2016/07/18 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にファルコさんが現れました。
ファルコ > 小川はきらきらと日光を反射しており、魚や、川底の水草まで透き通って見える。

石をいくつか寄せ集めたところに、ちぎれた枯草が少々、集めてあった。
そこから数歩も離れぬ場所、照りつける太陽に向かい合うようにして。

この陽気にもかかわらず、黒マントを頭から被った怪しい男がうずくまっていた。
その左手に、光を反射して煌めく円形の物が見える。
男はそれを枯草の束にかざし、……しばらくすると、細い煙が立ち上ってきた。

「よしよし。レンズと陽光だけで火付けができたぞ。
魔法を使えば一発だが、やはり基本を忘れぬようにせねば、な」

顔の半分を覆う仮面からは、その表情は容易に伺うことはできない。
だが、声の調子から、機嫌がよさそうなのは分かるだろう。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にアシュレイさんが現れました。
ファルコ > やがてちろちろと舐めるように、小さな炎が上がったのを確認すると。
懐から黒麦のパンを取り出し、よく研いだ石で切り分ける。一切れずつ尖った小枝に刺して……

「さーて、こいつを少し火であぶっておくか。
と、その前に」

ガサガサと音を立てて、古ぼけた紙を広げる。
そこには、最近まで自身が居た遺跡の地図、その一部が描かれていた。
アリの巣のように張り巡らされた通路、いくつもの小部屋、そして……宝物庫。
グリフォンは古来より黄金の守護者として知られ、この男もそこまではいかずともそれなりの財宝を溜め込んでいた。
ただしそれらも、いつの間にか入り込む冒険者たちによって掠め盗られ、現在は宝箱一つ分の古代金貨があるだけである。

今手にしているのは、そこへ至る道の地図と、合言葉を記した覚書だ。

「まあ、こんなもの、持ってても仕方なかろう。盗人どもが困るだけだ。
さあ、この世から消えるがよい」

そうつぶやくと、紙をくしゃくしゃに丸めて、パチパチと音を立てる焚火へ手を伸ばした。

アシュレイ > 商会のメンバーに「うちの鑑定士はどこ?」と尋ねた所、「喜びヶ原で見かけた。」との声を聴き、自ら出向くことに。
照りつける太陽は容赦なく照り付け、娘のフワフワの耳や尻尾、そして頭に熱が籠っていく。

「暑いわ~。 ほんとに暑いわ~。」
草むらの中をまるでゾンビのように力なく歩いていると、見慣れた黒いフードと小さな煙が昇っているのが見える。

「こんな暑いのにわざわざ火を起こしてるの? 賢い人のやることはたまに理解できないわね。
…って、ちょっと、貴方何やってるのよ!?」
只でさえ暑い季節により暑くなるような火を上げている時点で首を傾げかけていたが、目の前で宝の地図らしき紙を火にくべようとしているのが目につくと、娘は咄嗟に駆けだし炎と鑑定士の間の狭い空間へと割り込んだ。

「ちょっと、それお宝の地図じゃないの? なんでわざわざ燃やすわけ? 信じらんない。」
こうなると普段の余裕はどこへやら。 甲高い声で喚くさまはただの小娘であった。

ファルコ > 背後から慌ただしく走り寄ってくる、聞いた事のある声がして。
振り返り確認しようとすると、さっと視界を阻まれた。伸ばした手が火の直前で止まる。

「……むう?
総帥……アシュレイではないか。吾輩がどこで何をしようと勝手であろう。
……不要なゴミを燃やしているだけだが。ついでに飯を温めようとしていただけだ」

やる気のなさそうな手つきで枝をとり、カリカリに焼けてきたパンをひっくり返す。

「宝の地図? まあ、傍から見ればそうかもしれぬな。
しかし、どうせ道筋など暗記しておるし、棲んでいた場所の何処に何があるかなど、いちいち紙に書き記さんでもよかろう。
これを必要とするのはせいぜい、冒険者か、遺跡荒らしか」

阻止されたので、ふんと鼻を鳴らし、不服そうに唇を曲げる。
あわや隠滅されかけた件の紙切れは、相変わらず右手に軽くつまんだまま。

「これ以上古巣を荒らされるのもいい気持ちはせぬものでな。当てつけを兼ねて処分しておこうかと。
……まさか、欲しいのかね?」

アシュレイ > 普段あまり走らない為、短期間の全力疾走がきつかった。
額から汗を流し、肩で呼吸をしている。 とはいえ、地図らしきものは未だ燃えていない。

「その理屈なら私がどこで何をしてても問題ないわよね。 そろそろ貴方に見てもらいたい品が溜まってきたから声をかけとこうと思ってね。
パンを焼くのは好きにしたらいいけど、地図まで焼くことないじゃない。」
とりあえず疲れたので、邪魔にならない場所に移ってから草むらの上に腰を落とす。

「なによ、元々貴方が居た場所ってこと? そもそも貴方住まいはどこなの?」
相手の素性をまるで知らないことを思い出した娘。 信用できないわけではないが、せっかくの機会だし聞いておこうと。
ただし、娘の視線は相手の顔と右手の地図を行ったり来たり。

「本音を言うと欲しいけど、止めておくわ。 私には宝よりも貴方がうちで働いてくれる方が大事だもの。 さあ、今すぐ燃やしちゃって。」
肩を竦める娘。 口にしたのは全て娘の本音である。 宝や財産は大事だが、それと同じ位に仲間も大事であった。
その仲間の家なら立ち入るわけにもいかない。 ましてや仲間の財産を奪うなど出来るわけがない。

ファルコ > 「ほう、そういえばそうかもしれぬな。では要件を聞こうか。

……なるほど仕事か、吾輩、数日前に王都付近に居を定めたばかりなのだ。
夜までには仕事道具を揃えて商会に出向くつもりであったのだが」

相手の正論を軽く聞き流し、仕事と聞けば座り直す。
紙切れを広げてしわを伸ばし、くるくると円筒状に丸めるとアシュレイの方へぽいと放った。

「ほれ。遺跡の内部図と生き方が書いてある。
奥の宝物庫は金貨入りの宝箱がまだひとつ残っておったと思うが、ひょっとするとミミックにすりかわっているやもしれぬ。
とりに行くときは極力、周囲を荒らさぬようにな。

さて、それで、吾輩はその、遺跡住まいだったわけだが」

パンを手に取り加減を確かめると、小さく頷いてから平たい石の上に並べ、懐から挽肉を詰めた小瓶を取り出して塗り始めた。
娘の言葉を黙って聞き、その眼をじっと見つめる。
白い仮面の奥、左右で色の違う眼が、その心中を探るように煌めき、
それからしばらくして、決心したように口を開いた。

「……そうだな、ミレーのお主ならば打ち明けてもよかろう。
ひとつめのヒントは、“洞窟や遺跡に棲む、黄金を護りし幻獣”だ。
小~中型なら騎乗する人族もおるだろう。大型の同類は、見かけることも少なくなったがな」

アシュレイ > 「貴方が思ってるより、うちは仕事がたくさんあるわよ? その代り出すものはちゃんと出すけどね。
あと、住む場所で困ってるなら私に言ってもいいのよ? 商会の建物に住むなら部屋も用意できるしね。
でも、その様子だと見つかったみたいね。 仕事は貴方の準備が整ってからでいいわ。 但しあまり遅いと催促には来るかもね。」
円筒状に丸められた地図を突然投げられると、両手で捕まえる。 燃やすはずだったのにと不思議そうな顔を浮かべる。

「それを聴くと軽々しくは入れないわね。 一応受け取っておくけど、私は使うことはないわ。 従業員の家に押し入る程困窮してはいないわ。」
受け取った地図を魔法で転送してから、娘も座りなおす。 地図についての話はもう終わり。
娘の関心は目の前に座る相手自身のことへと移っていく。

パンの上に挽肉を塗り始めると、娘の瞳がそれをちらちらと覗いていた。
生憎腹は減っていないが、焼き立てで旨そうな匂いがする。
仮面の下の双眸が己を捉えると、娘の表情にわずかだが緊張が走る。
この人は未だわからないことが多すぎる。
故に、己に対してどう思っているのか分かりかねていた。

「何、貴方ひょっとして変身とか出来るタイプ? また凄い人に会ったものね。」
幻獣を実際に見るのは初めての娘。
打ち明けられた話を頷きながら聞いていたが、やがてどうしたものかと顎に手をやり思案する。
今度はこちらも打ち明けておくべきだろうかと。

「なら、私ももう少しだけ私の事を話しておくわね。 気づいてるかもしれないけど、私は純血のミレー族じゃないの。
もう一つ、魔族の血が流れているわ。 あ、これはスキャンダルになるから外では言わないでね。」
言い終えた後、両手をポンと叩くと、軽くウインクをして見せる。

ファルコ > 「棲む、いや、住む場所か。今のところは足りている……ああ、そうであった。
訊くが、気球や飛行船が離着陸できそうな、平原は保有しているか?
牧草地でも構わないが」

相手が掴んだ地図を魔法でどこかへ移動させると、おや、と怪訝そうに首を傾げたが、
すぐに興味を失ったようでまた挽肉に集中する。

「我が家、というわけではないのだがな。
もともと作ったのは別の者で、それに乗っかっただけだ。だいぶ昔の話だが」

辛く味付けした挽肉の脂が、僅かにパンの表面にしみこむ。
マントの男はその一切れを、指でつまむように持ち上げた。
視線に娘の顔が一瞬こわばるが、男の興味はパンへ戻っていった。

「うむ、今も変身している状態だな。
あまり人型は得意ではない、衣服でごまかしてようやく格好がつくくらいだ」

口を開けて、会話の合間にパンをかじる。
こんがりとした表面に塗られた脂、挽肉と素朴な味のする黒パン。
野菜と飲み物がないのが残念だが、後で水を汲めばよかろう。そういえば川の上流にクレソンが自生していたかもしれない。
後で採りに行こう。

「魔族の血か、それは知らなんだ。
確かに、純粋なミレー族というにはこの時世、表を昼夜問わず堂々と歩くし、魔法も常人を超えた相当なものだしで、奇妙に思ってはいたがな。
……言うわけがなかろう。吾輩をなんだと思っているのだ、こちらこそ気軽に触れ回れぬ立場だぞ」

そういう割には、幸いか、外見特徴に魔族らしさは出ておらぬな。どこからどう見てもミレーにしか見えぬ。
……そう付け加えて、半ば冗談を言うように返す。