2020/03/09 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にユーシアさんが現れました。
ユーシア > 日も暮れ落ちて、月明かりが朧に街道沿いを照らす夜。
ひっそりと宵闇を縫うように、一台の馬車が闊歩していた。
黒塗りの馬車、曳いている二頭の馬も漆黒であり、
黒ずくめの御者が操る鞭の音さえ、何処か人目を憚るように。

馬車の中には昏々と眠る少女が一人と、その様子を窺う壮年の男が一人。
車内に満ちる甘い香りの源は、片隅に設えられた小さな香炉。
魔術によって意識を刈り取られた少女が、万が一にも、移動中に目を覚まさぬように、
彼女の為だけに調合された、特別な薬を焚いている。

人目を忍んだ夜更けの移動、行く先にも行く理由にも、きっと後ろ暗い所しか無い。
二頭立ての馬車に、護衛の一人もついていないのが良い証拠だ。
何も知らず、考えず、少女は静かに眠り続けているけれど。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > (少女を乗せた馬車が、幾何かと静かな街道を進んだ辺り、だろうか。
傍らの茂みから姿を現すのは、目深にフードをかぶった男。
闇との境界もおぼろげな様相で道の真ん中まで歩み出れば、そこは黒い馬車の進路上だ)

(カチッ、カチッ
高い音に合わせて夜闇に火花が散り。そして、蒼い炎の松明が灯る。
円を描くように光の尾を引けば、何も知らぬまま眠りこける少女を運ぶ馬車の速度が、落ちてゆく。
恐らくは、予めそういう風に示し合わしていたのであろう。
男の目の前までやってくる頃には、馬車は既に速度を失っていて)

「こいつが証明だ。
手筈通り、荷物を貰っていくぜ」

(御者に声を掛ければ、石を二つと差し出して。
見たところ何の変哲も無さそうだが、これも予定通り、といった所か。
互いに納得した、と言わんばかり。止められる事も無く。
荷台へと脚を踏み込んでいった)

ユーシア > 行く手に現れた男の姿と、彼が携える松明の灯。
それらを視認し、御者は手綱を握り直す。
事前の申し合わせ通り、姿を見せた男の前で、ぴたりと馬車を止める為に。
密やかな声が車内へ、『その時』が訪れたことを知らせ、
少女の傍らに座していた男は無言で頷いた。

そうして、馬車が停車すると。
上体を乗り出し気味に、御者は男から差し出された石を受け取り、
くいと顎をしゃくってみせた。
中から扉が開かれ、少女の傍らに居た男が、踏み込んできた彼に首肯をひとつ。
甘い香りの満ちる車内で、目覚める気配もみせない少女の身柄は、
この瞬間から、受取人である男の手の中へ移ることになる。
それこそ荷物のようにあっさりと受け渡されて、一体、何処へ向かうのか―――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアシュトンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からユーシアさんが去りました。