2017/06/10 のログ
■ブランシュカ > 「下手に放置する方が危ないもんね。」
後々の事を考えれば当然だろう。
無論、自分達も多々訪れる場所だと言う打算もあるのだけど。
「それはもちろん。僕の目的はそっちだもの。」
男の言葉にはにんまりと口角を上げて答えやりつつ、更にと足を進めて。
徐々に狭まる道幅には、分かりやすく眉根が寄る。
ふと、鼓膜を揺らした何かを引きずるような移動音。
視界には映らぬ距離なのだろう、小さなその音に警戒するように視線を滑らせ。
■カイン > 「理解を示してもらえて助かるね。
俺としてもこれが仕事だ、頼もしい支援は助かる」
相手の言葉に笑って応じながらも、ふと何か広い空間があるのを感じれば一旦足を止める。
少女と同じように何かを引きずるような音を聞き咎めれば、
そっと内側を取り出した鏡で角度を調整して覗き込んで確認し――。
「ああ、ビンゴだな。どこのバカが作ったのか知らんがキメラだ。
俺が先に突っ込むから支援を頼めるか?」
そこに写った獅子と山羊の頭、そして大きな蛇の尻尾を持つ怪物の姿。
何かを引きずる音は尻尾が引きずられる音だったらしい。
戦えるかどうか、少女の方に視線を向けて問いかけ。
■ブランシュカ > 男の台詞に気を良くしつつも意識は音へ。如何やら進行方向から音がしているらしい。
一緒になって足を止めれば、己はニンフと共に通ってきた道を警戒。
そうして返される言葉に、分かりやすく表情が呆れたと言わんばかりのものになる。
無論、男にではない。キメラを生み出したどこぞの輩に対してだ。
「もちろん。存分に頼ってくれていいよ。」
にんまり笑顔を浮かべては力強く頷いて見せる。
再び杖を掲げては、再び男へと補助魔法を掛ける。
先程はかけていなかった防炎の魔法だ。薄らと茜色の光が男を包み込み、やがて空気に輝きが溶けて。
「アレの火力にもよるけど、火炎を防ぐシールド張っておいたよ。
効果が切れる時は音がするから気をつけてね。」
■カイン > 打ち合わせの最中、更に見せる少女の器用さに感嘆するハメになる。
随分と多芸なものだと感心しながら、笑顔の少女の頭を強引に引っ掻き回してしまおうと手を伸ばし、
意地の悪い笑みをニヤりと浮かべてみせる。上機嫌さを隠しもしない。
「上出来だ、あとでご褒美に何かやろう。何がいいか考えとけ?
――さて、それじゃ行ってくる」
子供も扱いを嫌う相手にしてみれば至極不服な態度ではあるだろうが、
それを改める気も更々無さそうな男の姿。注意事項を聞いて頷けば、
剣を抜いて広場へと躍り出た。
男に気がついた合成獣が獅子の口を開けるなり炎を吐き出してくるのを怯まず突っ込み、
少女の支援のお陰で傷一つなく切り抜ければ無防備な獅子の胴に刃を振り下ろす――が。
「チッ、割りと面倒な相手だ、な、っと!」
寸での所で割り込んできた山羊の頭が刃を横から弾いて男に角で切りつけてくる。
明らかに知性を感じる動きにげんなりしながらも、少女の動きを確認するよう一瞥する。
何をするにも巻き込みかねないのでは話にならない。
■ブランシュカ > 撫でると言うにはあまりにも乱雑な掌の動きに、咄嗟の事で頭ごとぐらぐらと揺らされてしまう。
手が離れれば多少顔をぐらつかせながらもキッと相手をキツく睨み付け。
「頭ッ!揺らさないでよ!もうっ!」
広場へと踊り出る男へ、潜めた声で文句を告げて見送った。
頭を撫でくり回すわご褒美だわ、失礼にも程がある。
むくれていればニンフに宥められ、数拍の呼吸を置いて憤りを収めれば、早速始める相手とキメラの攻防へと目を滑らせて。
狭い道幅に身を置いておくのは少々不安ではあるものの、今己も広場の中に入り込む事も良策とは思えない。
場の相性があまり良くないニンフではあるが、後方の警戒を任せ、己は相手が優位へと立てるようにすべく、再び魔力を練って扱うタイミングを見計らい。
■カイン > 「悪い悪い、文句は後で、な、ったくしつこい…!」
後ろの文句には声を上げて返すものの、しきりに炎を吐いて牽制しながら
山羊の頭が後ろへ押し込んでくる動きを繰り返す事に辟易としながらも、
少女の支援のお陰で手傷なく捌きながら傷を負わせていく。しかし決定打になるにはあまりに程遠い傷ばかりである。
元々の力量差に加えて少女の支援のお陰で余裕を持って戦えて居るため危なげはないのだが、
大技を使うには閉鎖空間の洞窟の中は場所があまりにも悪い。己を覆う炎の護りが軋む音を聞きながらも、
このままならば遠からず動きを鈍くなった魔獣を仕留められる――そう思った瞬間。
「しま…ッ!逃げ…うおっ?!」
もう一つ、最後の頭が己への攻めへと参加していないことに気がついた時にはもう遅かった。
自分が躍り出てきた入り口、つまり少女の身を隠した場所へといつの間にか押し込まれた結果、
今まで文字通り息を殺して機会を疑っていた蛇頭が鎌首をもたげて少女を締め上げ、あわよくば噛み付こうとばかりに躍りかかる。
防ごうとする男の動きは狙いすました一際強い炎の吐息により護りを剥がされ一瞬動きを止められてしまう。
最初から狙いすました狡猾な一撃だった。流石に三つも頭があればそれなり以上に頭が回るらしい。
■ブランシュカ > 男へ掛けていた補助魔法を掛け直しては綻びを修正していく。
動きが阻害されそうな傷を負わない男の優秀さに感心しながら、常に補助の効果を発揮できるように魔法を展開して。
見た所、耐久戦になるのだろう。それも勝利は然程危なげないように思える。
「…――そっちは大丈夫?」
後方のニンフへと問いかけるのに、ほんの一瞬意識が逸れる。
己の問いに答えようと振り返る彼女の表情が強張ったのも束の間、翻るその姿に呆気に取られながら再び意識は前方へ。
透ける体躯の向こう側に近づく蛇の頭を、ニンフが水鏡を張って弾くも、力づくに押し込まれ、瞬く間に割れてしまう。――咄嗟、腰元に括っていたベルを弾くように響かせた瞬間、水妖精が目の前から掻き消え。
「ッ、」
ぐるり、と己の体躯を巻き上げ引き絞られれば軋む感覚に思わず表情が歪む。
掛けている補助魔法のお蔭で痛み等はそう酷くはないが、自力で脱出するには時間がかかるのも明確。
と、なれば己が第一に優先すべきなのは、アタッカーのバックアップだ。
事前に展開していた魔法はまだ続いている。素早く男へ防炎魔法を再びかけ直し、耐毒のランクを上げて防毒へ。
重ねて上昇の魔法をかけようとするも、締め上げる力を強められたと思った矢先、鈍く輝く蛇の眼が己の肩へと目測をつけて牙を深々と食い込ませ。
「――――ッ!」
■カイン > 「この…!バカが、こっちはなんとでもなるってのに…!」
炎に巻かれたのも一瞬。すぐに効力が戻った事に視線を向ける余裕こそないものの状況を察すれば、
思わず毒づいてしまう。覆いかぶさるように爪を振るってきた獅子の体を正面から受け止め、
逆に弾いて怯ませれば視界の端で少女が蛇に噛まれるのが見えた。
「――そんなに死にたいなら…生き埋めになっておけ!」
一瞬頭に血が上る。己の不手際でこうなったことに対する忌々しさをそのまま吐き捨てて、
先程から使用を躊躇していた大技を半ば以上博打と覚悟して撃ち放つ。
剣を地面に突き刺した直後、明かりに照らされた地面の影が槍のように伸び四方八方からキメラを滅多刺しにしてゆく。
同時に対して頑丈でもないのが目に見える室内もガリガリと音を立てて削れて行った。
「……――ッ!」
やがて限界を迎えた天井が崩壊する瞬間、部屋の外側少女の居る通路の方へと転がり出る事に成功すれば、
未だに息がある様子の蛇の脳天に剣を突き刺して少女の体を助け起こそうと手を伸ばし、心配そうに様子を確認しようとする。
「おい、ブラン。生きてるか…?こっちを優先するするとか無茶にも程があるだろうが」
■ブランシュカ > 攻撃力の足りない己では抜け出すのには時間がかかる上、あの頭の回り様だ、下手をすれば人質にされかねない。そう判断するのも早ければ、行動に出るのも早い。
魔法で防御力を上げているとは言え、深く牙を突きさされれば流石に痛みもある。が、致命傷と言う訳でもない。
締め上げる力もそうだが、命を奪う事が目的とは思えぬ加減具合に表情を殊更険しくして。
「ッ゛、ぅ、―――」
刹那、響いた男の声に痛みから一瞬意識が奪われる。地面へと突き刺された剣が見えたかと思えば、黒い一閃がキメラの体躯を蹂躙していく様が視界に入り込み。
ややあって、蛇の締め付ける力が弱まり、本体の痛みに悶えるように突き刺していた牙を引き抜く蛇頭。
広場の崩落と共に宙へと浮いていた身体は巻き付かれたままではあるものの、地面へと漸く降ろされて。
「……、ムチャじゃ、ないもの。君が勝つって信用したんだよ。」
男を補助した方が被害は軽微ですむと判断した結果だ。
じくじくと響く痛みを堪えつつ、にんまりと余裕ぶった笑みを浮かべて宣って。
■カイン > 幾らか確認した上で命に別状は無さそうなことを確認してから、ほっと息を吐き出す。
蛇の体から少女を救い出せば、両手で少女の体を抱え上げてしげしげと傷口と締め付けられた体を眺めようとし。
「末恐ろしいこったな。やれやれ、そこまで信頼されたら応えない訳にはいかないだろうが」
人の使い方を心得ていると苦笑い混じりにぼやきながら少女頭を、先ほどとは異なり軽く優しく撫でてやる。
ねぎらいの言葉の代わりと言わんばかりに笑って応じながらも肩を竦め。
「しかしこの蛇毒とかねえだろうな――それで何か欲しいものは思いついたか?」
ふと思いついた疑問を口に出して足元の蛇を蹴りつけつつも、
続いて問いかけるのは先程少女がむくれた内容だ。
顔を覗き込んでにんまりと意地の悪い笑みを浮かべながらに問いかけ。
■ブランシュカ > 予期せず抱え上げられれば、うわ、と短く声を上げ向けられる視線にぱちぱちと瞳を瞬かせる。
衣服を突き破って噛み付かれた所為で牙の太さの分だけ穴が開いてしまっているが、それ以外は目立つ傷も特になく、服も多少汚れてしまった程度。
回復の魔法を掛けてしまえば傷痕も残らず完治するだろう。
男の言葉に得意げに笑って見せつつも、頭を撫でる手には些か態とらしく、つん、と顔をそっぽ向けて。
「毒はあっても別に――、」
然し、続けられた言にあっさりと顔を向け直し、
「………結局助けてもらっちゃったもん。チャラでしょ。」
悔し気に唇を尖らせた。
あわよくば回数制限ありでも召喚の契約を結ばせようと、先の戦いぶりを見て思いついたものの、流石にこの状況で言うのは己のプライドが許さなかった。
ちぇー、だのと宣いつつ、早速回復魔法を展開しては己と相手へと施して行き。
■カイン > 「毒と言っても魔法でどうにかなる物とならん物があるからな。
特に精神に作用する、厳密に言うと毒ってわけでもないものは案外厄介だ。魅了やら認識阻害やらな」
判らんぞとはいいつつも、相手の受け答えがしっかりしてることを確認すれば放っといても大丈夫そうだと笑って判断する。
小器用に治療を使って行く相手に下から背中をパシン、と軽く音を立てて叩き。
「お前ががんばった分に報いてやる、って言ってんだ。
言っただろご褒美だって。対価を求める行為ならそういう事は言わぞ。
大体、そもそも他に何も賭けてないのにチャラになるのがおかしいだろうが。
相殺するなら他に何かお前さんがかけて無きゃ駄目なわけだしな。
その場合は俺が要求するものは最初あった時の事考えたら判りそうなもんだから、滅多なことは言わんこったな」
変な遠慮をする相手にクツクツと喉を鳴らしてツッコミを入れながら、
言外に素直に受け取っておけと肩を竦めて言い含める。
余計なセクハラを忘れないあたりはこの男の性分ではあるのだろうが。
■ブランシュカ > 男の言に、確かに、と頷いた。
今の所、魅了の様な効果も認識阻害も自己判断の内では起こっていなさそうではあるので一安心ではあるが。
軽く背を叩かれれば思わず肩を小さく跳ねさせ、紡がれる言葉を悪態もつかずに大人しく耳に入れる。
傭兵と言うには見た目も言動も――セクハラ発言はあるものの、特有のらしさが薄いように感じる。
「―――…ヘンな人。
いや、…ううん、―――いい人なんだね。」
思わず、憎まれ口を叩くものの、直ぐに表情を崩し、呆れたように笑う声で告げた。
それこそ、先程のキメラとの攻防で己の状態を確認するや否や、あんな場所で大技を使ってくれる程には。
ふ、と短く吐息を逃がせば改めて相手へと顔を向け。
「カインはさっき、僕の事を精霊使いかって聞いたけど…本当は違うんだよね。
僕、召喚士なんだ。」
■カイン > 「いいか悪いかで言うと悪党なのは間違いないな。ただ気まぐれなだけだがね」
そう言われても困ると肩を竦めて言い返す。実際に善人かと言われればそういう事はないだろう。
その気ままさが少々偏っている部分があるのは本人も認めるところでは有るのだが、
基本的に子供に甘い部分があるのは性分ではあるのだろう。
苦笑いとともに少女の評価を受けて肩を竦めながらも、続いて紡がれた言葉にほうと声を上げ。
「それはまた、珍しいは珍しいな。なるほど?
変な怪物でも捕まえにいけと言うなら手伝うのは吝かじゃないが」
少し真面目話しになりそうだと判断したのかその場にあぐらをかいて、
少女を膝の上に乗せて対面に座らせれば正面から見据える形。身長分見下ろすことになるのはしょうがないが。
■ブランシュカ > 「善人だって破壊行動はするでしょ。君が悪党なのは分かってるよ。」
心の底から善良な一市民であるなら、己相手にセクハラ発言はしないだろう。
そんな風に、揶揄めいた顔で告げやって。
「僕が捕まえたいのは怪物じゃないよ。カイン、君だよ。
―――とは言っても、別に世間一般に知られてる召喚士みたいに、主従の契約があるわけでも、君に制限があるわけでもないんだけど。」
相手が話を聞くと言う姿勢になれば、先までも、僅かながらの殊勝な態度は何処へと。
その膝上に座している事も気にせず堂々と言ってのけた。
「僕の召喚は相手を縛る事ができないんだよね。強制力がないんだ。
契約した相手が応えてくれる気になった時だけ、僕の傍に喚ぶ事ができる。
だから―――…まあ、ムリヤリ捕まえても無駄なんだ。」
その契約だって回数も時間も制限がなく、そもそも契約相手の意思で断ち切る事すら出来てしまう。
そんな事まで詳細に、軽く肩を竦めながら男へと告げる。
「もちろん、断ってもいいよ。
これがダメなら他のご褒美、考えるし。…思いつくかよく分かんないけど。」
■カイン > 「善人は少なくとも破壊活動はしないと思うがねえ」
喉を鳴らして相手の言葉を聞いていけば、突然降ってわいた言葉にポカンとした表情を浮かべる。
が、己の素性に気がついてるふうでもない相手のことを思えばなるほどと頷いてみせ。
「ま、それくらいならいいだろう。召喚されるなんてそうそうできる経験でも無さそうだしな」
それくらいならかまわないと対して考える素振りもなく言い放って承諾してみせる。
少々軽く考えてるフシはあるものの、特別嫌う理由も無さそうだというそれだけの理由では有るのだが。
そのまま、少女の頭をポンポンと軽く叩くように撫でてニっと笑い。
「それで小さな召喚師さんや、契約の内容ってのはどうすればいいんだ?
呼ばれる分には何かの儀式なりなんなりが必要だろう?」
■ブランシュカ > 「そうかなあ。僕は国とかは一番破壊活動の多い善人達の集まりだと思うんだけど。」
そもそも善悪など、立場が変われば評価が変わってしまう。
自覚の無い、子供らしからぬ考え方をしれりと嘯いては、さて如何すると言わんばかりで相手を見詰め――
「………かっるいね!? あれっ?ここからもうちょっとこう、言葉の応酬とか、駆け引きとか、こう、なんか…あるもんじゃないの…っ?」
まさかこんなにも早く承諾されるとは思ってもみなかった。
双眸を大きく見開き、隠しきれない動揺に目を白黒させて。
あれえ?と首を捻っていれば柔く撫で叩かれる頭に、少々動揺を引きずりながらも仕切り直しとばかり、咳払いを一つ。
「大げさな儀式はないよ。僕とカインの間に魔力のパスを繋げるだけ。
今から君の中に僕の魔力を流すから、それを受け入れて。」
告げるや否や、少女の身体を緋色の輝きが薄らと覆い始める。
近い距離を縮めるよう、相手の両頬へと手を伸ばし、拒まれなければその儘額同士を合わせようと。
■カイン > 「そりゃまた随分と怖い場所だことだ。俺もいろいろな国を渡り歩いたが、
土地によって色々とそれぞれ特色が有るのは間違いないからな」
肩を竦めて相手の言葉には言い返すものの、動揺を見せる相手に楽しげに笑いながら、そっと相手の顎に手を当てる。
そのまま顔を引き寄せて額と額を軽く押し当てる格好を作って顔を覗き込み。
「褒美だと言っただろう?それくらいなら構わん、とも。
――それに俺が欲しい、お前の持ってる物っていうのはお前さんの体一つだけだ。
好意じゃなく、対等な取引としてであれば俺はそれを要求する。
ブランにそれを受け入れる覚悟はあるのか?」
少女の体を片手で抱き寄せ、背中をなぞって軽く臀部に触れながら問いかける。
今までになく直裁的な、ある意味口説いてるとも迫っているとも取れる文句。
とはいえ少女に逃げ道は用意してある辺りは色々と甘いのだろうが。
「ああ、判った――ふむ」
そのまま軽く目を閉じて相手の行為を受け入れる。
とはいえ肉体的に特に変わった事は感じず、軽く首をひねり。
「これで終わりか?」
■ブランシュカ > 思った以上に大雑把だ。
相手が契約を受け入れてくれると言うなら、それはそれで助かるのだけれども。
「―――――……、…っ、…ぅ、ぅうう…ッ、くち、閉じててよっ!もうっ!」
男の言葉を、初めは真剣な面持ちで聞いていたものの、続けられる言葉や、引き寄せる掌が背筋を伝い降りる感覚に、びしり、と固まった。
見聞きをした事はあっても、こんなにも直接的に向けられた事の無い、分かりやすい欲の容に一気に顔が熱を持つ。
形容のし難い羞恥心に見開いた瞳がじわじわと潤み、唇を戦慄かせれば男の頬を包んでいた手指でぎゅっ、と抓って引っ張ると言う攻勢に出た。
許容も拒否も出来ぬ儘、何とか魔力を流し終え。
「…ん。今は、パスを通しただけだから、…喚びかけを受け取るには、それが通る状態にする必要があって、…受け取らない時も自分で選べるんだけど……ええっと、何て説明したらいいんだろ…。」
今までに契約を交わしたのは人語を理解しているとは言え、感覚で生きる事に重きを置いている者だ。
喚びかけを受け取れる状態になれば感覚で分かる、と言うのを説明した覚えがない。
大人ぶりたくとも発達しきっていない自身の語彙力やら伝達力やら。険しい顔で呻き声を上げ。
■カイン > 「そこはお前さんがちゃんと選ばないといけないところなんだがな。
ま、実際に答えを貰うのはそのうちにするとして――よっこいせ、っと」
分かりやすく狼狽する様子に喉を鳴らして返しながら、頬の軽い痛みに笑うことで応じれば手の動きは止めてやる。
とはいえ少女がまだ何か説明をしようとしているのを横に聞きながらお姫様抱っこの形で少女の体を抱えあげ、
荷物を肩に背負って先程来た道を遡るように歩きだし。
「それはやったら判るだろ、そのうち分かることだから別に気にするな。
感覚的なものを説明しようとしてもよくわからなくなるだけだ。全く、まだまだそういう所は子供だな」
そんなことを言いながら、ずんずんと出口へ向かって歩いてゆくのだった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からカインさんが去りました。
■ブランシュカ > そんな事を言われても。それが今の正直な気持ちである。
恥ずかしいやら恨めしいやら、纏まらぬ思考の儘、恨みがましく相手を睨めつけて。
然しそれも束の間、再び身体の浮く感覚に小さな声を上げ、反射的に落ちぬようにと男の肩口に手を伸ばし。
「ぐッ…!」
悔しくとも反論出来ぬ現実に臍を噛むのであった。
八つ当たりに男の肩口をバシバシと幾度も叩きながら、抱えられた儘洞窟を出ていく。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からブランシュカさんが去りました。