2015/11/15 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯・草原部」にダンテさんが現れました。
ダンテ > 増えすぎた魔物の掃討。
それ自体は、冒険者にとってはありがちな仕事だ。特に、王都や街道に近い場所は定期的にそのような依頼が来る。
複数の冒険者やそのグループがそれぞれ依頼を受けて、規定数以上を狩り、その証を持ってギルドや店に申請する。
ごくごく単純な依頼。

「あー……これでいくらくらいになるかなぁ。」

夕暮れの西日を半身に浴びながら、少年は王都方面に向けて草原を歩いていた。
依頼を受けた魔物の討伐。規定数を討伐し終えた帰り道である。腰のバッグには、その証がたんまりと入っていた。
見晴らしはいいとはいえ、丘陵気味になった地形もあって、街道や街はまだ視認できない。
このままのんびり歩いても、帰りつくのはそう遅くならないだろう。

ダンテ > ふと少年は、自分の腰のバッグに眼をやる。
ベルトに固定するような形で装備したバッグは、先日購入したものだ。

今回の依頼は確かによくある類の依頼だ。
だが、今回は規模が大きかった。
募集人数等から割り出される、冒険者全体に課された総討伐依頼数はこれまでとは桁が違う。
本来であれば、王軍もこういった作戦を行うから、冒険者に回ってくるノルマは、常にそこまで多いという事もない。
この近辺に頻繁に出る程度の魔物であれば、新兵の訓練相手にも持ってこいであるからだ。
―――と、依頼を見た先輩冒険者が言っていたのを思い出す。

「……まぁ別に、稼げるならいんだけどな。」

嘯いて、頬を掻く。
目線は、茜に染まる空へと向いて。
何だか、微妙に面倒事の予感がした。
義母が突拍子もない事を思いつく直前に感じる予感と、それはよく似ている。
まさかな、と苦笑し、右手に持ったショートソードを肩に担ぎ直した。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯・草原部」にイルミさんが現れました。
イルミ > 「ど、どこに落ちたのかな……?このへん、だよね……?」

夕日の赤い光の中でもハッキリわかるほど青ざめた顔をうつむかせながら長い草をかきわける。さっきからずっとこうして探し物……というより、落とし物を探しているのだが、一向に見つかる気配はない。その様子を端から見れば、黒いテントのようなマントとその上に乗った三角帽子が草原の上でチョロチョロ動いているように見えるかもしれない。

「あぁぁ、もう暗くなる……どうしようどうしよう……」

自分は夜目が利くほうだから、多少暗くてもそこまで困らない。けれどこの草原に遅くまで留まれば、ならず者や魔物に狙われる可能性は高まる。ブツブツ独り言を言いながら、他にどうしようもなく草を掻き分け続けた。

ダンテ > 考えられるのは、軍の手が回り切っていない可能性。
つまり、何かもっと別に忙しくしているという事。軍隊が忙しくする理由など、あまりバリエーション豊富でもあるまい。
と、そこまで考えたところで視線を地上に戻す。
茜色に染まる世界の中で、何だか黒いものがちょこちょこと蠢いていた。
うん?と首を傾げる。
目を凝らすと、どうやらヒトのようであった。

「おーい、おねーさん!どーかしたー?」

空いている左腕をぶんぶんと振りながら、少年はそちらへと近付いて行って。

イルミ > 「……ひゃあっ!命ばかりは……」

盗賊の脅威について考えていたところに(本人としては)いきなり男性の声を聞いてしまい、ほとんど反射的に立ち上がって命乞いの言葉を口走りかけた。しかし、その声の調子が至ってフレンドリーであることに気づくと、

「あっ……あ、あのあの、私、ちょっと、探し物をしてて……その、こんな小瓶なんですが、ぴ、ピンク色の液体の……」

どうやら悪意のある相手ではなさそうだ、と思ってひとまずは安心する。うまく回らない口を必死に動かしながら、なるべく怪しまれないように状況を説明する。奇跡的にうまく作れた薬のサンプル、それが入った小瓶をうっかり落としてしまったのだった。

ダンテ > 「とらないとらない。」

返って来た言葉には、一瞬だけきょとんとするも、すぐにあははははっ、と声を挙げて笑って。
そのまま、どこか腕白で快活な少年らしい笑顔を向けて、そんな言葉を返した。
声変わりしたて、というような、そんな声である。

「ピンクの液体で、小瓶?魔法薬か何かかい?」

草の陰だと見つけ難いかもなぁ、なんて言いながら、ひょいと上体を軽く屈ませて地面に視線をやり。
そのままうろうろと、ナチュラルな流れで失せモノを探し始める。

イルミ > 「あ、はい、ちょっとした……ちょっとした薬です」

フレンドリーそうな人だとは思っていたけれど、そのまま周囲を探し始める彼を見て、今度はこちらがきょとんとする。もしかして手伝ってくれるつもりなんだろうか、と思い至ったのは数秒かけて考えた後で、

「あの、見つけてくださったら、あの、お礼は……しますから」

感謝の気持ちを伝えようと、呟くように言って自分も再び捜索を始めた。……もし、その魔法薬というのがいわゆる『媚薬』の類いだと知れたら軽蔑されるだろうか、等と考えながら。

ダンテ > 「ふぅん?―――ああ、でも魔法薬なんだよな。それじゃあ……。」

魔法薬で間違いないと聞けば、また彼女の方を向いて頷き。
元のように上体を立てて、周囲を見回す。

「へ?いや、いいよそんなの。もののついでなんだし、困ったものはお互い様って言うだろ?」

同じようにからりと笑って、彼女の言葉に応じた。
自分の進行途上に彼女がいて、その彼女がものを探している。だから自分も、さほど手間でもないのだからそれを手伝う。
少年にとってはそれだけの事で。
薬の中身については、とりあえず現状では知る訳もなく。
さてと、などと嘯いてから、薄く眼を細める。
大きな眼が切れ長な印象へと転じて、長い睫毛が陰を落とした。
それから少しの間黙していたが、す、と視線を一方に向けると、迷わずそちらへ歩いて行き。

「―――ほい、これかな?」

ひょい、とその場に落ちていた瓶を拾い上げて、彼女に見せた。
茜の光の中で判別は難しいが、多分中身はピンクの液体である。

イルミ > 「あ……ありがとうございます」

困ったときはお互い様。よく聞く言葉ではあるけれど、自分がそうやって助けてもらうのは生まれて初めてのことかもしれない。なんだか不思議な気分で、今度は感謝の気持ちがごく自然な形で言葉になった。こんな人がいるんだな、とまだ探し物が見つからないうちに何やらいい気持ちになっていると、

「……ふぇ?あっ、あぁ!それ、それです!あぁ、よかったぁ~……」

自分が探していたのとは全くの別方向から、彼が拾い上げた小瓶。間違いなく、自分の最高傑作と言うべき薬のサンプルだった。オリジナルがあれば複製もできるかもしれない。心の底から安堵して、彼に頭を下げる。

ダンテ > 基本的にお人よしなのだ。微妙に世間知らずなところも、それに拍車をかける。
ともあれ、拾い上げた小瓶が当たりであった事を確認できれば、笑顔のまま、ん、と頷いて。

「よかったよかった。―――しっかし、かなり出来がいいなぁ。これ、媚薬だろ?」

彼女の方へ歩いて行きながら、彼女の方へと瓶を差し出して。
そして、さらりと、そんな問いかけを一緒に投げかけたのだった。
他の薬ならいざ知らず、「媚薬」だ。それは少年にとっては、何よりも馴染み深い類の魔法薬である。詳しい事までは分からなくても、その程度であれば、何となく察しがついた。

イルミ > 「はい、ほんとによかったです、お礼にと言っては……え?」

今度お店に来てくれたら、無料で占って差し上げますね。そんな一言を付け加えようと思った時に、彼からの指摘に全身が硬直した。それからまず最初に顔面がさっきと同じように蒼白になる。そして、次第に額には脂汗が浮き出始め、真っ青な顔が一気に羞恥で赤く染まっていき、

「あ、ぁ、あの、私、私は……ええと……」

何か言い訳をしないと。いや、ここはしらばっくれるべきか?何も聞こえなかったことにしてお礼の話を進めた方がいいかも。色々と考えることはあっても、パニックと生来の男性恐怖症が合わさりろくな言葉を作れない。どう見ても、彼の指摘がズバリ的中していることは明らかだろう。

ダンテ > 「―――うん?」

己の指摘に対して、彼女がどんどん挙動不審になっていく。
まず、顔色がおかしい。蒼くなったと思ったら、一基に赤くなった。汗もかいている気がする。

「いや、あの、おーい?どうかした?……別に、淫魔が媚薬作っておかしい事なんかないだろ?」

空いた方の手で後頭部を掻きながら、また首を傾げてそんな言葉を向ける。
これも同じだ。他の種族ならともかく「淫魔」は、物心つく前から周囲りに大量に居たのだ。オムツ替えられた事もあれば、本来の意味で乳を飲ませてもらった事もある。
別に彼女に対して悪意も害意も敵意もないのだけれど。何だか凄い事になっている彼女を見て眉を寄せて、彼女の気も知らずに、大丈夫か?などと問いかける。

イルミ > 「……あっ」

めまいがした。媚薬だとバレるくらいなら途方もなく恥ずかしいというだけで済むけれど、自分が淫魔、サキュバスということまでバレている。終わった。何もかも終わった……。と諦めかけたその時、ふと、彼の口調は相変わらず友好的で、こちらを軽蔑したり、敵視したりしているわけではないことに気づくと、

「……だ、だ、大丈夫、大丈夫、です、お気遣いなく」

もしかして、彼は本当に善意でこちらを助けてくれたのでは?と思えてなんとか立ち直った。努めて彼の顔を見ないよう、気持ちがこれ以上混乱しないように気を付けないと。最近は特に精に飢えている。何かの弾みでまた彼を誘惑しないとも限らない。

ダンテ > 「そう?……あー、そうか、ごめん。あれだ、隠してた、って事か。いや、ごめん。」

そこでようやく思い至った。
色々とオープンな者に囲まれて育っていたので、うっかりと失念していた。ここが街の中でないという事も、それを後押ししたのだろう。
軽く彼女に頭を下げた。
何だか目線を逸らされているように感じるので、実は相当怒らせてしまったのではないか、と。

「家庭の事情ってやつでさ。お姉さんみたいな人は見慣れてるもんだからつい。俺は、ダンテって言うんだ。お姉さんは?」

取り繕うように言葉を重ねて、笑みを作って名乗りを上げる。

イルミ > 「はい、あの……私は、イルミと言います。この近くで、魔女の真似事みたいなことを、やってます」

軽く自己紹介を返しながら、彼の方から漂ってくる匂いを少し……ほんのすこし、かいでみた。言われてみれば魔族のにおいがするような、そうでもないような。でもやはり、彼の口ぶり通り本人は正真正銘の人間らしい。魔族を見慣れていて、しかし敵視しているわけでもない人間。はて一体どういう生い立ちなんだろう、と首をかしげて考えようと思った時、

「……んっ」

少し、身体が熱くなった。油断して男性の匂いを不用意に吸い込みすぎてしまったらしい。一歩後ろに下がりながら、視線を逸らす。

ダンテ > 怒っているような感じはしない。しないが、やはりどこか硬い気がする。
ふむ、と少しだけ首を傾げて。

「イルミさんな。へぇ。それで魔法薬、って事か。確かに、街の中にいるより材料は調達し易そうだ。」

こくこく、と頷いて、周囲を見回す。
少年の匂い。甘く、苦く、妖しく、煙たい。不思議な香気。東洋の沈香を思わせるような薫りが、身体に染みついていた。
それが、雄の汗の臭いなどと混じって彼女の鼻孔に届く。
魔法的な要素は一切ないが、確かに魔族的と言えば魔族的な、しかし正真正銘人間の薫り。

「っと、大丈夫か?……って、ああ、なるほど。そういう事か。イルミさん、最近『飯』食ってないんだな?」

彼女が後ずさった。視線の動きといい、何かあったかとまた問いかけるが……、今度はすぐにわかった。
義母に知られれば、気づくのが遅いと叱られそうであるが。
彼女にとっての『食事』つまり、精だ。
彼女ら淫魔の生態生理については、これまた嫌と言う程よく知っている。