2022/06/17 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道 大樹 紫陽花の園」に燈篭さんが現れました。
燈篭 > 雨が降りしきっている。
ざぁざぁと ざぁざぁと 今のこの時期 そんなこと 珍しくもありゃあしない。
どこでもお天道様は気まぐれだ この時期 まるで思い出したように 泣きはらすように雨を降らせてしまう。


「土砂降りだねぇ、鬼のなんとかってやつを思い出すような雨だ。」


王の都と港の都 二つを結んだ大道の沿いに小鬼はいた。
酒を呷って その中の溶け消えた何かを感じながら その幼げな頬を赤く染めている。
小鬼の頬は酒の熱と酔いで染まるまま 年の背格好には矛盾した飲みっぷり。

野良の紫陽花が周りにはいくつも咲いている上に、上にはでっかい木が、枝葉を茂らせ、雨を止めているときている。
これじゃあ、鬼の体が冷めるなんていうこと あるわけもない。

鬼がこんな 涙雨 を避けていりゃあ、体なんて冷めるはずもないというものだ。


「嗚呼思い出した……鬼の涙雨ってやつか。」


華は見頃 雨も遮っている。 酒を飲むには少しだけしゃれた場所だったというのに 小鬼は雨を肴に飲んでいる。
余計な音も聞こえない どこぞの鬼が 泣けない代わりに天が泣いているかのような、涙雨。
岩の一つに腰を落とし、酒を片手に雨を眺め、雨を聞き、雨の温度とやらは 嗚呼きっと 熱くて 甘そうだ。

涙のように見ていれば、そんな風に考えるのは 鬼 というものか。


「うい  くっ。」


酒で酔い、雨で酔い、喉が慣らせば、胡坐を掻きなおして瓢箪の揺れる音
じゃぼん じゃぶんっ と耳の傍で聞かせる酒の音。 嗚呼、まだまだ、飲めそうだ。

燈篭 > 小鬼のやることは単純だ 酒を飲む 鬼のやることなんて それくらいでいい。

何か傍になければ 由々しき という事柄なんて当てはまらない。
村を荒らすのも 街を巡るのも 雨を愛でるのも 鬼の傍で何かが生えているから、そうなる。

それ以外に理由がいるか いや、無い。

だから小鬼は酒を飲みながら、胡坐を掻いて岩の上。
雨が降りしきる 額に手を翳し、どこを見ても雲に切れ目は見えはしない。


「おー、おー、こりゃあ長い雨だ。
 お月さんが出るまで付き合えってんなら、ごめんだけどさ。」


私は今は、月で酒を飲む気分じゃあないんだよね と そんなことをいう。
満ちた星もいいもんだ でもありゃあ、寝そべってこそだろう。

瓢箪の先に口をつけ、酒が細く長く注がれる。
杯で呷るわけじゃない、その口元 乏しい酒が流れ落ちる。
だからいつまでも口が離れようとしない。

熱い 美味い 溶けるような甘い味。


「―――く、はぁぁ……。」


白い吐息 雨で冷えた気のせいじゃあない
酒と熱が もうもうと臓を燃やすせいだろう。
雨で飲む酒は、苦いよりも甘い。

誰かの泣いてる面見て飲んでる御人より、趣味はいいだろうさ、と
酒を片手に鬼は灰色のお天道様を眺め続けるばかりである。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道 大樹 紫陽花の園」から燈篭さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > カタカタと小気味の良い音を立てる幌馬車が街道を行く。
ダイラスから王都への道のりはやや長く暇を持て余す。
運悪く…いや、運良く?相乗りしているものもほとんどいない。
こうなると、少しばかり眠っても問題はないとも考えてしまうわけで…

馬車の中でうつらうつらと舟を漕ぐ。

馬車が途中の待合所に止まっても、すぐに目をさますようなことはない。
誰かが声をかけない限りは、眠りが深くなっていくだろう。
王都まではまだ時間はある。
途中泊まることもあるだろうが…賊でもでない限りは問題はあるまい。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からブレイドさんが去りました。