2016/10/20 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にハナビさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にレイカさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からレイカさんが去りました。
■ハナビ > メグメールの草原に、一匹の獣が紛れ込む。
妖狐として邪気を漏らし、同時に聖なる魔力もやや弱くはあるが体内に包する少女が一人。
全身を白と黒の獣毛がまるでレオタードのように包み、2色のオッドアイが細く怪しく輝く。
以前の少女とは違う点として臀部から生える尾の数は3本。
歩くだけで周囲の岩や地面に亀裂を入れるほどの魔力が漏れ出し、動物たちは逃げ去って、踏んだ草花は枯れてゆく。
「……はぅ、ぁ…頭、痛い…」
ズキンズキンと響く頭痛。その痛みを発散するために、誰もいない草原をひた歩く。
誰も近づかない、誰も誰も。
今はそれでよかった。もし誰か来たら…暴力か性欲か、おそらく自制なんて効かないかもしれなかったから…
もしこの場に迷い込んだならば、不運だったと思う他ないだろう。それとも人によっては幸運かもしれないが。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にセリオンさんが現れました。
■セリオン > 己の精神性には限界を感じない。自分の精神は神を凌駕すると、この狂人は本気で思い込んでいる。
だが身体は別だ。人間として生まれた自分の体に、この女は限界を感じ始めている。
「……柄にもなく、修行みたいなことでもしましょうか」
そう思い立ちここ暫く、人の里にはあまり寄り付かずに生きてきた。
すると、妙な気配を感じたのだ。
獣がこぞって逃げ、風には僅かな死の香りが漂う。真っ当な感覚を持つなら近寄りがたいだろう気配を。
この女は喜んで、その気配を追った。
「あら、まぁ、これはなんとも、何とも分からないものが」
見覚えのあるはずの少女なのだが――まるで分からない。
それは接触が一度きりだったからか、それとも相手の容姿が著しく変化しているからか。
いずれにせよ目の前の存在が危険物であることに変わりは無いが、
「そこの獣――獣でよいのです? それとも人? 魔族?」
背後から追いかけ、隣に並ぼうとする。
■ハナビ > 頭痛の原因は、妖狐の力が更に覚醒した代償。もしくは先日口にした高純度の麻薬の副作用。はたまた両方か。
頭痛がするたびに、破壊と性欲と、そしてあのお菓子に似た薬の味を思い出す。
吐き気を覚えるほどに頭に残るそれを外に吐き出すように独りになれる場所を求めて歩いていた。
そこへ現れた自称聖女。この狂気を思い出す声を忘れた事は1日足りとも無かった。
「…化物でいい、よ セリオン」
隣に立つのならば歩を止めて。そして細めた瞳で横目に捉える。
「…会いたかったよ 久しぶり」
その声は何かを抑えるかのような押し殺した声。
以前負けた相手へのリベンジ、そのために命を削ってまで暗黒の力に身を委ねて来た。
■セリオン > 「おや、知り合いでしたか? 私の知り合いに、こうも化け物じみた者は居なかったように思いますが」
微笑みを浮かべた表情は変わらぬまま、目だけが油断無く横を向く。
知り合いだと思ってみれば、なるほど、面影があるように思わないでもない。
が――こんな怪物と知り合いであるなら、自分はたいした度胸だと思わぬでもない。
何せこの相手は、何であるかが分からぬ。
獣か人か魔かと問うたのは冗談でなく、本当にそのいずれともつかぬ姿であるからだ。
「私の知り合いは、信者か、まだ信者になっていない者かのどちらかしか居ないのですが……貴女は前者ではありませんね」
しかし、ひとつ分かることがある。
間合いを離せば死にかねない。肘が届く距離より遠くには立ちたくない。
「敢えて聞きますが、貴女は〝何〟です?」
自然に歩きながら、片足を踏み出すごとに数センチずつ横へずれ、じりじりと距離を縮める。
■ハナビ > 「とぼけてる、ってわけじゃなさそうだね」
自分が命を削り、朽ちて行く寸前まで追い込まれても再戦を願った一人ではあるが、相手に気づいてもらえないのはやや悲しいものがあった。
でも、今はそれもどうでもいい。そんなことよりも、爆発しそうな性欲と破壊衝動が頭痛と共に内側から爆発しそうになる。
「……ボクはハナビ、三尾の妖狐、ハナビだよ」
間合いを図る相手に対し、以前戦った時と同じ構えを取る。
ズキンズキン痛む頭痛を振り払い、高揚感と共に蘇る麻薬の幸福感が妙に気を散らせてくる
■セリオン > 「ハナビ? ……ああ!」
名乗られて初めて、相手の正体を知る。
確か、人と獣の中間のような姿をしていた――ミレー族なのかどうかは知らないが。
しかし、名乗られても尚。
いや名乗られたからこそ、相手の姿が記憶と結びつかない。
「……随分と悲惨な姿になりましたね、貴女」
やや奇妙な構えを選んだ。
左手をまっすぐ、指先までぴんと伸ばして、胸の前に突き出す。そして指先で相手の右肩を指し示す。
右手は腰にひきつけて、がっちりと拳を握る。
悠長に組むことは考えない。
綺麗に防御しようとも考えない。
伸ばした左腕は盾、右手は剣。そういう構えである。
「その愉快な化粧、剥ぎ取ってみたいものですね」
そして前進する。
左手を盾にしながら、いけるところまで進み――しかし、先手を取ろうとはしない。
何をされるか分からない獲物に対し、慎重に構えている。
■ハナビ > 「そうだね、でも、これがボクだから」
悲惨な姿、と言われても否定はしない。自分でもそう思う。
でも覚醒するたびに、本来の姿に近づいているのを実感する。妖狐が本来の姿で、獣人でいたのが偽の姿…。でもどっちが本当かは、自分にさえわからない。昔の姿を、もう思い出せないから。
「今度は最初から全力で行くよ…少しだけ付き合って貰うよ ボクのワガママに!」
後手を選ぶ相手に対してバックステップ。同時に両手に魔力を宿し、掌を横に振るう。
まるで相手をひっぱたくような仕草と同時、セリオンの側面から空気の弾丸のような衝撃が飛翔するだろう。
右手を振れば右から、左手を振れば左から。想いを具現化する力で生み出した衝撃は、雑魚の集団を壊滅させる程度の威力を持つが、まだ距離を保つための牽制にすぎない。
■セリオン > 正面へ進む。
間合いを離されれば、その倍を詰める――それ以外には無い。
投擲武器も持たなければ、攻撃的な魔術のひとつも無い。
身体強化の術も転移の術も、その他、殴り合いに使える魔術は何も無い。
だから進む。
それ以外に無い。
空いた間合いを埋めるべく、とっさにセリオンは地を蹴った。
相手が自分から離れるというのはつまり、離れたいのだ。その思惑を阻害してやるつもりだった。
相手が、手を虚空で振るった。
何だ?
疑問に思う間も無く、横殴りの衝撃が体を打った。
「がっ……!?」
人間一人の体重など、その衝撃の前にはたやすく跳ね飛ばされる。
咄嗟に地に手を着いて跳ね起きようとした――直撃を受けた左腕が、思うように動かなかった。
これだけでか。
こうもあっさり、自分の体は動かなくなるか。
「なるほど、遠当ての類……!」
ならばと、右腕で地をたたいて起き上がる。
バックステップして行く獲物に対して選ぶのは――右足での跳躍の勢いそのまま、頭から腹めがけて打ち出す体当たり。
もはや技ではない。技ではないが、重量部位による打突である。
■ハナビ > 牽制の一撃が相手の不意をついて直撃した。
ダメージの手答えはあるが、おそらく四肢が動かなくなるまで戦い続けるのだろう。少なくとも片腕が動かなくなった程度では戦いは終わらなかった。
衝撃を無視し足を止めることなく間合いを詰められ腹部に体当たりの衝撃を受けてたたらを踏み、軽くむせる。
方や狂気の精神を持つが生身の身体。
方や生身の精神を持つが狂った身体。
精神に肉体が追いつかない者もいれば、肉体に精神が追いつかない者もいる。
皮肉な戦いの中、体当たりのお返しに両手に爪を生やし、鋭利なオーラを纏わせて獣の如き姿勢から不規則なラッシュを放つ。
獣特有の、急所を狙う乱打。
一撃急所に当たればいい、というコンビネーションなどを考えない連撃。
「ねぇ…セリオンはなんで戦うのさ!!」
爪を放ちながら問う、戦いの意義。
■セリオン > 獣と――例えば熊と人間が、徒手空拳で打ち合うとしたら、勝つ術はあるのか。
そんなものはない。
神に似せて作られたはずが、大概の生き物より弱くできているのが人間だ。
ちょうど、目の前の怪物が放つラッシュに、セリオンが向かって行くのがその構図だ。
急所だけは守る――人体には急所が多すぎる。
目、喉、首、脇、上腕、肘裏、手首、わき腹、腹――
右腕と膝だけで守りきれるものではない。
低い位置から競りあがるような乱撃を、いなしかわしながらも、全身に刻まれる傷。
修道服はたちまちに破れ血が滲み、その下の傷の深さをうかがわせるものとなる。
――反撃ができない。
思うのはそれだ。
身を守ることより、攻めることを考えながら、それがまるで追いつかない。
人体の脆さを憎みながらも、
「なぜ、と……?」
その耳に飛び込む問い。
問いは、拳足とは違う。逃げてはならぬ攻撃である。
「望みを叶える為――それ以外には無いでしょう」
防ぎ、傷を増やしながらも、向けられた問いは受け止める。
「欲しいものを手に入れる、それが人・魔・獣を問わずに天地を貫く真理!
ましてや面白いと思った子が、随分と醜い姿になっているのを見て我慢をしていられますか!
この手で叩き壊してでも、自分の気に入った姿にする――そういう意思を貫く為に戦いはある!
自分が何者なのかも、何をしたいのかも分からないような生き物こそ、むしろなぜ戦うのです!」
■ハナビ > 爪は確実に相手の皮膚を抉る。
その気になれば爪の向き、方向さえ任意に変えることだって、猛毒を滲ませることだって、できてしまう。
人外の力で、その気になれば終わらせることだってできるはずなのに、勝ちたいと思った相手に圧倒的優位に立っているのに…。
なぜこんなにも、虚しいのだろうか
何一つとして高揚感を感じない。虚構の中を一人歩いているようだ。
そこに待ち望んだ相手がいるのに、一人でいるかのよう。
変えられた身体、弄られた心、与えられた力、薄れて行く自分という存在、壊れて行く命。
後一撃、その首をねじり落とすほどの一撃で終わる、その瞬間に全てが疑問符となって攻撃の手を止める。
「ボクは、なんのために、戦っているんだっけ…?」
セリオンの力強い言葉。それは極論かもしれないし正しいかはわからないが少なくとも少女の胸には響いた。
身体が震え、纏っていた覇気が霧散する。何かに怯えたように膝をつき虚空を見る。
「ボクは…セリオンに、勝ちたかった…でも、理由が、思い出せない……なんで戦うのか、思い出せない…ただ覚えてるのは、ボクの事を覚えていて欲しい、名前を呼んで欲しい…それだけ」
ズキンズキンと頭の中で痛みが酷くなる。セリオンの言葉で、完全に自身を見失ったのか、ただ漏れ出す魔力だけが周囲に悪影響を与えて行く。
■セリオン > 高揚――あるいは怒り。
少なくとも正気の中には居ない。
正気であるなら腕を削られ足を削られ、体を切り裂かれながら、ただ前に進むことを繰り返せようか。
傷つきたくないなら逃げれば良いのだ。
人外の怪物と戦って逃げるのは恥ではない。事実これまでの生で幾度となく、勝ち目の無い敵からは逃げおおせている。
――逃げてはならない戦もある。
力だけで戦いを挑まれたのなら良い。だが、思想を以て挑まれたのなら、叩き潰さねばならない。
自分は正しいのだ。自分に異を唱える世界のすべてが間違っているのだ。
そう信じて前へ進み続ける者が己であり、世界に対して過ちを認めて退いたなら、それはセリオンではないのだ。
「覚えて欲しいのだったら、姿形くらい落ち着かせなさい〝ハナビ〟!」
進む。
攻撃が止み、生まれた隙に突き進む。
放つのは人体最重量、最大の筋力量を持つ脚の一撃。
用いるのは人体最硬度、踵。
踵落とし。
人間へ放つものより意図して制御を投げ捨て、ハナビの頭へと振り下ろした。
■ハナビ > 後頭部に叩き込まれる踵。
ズシンと重い一撃がめり込む。
無防備にねじ込まれた身体はそのまま地面に叩きつけられ、バウンドしてから倒れた
「げほっ…つっ、たぁ……あれ、今ボクの名前…」
麻薬と邪気の副作用で混濁していた頭と頭痛が、衝撃で忘れる事が出来た。頭を抑えながら下から見上げる表情は、以前に出会った時の者。
尤も外見までは元どおりにはならないが。
「…そっか、ボクまた負けたんだ」
見下ろしておる相手、見上げている自分。
ダメージ量ではなくきっと決定的な何かの差で負けたのだろう、と自覚できた。
「…まだ、続ける?ボクは降参…」
こちらは戦う意思はもうない。継戦を望まれてもされるがままだろう。
■セリオン > 「勝つも負けるも、そもそも自分に負けたようなものでしょうに……ったく」
獣の蘇生は早い――もう驚くのにも疲れ始めた頃合だ。
いや、たち続けるのさえ疲れた。これ以上動いていると血が流れすぎる。
地面に腰を下ろし一息をついて眼前の少女を見れば、姿はまるで変わらないが、幾分か顔は見やすいものになった。
しかし、問題はこれで片付くのか否か――
「ええ、まだ続けますよ」
と、セリオンは言った。
そうは言うが、殴り合いを続けていたら今度こそ自分が死ぬ。続けるというのは、言葉の方である。
というより、聞きたくて仕方が無いことがあったのだ。
「貴女、イメチェンにしては変わり過ぎな気がしますが、いったい何がどうしてそうなったんです?」
戦闘後の余韻だとか風情だとかは何もなく、ストレートな問いであった。