2017/04/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 森林」にフォークさんが現れました。
フォーク > 「ここに来るのも久しぶりだな、ビッグマネー号」

愛馬ビッグマネー号に跨がり、男は喜びヶ原の森林地帯へとやってきた。
男を乗せた馬は、開けた道から鬱蒼とした獣道を進んでいく。
そして獣道の先は……。

「よーし、到着だ」

いつぞや、男が森林に作った隠し別荘の前でビッグマネー号は止まった。
暇な時、折を見て訪れては少しずつ、森で調達した木材で組み立てていたのだ。
普通の木小屋と違うのは、男は高い樹木の上に組み立てたことである。
高い樹の上に小屋……すなわち身を隠せる休憩所を造ったのだ。
休憩所を高所に造れば遠くを偵察できるし、獣からも身を護れる。

「さて……と」

男が樹をのぼり始めた。巨体に似合わぬ俊敏な動きと速さでのぼっていく。
その太い胴には食糧と酒の入った袋が結び付けられていた。
休憩所に食糧と酒を備蓄しておくつもりなのだ。

フォーク > 「お邪魔します……いらっしゃい」

独り言を呟きながら、男が小屋へと入った。
小屋の内装は驚くほどシンプルだった。家具は何一つない。
あくまで身を潜め、休息を取るための場所なのだ。

「へへへ、どれ三十年ぶりにコイツを覗いてみるか」

男が楽しげに袋から取り出したのは、遠眼鏡だ。
覗けば遠いものも近くに見える道具なのだ。
これは幼少時、義父の傭兵団を家出した男がとある海賊の船長からもらったものだ。

「いつかきっと返しに来い、立派な傭兵になってな……とあの人は言っていたな」

果たしてこの遠眼鏡を船長に返せる日が来るのだろうか。
まだ義父すら超えていない自分に、遠眼鏡を返しにいく資格があるのか。
小屋の窓から遠くを覗きながら、男はほんのすこしだけセンチメンタルな気持ちになった。

フォーク > 月が出た。丸い月だ。
だが満月ではない。ほんの僅かだけ欠けている。

男は窓から月を眺めていた。遠眼鏡は使っていない。肉眼だ。
それでも月の窪みがよく見えた。

「お前さん……満月よりもずっと別嬪だぜ」

男は酒を舐めながら、月に向かって語りかけた。
満月は完璧だ。だが面白みがない。それよりも僅かに欠けた月の方が、男は好きだった。
未完成の美というやつだ。

仰向けになった。
そのまま男の呼吸が寝息に変わる。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 森林」からフォークさんが去りました。