2017/04/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 寂れた遺跡」にルーテシアさんが現れました。
ルーテシア > マグメールの貧民地区で、怪しげな老人から買った宝の地図。
古びてよれよれになった紙を頼りにやってきたのは、草原の中にポツンとある小高い丘だった。
街道沿いからも見える丘だが、入り口となる洞窟は、街道とは反対の側面にぽっかりと口を開けている。
その入り口でランタンに火をつけ、一人の少女が静々と、ゆっくりと奥へ進んでいく。

そして歩くこと、凡そ十分。ごつごつした天然の洞窟は、徐々に人の手で整備されたであろう平らな床に代わる。
振り返れば、彼方にぽつりと、入り口から差し込んでいるであろう月明かりが見えるのみだ。

「んー、どこまで続いてるのかな、この洞窟。
 結構深くまで来たはずなのだけど……?」

こつ、こつ、と革靴が床を打つ音が響く。
何でも、この奥には価値のある宝が隠されているという話だ。
しかし、未だにその気配は感じ取れない。

ゆっくりと、確かな足取りで進む少女。
この先でを待ち受けているのは、お宝か、それとも――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 寂れた遺跡」にカインさんが現れました。
カイン > 男がこの遺跡を訪れる事になったのは本当にただの偶然だった。
運の良し悪しでいえば、完全に運が悪かったと言っていい。
街道へと向かう最中、丘を越えて行こうとした所を脆くなっていたらしい天井を踏み抜き、
遺跡の内部へと落下してしまったというのだから何とも笑えない。

「久しぶりに死を意識したぞ……10年ぶりくらいか」

人並み以上に頑丈な魔族と言えど死ぬときは至極あっさりと死ぬ。
得に不意打ちは魔族の死因の中でもかなり上位に位置する死因なのは確実だった。
転落した場所はどうも遺跡の中でも比較的広い場所のようで、
自分が落ちてきた個所から洩れる月明かりに照らされて幾本の柱が立ち並んでいる。
ため息とともに明かりをつけようとした所で、ふと通路らしき方向から音が聞こえれば穿いた剣の柄に手をかけた。

「――誰だ?」

静かな誰何の声を投げかけながら、誰も訪れた事が無いのだろう遺跡の広場の真ん中で気配の方へと視線を向ける。

ルーテシア > かつり、かつり。漸く履き慣れてきた革靴は、石床に当たると小気味よい音を立てる。
これでも足音を控えているつもりなのだが、静寂に満ちた空間は僅かな音さえ反響させて、彼方へと運び去ってしまう。
罠等を可能な限り用心しながら、しかし未だに慣れていない足取りで、また一つ角を曲がった。
その刹那、奥でガラガラと、何やら崩れるような音。一抹の不安が脳裏をよぎる。

「え、えぇっ!?ここ、崩れたら生き埋めだよぅっ……!?」

思わず声に出してしまったのは、経験不足のせいだろうか。
とは言えきっと、崩落の音に紛れて聞こえないはず、と思い込み、もう少しだけ奥へと進む。
やがて、廊下の向こうに、わずかに明るい空間が見えてくる。入り口を振り返った時と同じ淡い光だ。
崩れた場所が外に繋がったのかもしれない。そう判断すると、光のほうに足を向け――。

「わひゃうっ!?わ、悪い人とかじゃないよっ!?」

不意打ち気味の誰何に一瞬跳ね上がると、泡を食ったかのように返事をする。
少女がランタンを掲げれば、紫の髪を後ろに流した姿が、闇に浮かび上がることとなる。

カイン > こんな所に遺跡があるという事実そのものが驚きだが、
それ以上に手付かずの遺跡であれば守り手が存在するのは自明の理。
そう考えての警戒であったが、どうやら杞憂に終わったらしい。

「あー…なんだい嬢ちゃん、御同業――って風にも見えんな。
 冒険者か何かかい?こんな所にこんなものが眠ってるというのは初耳だが」

現れた少女はどうにも自分が警戒に値するような相手にも見えず、
慌てた様子に思わず笑みがこぼれる。声を上げて笑いながら言葉を返し、
闇夜に浮かび上がった少女の姿に剣から手を離せば両手を上げて少女の方へと近づいてゆく。
怯えさせたにせよ驚かせたにせよ、一応の意思表示は必要と考えてだろう。

「俺はカイン、傭兵なんだが…あそこから足を踏み外してな」

言いながら視線を上に向けて見せれば、己が落下してきた穴から儚げな月明かりが
漏れて遺跡の一部を照らしているのが見えるだろうか。

ルーテシア > ランタンの明かりで露わになるのは、天井が崩落した岩の広場だ。
そして、元々は天井であっただろう瓦礫の近くに、誰何の主が立っている。
それは、金髪の偉丈夫だった。灰色の外套と腰の剣が、歴戦の風格を滲ませている。
一瞬、茫然としていた少女は、男の言葉に我を取り戻す。

「あ、えーと……一応、冒険者だよ?なって、一か月にも満たない感じだけども
 町でお爺さんに売ってもらった地図には、ここにお宝があるよって書いてあったんだけど」

やっぱり騙されたのかしら、と項垂れながら、彼に地図を差し出す。
古びた紙質は確かにそれっぽいが、その真偽は定かではない代物である。
慣れた冒険者であれば、地図を売った老人が、新人冒険者を狙った詐欺師だと知っているかもしれない。

閑話休題、彼がどうしてここにやってきたのかを聞くと、少女は目を丸くしながら。

「え、あの高さから落ちたって……ケガとか大丈夫?その、包帯とかあるけど、いる?」

一応は冒険者、怪我の備えはあるから、と彼の体を気遣いながら問いかける。
初対面の相手を疑わない、というのは純粋なのか、警戒心が足りないのか。
どちらにせよ、少女は腰に下げていた小物入れから塗り薬と包帯を取り出して見せ、おろおろとしていた。

カイン > 少女の自白に、得心行った様子で頷いて返しながら、
特別警戒した様子もなく自分に対する心配する様子に両手を下す。
こういう所に来る単独の冒険者となればもう少し貫禄があろうモノだが、
やけに初々しい反応に思わず笑いながら首を横に振る。

「こいつは…そうだな、確かに少々眉唾だ。
 が、それほど大人数の入った気配がないからな、枯れてない可能性はあるが、怪しいかもな」

少女の示す地図をしげしげと眺めた後、顎に手を当てて周囲を見回す。
月明かりだけでは視界が不明瞭な事に業を煮やし、
右腕を振るえば周囲を明るく照らす小さな炎が男の周囲を取り囲む様に表れた。

「気にしなくていい、俺は不死身でな。あの程度では死なんよ」

にんまりと笑って言い放つものの、実際の所結構危険ではあった。
何せ頭から落ちたので、そのまま激突していれば確実に死んでいただろう。
それでも何とかなったのは事実で、少女の気遣いをありがたいとは思いながらもきっぱりと断った。

「そうさな、このまま遺跡を探索するならどうだ嬢ちゃん。
 俺を雇わないか?冒険者になりたてだっていうならいい訓練になるだろう。
 俺も大して急ぐわけでもない。報酬は、何か貰うけどな」

その程度は付き合ってやってもいい。そう言葉をかけたのは本当に気紛れの部類。
楽し気に笑いながら少女の様子をじっとみやり。

ルーテシア > この遺跡に単独でやってきたのは、冒険者ギルドの歴戦の猛者達には声をかけられなかったから。
新人達も居るには居るが、大方仲間内でパーティを組んでしまっていて、田舎者の少女が入る隙間はなかった。
さらに言えば、軽戦士と魔法使いの中間点という、中途半端な役割もあまり印象が良くなくて、結果が一人ぼっちの探索だった。
まだ冒険者としては完全な初心者。初々しいのも仕方のないことだった。

「やっぱりかぁ……うぅ、これ買うのにお昼ご飯三日も我慢したのになぁ。
 ……ぅー、奥にお宝、あるかな?その、金貨が少しだけ、とかでも結構な収入なんだけど」

年若い少女は当然非力で、大きな金塊を運ぶ、と言うのは流石に厳しいのが現実だ。
その点、古い金貨は、古物商や好事家がそれなりな額面で買ってくれるし、持ち運びやすいのが嬉しい。
あるいは銀貨やアクセサリーの類でもよい。小さな貴金属が何個か見つかれば、それだけでも半月はくいっぱぐれないのだ。
そうでなければ、日銭を稼ぐために溝浚いや地下水路の掃除、迷い猫の捜索など、大よそ冒険者らしくない何でも屋をする羽目になる。
そう言うのも嫌いではないが、やはりお宝を求めるロマンとスリルが大切なのだ。冒険なのだから。

月明かりの中、地図の検分をしてくれた男は、宙を薙ぐように右腕を振るう。
同時に現れる火球は、男の周囲を照らすかのようにふわふわと舞っており、どこか幻想的ですらある。

「おー……魔法使いさん、なのかな?っとと、不死身でも怪我は痛いんじゃないの?
 まぁ、大丈夫なら、良いけども。その、お薬も今の私にはお高いからさ。使わないに越したことはないよね」

男の言葉に頷くと、腰のポーチに薬を仕舞い直す。今の少女にとっては虎の子の塗り薬だ。
心配だったから使うのに躊躇いはなかったが、必要ないと言われて安堵した自分がいるのも事実。
貧乏とは、かくも強大な怨敵なのである。

「ん、ぅ……お兄さんを、雇うの?えっと、その、お金とか、ないよ?
 お宝見つかったら喜んで分けちゃうけどさ、後は、おやつのクッキー位しかだせないかも」

彼の気まぐれは嬉しいが、少女には蓄えが存在しない。
親元を離れて、自立してのその日暮らしは、そもそも安定しないが故に、貯金などは作れない。
それ故、少女は素直に己の出せるものを述べると、申し訳なさそうな表情とともに、肩を竦めて見せた。