2023/06/23 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にビザールキャリアーさんが現れました。
■ビザールキャリアー > その異形は飢えていた。
捕食。その表現は正しくあるが流血と死が伴う狩りではない。
本来であれば身を潜め、隠形し、発する淫気を以て迷い込んだ獲物、知的生命体の雌を捕え、
精気を吸収することで糧とする、古代の錬金術師が悪意を体現化させるように生み出した異形。
獲物がおらずとも地精を吸収することで獲物が訪れるまで待ち構えられることもできる。
だが、その地精が枯渇してしまった。
原因は何者かが極大な術を行使した代償か、別の何かが地精を吸収したか……。
それとも、地精そのものが歪み、別の流れを生みだしたか。
それまで自然地帯の奥深く、地形のくぼみに身を潜めていた異形は、
生存本能に従い、飢えを満たす為に異形は自然地帯を彷徨い、獲物を求めて街道まで迷い出ていた。
通りがかった馬車を襲い、馬を殴り潰し、男を認識するや有無を言わさず殴り潰す。
応戦しようとした残存勢力を、地面に落ちていた小石を握り集め、
剛力を以てばら撒くように投げ放つ。
それだけで男達の肉が削げ、腕が引きちぎれ、瞬く間に亡骸となっていく。
女性が馬車の中にいれば襲うだろう。
いなければ、馬車の影に身を潜め、ひとまずは僅かながら地精を啜って
その場に蹲り、その巨体が風景に溶け込んでいく。
獲物が通りがかる、獲物が乗る馬車を待ち受けるだろう。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にナータさんが現れました。
■ナータ > その日少女は走っていた。
近くの街への届け物。
数日間に渡るそれは当然普段よりも賃金は高く
何より着いた先で一泊、その宿代まで支給されるという
少女にとっては破格の条件だった。
コクコクと首が折れそうなほどの頷きで受託した少女
手紙の束を受け取ると大事そうに鞄に詰め、旅路を急ぐ。
雨期になるとなかなか馬車も通りにくく、その前にまとまった量を届けるのだとか。
半日も走ればもう遠くにも街は見えなくなる。
時折自分を抜いていく馬車や、逆に向こうから向かってくる馬車とすれ違う。
街道は定期的に警備兵が巡回し、魔物の襲撃の恐れは低い。
どこか長閑な空気の流れる中、こまめに休憩を挟みながら少女は走る。
そんな折、だいぶ先に街道の脇に留められた馬車があるのを見つけて。
■ビザールキャリアー > 留められた。それが間違いであると近づくほどに気づくだろう。
倒れ込んだ馬車。殴り潰された馬から滴る血の臭い。
男達はことごとく穿たれ、潰れ、引き裂かれ、
凄惨な虐殺の現場がそこには広がっていて。
女性は、いない。一人も哀れな亡骸となっていなかった。
ただ、御者も、冒険者も、商人も。
等しく男が肉片の仲間入りをしている光景で、草むらが立ち上がる。
よく見れば、草むらの光景を身に写したナニカ、擬態した巨体だと分かるだろう。
それを認識するか、それ以前か、草むらが、縦に避ける。
擬態したまま、目の前の獲物へ無数の触手が、細い触手が無数に絡みついてくる。
まるで、女性のような滑らかな手つきの、女性のような優しい手指の感触。
それが、耳に潜り込み、手足に絡みつき、衣服の中にまで潜り込んで絡め取って、
ゆっくりと、気遣うような強くも優しい”手つき”で捕えた貴女を持ち上げる。
異常な状況。何より異常なのは、擬態を解きつつある異形が、
貴女をかつて犯した村人達よりよほど隆々とした四肢を持つ奇形の異形が、
そんな男達よりも貴女を”丁重に”捕える状況。
耳の中で声が聞こえるだろうか。優しい声、なだめるような声。
女神のような、あやす声。
それが、貴女に
”誰も助けに来ない、
誰にも見られていない
誰にも見つけられない”
と囁きかける。
ただ、その異形達に囚われる獲物達とちがい、もう一つ、言葉が流れ込んでくるだろう。
”楽園を あなたに”
■ナータ > 休憩できる場所まではまだあるはず。
故障かな。
少女は思った。
幾ら魔物は出にくいとはいえ盗賊だっている。
まあ、それを言えば少女自身にも危険はあったのだが。
それでも、金銭目的ならば車が襲われるから。
「ひっ……!」
大丈夫ですか。
そう呼びかけながら近づく少女の目の前には
凄惨な光景が広がっていた!
短い悲鳴が一つ。
「やっ、ぁ……!」
目の前には無数の「漆黒」があった。
そしてそれに悲鳴を上げる前に、少女は飲み込まれた。
絡みつかれ、抱え上げられ、そして。
少女は「楽園」へと誘われた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からナータさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からビザールキャリアーさんが去りました。