に守ってほしいということをもう一度確認しようと。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にアレフさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にアレフさんが現れました。
アレフ > 「ええとぉ…」

そう言って少年は、なんとなく空を見上げつつ指折り数えて繰り返した。
根が真面目な少年だから、言われたことはちゃんと覚えてる。
そして、それを実行する気もばっちりだ。

けれど、なんといっても憧れの…そう、憧れのダンジョン!

少年はもう、きらっきらとどんぐりまなこ輝かせ、完全に入れ込みすぎ、という状態。

松明も持ったし、ロープも持った。
行こう、早く行こうと、しっぽがあったらぶんぶんぶんぶん振ってるだろう。

…散歩をせがむ犬か。

イルルゥ > (微妙に心配だなあ…)

どうやら、ダンジョンに対して過剰な憧れがあるみたいだと少し苦笑い。
確かに、初めてなら仕方ないか、と思いつつ。
ここなら、余程の事が無い限りフォローはできるだろうと。

「じゃあ、ゆっくり行こう。私が後ろから色々アドバイスしていくから、たいまつを持って先に進んでくれる?」

本当なら、自分が先に進んで罠を探知するのだけれど。
たいまつとロープを持って今にも飛び出していきそうな少年を見ると、先頭を歩きたい!と言う思いが伝わってくる。
それに、どちらかというとモンスターの方が多い遺跡のため、戦闘が発生した時に少年が先頭の方がやりやすいだろうと。

「いつでもいいよ、行こうか」

そう言って少年を促す。
遺跡に入ればまずは薄暗く…天井は高いものの横幅は狭い、そんな通路が二人を出迎える。
周囲の音も聞こえにくくなり、たいまつの燃える音と二人の足音だけが響く。

アレフ > 「よぉし…」

なんて、少年はそれはもう意気込みばっちりだ。
手にした松明、それに少年は、まずは『明かり』…ライトの呪文を唱える。
おや、と少女は思ったかもしれない。
そして、『明かり』の呪文が発動したことを確認してから、改めて松明に火をつけた。

それを手にして、むふー、と少年は鼻息荒々しく立ち上がる。

入れ込んでいるようで、なかなか周到な準備なのは、これもやっぱり『学士』を自称する大好きなおじーちゃんの教えだった。
『かつては冒険者として、ワシも鳴らしたもんぢゃわい♪』と、よく色々と自慢しながら、ちょっとしたコツをその冒険話に織り交ぜてくれていた。

それを早速実施してみた少年だった。

「お、おぉ~………」

ぐるり、石壁と石畳で覆われた空間だ。
…ちょっと、くさい。

そんなことを思いつつ、それはもう、どっきどきで少年は歩を進めてゆく。

イルルゥ > 「………」

進み始めてしまったため、タイミングを逃したけれど。
たいまつに頼り切りではなく、灯りを点ける魔法を使う少年に感心する。
確かに、ダンジョンの中に強い風が吹いていたり、両手が使えなかったり
そんな状況ではたいまつよりも魔法が優先される。
勉強してるんだなあ、とフードの内で笑顔を浮かべて。

「…一先ず、大丈夫そうだね」

進んでいく先には特に罠の気配はない。
少年の少し後ろから前を伺いながら進んでいくと……

『ヂュー!!』

「あ、大ネズミ。…アレフ君、頑張って」

前から一匹。
魔力によっておかしくなったネズミ…俗に大ネズミ、なんて呼ばれる魔物が出てきた。

噛みつきが主な攻撃であり、広い場所なら攻撃を避けながら戦えばなんてことはないが。
この狭い通路…しかも剣をぶんぶんとは振り回しにくい横幅の場所で少年がどう戦うか。
あるいは例の『友達』とはどういうことなのか、少女は見ている。

アレフ > 「…けっこう、くさいです…」

思ってたより、ダンジョンというのは、心地よくはない。
もっとこう、血沸き肉踊って胸高鳴るサムシングを少年は期待していたのだけれど。
そりゃ、陽が射しこまなくて湿気が高くてフケツでモンスターがいれば、いいニオイなんてするわけないのだ。

あうー、なんてちょっとおマヌケな声が漏れた時。目の前現れたモンスター!
おお、とむしろ嬉し気に少年は声を上げると、まずは松明を放り出した。

炎も『明かり』も、地面に落としても明るいままだ。
そのまま、剣も盾も使えるようになると、これもやはり『おじーちゃんの知恵袋』らしい。

「よ、ほっ、…はっ!」

いちいち、挙動に掛け声が入ってしまうのは、やはりそれも入れ込んでるから。

小さめのその剣を、少年はひたすら突きに使う。特に、飛び掛かりに合わせて突き出すから、モンスターの方もやりにくそうだ。

「よ、と、…った、………えいっ!」

遂に、少年の剣の切っ先が、大ネズミの口の中へ。
見事、討ち取ったり、というところで、少年は背後を振り向いては、にっこりとそれはそれは嬉しそう。

イルルゥ > それは仕方ないね、なんてまた笑いながら。
何もない限りは、遺跡の中は確かにいい匂いとは言えない。
モンスターが遺跡の中で身ぎれいにしているわけはなく。
この匂いは、どの遺跡でもある程度つきまとってくるため、少女は慣れていたけれど。

「………」

大丈夫そうだと判断すれば、特に口うるさくモンスターに対しては口出ししない。
ただ、少年の状況を見る能力と胆力は信頼できそうだ。
モンスターを見ると緊張してつい剣を振り回してしまったりする様子をたまに見るのだけれど。
冷静に、突きを繰り返して狭い通路を利用し、勝利した少年に…

「うん。すごいすごい。尻尾の先を切り取っておくと、少し報酬が上乗せされるよ」

調査して、モンスターを倒したという証明だ。
少年が討伐していたスライムであれば核を持ち帰るようなものである。
モンスターごとに持ち帰る箇所が違っており、そこも伝えていこう。
フードの中の口元は、笑みの形になっていて、少女の声にも喜びが混ざっている

「確か、ここを進むと広間があるから、そこまで進んでいこうか」

途中、罠はまだなく。
時折大ネズミが単独で出てくる程度。
もしかすると、少年にとってはつまらないかもしれないけれど。
道が複数に別れた…大きな広間にたどり着くまで進んでいこう。

アレフ > 「しっぽ!」

いちいち、反応が大きいのは何もかもが新鮮だからだ。
これくらいですか?もっと?なんて聞きながら。
少年はネズミのしっぽを切り取った。
大きめの袋も持ってきたから、ぽいっとしっぽは袋の中に放り込む。
その、放り込むしっぽが何本か溜まったころ…。

二人はいわゆる『広間』と、そう呼ばれる場所に着いた。

「おぉー……」

やはりいちいち、感動らしい。

片方は、若干下り気味の道。
片方は、特に勾配はないらしい。

一体どちらに行くのだろうと、少年はまた、松明を受けてきらっきらと輝くどんぐりまなこを少女に向ける。

…繰り返すけれど。まさに、お散歩をせがむわんこ、である…。

イルルゥ > 少女も嫌がることなく、ギルドに定められたしっぽの切り方を教えていく。
スライムで慣らしていたようだから、生き物っぽいモンスター相手でどうなるかが少し心配だった。
しかし、そんな心配はいらなかったようだ。
何匹か相手にしていても、忌避感は無さそうで。
それは中々得難い素質のようなものだ、と少女は思う。

「こっちに行こうか。疲れてない?」

少年の楽しそうな様子に少し引きずられて、少女も笑みが絶えない。
もちろん、警戒は続けているけれど、声音は楽しそうだ。
マップはもう頭の中に入っており…今回依頼された、下がり気味の道の先へと行こうと。

「あ、と。そうだ…遺跡の中だと、あまり声を大きく上げない方がいいよ。
近くの魔物も寄ってきちゃうから…」

一応そう忠告してから。
けれど怒っている風ではなく…それこそ、可愛らしいわんこを見るような優しい声音だ。
下がり気味の道はしばらく続いており、遺跡の地下へと。
更に空気は重くなり、匂いも悪く…当然光も無く、たいまつと魔法の光だけが二人を照らしていく。

アレフ > 根が素直な少年は、言われた瞬間に、ぴゃっ、と姿勢を改める。
いや、だからといって喋るなというわけではと、そんなツッコミを入れたくなるほどに。少年は一生懸命唇を閉じるものだから。
なんだかこう、むずむず、むずむずとその唇のあたりがしているのだ。

そんな、妙な表情をして少年は。
疲れてないかとの言葉にぶんっぶんっと首を振ると、ひとまずは示された下り道へ…。

下れば下るほど、外へと通ずる穴でもない限り、ますます空気は淀んでゆく。
モンスターばかりでなく、コウモリなども巣食っているから、そのフンのにおいもやっぱりくさい…。

柔らかい底のブーツはなかなか音を立てないし、少年の防具もまだまだ金属鎧なんて手が出せないから。
二人の進む音はけっこう静かだ。

そして、不意に。
少年の松明めがけて、一本の矢が射かけられる。

びぃぃ…ん、という弦音は、手入れなどされていない弓独特のもの。

見れば、いよいよもって少年には憧れ(?)の、ゴブリンの登場なのだった!

イルルゥ > 普通には喋っていいよ、と苦笑して。
緊張をほぐすため、少女からも少し世間話を振ったり…。
緊急の時は大声をむしろあげてほしいとも。

過度に縛り付けすぎると、それはそれで動きを阻害することになる。
下へと降りていけば、少女にとっては馴染みのある空気へと。
感覚の鋭いミレーにとっては辛いものではあるが、これも慣れだ。
ただ、そこに…少し予定外の存在が。

「っ……、ゴブリン…、アレフ君、とりあえず、目の前の一体に集中して」

侮られがちだが、ゴブリンは中々厄介だ。
大ネズミなどと違い道具を使う知能があり、稀にではあるが遺跡の罠も利用してくる。
更に群れを成すため…場合によっては非常にやりにくい。

「それに目の前、少し盛り上がった場所、見える?あれ、罠だと思うから、踏まないように。」

奇襲を警戒するため、一気に声を強張らせながら。
罠について報せる。
道の一部が奇妙に盛り上がっており、そこに罠の作動装置がある。
踏んでしまえば、捕縛か、直接的、間接的問わずの攻撃か。そんなものが襲ってくる。
一先ず今感じられるゴブリンは一体だけであるから、経験を積む意味も込めて少年の様子を見ながら戦ってもらおうと

アレフ > 「はいっ」

それはそれは元気でまっすぐな返事をして。
少年は左腕の盾を掲げた。
まずは、飛んでくる矢をそれでかわそう。
手入れされていない弓だし、これで防げると踏んだよう。
そして、一度だけ視線を足許確認するように投げて…そして。

「やぁーっ!」

透き通った声で叫ぶや、少年は一気に走り出した。
これにはゴブリンも面食らったのか、慌てて番えた矢を一本、取り落としてしまう。
それを拾おうとするところへ、少年は松明を放り投げた。
二重に驚いたゴブリンがのけぞったところに…今度は、大きく振りかぶった剣の一撃が吸い込まれてゆく。

濁ったゴブリンの悲鳴がダンジョンの通路に響いきわたった。

「あちゃー…。これ、ばれちゃいますか?」

見事ゴブリンを倒した少年は。
けれど、「やっちゃった…」とばかりに、しょぼん、と少女を振り返る。

イルルゥ > 矢を防げないようなら、これもフォローしようとしていたが。
しっかりと盾を使って矢を防ぐ少年にまた信頼を強めつつ。
自分は不測の事態に備える。

ゴブリンという醜悪な魔物にも恐れずに攻撃ができる少年の勇気はとても評価できる部分。
その勇気のまま、大上段からの一撃でゴブリンを下す姿を見た後。

「ううん。今のは仕方ない。ゴブリンもどうせ叫びをあげることが多いし。
…ちょっと厄介かな。アレフ君、落ち込むのは後!指示するから、走って!」

少女の耳は、断末魔と叫びを聞いて集まってくるゴブリンの群れを探知していた。
マップを思い浮かべ、この先に小さな部屋があることを思い出す。
少年に走ることを指示しつつ、時折『ジャンプ!』とか『左側を通って!』とか罠を躱す指示も出していき…

「ちょっとがんばろっか、アレフ君。ゴブリンに絡まれちゃったら、全員倒さないとどんどん集まってくるから。様子はちゃんと見てるから、全力で戦おう!」

入口が一つしかない部屋にたどり着けば、後を追ってくるどたばたと言う足音。
襤褸の腰布を巻いて、粗末な弓や棍棒をもったゴブリンたち。数は両手の指では微妙に足りない程度。
一方向から襲って来るしかない以上、対処はしやすいはず、という少女の判断

『ギギギギギギギギッギ!!!』

入口から溢れるように、部屋に入ってきたゴブリンが2匹、まずは少年に向けて棍棒を振りかざす――!

アレフ > 「はいっ」

時折、よっ、とか。はっ、とか。
掛け声も元気に少年は走る。
さっき放り投げた松明も、きちんと拾うのを忘れない。
そして、少女に指示された部屋へと飛び込むと、ほどなく届いてくるのは、ゴブリンの群れの襲来する気配。

いよいよ、なんか本格的だ、ダンジョンだ、なんて。
緊張と言うより少年は、冒険者らしい局面に、次第にどきどきしてきたよう。
頬はすっかり紅潮して、どんぐりまなこもきらっきらだ。

…もっとも、少女には少年のこんな様子は、別の『場面』を思い出させてしまうかも、しれないけれども。

いよいよ最初の正念場と見た少年、最初にしてみせたのは、ぽいっと松明を放ること。
これまでとしていることは同じだけれど、かかってくるゴブリンたちがひとまとめにならないよう、ちゃんと考えて放っているのがわかるだろう。
そう、地味だけどしっかりとしたクラウドコントロールなのだった。

そして、えいやっ、と。少年はまず、かかってきた二体を引き付けて…そして、手にしていた小振りの盾で、その二体にこちらからの体当たりで押し返す。
そして…。

『雷よ…!』

耳慣れない言葉は古代語か。
たった一言のその短い詠唱で、宙に小さく青く、稲妻が走った。
それは、最初の一体に命中すると、次へ、そのまた次へと電撃が連鎖していくではないか。
ただ、次へと移るほどに威力は弱まってしまうらしく、三体目からはよろけはするが倒れはせず…。

それでも、眼に見えて痺れた様子はありありと…。

イルルゥ > 指示も良く聞いてくれるし、これなら次はもう少し難しい依頼でもいいかもしれない…
そんな事を思いながら少女も走る。
突然の事態にも恐れることはなく、ただわくわくとしている少年。
少し、いけないことを思い出しながら…少年のことを頼もしく思いつつ、部屋へと。

ゴブリンと戦うときも、敢えて細かくは指示を出さない。
先程からの少年の動きから、基礎的なことはもうわかっていると判断したから。

「…?」

聞きなれない言葉の呪文。
それを不思議に思いながらも、単純だが強力な電撃に笑みを浮かべて。
少女の方にも3体。ぼろぼろの剣と棍棒を持ったゴブリンが下卑た笑みで襲い掛かってくる。
ゴブリンの嗅覚で少女が雌であることを察知しているのだろう。

「…来るな」

あの様子なら少年の方は各個撃破で問題ないだろうと。
少女もまた疾駆する。襲い掛かってくるゴブリンを軽く蹴り飛ばしていき。

当たった箇所に魔力を通し、体内で暴れさせることで内臓を破壊していく。
見た目には突然、軽く蹴り飛ばされただけのゴブリンが血を吐いて倒れたように見えるだろう。

「アレフ君っ」

そうして一段落着けば次は弓を少年に向けていたゴブリンに走っていき。
放たれる前に、そのゴブリンも地に伏していく。

アレフ > 「はわぁ~………」

確かに、雷撃で随分と動きを鈍くさせたけれど。
それでも、見る間にゴブリンどもを叩き伏せたその動きに、少年はただでさえまぁるい瞳を、さらに真ん丸に見開いた。

凄いとしか、言葉が思い浮かばない。

けれど、せっかくのゴブリンでせっかくのダンジョンハックだ。
もたもたしてらんない、と。
そう思っていた少年が、とたんにむす、と唇を尖らせた。

それは、下卑たゴブリンの笑みを見たからだ。

「………」

これまでと異なり、気合も掛け声もなく。
一気に少年は低く飛び込むと、残ったゴブリンのその腹に、低い位置から剣の切っ先を見舞ってゆく。
そしてそのまま、体当たりを見舞い、自らは踏みとどまると、勢いを利して刃を抜いて。

「………!」

そしてまた、低く低く飛び込んでは、少年もまた、立て続けにゴブリンを始末する…。

少なくとも、この群れは壊滅、始末できた、というのに。
少年は相変わらず、むすー、と唇を尖らせているのだった。

イルルゥ > 元々、ゴブリンは一体一体は大したことはない。
範囲攻撃を持っている少年と、ゴブリン相手では一撃必殺ともいえる攻撃力がある少女が居れば。
戦うことは難しくはない。

そして、まだできたての、小規模の群れだったのか。
殲滅すれば、それ以上ゴブリンは現れなかった。
少女は…邪魔になるからと適当に蹴り飛ばして部屋の隅にゴブリンの死体を纏めて。

「ふぅ。ちょっと休憩しよっか。返り血とか浴びたでしょ。
でも、すごいよ、アレフ君。びくびくせずにあんなに戦えるなんて」

一息ついて、布を水で濡らし、少年に渡そうと。
と、そこで…少年がなんだかむす、と不機嫌そうにしていることに気づき。

「?、どうしたの?体調でも悪い…?」

一気に少女の顔が心配そうになる。
もしや毒の武器などを使われたのか、と。
少年の身体をじっと見て、疵が無いかを確かめていく。

アレフ > 「…だって。ゴブリンがっ」

変な眼でイルルゥさんのこと見てた、と。小鼻を膨らませて少年は、ぷんすか、と怒る。
…要は、ヤキモチであるらしい。

濡らした布を受け取ると、ぶつくさとまだ、倒したゴブリンに文句を言いつつ、少年は顔をぬぐう。
それでも、幾分さっぱりして気分も清々としたのだろう。

次第に…じわじわと。
憧れのダンジョン探索で。
憧れ(?)のゴブリンを。
遂に遂に、倒したのだった。

にへら、と。そんな笑みの顔が、タオルの下から現れる。

「えへへ…」

満足げに微笑むと、少年は自分を見ている少女に気づいて照れたように鼻の下をこする。

それはもう、誉めて誉めてと言ってるよう。

…やはり、わんこか。

イルルゥ > 「あ、あー…うん。聞いたことあるかもだけど。
魔物の中には、そういうのもいるから、ね。仕方ないよ」

それは、もう性質としか言いようがない。
女性や、あるいは男性を攫い繁殖の糧とする魔物は確かに居る。
どう宥めたものか、と少し困っていると…タオルの下からは変わらない笑みが。

「ふふ。あの電撃もすごかったね。聞いたことない呪文だったけど…あれがアレフ君の武器かー」

誉めて誉めて、とせがむような少年に応えて誉め続ける。
成功体験、というのは大事なのだ。
失敗もそうだけれど、やはりこうしたら上手くいった、という得意分野は持っておいた方がいい。
持ち運びやすいバックパックから携帯食料を出して少年に渡して。

「あれなら、もう少し難しい依頼でも大丈夫かもね。
さっきの最後のあたりも、かけ声あげなかったし。えらいえらい」

自分ももぐ、と…干し肉を日持ちのするパンにはさんだ小さな携帯食料を食べつつ。
どんな状況でも物を食べられることも重要な要素だ。
褒めながらしばらく、休息をしようと。

アレフ > 「えへへへ…♪」

誉められるというのは、やっぱり嬉しい。
それも、初めてパーティを組んでくれた、尊敬する先輩冒険者だ。
少年もまた、少女を真似てパンに干し肉を挟む。
あむあむ、むぐむぐ、しっかりと日持ちする代わりに、少しばかりパサついたパンは、食べる端からポロポロ零れてしまうけれど。
食べると口の中が渇いてしまうけれど。
それでもやっぱり、何か成し遂げた後の食事と言うのは、カクベツなのだ。

「ほんと…っ!?」

もう少し、難しい依頼…。
ダンジョンの天井を見上げて。
少年の空想は、それはもう飛躍しているのだった。

難しい依頼って、どんなんだろう…。
次の相手は、どんなだろう?

キメラか!?ワイバーンか!?はたまたサイクロプスかっ!?
…いやいやちょっと待て、ゴブリンから随分飛躍しすぎ、と。自分ツッコミを入れている様は、見ている分にはそれはそれは楽しい百面相なのだった。

イルルゥ > 「はい、水。少しずつ飲んでね」

ぱさぱさしたパンだから。
水分も欲しいであろうということは十分知っていて…
飲むように持ってきた革袋に入った水を差しだす。

「うん。アレフ君、指示も良く聞いてくれてるし、判断もいいから。
…私しか今はパーティが居ないから、大型は難しいだろうけど…
中型の、弱めの討伐依頼もいいかもね」

例えば、ナーガやビッグスライムなどなど。
少年にとっては話だけしか聞いたことのない相手の話をしていく。
いきなり大型などは難しいけれど、ステップアップしていこうと。

「きっと強くなるよアレフ君。ギルドの人気者になっちゃうかもね?」

くすくす、なんて笑いながら。
素質は十分、そして素直で飲み込みがいい。
何も無ければ、強くなれることは間違いなさそうだ。

アレフ > 「はーい」

片手にパン。片手に、受け取った革袋。
口の端にパンのカケラをつけたまま、んぐんぐと二口ほど水を飲んで、少年はパンのカケラを舌で掬ってまた、水を一口。

「ナーガ…びっぐ…すらいむ…?」

それ、どんな魔物ですか、なんて。少年は興味津々だ。
ありがたくいただいた革袋を返し。
今度は少年が腰のポーチをごそごそと。

「はい、これどうぞ!」

どっちがいいですか、と差し出されたのは、干しブドウと胡桃の蜂蜜漬け。
冒険ではなかったけれど。
よく、狩りに出る時におばーちゃんがこう言っていた。
身体を動かして疲れた時は、甘いものだよ、と。

おひとつどーぞ、なんて言いつつ。少年は小さな手のひらにそれを広げてみせて。

イルルゥ > 口についてるよ、とくすくす笑いしながら自分の口元を示して。
ここで、無暗に発情するわけにもいかないため、付いている場所を報せるだけ。

「そうだね、えーと…」

ナーガは魔導士が実験に失敗したりして生まれた半蛇半人の魔物。
魔法をつかってきたりするので手ごわい
ビッグスライムはその名の通り大きなスライム。
弱点は変わらないけれど、単純にタフで倒しにくい

そんな説明を簡単に。

「わ、ありがとう。この匂い…蜂蜜?」

甘いものは、少女も好きだ。
粗悪ながらも、砂糖菓子なんかを良く食べたりしている。
甘い匂いに顔をほころばせつつ、少年の掌からちょい、と干しブドウをつまみ上げて一口。
美味しそうに、フードの内の口元が緩んで。

「ふぅ。じゃあ行こっか。もうすぐで行き止まりのはずだから、そこまでが調査範囲だよ」

しばらくそうして、甘いものを楽しんで疲労を癒してから。
ゆったりと立ち上がろう。調査依頼はもう少しで終わりそうだ。

アレフ > 「おいひーれひょ♪」

むぐむぐ食べつつそう言って。
おばーちゃんの手作り干しブドウと胡桃の蜂蜜漬けだ。
旅の間少しずつしか食べて来なかったけれど、残りはあんまり多くない。
けれど、へこんではいられないと、少年は元気に返事をして立ち上がる。

「はいっ」

パンパン、とお尻をはたいて。
甘いものを食べて元気も復活、盾も剣も重くない。

随分と燃えてきた松明を見て、少年は念のためにと新しい松明に『明かり』の呪文を唱えて、そして火を移した。

松明に呪文を唱えておくのはいざという時の用心だけれど、難点があるとしたら、呪文の効果が切れたとしても、燃えている間は切れたことに気づきにくい、ということ。

でもそれも、パーティなら。
最初から、火明かりと魔法の明かりを分担できる。
…そう、パーティなら!

そんな頼もしさに、奥へと進む少年の足取りは元気いっぱいだ。

イルルゥ > フードの内で美味しそうにもぐもぐと口を動かして。
冒険中に甘味というのは果実ぐらいのため、こうして濃い甘味を味わうのは新鮮だ。
ありがとう、とお礼を再度言ってから。

「ん。そういう細かい事、常に忘れないようにね」

しっかりと油断せずに準備をする少年に、それを続けるようにアドバイスを。
慣れてくるとそういう細かい事をおろそかにしてしまいがちになる。
そんな気のゆるみは、真面目な少年には起こりにくいだろうけれど。
一応、念のために言っておく。

少女もまたいつでも火の方の灯りは準備できるようにしており。
以前に購入したランタンは腰に提げれる丁度良いサイズだ。

「ふふ…、そこ、危ないよ。ちょっと大股で越えてね」

軽い言葉で罠を報せつつ道を進んでいく。
やがて、通ってきた広間より少し狭いくらいの部屋にたどり着き。
途中、大蝙蝠やスライムも襲ってきたけれど。
既に信頼しているため、少年に対処を任せていこう。

「ここがゴールだね。宝物も何もないけど…」

どうだった?と…ゴールとしては少し寂しい場所で、聞いてみよう。

アレフ > 一番奥。ここがゴールと、そう言われて。
少年は、触ってもいいかと尋ねてから。
その、一番奥の壁を、それはそれはしげしげと、ぺたぺた、ぺたぺた触っていた。
そして、なんともくすぐったげに、にっこりと微笑んだ。

「ゴール…かあ」

憧れのダンジョン。
いかにもな冒険者らしい依頼といえば、やっぱりダンジョンか遺跡。
子供らしいそんな希望がかなえられた、それはとっても嬉しい瞬間だった。

「…はい、たくさん勉強になりましたっ」

ぺこり、勢いよくお辞儀して。くるりと少年は回れ右だ。
帰りも、自分が先頭に。
教えてもらった罠の位置はなるべく覚えているはずだ。

…一度か二度くらいは、見落として注意もされてしまうけれど。

それでも、二人は二本目の松明が燃える前に。
残されていた道も踏破して。

あの、遺跡の入口へと戻ってきたのだった…。

「やった…………!」

空気が新鮮で、とても美味しい。
胸いっぱいに空気を吸って吐き出すと、自然と笑みがこぼれてくる。

「ありがとう、イルルゥさんっ!」

改めて、もう一度お礼を言って。そして…。

「あの…、ぼく、よくできた…?」

もじもじと、そんなことを尋ねるのだ。
そして、少年は上目に少女を見つめてそして…。
ご褒美欲しいな、なんて言ってしまうのだった。

イルルゥ > 一先ず、ここまでたどり着くまでに。
十分な数の魔物も倒し、その証を手に入れた。
これで調査任務としての証拠となる。
壁には先に自分が触って、罠が無い事を確かめてからどうぞ、と。
最後まで、油断してはいけないのだ。

「それなら、よかった」

少女からも、ぺこりとお辞儀をして。
ゆっくりと一緒に遺跡を逆走していく。
罠の位置を得意げに告げてくる少年にそうそう、なんて褒めながら。
時折、引っ掛かりそうになるのは少女が気を付ければいい。特に怒るでもなく…むしろ、役に立とうとしてくれているのが嬉しい。

入口へと戻ってくれば、少女も一つ、息を吐いて。
途中少しトラブルはあったけれど、予想以上に少年が動けたため、余裕があったように思う。
そんなことを考えていれば、元気よくお礼を言ってくる少年。
何だかその眼が、期待に揺らいでいるような。

「どういたしまして。2人だからあんまり大きな依頼は受けられないけど
また、依頼に行こうね。……ん、もう。……本当は、もっと戸惑ったりするかと思った。
けど、とっても良くできてたよ。言ったこともしっかり実践してくれてたし、満点!」

少し甘めの採点だけれど、これも成功体験だ。
フードの内でにっこり笑顔を浮かべて太鼓判を押そう。

「…ご褒美は、ちゃんと王都に帰ってから、ね?」

期待しているような少年に…少し当てられて。
ほの赤く頬を染めながら、ゆったりと帰り道を進んでいこう。
こうして、初めてのパーティ依頼は成功を収めたのだった。
成功報酬は…ほとんどの魔物を倒したのは少年だったから。7割くらいを少年に渡したとか。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からアレフさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からイルルゥさんが去りました。