2021/06/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都から離れる事、半日。昼下がりの近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い、その道を遮るように柵が設けられ、
道の脇には幾つかの天幕が建てられ、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは、王都の兵士達。
曰く、此処最近、山賊や盗賊の類が近隣に出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際の所は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという不良兵士達の憂さ晴らしと私腹を肥やすための手段に他ならなかった。

「――――よし。次の奴、こっちに来い。」

でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、彼の率いる隊商を通せば、
列をなしている次の通行人に声を掛けて近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国の兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
そして、その事を理解している兵士達は、御国の為ではなく利己的に国民を食い物にしている最低最悪な屑揃いであった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  天頂を過ぎ緩やかに傾き始めた太陽が没するまでは、まだ数刻といった頃合いに…… 

「いやああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」

 まるで、断末魔もかくやというような悲鳴が木々の枝葉を揺らし、枯れかけた茂みを震わせ木霊した――

 街をつなぎ、大地を割るように平地を走る交易路は森の方へ一本分岐していて、枝葉を擦り合わせるようにして立ち並ぶ常緑樹林を別つように旅人を導いて通っていた。

 その道に入ったのが、不幸の始まりだとも知らずに数刻前足早に分け入り、日が暮れる前にこの先の宿場に着かなければと懸命に歩を進めていた。
 この、大型の馬車は通れないほど幅が狭い森林の道は、交易路の途中にある宿場町までの近道となっており、身軽な旅人や冒険者御用達となっている。

 そんな道の途中で出くわしたのは、魔犬・ヘルハウンド。よりによってコレだ。相性最悪苦手中の苦手。
 大の犬嫌い、総じてイヌ科の魔物も同等に無理。
 他の魔物ならいざ知らず、これと遭遇してしまっては完全に戦意を喪失して泣きわめきながら逃げる、という情けない行動一択となってしまう。

 そこらの町娘と大差ない様子でがたがたと震え怯え、絶叫の尾を引きながら裸足で逃げ出す冒険者。

「いや! いや! いや! いやああぁぁー!! いやだぁあぁぁ!! やめてやめてやめてこないでえぇぇぇ!!」

 背後に迫る燃えるように真っ赤な双眸をギラつかせた魔獣から全速力で逃げ惑いながら、悲鳴を上げ、泣きじゃくるみっともない女が、周囲の静寂を薙ぎ払っていた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にミシェルさんが現れました。
ミシェル > 交易路から枝分かれした、宿場町への近道。
馬車は入れないほど狭いそこだが、人が入る分には問題はなく、
ましてや、箒に乗って飛んでいれば足場の悪さも関係ない。
そんなわけで、今日もまた遺跡へと調査に出た宮廷魔術師は、箒に乗って森の中をかっ飛ばしていた。

「んん?おや?」

そんな道の途中で聞いた、謎の叫び声。
そしてその数分後に目の前に現れたのは、魔犬に追われる女の姿。
そして彼女には見覚えがある。

「やぁティアフェル君!奇遇だね!」

呑気に声をかけつつ、彼女の横をすれ違い、
ヘルハウンドとティアフェルを分け隔てるように、その後ろに立つ。

「あぁなるほど、君この子に会うのは初めてかい?
それは災難だったね…対処法を教えてあげよう」

そう言いつつ、背負っていたリュックから取り出したのは…干し肉。

「ほら、肉だぞ!待て!」

干し肉をふりふりと振りながら手をかざすと、ヘルハウンドは急停止し、お座りの姿勢を取った。

ティアフェル > 「ぎぃやああぁぁぁぁぁ!!! いやいやいやー!!死ぬぅぅー!!」

 全力疾走しながら魔犬から必死で逃げ惑っていたが、森の中の一本道を真っ直ぐ四足歩行の生き物から逃げてもはなはだムダというものである。

 二本足と四本足では機動力は根本的に違うのだ。
 しかしパニックを起こして逃げ惑っているヒーラーの頭には常識的思考は存在しない。犬恐怖症にとってヘルハウンドなんて目があっただけで死ぬ勢い。

 そんな中、ひゅい、と風切り音とともに傍らをすり抜けていくなにかがいたが、構ってる余裕はない、なんか聞き覚えのある声が横切ったなあとは思ったが、振り返って確認する余裕も自分の後ろに立ってヘルハウンド対策をしている姿も見ることはできず、

「ひやあぁぁぁぁぁー!! なんか誰かいた……?! 誰だか分かんないけどゴキゲンヨウー!!」

 内容はよく聞き取れなかったが、何か云ってたような気はして、無視して走り去るのも悪い気がしたので辛うじてそれだけ、振り返らず真正面を向いてダッシュしながら発した。
 相手とヘルハウンドとの距離だけが順調に開いて行く。

 ちなみにヘルハウンドと出くわすのは別に初めてでもない。何度出くわしても泣きじゃくりながら錯乱して逃げることしかできない。
 それが真正犬恐怖症のとれる行動の総てである。

ミシェル > そうして未だに走っている彼女の横に、すうっと現れる影あり。
ミシェルは箒に乗って、涼しい顔で手を振った。

「改めてごきげんよう!もうあの犬は満足して去ったよ!
走る方向はこちらで合っているのかい?」

道の途中で出会って逃げているなら、一本道を逆走しているんじゃないかと考え、
並走しながら声をかける。

「あの犬、誰かが餌付けしたらしくてね。魔物なのに人間になついちゃったようなんだ。
人間を見ると寄ってくるけど、何かしら食べ物をあげると満足して去っていくんだよ」

そんな話をしながら、横を飛ぶ。
前は見ていないが、道に飛び出る木の枝は器用に避けながら飛んでいた。

「どうにもこの道を守ってくれているようでね。
まぁ僕としてはこのまますくすく育ったらケルベロスにでもなるんじゃないかと楽しみなんだが」

ケルベロス、首が三つの化け物犬。
特徴が似通っていることからヘルハウンドと何らかの関係があることが伺われ、
成長した姿ではないかと言われていた。

「だからここを通る時は干し肉を持っていくのをオススメするよ。
投げれば遠くに行くから、あの犬は」

ティアフェル > 「っはあ、はああ、は……!? あ、あぁぁー?!
 だ、れかと思えば……ッ」

 行く先は合っているものの、わき目も振らずなりふり構わず汗を飛ばして顔を真っ赤にして呼吸を激しく乱しながら猛ダッシュしていたが、そんな横に対比のごとく平常運転、冷静沈着なご様子の魔術師の姿。さすがに並走していると顔を向けて確かめることくらいはできて、意外そうに目を見開き。
 咄嗟に変わったあだ名的呼び方をしてしまった。

「ミシェルんじゃん……、え? 犬? え? い、いない……マジで? 
 ………餌付け……? 誰だそんなクソ迷惑な事しやがったのは…!!? お蔭で心臓麻痺起こすところだったわ!
 見つけ出して文句云ってやる!!」

 犬は去ったという言葉に足を緩め、背後を振り返り魔犬の姿がそこから消えていると、力尽きたようにその場に膝をついてくずおれるように地面に両手をついてぜいぜい荒い呼吸を繰り返した。

 目に入る汗を拭いながら箒に乗ったそちらを見上げるようにして。

「………ケルベロス……マジか……見た瞬間死ぬな……」

 犬恐怖症が魔犬のボスに出会うと心不全を起こすという可能性。
 嫌なことを云う彼女の言葉に絶望したように暗い表情で呟いて、ヘルハウンド対策に肉をもってけと云われ、微妙な顔をした。

ミシェル > へたり込む彼女に合わせて、こちらも箒を急停止させる。
そして颯爽と飛び降りると、しゃがんで目線を合わせた。

「覚えていてくれて嬉しいよ。大丈夫かい?
ほら、水だよ」

腰に下げていた水筒を彼女に渡す。
そのまま彼女の呼吸が落ち着くまで待ちつつ。

「もしかして魔物じゃなくて犬が嫌いかい?あの子もあんなに可愛いのに。
まぁ人によって好き嫌いはあるか……」

全力で逃げ出すような犬嫌いも稀ならヘルハウンドやケルベロスを可愛いと思う人間も稀だろう。
そこは魔術師らしい変わった感性なのだろうか。

「おやおや、餌をやるのも嫌かい?どの道ここら辺の一帯はヘルハウンドの生息地だよ。
餌をあげたら尻尾を振ってくれる一頭とこちらを八つ裂きにしないと満足しない群なら、
僕は前者と仲良くしたいけどね」

定期的に餌を貰っているだけあってあのヘルハウンドはすくすく成長しているらしく、
他のヘルハウンドどころかゴブリンなどにも負けないボス的存在となっていた。
そのボスが縄張りとしているお陰でこのメインの街道から外れた辺鄙な道も、
比較的安全に通ることが出来るのだ。

ティアフェル > 「そ、その節はお世話になりまして……この節もお世話になりまして……」

 そりゃ忘れてません、と膝折れたようにへたり込む正面にやってくる彼女の相貌を改めて眺め、取り敢えず頭を下げ、それから水筒を手渡されて、「ありがとう」とそこでようやく笑顔を見せて受け取り、蓋を開けてこくりと喉を鳴らしては、ふはーと大きく息づいた。

「……犬がかわいいと思う相手にはそれが恐怖の対象、という人間のことを理解させることなんてできないのよね……逆にわたしだって、理解できない趣味はあるもの。死体愛好とか。それと一緒かしらね」

 大半の人間にとってはヘルハウンドはともかく犬の造詣はかわいらしいものであって、それが心底怖いと感じる人間の感性は理解されないことは重々承知していて、どこか諦めたような笑みを唇に佩いた。

「――わたしっ、やっぱりこのままダッシュでこの道を抜けるわ! そうするしかないのよ! こんなところでぐずぐずしてられやしないわ! 行くぞ! 走れティアフェル明日へ向かって! じゃなくて、宿場町へ向かって!!」

 この辺りはいつの間にか以前は極少数いただけに過ぎないヘルハウンドが増殖して大変なことになっていたらしい。
 犬恐怖症は魔犬の生息地には決して足を踏み入れないように情報を確認しているのだが、急繁殖には情報が追い付かなかったらしく、とんでもないことを魔術師の口から聞けば、急にすくっと立ち上がり、ひとくち二口いただいた水筒をそちらへ「ごちそうさまでした」と丁寧にお礼を云って返すと。

「ごめん! 急がなきゃ! わたし早くここ抜けないと死ぬから死ぬ気で走るわ!」
 
 と呼吸が整ったばかりだが、今度は全力疾走では持たないので、一定の長距離走ペースを選択しやたらいいフォームで告げるなり、たったった、と一定の速度で走り出した。
 

ミシェル > 「死体愛好か…流石に動かないのはちょっとつまらないかな…?
ま、何で嫌いかは分からないがとんでもなく嫌いなことは分かるさ…。
僕はどちらかと言うとネコ好きだから安心するといいよ」

ミシェルの言うネコは動物の猫とは何か違うニュアンスを感じさせた。

「宿場町か。じゃあこっちで合ってるのか。
って、走るのかい!?まだ距離はあるよ!?」

夜までには着くであろうとは言え、距離は遠い。
体力を無駄に消費してしまえばいざという時逃げられない。
比較的安全な道とはいえ、それでも盗賊は出る。

「しょうがないな…。後ろ空いてるけど、乗っていくかい?
少なくとも君の走りよりは速いし、楽だよ」

返された水筒をしまった後、再度箒に乗って並走しながら、ミシェルは声をかけた。
自分の目的地ではないが、まぁ急ぐ旅でもないし、
淑女の助けになるならやぶさかでもない。

ティアフェル > 「裏を取れば動けば死体でもいいってことになるわよそれ……?
 ただのキライじゃないのよ……怖いのよ、本当に本当に怖いのよ……毛虫嫌いの人が毛虫が一匹視界に入っただけで発狂するじゃない? そのレベルよ……。
 ああ、うん、そうなんだ……」

 猫好き情報をいただいたが、それがどうしたのだろうと思わなくもなかった。犬好きでも別に犬を自分の前に連れて来るなんて真似をしなければそれでよいとだけ思っていて、やっぱ微妙な顔で肯いた。

「遠くても、呑気に、歩いてて、また、犬に、出くわすと、いや、じゃない!」

 走りながらなので切れ切れに口にした。腐ってもヒーラー、体力を回復するポーションなりの所持はあるのでそこまでは持久力の心配ない。
 それに持久走はまあまあ得意だ。
 盗賊なんていくらでもはっ倒してやる。

「へ…? いー、の? そこ、て、わたし、乗っても……?」

 なんとなく相乗りは駄目なのかなーと思ってはいた。前に羨ましそうに見ててもスルーされたから、乗せてなんて図々しいことは云わない方向でいたけれど、そちらから申し出てもらえば、相変わらず一定のペースで走りながらぱちくりと双眸を瞬いて見やり。

ミシェル > 「動いててもゾンビはイマイチかな。愛を囁いても反応が無さそうだし。
リッチとか吸血鬼とかなら歓迎できるね、僕は」

とはいえ、そこら辺になってくると基本的に魔族の類のため、
あちらから好意を向けられる事は基本的に珍しいのだが。

「ここは可愛いお嬢さんの特等席だからね。
前だって頼んでくれたら快く乗せてあげたんだけど、頼んでくれなかったからね」

どうやら気持ちに少しすれ違いがあったらしい。
ミシェルの箒はティアフェルの前に回ると、そこで停止した。
そして、彼女は箒の柄の、自分の乗る後ろの部分を軽く手で叩いた。

「さ、どうぞお嬢さん。後ろに乗って、しっかり掴まってください」

キザな様子で、馬上の騎士のように一礼しつつ、ミシェルは言う。
空飛ぶ箒と言っても乗る分にはただの棒なので少々座りにくいかもしれない。

ティアフェル > 「あと、腐ってるしね。
 まあ……あなたにもネクロフィリアの趣味はないってことね。あれはもう、かなりの特殊性癖だから、死んでピクリとも動かないガチ死体じゃなきゃ駄目らしいもの」

 もしも死体愛好に理解できる、死体にも欲情する、と真面目に返答されたらちょっとどうしたらいいのか分からなくなるところだったので、まあ、ノーマルな返答に軽く笑い。

「やった、ありがとー!
 ちょっと乗ってみたいなーとは思ったのよ。でもさ、もうすでにひとつ頼みごとをしていたし、その上箒に乗せてくれなんて、図々しいかなと思ったの」

 箒には誰それしか乗せない、と決めてるタイプもいると聞く。おいそれと云いだせなかったが、乗せてくれるというなら、ぱっと表情を明るくして、一度足を止めるとその箒の後ろに飛び乗って。

「きゃー、うれしーぃ、わーい。空飛ぶ箒だー」

 はしゃいだ声を立てて、落ちないようにしっかり箒の柄をつかんで。きゃっきゃと楽し気に浮かれた。