2020/03/30 のログ
リムリア > 用は済んだかと問われると、曖昧に笑って誤魔化すことに。
依頼の期限は特に区切られてはいない。
強いて言えば、早咲のその薬草の花が枯れるまで、といったところ。
常に出されている依頼で、数に制限もないから達成できなかったとしても問題はなく。

「こちらの方は大丈夫です。
 申し遅れました、ギルドの窓口を担当しているリムリアと言います。
 治癒の魔法も使えますので、ご入用でしたらお声かけください。」

冒険者と言うなら、それは騎士であっても平等
それがギルドの基本スタンツなのだけれど、相手の形式ばった態度のせいか
こちらの対応も、いつもの窓口対応のそれになってしまいがち。
どうせ王都に戻ったらわかるのだし、と。
そのまま営業モードで名前を名乗ることに。

「一応、この辺りの森のことなら、大体わかりますから。」

そんな大層な心得はないのだけれど、道案内くらいはできますと付け加え。

アルヴィン > 「なんと…」
己の出会ったその相手が、ギルドの受付であると知り、騎士はまたもぱちくりと瞳瞬かせた。
「道案内は是非にもお願いしたいところだが…これは…無様なところをお見せしたものだなあ」
なんといっても迷子だ。森で迷子になる冒険者など、頼りになるものだろうかと、騎士は考えているのだろう。冒険者と言っても前衛もあれば後衛もあり、状況の向き不向きもあるのだけれど、とりあえずそれはおいておく。
「申し遅れた。アルヴィンという。王都のギルドには先日登録をさせていただいた。この国には…数日前についたばかりだ」
なので、地理も疎ければ風習観衆にも疎い。ご無礼があればお許し願いたい、とも騎士は付け加えて。
「リムリア殿は…窓口で仕事をされているというが…」
見れば、何やら野草を摘んでは集めているよう。採取の依頼をこなしている途次のようにも見受けられ、騎士は不思議そうに口を開く。
「…この国のギルドでは、職員も冒険者として依頼をこなすのだろうか?」
娘が歩みを進めたなら。騎士もまた鎧を鳴らしつつ、その傍らに歩を進め、長閑にそんな問いかけを…。

リムリア > 「森を歩き慣れてない方でしたら、迷っても仕方がないですよ。」

何やら恐縮しているらしい騎士様に軽くフォローの手を入れる。
獣道でもあればともかく、それさえない森の奥に立ち入ってしまえば、
よほど熟練の冒険者でもなければ、迷ってしまっても仕方がない。
―――そうならないようにするのも、冒険者の腕のひとつではあるけれど、それは口にはしない。

「ご無礼というか、そんなに畏まっていただかなくても大丈夫です。
 こちらは、ごくごく普通の一般人ですし……。」

来た道を戻りながら、緩く首を振る。
事前情報がなくとも相手の鎧に盾を見れば、傭兵ではないことくらいはすぐに分かる。
異国とは言え、騎士は騎士。国に仕えるその身分は貴族と変わらない。
失礼があるかもしれないのはこちらのほうであり。

「そうですね、うちのギルドだとそういう人もいるって感じです。
 もちろん事務方専門の人もいますよ。」

そもそも、マスターが元冒険者なのだ。
そういう人材が集まっておかしくはない。
とはいえ、それも王都にいくつもあるギルドのうちのひとつのことであり。

アルヴィン > 「この度は…それを思い知った。不知の智などというつもりはないが…己が何を弁えておらぬかを知るのは、難しいな」
騎士として武者修行の旅を続け、剣や武芸の腕は磨いている。それは、キマイラ討伐を単騎で成し遂げることで証立てられる。が…。
「冒険というものが、得手と不得手を補い合う者同士にて成されるということが、ようやくわかった。いや、勉強になったな」
などと、騎士は呑気に告げるのだった。
そして、娘が集めていた野草へと視線を向けて、物問いたげに黙して、しばし…。
「リムリア殿は、採取の依頼もこなされているのであろう?もしよろしければ、おれもお手伝いをするが…?」
案内をいただく礼をしたいということのようだが、果たして娘にはこの騎士が野草の区別がつくように見えるだろうか?

リムリア > 「それほど難しいことじゃないですよ。
 私じゃ、そのキマイラに出会ったら、逃げ切れるかも分からない。
 だったら、近づかないようにするだけのことです。」

できることを、そのできる範囲でするだけ。
それは騎士である相手も同じことだろう。
勉強になった、などと感心している様に、苦笑を向けて。

「お手伝いですか? いえ、大丈夫です。
 それよりアルヴィンさんには周囲の警戒をしておいてもらえると助かります。
 他の獣が寄ってきたりすると、私じゃ対処できないかもしれませんし。」

生首から滴る血は少なくなったとはいえ、辺りに臭いを撒き散らしている。
その匂いに誘われて他の獣が寄ってこないとも限らない。
それこそ適材適所というものだろう。
騎士様に薬草採取ができないとか、決してそんな風に思っているわけではなく。

アルヴィン > 娘の言葉を騎士は、それはそれは真面目に聞いている。ただ単に根が真面目であるというだけでなく、きっと身分にかかわらずに素直であるのだろう。どんな人のどんな言葉にの片鱗にも、きっと学ぶものはあるはずだ。
騎士の姿勢はどうやら、そんなものに根差しているらしい。
「なるほど。それならばお任せあれ」
娘の言葉に、騎士はそう請け負うように告げた。
自らが鎧を鳴らし歩いているが、少なくとも敵意ある者…こちらを獲物と見定める獣の気配もそれは含む…の接近を感じ取れぬほどに、手ぬるく師は己を鍛え上げはしなかったと、そういう自負が騎士にはある。が、特段肩肘張った様子もない。
娘の傍ら、歩調を合わせて。騎士は森の小道をゆっくりと進む。
「…王都は、随分と栄えているようだが…あまり治安のよろしいところではないようだと見受けた」
ぽつり、そう騎士は歩を進めつつ独り言つように告げる。
根っから騎士として育てられた身としては、驚くことも多かったのだろうと、それは察せられる声…。

リムリア > こちらのお願いを請け負ってくれた相手にお礼を告げて。
代わりに荷物の中を漁り出す。

「ありがとうございます。
 代わりにと言っては何ですけれど、ビスケットです。
 森の中に半日も居たんでしたら、お腹空いていませんか?」

荷物から取り出したのは、小さな布袋。
中にはほのかに甘く香るビスケットが数枚入っている。
ドライフルーツの入ったそれは、非常用の保存食といったところ。
移動しながらでも手軽に食べられる便利なもので。

「治安は……そうですね。人が多い街ですから、どうしても。
 田舎の方だと平和ですけれど……その分、食べ物に困ったりしますから。」

治安に関しては、もうそういうものだという認識。
他の国には行ったことがないから比べようがないけれど、
のんびりした故郷と比べると確かに気を付けなければならないことは多い。

騎士である相手には気になることもあるのだろう。
ただ口にした答えとしては当たり障りのないものになり。

アルヴィン > 娘がビスケットを取り出したその刹那。それはもう盛大に、ぐぎゅるるる…、という腹の虫の音がした。鎧の腹部分…銀色の鎖帷子に掌を当てて、騎士はそれはもう情けない顔をしてみせた後に、ありがたく受け取ったのだった。
健康そうな白い歯が、ビスケットを齧る。
練り込まれていたドライフルーツの香りが鼻腔を抜けて広がると、保存食にありがちな味気無さなど無縁の風味が広がってゆく。
「これは美味い…!」
そう言うと、騎士や貴族にはあり得ぬ行儀の悪さで、歩きながら瞬く間に、そのビスケットを平らげてしまったのだった。
「いや、ありがたい。道案内をしていただいたうえに、このような美味いものまで…」
当たり障りのない答えを紡いだ娘の様子に、騎士もまた深く尋ねることをしない。その代わりに、騎士は別のことを問いかけた。
「何か…貴女に礼をしたいな、リムリア殿。おれに何かできることはなかろうか?」
道案内に、ビスケット。騎士にはどちらも、まさに困ったところに差し出された救いの手だ。
時の氏神に礼を返したいというのは、これはもう至極当然のことなのだと、騎士は娘へと問いかける。

リムリア > 布袋に入っていたビスケットは、決して多くはなかったけれども。
さすがにお腹を空かせた大の大人には少なすぎたらしい。
あっさりと平らげてしまった様子に、苦笑を返し。

「手作りなので、美味しかったなら何よりです。
 あと残ってるのは、干し肉の類くらいですけど……
 王都までお腹もちそうですか?」

盛大な腹の虫の音は、隣を歩く少女のところまでよく聞こえた。
残念ながらまだ春先のこと季節、道中に果物が生っている様子はない。
となると、他に食糧を持参していなければ腹ペコのままということで。

「お礼されるほどのことじゃないんですけど……
 そうですね……じゃあ、ギルドの依頼をがんばって熟していただければ。」

少女としてはお礼と言われても困惑するばかり。しばらく悩んで思いついたのがそれだった。
依頼の達成が増えれば、ギルドの評判も上がって、お給金も増えるかもしれない。
何と言ってもギルドにとっては、腕の立つ冒険者というのは財産なのだから。

アルヴィン > 「王都まで…かぁ」
慨嘆、とばかりに呟いた騎士のその様子を見れば、まだまだ満福には程遠かったのだとありあり知れる。
ゆっくりと歩を進める二人。森を抜け、街道に出て。その街道の行く手には王都の影は確かに見える。が、まだしばしは歩かねばなるまい。
キマイラとの遭遇ということで、賢い騎士の軍馬は今日はギルドに預けたままだ。
「…空腹は最高の調味料ゆえ、ギルドについたら食事を楽しこととしよう…」
冷たいエールに肉の串焼き。冒険の成功を祝う一杯を楽しみに、乗り越えることとする、などと。騎士は大真面目に告げたのだった。そして…。
「…リムリア殿のお言葉を伺うまでもなく、依頼には精を出させていただこう。おれも、修行を兼ねてと思っているし…腕を認められれば、ギルドから定宿を紹介してもらえるかもしれぬと聞いた。
 それとは別に…そうだな。次にお眼にかかる時までには、何かお礼を用意しておこう」
こればかりは、気持ちの問題というものだ。
道案内にしてもビスケットにしても。騎士にそれは、金銭には替えがたくありがたいものであったのだから…。
街道には、春の気配が濃くなりまさる。
キマイラの生首を提げた騎士の姿は、さすがに道を行き交う人々が増え始めると、ぎょっと人目を引いてしまい、そのまま娘も好奇の視線に巻き添えを食うことになってしまったことだろう。
それでも、無事に依頼が果たされたのは間違いない。
その依頼の報告を騎士は、共にギルドへと戻り来た娘へと、してみせることとなり…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からアルヴィンさんが去りました。
リムリア > 先に見える王都まではまだ1刻は掛かるだろう。
それまでとても持ちそうにもない騎士の様子に、干し肉も進呈しようか。
お腹が膨れるようなものではないけれど、腹の虫を騙すくらいのことはできるだろう。

「戻ったら、たっぷり食べてください。
 それくらいの報酬は軽く出てるはずなので。」

キマイラ討伐ともなれば、かなりの額だったはず。
飲んで食べたくらいではなくなりはしない。
ただそれも、王都についてからのこと。

周囲からの奇異の視線に耐えながら、キマイラの生首をぶら下げた騎士様と、
今しばらくは一緒に街道をゆくことに―――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からリムリアさんが去りました。