2018/10/24 のログ
■ジェネット > 「私は遊牧民だからな。草原で羊を追って生きる経験はある。
だから多少は大丈夫な筈だ」
多分、というのは言うまい。そのくらいの誇りはあるのだ。
気候や植生、動物の種類は故郷の草原とは結構違うようだが、どうにか生きることは出来よう。
問題は、夜の冷え込みだが。
「いや、うん、出来ることの範囲とは言ったが、じゃあ自決しろとかそういうのは無しで頼むぞ。
良識の範囲内で、出来ることだ。
対価を払わないのは草原では恥じること、恩を受ければ必ず返さねばならないからな、出来る範囲で」
意味深なニュアンスを含めてくる少女に流石に気づく。
阿呆の猪武者だという自覚はあるが、ああもあからさまであれば警戒くらいはするのだ。
■タマモ > 「遊牧民と言うのも、実物を見るのもそう機会がなくてのぅ。
よく分からんが、出来るのならば良かろう」
言ってしまえば、砂漠を彷徨う放牧民、が少女の思い浮かべる姿。
なのだが、本人が大丈夫と言っているならば、大丈夫なのだろう。
と言う訳で、希望に沿う形となった、らしい。
「ふむ…良識の範囲、か…」
軽く考える…うん、良識と言うのは、人によって違う…人じゃないが。
己には己の、相手には相手の、そんなものである。
「さすがに、命を奪っては住処に通す意味がなかろう?
安心せい、危険はない程度に、お主に出来る事をして貰うだけじゃ。
…それで良いのじゃな?
良いならば、付いて来れば良い」
嘘は言ってない。
よいせ、と岩から腰を上げれば、タライをがしっと掴む。
「きゃっちあんどりりーすじゃっ!」
そして、タライを引っ繰り返し、ざばーっと中を満たしていた水ごと、釣ったであろう魚を河川へと放った。
続いてタライも釣竿のように、ぽんっと消せば、くるりと足先の方向を変える。
案内、または戻ろうとする、住処の方角へと向けて。
■ジェネット > 「出来るとも。自然と共に生き、羊を追って暮らすのが遊牧民の生き方だ。
機会があれば草原に来てみると良い、うまい羊をご馳走しよう」
王国にあこがれて草原を出たが、王国に来てみて草原の良さもよくわかった。
今更氏族が恋しいなんて情けないことは言わないが、草原に帰ることがあればこちらで出来た知己を招いてもいいな、と。
「ああ、そういうことならば任せてほしい。
肉体労働でも針仕事でも煮炊きでも、人並みには出来ると自負があるからな。
ありがとう、タマモ。この恩は必ず返す」
深く頷き、頭を下げる。
初めて出会ったケンタウロスに良くしてくれる、この少女の懐の深さに感謝を示す。
「――勿体無い、あれは食べないのか?」
豪快に川に返された魚を指さしてタマモに問いながら、その後ろをかっぽかっぽと蹄を鳴らしてついてゆく。
■タマモ > 「ふむふむ…まぁ、機会があれば、行ってみるのも悪くないか。
その時があれば、馳走して貰おうかのぅ」
羊…そうか、そう言えば、羊も食べれると聞いた事がある。
どんな味かは興味半分、と言った感じではあるのだが。
相手が何を思い、それを伝えているかは気にしない。
「ふふ…まぁ、ある種、肉体労働やもしれんな?
お主にしか出来ぬ事も、ある事じゃろうて。
恩と言うか、半分以上は己の腕によるものじゃろうがのぅ。
それでも、恩と受け取るならば、それも良かろうか」
ゆるりと歩き始める少女、背後となった相手に見えぬよう、くすくすと笑う。
果たして、この後の事が相手の為となるのか、ならないのか。
「釣りは、確かに糧を得る行為ではある。
しかし、時に趣味に行う事もあるもの…そういうものじゃ」
相手の問いに答えながら、少女はそう遠くない住処へと歩みを進めていった。
そこへと辿り着いた先の事も、あれやこれやと想像を巡らせながら。
■ジェネット > 「ああ、そのときは都合が合えば私の背に乗っていくと良い。
草原を駆けると気持ちいいぞ」
あの懐かしき日々。果たして帰ることはあるだろうか。
もし帰るとすれば、夢破れて所帯を持つため、というのが一番有り得そうではある。
「ふむん……ああ、見ての通りの重騎兵だからな、腕力も脚力も自身がある」
単純に、言葉通りの肉体労働を課せられるのだろう。
重量物の運搬か、あるいは家事のたぐいか。何にせよ、少女に受けた恩に得意分野で報いられるのは望むところだ。
――それが勘違いかもしれない、というのには気付かず、真剣に。
「そういうものか。生活が豊かなのだな……」
ぽくぽく。素朴な蹄の音に、鎧の擦れる音を交えながら。
少女と馬は、夕闇に消えていく。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からジェネットさんが去りました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からタマモさんが去りました。