2018/08/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にオデットさんが現れました。
■オデット > ―――――ぁ、と
思った時にはもう遅く、重力に倣って傾いていく体を止められなかった。翻る視界は先ほどまで見上げていた晴れた空を、その端に靡く自らの金髪を拝む。籠いっぱいに摘んだ薬や毒の類の草も同じように宙に舞い、続くのは――――ドザザ…!と勾配の急な坂になった獣道を転がり落ちていく肉の音。
それから――――どれくらい経ったろう。
体の節々から来る痛みに目が覚めて重たい目蓋を持ち上げると、先ほどは晴れていた青空が真っ暗がりの闇に包まれていた。遠くの方で野鳥の鳴く声がして、次にはそちらを見つめてみる。さり、と髪が土や落ち葉に擦れる音。
「 …… 、(痺れた背を片肘立てて持ち上げ、) ――― っつ、」
上半身を起こしたは良いものの、たちまち背に強い痛みを感じて反射で首を捻った。肩甲骨から腰に一本枝の先で切ったような切創があった。背の開けたドレスの淵が土と血で汚れている。
浅くため息をつきあたりを見渡す。喜びヶ原のある山道で女はよく薬草を摘む。慣れた筈の道行も、こたびは上手くいかなかったようでここからは随分と高い人の轍道から転げ落ちたようだ。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にガルルさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からオデットさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にオデットさんが現れました。
■オデット > 高々と上る月があれからもう随分と時間が経ったことを教えてくれている。とかく女は座り込んだまま、これからどうすべきかと奇妙な冷静さでもって小首を傾げた。
■ガルル > 旅行商の少年。
自然地帯に行けば薬の元になる薬草があると聞いて、採取に来た少年。
ほどほどに収穫して上機嫌で鼻歌交じりに獣道を軽い足取りで歩く帰り道。
本当はもう少し取る予定ではあったが、夜空と月があっという間に厚い雲に覆われ、太陽が隠されると同時に風と、そして湿り気を帯び始めるのを感じ戻ることにして。
「早く戻らないと危ない、かな?」
そう小さく呟きながら忌々し気に空を見上げため息一つ。
空から足元へと視線を戻したときに、ふと気づいたのは獣道の脇、不自然に枝や草が折れている。
折れてから時間も立っていない様で…。
「だれか、いますかー? 大丈夫ですかー?」
薄暗くなりはじめた自然地帯に響くのは少年の声。
新しくできた道を見ながら匂いを嗅げば、濃い人の匂いに、血の匂い。
こんな時は自分が獣人でよかったと感じ、足元に注意をしながら降り始める。
■オデット > 心許無い月明かりを頼りとするには、震盪から起き抜けたばかりの女の眦目は、闇に疎過ぎた。――ともあれ、墜ちてしまったものは仕方がない。近場に引っ繰り返った籠の中身も、転げて行く最中に”振り撒いた”から当然空。唯闇雲に草を毟って歩いた訳ではなく、その好し悪しの選別には幾許もの時を浪した。拾い集めるのも、再び摘んで歩くのも負傷のこの身では些か難しかろう。
平生であれば心地良い筈の夏夜の涼風も、今はただ膚傷に染みて、枝垂れる金糸で背中を覆うようにし、ふと――そこで漸く音を聞く。叢踏むを聴き分ける程人離れした聴覚を持たぬから、女が拾い得たのは人声の方だ。手負いの身、夜、獣の山。非常に善くない。ささやかな緊迫を食みしめて唇を縫うも、音はどんどん近付いてくるようだ。
「 ―――…。」
意図的な寡黙はひとなみの警戒といくばくの憂慮を合わせて長く。随分とあどけない声色も、声だけで”誰何”を判ずるには思慮の材物が少なすぎた。
■ガルル > 坂道を降りながら見つけたのはひっくり返った籠と薬草。
散らばった草を見れば、まだ採取してからそう時間が経過していない事が分かる。
流石に自分も背負っており、この持ち主がどうなっているかもわからなければ、優先順位はかなり低い。
人の命の方が少年にとっては大事で籠と散らばった薬草は後回しにして血の匂いをたどりながら降りていく。
近づいているが反応がない。
警戒されているなどとは思ってもおらずむしろもっと重体なのではないかと心の中が不安にざわつく。
草をかき分け現れたのは籠を背負った少年。
月明かりに照らし出される相手から向けられるのは警戒の混じる目…。
ではあるが、とりあえずまだ生きていれば、不安も少し和らぎ、自身の胸を小さな手で撫でおろす。
「えと、血の匂いがしますが…怪我は大丈夫ですか…?」
意識がある相手、これ以上怖がらせてはいけないと、一度足を止め見つめる月をも思わせる金色の瞳が苦しそうな相手を見て心配そうな見つめ、潤んでいる。
「あ、僕は行商でガルルっていいます。 ここには薬草を取りに来て…歩いてた道に変な痕と、血の匂いがあったので…怪我の薬の元の薬草とか、救急セットなら持ってます。」
妖しくないという事を懸命に伝えようとしながら背負っていた背負子を下ろし、籠の中を相手に見せ、自分の話が嘘ではない事、助けようとすることを懸命に伝えようとしている。
■オデット > 死生観の希薄さは女の性分から来るものである。野獣に出くわし食い散らかされるのも、野党に襲われ腸ごと刺し貫かれるのも、自らの生死に照らすと女にとってはひどく如何でも良い物となった。ではこの身を纏う逼迫した警戒の正体は何か。それは、死に至るまでの過程で生じる”痛み”や”屈辱”への嫌悪。汚いのや痛いのが嫌、ただそれだけだった。
兎角、暗闇から黒く陰った草を掻き分けて現れた人影に、目を凝らしてみよう。目蓋を狭めて夜目に焦点を合わせ、二三言喋らせた。この場にある音は全て少年から放たれる。遠くからでも人血の如何を嗅ぎ分けた少年への怪訝は、この国の人々の身の丈や姿形が、うちがわに在るものと決して比例し合わないという常識に思い当って直ぐに萎んだ。
「 あら、奇遇ね。 私も草を摘みにきたのよ―――― ただ、降りる場所を間違えたみたい。」
道崖から転げ落ちて身を切り、気を遣っていた女の言葉は軽やかだった。薄笑みは寧ろ闇夜に薄気味悪く、懸命に自らの白を伝えようとする少年とは不釣り合いに映るだろう。どうやら山に慣れているらしい。その真偽や胎の内は如何であれ、己に手を貸そうとしているように見えるがどうか。前屈みに手を付き、立ち上がろうと試みるが――髪の裏側で切創が浅く裂けるような感覚がして片瞼を撓める。とは言え、堪えがたい傷みではない。
「 ……こんな幼い児でも商いをするのね。 背を枝で”やった”みたいだけど、慣れれば平気よ、ありがとう。」
ちら――、と少年が背負う籠を見た。鼻腔を鳴らすと確かに覚えのある薬草の匂いがする。どうやら嘘ではないらしい。
■ガルル > 旅から旅の行商人ではあるが、少年は未だ純朴で、よほどの因縁や、現場を見ない限り、命が失われるのは嫌だし、
助けられるはずの命が失われることには抵抗を感じる。
「はい。上で籠と薬草を見つけました…。でも、こっちがどうなっているのか分からなかったので…おいてきてしまいました。」
ごめんなさい─と、小さく付け加えながら籠の中を見せるも、立ち上がろうとする相手が顔をしかめれば、痛さを想像し、小さく少年の口から「あっ─」と呟きと共に籠を落とし手を差し出す。
「でも、血を止めたり、消毒したりしないと… 怪我が酷くなっちゃいますし、背中の傷以外大丈夫ですか? 歩けないなら…どこでも運びますよ?
体は小さいですけど、いつもはもっと、もーっと、重い荷物背負って行商してますから。」
相手が籠の中をちらっと見れば少年は籠を地面に置き、相手を支えようと近づきながら、相手をうかがう少年の瞳が今にも泣きそうになってしまう。
「無理をしたら傷が開いちゃいますよ…?」
■オデット > とさ、籠が落ちた音。咄嗟に差し出された手は助け起こそうとしてくれているのか。傷みの仔細を想像して小さく悲鳴した少年とは対照的に、一瞬顔を顰曲させた女の表情は至極せいひつに満ちている。
「 ―――ありがとう。」
差し出されたものは受け取ろう。少年のそれに比べれば随分と青白い自分の手を重ね、やや力む形で体を起こし、立ち上がる。やや汚れた服の其処此処から土埃や草ぢれが落ちた。大地を踏みしめ直す。鈍さはあるが、幸い捻挫や打撲は無いらしい。
まるで自分が怪我をしたかのように瞳を潤ませ顔を歪めるは、あどけなく無垢な子供のよう――否、純粋に然うなのだろう。体を案じてくれる少年の手を静かに話、どうやら上に置き去りになっているらしい籠を今一度見上げて浅く息をついた。
「 傷は気侭に塞がるものよ、時間さえ経てば――。 それにね、歩けるみたい。 」
一歩、二歩、野を歩いてみる。傷みは無い。立ち上がれば今度は下に来る少年の旋毛を見、ややあってから口角を持ち上げた。
「 助けてくれてありがとう、 ―――私は大丈夫よ。 ―――あなたも気をつけてお帰りなさい。」
――とん、と、叶うであれば少年のこうべへ軽く手のひらを乗せた。助け起こしてくれた礼だ。後は、どの道をたどれば好いか、――瞼を閉じればぼんやりと浮かぶ吉凶の匂いを辿るだけ。少年が往く方向を識らぬから、別れの挨拶は背でした。どうか、心根の優しい少年も無事帰路へ付けるように――― 女はふとまじないに賭して。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からオデットさんが去りました。
■ガルル > 「いえ、いいんです。」
ふるりと首を振り、
立ち上がり歩けることを確認するような相手を見れば、そんなにひどい怪我ではなかったのであろう。
「はい。家でちゃんと手当てしてくださいね…?」
その事実にほっとしながら小さく頷き、一人で帰れるといわれてしまえば心配ではあるが致し方がない。
ここで無理に引き留めるのも良くはないであろうと悩んでいる内に述べられたお礼と共に頭に触れる手。少し擽ったそうに笑い小さくほっとして。
鈍いながらも歩き始める相手。
その背がみえなくなるまで見送り、少年も籠を持ち上げ背負いなおすと、来た道を戻っていく。
「籠とか薬草・・・持ち帰るのも… うーん。」
今度会った時に売れた分お金を渡せばよいかと、少年の籠と分けるように皮袋の中に入れ。籠の中へ。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からガルルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にノールさんが現れました。
■ノール > そこは小さな湖畔だった。
半ば沈むように威容を見せる大きな岩の方が目立つ。
目印にしやすい水場ということで良く人が集まる。
だから、そこを襲撃することにした。
獣人は細かいことは判らない。
だから、見て、人が少なければ襲うし、多ければ小鬼が闇雲に突っ込まないかと眺める。
大きな岩場の影で大剣を担ぐ。いつでも襲撃できるように。
ちらり、と鼻先だけ出して匂いを確認した。