2016/07/19 のログ
アシュレイ > 「それは王都の外でいいわけ? それなら、あちこちにあるわよ。 うちは色んな所で拠点を持ってるからね。」
大型の幻獣が出入りしても目立たなそうな場所を思い出し、ぽつりぽつりと口にする。
どこも辺鄙な場所にあるがその分人目には付きにくい場所。

「そう。 でも貴方にとっては思い出のある場所でしょう? そんな場所を土足で入ったりは出来ないわ。」
火の近くはやはり熱いので、少しずつ距離を開ける。 ついでに木陰の下へと移動する。
パンを手にする様子を何ともなしに見つめていた。

「私の前では元の姿でも構わないわよ? 一応、従業員にはあまり気を使わせないようにしたいの。」
挽肉の載ったパンを齧っている姿をじっと見つめていたが、突然思い出したように何もない場所から水の入ったグラスを取り出す。
「ただの水でよかったらどうぞ。 店で使ってる水だから味は悪くないはずよ?」
取り出したグラスを片手で差出、男の近くに置いてから手を離す。

「魔族だからって分けじゃないけど、これでも生まれてまだ一年未満なのよ? つまり、商会の誰よりも年下ってこと。
自分でいうのもおかしいけど、だいぶ常人離れしてるわね。 …素敵な職場でしょ?」
歯をむき出しにし、にんまりと笑う。 皮肉まじりに、半ば得意げに。

「口が堅い人で助かるわ。 やっぱり味方にするなら貴方みたいな人よね。
あ、私の魔族っぽいとこが見たければ今度見せてあげるわよ? 幻獣の魔力ってのも一度味わってみたいし。」

ファルコ > 「それならばありがたい。
後で教えてくれ、時間を見つけて行ってみよう」

希望は風通しの良い、小高い丘だが、基本広ければどこでも良かったりする。

「まあ、確かに。いつか戻るかもしれぬからな、やはり封印しておくか。
気遣い、感謝しておこう」

ふた切れ目、み切れ目に手を伸ばす。
小腹がすいているのもあるが、その食べるペースは速い。
元の姿、と聞くと首を横に振る。

「いいや、その気配りはいかにもトップらしいが、
途中で投げ出すのはどうもあわぬのでな。遜色ない外見を得るまで、試行錯誤を繰り返すのが変身魔法の鍛え方だと思っておる。

しかしこの水は……大気中から出したものではないとすると、グラスごと転移させたのか。
液体の転移は固形物よりも難しいというのに」

喉が渇いているのも忘れ、感心したようにため息を吐く。
グラスを掲げれば日光にきらきらと反射する。どこからどう見ても水だ。

「では、有難くいただこう。
……うむ、飲みやすい水だな」

ぐびりと飲めば、喉につかえ咽ることなく、するりと通過していく。
塩味の食物をさっきまで食していたこともあり、あっという間にグラスの水は減っていった。

「生後一年足らずでその姿、魔法への熟達か。加えて商才もあり、人の遣い方も心得ている。
……やはり成熟が早すぎるぞ。周囲、同業からの嫉妬も激しかろう。
それすらもねじ伏せてきたのかもしれんが」

指折り数えて一つ一つ挙げ、改めてその凄まじさにため息を吐く。
通常、人を育ててそこまで到達するのにどれだけの手間、時間を要するか。
とりあえず、現段階でもすでに規格外ということは判明した。
それでもなお、力を求めるか。神聖都市でのやり取りを思い出す。

「なるほど、のびのびとさせてやる。存分に能力を発揮しろ、と。そういうことなのだな。
ああ、力を含め、興味はある。……そのうちにな」

“味わってみたい”というのが少々気にかかるが。

アシュレイ > 「分かったわ。 今度、地図を書いて渡すわね。 確か、何か所かあったはずよ。」
後日、娘の指示で作られた広い場所を記した地図が手渡されるだろう。
地図には風通しの良い場所ばかりとは限らないが、基本的に広くて辺鄙な場所にある土地が多数書かれていた。

「自分の故郷は大事にするものよ。 いつか戻りたくなる日が来るかもしれないわ。」
パンがあっと言う間に小さくなっていく。
その食べっぷりに目を見張る。 余程腹が減っていたのだろうかと。

「そうなの。 それも貴方の訓練の一環なのね。 なら、私からは止めないわ。
褒めても何も出ないわよ? 私、魔法だけは才能があるの。」
遜色ない外見ということは、これからもっと変わっていくことがあるのだろうか。
今後はどんな姿になるのだろうか。 仮面に隠れた顔に視線を向けながら、色々と考えている。

魔法のことを評されると、笑いながら手を左右に振る。 娘にしてみれば、特段難しいことではないからで。

「そう言ってもらえると嬉しいわ。 水って意外と好みが分かれるのよね。 その水は癖がないから飲みやすいと思うわ。」
すっかり空になっていくグラスをみやりつつ、手のひらを広げる。
すると、減ったはずのグラスの中身が増えていき、8分目程に増えていく。

「貴方、褒め過ぎよ。 でも、妬みをよく買うのは事実よ。 何度か刺客を送られたこともあるわ。
今のところは全て返り討ちにしてますけどね。 戦力を欲しがるのはそういう理由もあるわ。 力を持ちすぎるってことはありませんからね。」
娘は口元を手で隠しながら、恥ずかしそうに笑っている。 とはいえ、娘に敵が多いこと、その為に他を圧倒できるだけの力を求めているのは鑑定士の評する通りであった。

「そうよ。 うちでは思う存分働いてもらわないとね。 活躍の場はいくらでも用意してあるわ。
ふふ、その時が来て後悔しても知らないわよ?」
娘は一瞬だけ、邪悪な笑みを浮かべる。 それはまるで、獲物を狙うかのような笑み。
「ま、伝えることは伝えたわ。 色々と宜しくね。」
すぐに平静な表情へと切り替えると、立ち上がり服についた草を払う。
その後、手を振ってから王都の方へと去っていく。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からアシュレイさんが去りました。
ファルコ > 「故郷といっても一時的な棲家にすぎんのだがな。
まあ、世話になったのは確かだが」

残骸を片づけ、石を元の場所に無造作に転がす。
最後に皆と点検をして、立ち上がった。

「やはりな。これで神聖都市での話がようやく理解できてきたぞ。
自衛のための力、なるほど確かに必要だ」

それこそ他勢力に頼らずにやるべきなのだ、できれば。

娘が一瞬だけ浮かべた、獲物を前にしたような笑みに、背筋がぞくりとする。
長い間、覚えのない感覚が体を駆け巡り、マントの袖から腕を触ると、鳥肌が立っていた。

(この吾輩が、恐れを抱く、だと……!?)

すぐにその不穏な空気は、平静な顔の影にたちまち隠れる。
黙って娘の後ろ姿を見送り、その影が完全に見えなくなるまで、男は立ち尽くしていた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からファルコさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にルキアさんが現れました。
ルキア > (ぱしゃん、ぱしゃん、と満月が正中へと差し掛かり、水面に映し出される湖。
海ほどに大きな波はないものの、それでも水が岸辺に打ち寄せられる音が微かに響いている。
そのすぐ傍に、魔物よけの香木を入れた焚き火が焚かれ周囲には魔物が忌避する不思議な香りがただよっていることか。
焚き火のすぐ傍には、テントが張られ地面には魔法陣が描かれて目隠しが施されている。
香木の忌避作用は割と強く、魔物は寄ってくることはない。簡易魔術とはいえ、不思議な香り以外は常人からは焚き火も見えずそこにテントが張られている事にも気づかないだろう。
そこにはなにもない、あっても気づかない。道端に転がる小石のように。
そんな風に見る者に誤認を誘う効果が魔法陣にはあった。
ただ、存在そのものを消しているわけではないから、一度認識が一致してしまえばその存在は相手に丸見えとなってしまうのが欠点であった。)

((あ、あったあった…。やっぱり冬に比べると探しにくいなぁ…))

(テントの主は今は不在。
 少女は湖へと潜り、『月光石』と呼ばれる霊石の採集の真っ只中であった。
 『月光石』は、月の光にのみ反射する特徴を持っているため、こういった月のよくでた夜にしか採集することができない。
特に、冬の冴えた月の光に良質なものが反応するため冬が採集の絶好のシーズンといえる。
但し、澄んだ水の中にしかないことからかなり寒い思いをしなければならないが…。
そういった点でいえば、今の季節は採集そのものはしやすい季節といえるか。
ただ、冬に比べると見つけられるものの品質が劣ってしまうのは仕方がない。
こぽこぽと、水面へと気泡を浮かべながら、動きやすさ重視に作られた水着姿で足を動かして水の中を移動するのは長い耳を持つエルフの娘。)