2019/03/21 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 梅林」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > メグメールの街道から離れた自然地帯の森のはずれ、背の高い針葉樹の向こう側。
ちょっとした丘陵地帯があるそこにひっそりと梅林があった。
この季節、一重に八重、1分咲きに3分咲き、8分咲き、赤、白、白っぽい赤、赤っぽい白、―――個性触れる花の枝をつけて丘陵を彩っている。
天気は上々。春特有のもやが掛ったような空に、暖かい空気。時折、そよと少しだけ冷たい風が吹く。

ちらちらと散り始めるものもあるその梅林の丘へ、針葉樹の森を抜けて現れる女がひとり。
一目でシェンヤン出身と解る黒い衣装を身に着け、上機嫌に跳ねるような足取りで梅林の間を行く。

ホアジャオ > とん、とん、とん、たん。と、ふと足を止める。
少し視線を上げれば、己の周りには8分咲きを越した、赤っぽい花を付けた枝。
風もないのにちりちりと花が舞う。その光景に目を細めると、手にしていたごく細い両刃の剣の鞘を払って、草叢へと放り投げた。

「まさか、こンなとこ見つけられると思って無かったケド…」

紅い唇がにいと三日月に笑って、剣をすうと持ち上げると、陽に透かすように頭上に翳す。

ホアジャオ > そうしてくるり、と背を返す。
細剣が同時に軌跡を描いて、散り際の花を更に散らした。

「开心(あは)……」

女の足取りは止まることなく、更にくるり、くるりと、そのまま舞を舞っていく――――その度に、枝から舞い落ちる紅い花が更に細かく散って、霞のように草叢へ降りかかって行った。

ホアジャオ > 「よ……ッとっ」

とん、たん。踏み込んで立ち止まる。
細剣をひゅんと振って肩に掛け、振り返れば――舞った跡の草叢がうっすらと紅に染まって、再び花を咲かせているよう。
合間から雪柳の白い花が見えれば、女はぱっと笑って一足飛びに近寄った。
そうして白い小さな花に顔を近づける。馥郁とした香りに細い目を更にほそめると、その表情が少し歪んで――

「ッくしっ」

ホアジャオ > 鼻の下を少し擦りながら身を起こす。
それでも上機嫌な様子は隠せずに口の端を笑ませながら、先に放った鞘を取りに草叢へ向かった。

「……しばらく、遊べそうだね」

鞘を拾って、剣を収めながら梅林を見回す。そうして空気の香りを嗅ぐようにすん、と鼻を鳴らして。

「春天来了……」

来た時と同じよう。弾む足取りでまた、針葉樹の向こう側へと…

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 梅林」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 月夜の丘 」にぼたんさんが現れました。
ぼたん > ほぼ真円に近い月の夜。
街道から森を隔てた向こうにある、草原に覆われた丘で、ぽんと跳ねる影が一つ。

月はごく薄く靄が掛かって空に滲むような光を零していたが、草原はそれでも明るく照らされている。
いよいよ春に差し掛かった今では、冬枯れていた草原はすっかり黄緑に覆われ、色とりどりの小さな花が所々。
跳ねていた影はその丘に点在する噴雪花の繁みに転がり込んで、暫く白い花を揺らした後、ころりと転がって月の光の下にまろび出た。

「…うぅん……」

転がり出たのは黒い毛皮の耳と尻尾を持つ女。
黒いシャツと下着だけのごく軽装だが、酔ったようなその顔は紅潮すらして、ちっとも寒くは無さそうだった。

ぼたん > 「あァ…ひさしぶり…」

草原にぺたりと座り込んだ姿勢で、背筋を猫のようにしならせて月を見上げる。墨色の瞳の奥にちらちらと黄緑色の光が躍って、下がり気味の目尻をさらに下げてくすくすと笑った。
そうしてまた噴雪花の繁みに向き直ると、すんと鼻を鳴らして香りを嗅ぐ。

「ほんと、良い季節に、良い月……」

更にとろりと笑って、両手足を投げ出して草原に寝転がった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 月夜の丘 」にフォークさんが現れました。
フォーク > 良い月の夜は遠乗りをしたくなる。
男は愛馬ビッグ・マネー号に跨って街道から外れた丘までやってきていた。
傭兵には夜中に隠密に行動する仕事が与えられる時もある。夜目が利くように夜間活動をする鍛錬をしているのだ。
が、それは建前で月夜の晩はなにか起こりそうで外出したくなる。

「いい子だ、ビッグマネー号。鼻息もなるべく立てるんじゃねえぜ」

愛馬の顔を撫でながら、男は馬の歩みを進める。馬の口には板を噛ませているので声は出さない。
男は草原へと移動する。季節柄、花が咲いているだろう。そこで小休止だ。


草原へと出た。
男は馬から降りると、奇しくも女が寝転がっている場所へと歩いていく。馬も勝手についてきていた。

ぼたん > 蕩けた表情で薄もやに滲む月光を見上げていた所、その瞳がぱっと見開かれて女は文字通り飛び起きた。
地面から、重い足音が近づいてきたのを獣の耳が敏感に捉えていた…ぴくり、ぴくりと黒い毛皮のそれば神経質に震える。
逃げなくては…獣の本能でそう思う。
だが、広い草原は見晴らし良く、影伝いに森へ逃げ込むには遅すぎた。
せいぜい噴雪花の繁みに身を隠すのが精いっぱい…そろりとその身を白い花の中に埋めていった。

(…もォ……折角の夜なのに)

邪魔したのは誰だろう?人影が傍へ近づいてくれば、繁みの中からそおっと覗く…

フォーク > 「お前はいいな。草も美味しく食えるんだろ?」

女がこっそりとこちらを様子を伺っているのも知らず、柔らかな草を食む愛馬を羨ましそうに眺める男。
報酬の多寡にかかわらずほぼ数日で使い切ってしまうので常に懐具合は寂しい。
一般国民なら一生食べていける額の報酬を七日で使い切ったこともあるが、何に使ったのかは覚えていない。

「いや、思いこみはいけねえな。野菜だって草の仲間みたいなもんだ」

男は馬の横で中腰になると、馬が食べている草をむしって口に放り込んだ。
ゆっくりと咀嚼することしばし……。

「クソ苦えやぁああああああ!!!」

思いっきり仰け反って草原に倒れて悶絶する男。ビッグマネー号はそんな相棒を無視して食事を続けるのであった。

ぼたん > 女がそおっと伺っている人物。
何やら大柄の人間の男なのは解る…男はそうしてしゃがみ込むと、唐突に大声で叫んで草原に倒れ込んだ。

「!?!??わァっ!!!」

余りの唐突さに女のほうも叫び声を上げて、噴雪花の繁みから男とは反対側の方へと転がり出る。
ころんと起き上がってしまった、という顔をして口を押える…

(…まだ気づかれていないかしら……)

口元を抑えたまま、四つん這いの恰好で噴雪花の向こうから男を伺おうとした。

(何か、癪とか起こしてたりしたら夢見悪いし…)

男の方から見ていれば、白い花の向こうにひこひこと、黒い毛皮の耳が揺れるかもしれない…

フォーク > 「わざとだ!わざと苦い草食ってるな!」

男は喉を抑えてのたうち回りながら愛馬に抗議をする。馬はやはり男を無視して草を貪るのであった。

さて、男の大声に驚いて繁みから転げ出てしまった女はひとつ「あっ!」と驚くことになるであろう。
女が噴雪花のもう一度確認しようと噴雪花の向こうから男を伺ってみると、男の姿はない。馬が食事をしているだけである。
では男はどこに行ったか。
女は急に月光が遮られたことに気づくだろう。顔を上げれば、男は女に向かってハイジャンプしてる光景が見えるはずだ。
月を背景にジャンプしているので草食って悶絶してた時よりは絵になる姿と思っていただこう!

「あれ?」

男は巨体を空中でくるりと回転させて女の隣に着地する。そして女に愛想よく手を振った。

「やあ、いつぞやはどうも」

怪しい気配がしたので飛びかかってみたがその正体は以前、海で死にかけた時に助けてくれた女だった。
恩人との再会に単純に喜ぶ男だった。