2017/07/06 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にペインテイルさんが現れました。
■ペインテイル > 昨夜の街道から離れた場所にある自然地帯。
人間の膝ほどの高さまで伸びた草花と疎らに生えた果実のなる木々が目立つ比較的穏やかな場所である。
だが今宵はあの夜の様に虫も鳴かず、鳥も鳴かず、夜行性の獣の気配すらない、静寂に包まれた領域と化している。
幸運にも空を見上げれば月は静かに冷たい光を放ち一帯を照らし、星の明かりも眩く見通しは良いだろう、が、それでも生物の気配は薄く、時折何かが動く気配はあっても、それも直に消えていく――そんな異常な世界。
無論この現象を巻き起こしたモノがいる。
それは夜の闇を獣の形に切り取った様な艶やかな漆黒の体毛に包まれた1頭の獣、風よりも早く大地を駆け、鋭い爪で金属の鎧すら切り裂く力を持つ魔獣ペインテイル。
こんな日は誰もがこの付近には近づかないものだが、この一帯にはこんな夜だからこそ咲く不思議な力を持った花や霊薬の材料になる草木が姿を現す。
そして、それを狙い摘み取りにくる獲物を喰らう為に魔獣は低い草花の中に紛れ身体を伏せて、存在に気づかず足を踏み入れる愚か者を待ち伏せようと辺りに眼を凝らしていた。
もし勘のいい狩人が居れば視線くらいには気がつくかもしれないし、その匂いと大地を踏みしめた痕跡に気がつくこともあるだろう、だがその時点でその者は魔獣のテリトリーに足を踏み入れているのだ。
■ペインテイル > 黒曜石を削り作り出した球体の如く、魔獣の眼は瞳孔もなくつるりとしている、その眼を瞼で半分ほど覆い隠し、意識は特徴でもある巨大な耳へ聴覚へ、それと合わせて嗅覚にも意識を集中させる。
だが聴覚はともかく、嗅覚は濡れた土の匂いと数多の草木の香りで鈍く、それでも聴覚だけに頼らないのは不意の遭遇に対応する為である。
完全な狩猟者の獲物を待ち伏せる姿。
気配もまた上手い具合に消しているのだが、殺気を完全には隠せていない。
隠せていたらここ一帯はもう少し賑やかである筈だ。
だが隠せていないその殺気が虫を沈黙させ、獣を追い払い、不気味なほどの静寂の空間を形成しているのだった。
……ひとつ、ふたつ……みっつ…………。
魔獣は待つことが非常に苦手であった。
故に頭の中で獲物をどうやって喰らうか、何処から喰らうかと妄想を繰り広げる。
雄であれば両腕から、柔らかい腹から臓物か……。
雌であれば邪魔な革を剥ぎ取り、柔らかな肉を楽しんでから必要なければ喰らって具合が良ければ巣に引きずり込んで孕ませよう。
ぐぅ…………。
魔獣の腹がなる。
食欲と性欲と区別の曖昧な欲望の火種がふつふつと沸きあがり始めていた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にレフェーリアさんが現れました。
■レフェーリア > 月明かりに照らされた叢を、籠を小脇に抱えながら一人の女性が歩いている。魔術を用いた治療以外にも、薬草を混ぜ合わせる治療薬や霊薬の類の知識を持ち合わせているからこそ。
ただ戦場に赴くばかりでなく、薬を売るのも職業の一つであった……もっとも、結局は身体を求めて戦地に赴き、無事な者と床に着いたりもしていたが。
虫の類に集られたくは無い為、月明かりを頼りに朧に光ったり日中よりも見つけやすい薬草を摘み取っては籠に収めていく。人の手が加えられていない分実に集めやすく……
「…………っ」
最初に彼女が感付いたのは叢の中で身を潜めている何かの存在、次いで異常な静けさだった。勘は以前よりも格段に鋭さを増し、魔物が潜むとは直感から。
目を凝らしても見えはしないが、着実に近寄っているとも知り……今の内に籠を放り出して逃げてしまったら、運がよければ振り切れるのかもしれないが。
僅かに表情を強張らせてから、彼女は少し動きを止めて、そのまま薬草を摘み取りながらも移動を、相手に対する接近を続ける。既に射程にも収まっているかもしれないとも分かっていたが。
身体の方がこんな時に限って、その気になっても居ないのに抵抗しようとも思えない。食われる事が本分だとも言う様に、彼女もおかしいと思いながら、
また一歩、相手に向かって足を進める。
■ペインテイル > 鼻腔を擽る芳しき香り、草木を踏みしめ歩く足音、僅かながら陰った月明かり、それと夜風に混じるかすかなぬくもり、その全てが誰かが領域に踏み込んできた事を示唆する。
頭部より垂れる聴覚が鋭い巨大な耳の先端を少しずつ5本に枝分かれさせ、硬質化させる事で巨大な爪を作りながらも、気配が此方に向って進んでいく事に聊か不思議なものを感じていた。
気がついていないのであれば、近づいてくるにしてももう少し揺らぐ筈が、何だろうか着実に近づいてきていると感じる。
がそれは魔獣にとっては好都合で、それならば追い立て喰らうのも非常に容易いだろうと、伏せていた身体を四肢に力を込める事で立ち上がり、直傍に射程距離に完全に入り込んだ獲物に対して真正面からその姿を月光下に曝け出したまま、獲物が足を進めるのと同じようにじわり、じわりと大地を確りと踏みしめ着実に間合いをつめて行く。
瞳は丸くつるりと瞳孔も何もない、筈が獲物を視界に捕らえたとたん眼の表面が縦に亀裂を生み、裂けて、金色の瞳を生み出し、ギョロとその滅多に見せぬ輝く金色の眼で獲物を品定めするように睨み続けた。
――じわじわと詰まる互いの距離。
無論獲物が逃げる姿勢を見せれば喰らいつく事も考えて、大地には確りと爪先を食い込ませて走る用意は済んでいる。
逆にこのまま間合いをつめることを許すなら、それはそれ正面より獲物に齧り付いて柔肉を頂くために邪魔な革を剥ぐつもりで。
■レフェーリア > 異質な雰囲気は距離を詰めるだけ鮮明に感じ取れて、今や籠に新たに草花を摘まずに、一歩一歩確めながら歩くのを止める気配も見せない。注意を払っている事から完全に気付いているとも理解するのかもしれず、
尚更近寄っている理由が何を指すのかも、分かってくれたらと密やかに思う中でも構わず、身体を無防備に魔物の射程内へと収めていく。もう逃げられはしない距離。
真正面に月明かりすらも照らされていない様な、不気味な膨らみをその視線の中に収め、迫っている気配と雰囲気から相手こそが静寂を産み出している魔物であるとも理解した所で、
「――っ」
黒い塊から露に成った金色の光が、僅かに見て取れた。完全に視線が合ったのを感じる中、射抜かれた野生の視線に何処かで惹かれるものがある。獰猛な獣欲を宿した瞳に、
嘗ての経験が思い起こされ、仄かに月明かりに照らされた顔に朱色が差し込んだとも気付くかもしれない。丁重に彼女は籠をその場で取り落とすと、
――逃げないどころか、その場で服すらも肌蹴させて行く。引き裂かれるよりはマシなのかもしれないけれど。
纏っていたローブを使って籠の中身が零れ落ちない様に丁重に包んでから草花の上に落とし、下着姿のまま更に足を進める。羞恥心はさほど無い、この場には相手と自分しか居ない。
嗅覚の鋭い相手ならば、その胸から漂う乳臭さ、既に子持ちである事すらも気付くのかもしれない。