2015/12/09 のログ
ご案内:「メグメール自然地帯/王都付近の川」にエールーカさんが現れました。
ご案内:「メグメール自然地帯/王都付近の川」にティネさんが現れました。
エールーカ > 冴え冴えとした冬の午後の空気が佇む、しんとした川のほとり。
小川と呼ぶには広い川幅の真ん中で、白い頭が音もなくすいと姿を現した。

「…………。見たことない。知らないところまで来ちゃったな」

水面から密やかに顔を出し、辺りの様子を窺う。
海から知らぬ川を遡って、ちょっとした探検気分であったのだ。
淡水の滑らかな流れを肌に浴びながら、冬の低い草が生い茂る岸までゆっくりと近づいてゆく。

ティネ > 茂みの草をかき分ける小さな影。
虫や小動物の類に思えるそれは、鼠ほどの大きさの少女のかたちをしている。

ティネは時折、水を飲んだり洗い物をしたりといった用事で、
王都近辺の川や泉へと足を運ぶことがある。
今日もそういった用事だったのだが、

「だれかいる……?」

川に動くものが居る。魚ではないようだ。
子供が泳いでいるのだろうか。……こんな冬の寒い日に?
未知なる存在に警戒して、茂みの中でじっと動かず息を潜めて川面の様子を伺う。
とはいえ完璧な隠身からは程遠い。

エールーカ > 真冬に向けて鳴りを潜める緑の、それでいて豊かな自然の連なりに、物珍しそうな顔をして手を伸ばす。
顔の高さは、ちょうどティネが立つ地面と同じほど。

青褪めてそぼ濡れた白い腕が、ぬっと草を撫でる。
その手には指が四本きりしかなく、指の股には薄衣に似た水かきが光っている。
子どもが粘土を叩くような拙さで、ぺたぺたと冷たい土を叩いた。
人間に似て非なる魚めいた顔が、人知れずにこりと笑う。
その表情の変化に併せて――大きな尾鰭が、ささやかに持ち上げられてぱしゃりと水面を打った。

真っ白な肌をした、それは人魚だった。

人魚の目が、ふるりと動く。
草むらに小さな生き物の気配を見た気がして、丸い瞳の柔らかな眼差しをじっと凝らした。

ティネ > 「あっ……」

水かきが近くを通り過ぎるのをぼうっと眺める。
人のようで人とは離れたその顔立ち。
首から下を見れば、明らかに人ではない部位がちらほらと見える。
目が合う。
粗末ななりの妖精もどきは、食い入るように人魚を見つめていた。
逃げる様子もなく、何か声に発する様子もなく、立ち尽くしている。

エールーカ > 少女と目が合って、ぱちぱちと瞬く。
その娘がひどく小さいのか、それともはるか遠くにいるのか、エールーカにはすぐには区別がつかなかった。

水際の陸に両手を添える。

「…………、こんにちは」

ぱくぱくと開いた口から、高い少年の声を発した。

「ぼくの声が聞こえる?」

ティネ > 「聴こえるよ!」

我にかえって、大きな声で返事する。
この人とも魚ともつかない存在が、自分にも理解できる言葉で話したことに
少々の驚きと、それなりの安堵を得た。

「……あなたはだぁれ? どこから来たの?
 ボクは、……、ティネ、っていうんだけど」

普段自己紹介するように、“妖精の”、とは言わなかった。
なぜかそう名乗ることは躊躇われたのだ。

エールーカ > 言葉が通じたことは、このエールーカにとっても少なからず喜びだった。
晴れ間のような笑顔で、にこ、と笑う。

「ティネ」

名を呼んで、近くへ寄るように手招く。

「ティネ。ぼくはエールーカだよ。人間たちはぼくのこと、人魚ってよぶ。
 きみのこと、知ってるよ。ちょうちょっていうんでしょ」

ティネの小さな羽を、まるで宝石を目にしたような瞳の輝きと共に見遣る。
よく知ってるでしょう、と言わんばかりに、えへんと笑ってみせた。