2020/02/29 のログ
ラヲ > 「何にもやる事がねぇ」
思わず口が開けば低い落ち着いた声がむなしく寒空に響いた。

「何もやる事が無ぇ、帝国にいれば仕事だけ、王国に帰ったらもはや何も無ぇのかよ」

王国の閑散具合に思わず愚痴が漏れる。帝国では人の関わりを求めてたまに抱かれようと試みたりもするが
王国と同じく口を開けばくだらない自身の身体への感想しか述べられない男で溢れかえっていた。
そうなると王国ではもはや形だけの抱かれる気も無く、どうせなら良い女が良いと
噂になっている妖仙を探したりもしたが、八卦山まで足を運んでもはや徒労に終わっていた。

口に出せばその分良い加減虚しさを感じ、悪い意味で女に極寒の山奥にいた若い時分を思い出させた。
本当に良い者との楽しみも無かった自らの故郷と、今となってはこの王国も似たり寄ったりであった。

「………っまぁ、言った所で何も無ぇのに変わらないけどね」
そう言いつつ口に出してしまった自分を自嘲しながら、まだ何かあるかもしれないと
道を歩き続けた。

ラヲ > 歩き続け、そのまま何時もの何も無いままに静かに消えて行った
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からラヲさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――わたしは、良く走っている。
 例えば約束の時間に遅刻しそうになった時、ゴロツキに付きまとわれている時、モンスターの群れを引き付けている時、そして―――

「い゛や゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!! イ゛ヌ゛う゛ぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛!!」

 野犬に追われている今!

 このヒーラー、モンスターならオークだろうが、タイマン張ろうっていう特攻根性を持っている癖に犬は大層苦手。子犬やらぬいぐるみのような小型犬やら獣人やらは除外だが、こういうガチでワイルドな野犬などは本能的に無理。モンスターの方が余程危険、とかそういう理屈ではない。とにかく嫌いなものは嫌い。

 だから、夕刻頃の行き交う人も馬車も大分絶えている街道を飢えて出て来た3頭の犬に追われて半泣きで猛ダッシュ中。

「ぎぃやぁぁぁぁあぁぁぁぁ!! やだぁぁぁああ!!! 
 誰かーッ!! 助けてぇぇええ!!」

 悲鳴を上げ、髪を乱して顔をくしゃくしゃにしてぼろんぼろんぼろになって、涙目で駆け抜ける姿はなかなか悲惨だった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にエズラさんが現れました。
エズラ > 街道から少し離れた森の一角、清らかなせせらぎの音をかき消す悲鳴に、思わず耳をそばだてる。
ここ最近は街を離れて野外に生活し、獣を狩る猟師生活を続けていた。
今もまた、丁度昼間に仕留めた小型の獲物を解体し終えたところである。

「ん……?」

その甲高い声にはどこか聞き覚えがあり、獲物を抱えたまま声のする方へと駆けていく。
程なく街道に出て目の当たりにしたのは、野犬の群れから逃れようと懸命に走る――

「ありゃま~……――」

――以前、自分の仕掛けた罠に見事に掛かった「獲物」の姿がそこに。
ともかく、今やることは一つだ――

「ティアッ!こっちへ走れっ!!」

ティアフェル > 「やだぁぁぁ!! やだー!! いあぁぁぁ!! イヌー! やめてー! 帰ってえぇぇえ!」

 断末魔かというような悲鳴を引き連れて、後ろに吠えたてながら迫って来る野犬に向かってかなり無駄な懇願を喚く。
 無我夢中の全速力で逃げ惑うが、野生動物と脚力、持久力の勝負をするには分が悪い。
 どんどん距離が詰まってきて、もう駄目か――と絶望的な気持ちに塗り込められたその時、悲鳴を聞きつけて駆けつけてくれた彼から声が掛かって、

「うっ、うっ、うえっ? エ、エズ……わぁぁぁぁん!! たーすーけーてーぇぇ!!」

 滅茶苦茶情けない顔で、つい先日知り合った野生の傭兵の姿を確認すると、そちらへ助けを求めながら、ワンワン姦しく吠えたてる野犬を背後に連れて一目散に走って行った。

エズラ > どうやらこっちに気付いてくれたらしい――なんとも情けない様子で一気に方向転換して駆けてくる――
当然、彼女を追って獰猛な野犬も向きを変えている。

「そのままオレの後ろへ走り抜けろッ!!」

先ほどよりもさらに大きな声で叫ぶと同時、肩に抱えていた獲物――小型の四足獣、狐や狸の近縁種――を、駆ける彼女の反対方向へ放り投げる。
血抜きはしたが、今しがた解体を終えたばかりの新鮮な生肉――しかも逃げない。
野犬たちが唐突に足を止め、フンフンと鼻を鳴らしたかと思えば、一頭がそちらへ、それに続いてのこりの野犬も。

「よ~し、上手くいった……――」

野犬が一斉に肉へとかじりつくのを見て、こちらも少しずつ後ずさり――

「今のうちに逃げようぜ、ティア――」

そう言って、ついてこい――と彼女に促す。

ティアフェル > 「分かったーぁ!!」


 地獄に仏な気分で、ぜいはあ呼吸を乱しながら指示を飛ばすその声に従って彼の傍を駆け抜けて、さらに背後をわき目もふらずダッシュしていく。
 隣を抜ける一瞬に彼が何か――動物のような物体を投げつけたのが目の端に見えたが、構う余裕はなくとにかく野犬から逃れようと必死に街道脇へ走り込み。

「へ、あっ?  そ、そっち?!」

 そのままとにかく直進していたので、背後で肉に興味を示して犬たちが追うのをやめたのも気づかずにいたが。ついてこいと掛かる声に最初の指示通り真っ直ぐに走っていた足を彼の方へ軌道修正して。

「っは、っはぁ……追って来て……ない……?」

 恐る恐る後ろを振り返り振り返りしながらびくびくと、さっきまでしつこく吠えて追っていた声も足音も聞こえないことを確認すると姿もないことにまだ、心臓をどくんどくんさせながら呟いて。

エズラ > 一目散に駆けつつ時折後ろをふり返り、彼女が後に付いてきていることを確認。
十分に離れた場所で足を止めると、そろりと草陰に身を隠しつつ、野犬たちの方に目をやると――すっかり食事に夢中で、こちらには興味を失っているらしい。

「ふ~……――」

ともかく一息――そして改めてお騒がせ少女に向き直り。

「ようティア――今日も騒がしいな、ったくよ~……――」

からかい半分の笑みを向けて――

ティアフェル >  とにかく、この人について行かなければまた野犬が追ってくるような、そんな根拠もない妄想に囚われて置いて行かれないように、半泣き続行のまま彼の後ろをキープしていた。

 その足がようやく止まって、そしてしつこかった野犬達は今はもう目の前の肉にしか興味がなく、さっきまで追っていた存在など忘れ去ってしまったようで。
 無事を確認すると、

「っは、はぁ、はぁぁぁ~っ…… 死ぬかと思ったあぁぁぁ。
 ありがとおぉぉぉ、助かったよおぉぉぉ」

 寒風に汗を滲ませて乱れた呼吸を整えながら、笑みを向ける彼の手を取り、ついでに生還した安堵からがし、と一度抱き着いて離れ。

「イイ所に来てくれたよ、ナイスだよ!」

エズラ > 「トラブルに好かれるタチなのは確かなよ~だな」

こちらも一息ついたところで、もう少し離れようぜ、と街道からさらに離れていく。
獲物をまるまるくれてやったのは少し惜しかったか……?と思わないでもなかったが、どうやら本格的に切羽詰まっていた様子――なら、ともかく彼女を救うことができたのでよしとしよう。

「――しかしよ、ワンコロぐれ~ならなんとか追い払うことぐれぇできたんじゃね~のか?」

ソロ状態でも森に入るような度胸の持ち主だということは知っていたので、いくら多勢に無勢とはいえ、犬相手に本気で逃げ回っていた様子が少しいぶかしくて――

ティアフェル > 「っはは……ま。冒険者だからね……トラブル上等?
 とはいえ……イヌはない、イヌはきっつい。ぁ゛ー」

 思い出しても膝震える。走り過ぎたのもあるかも知れないが。
 街道を離れるに従って隣について歩きながら、

「あー。そういえばごめんね? 何か今日のおかず?投げてくれた?

 ………イヌ…だけは苦手なの……。あれならオーガとかの方がまだマシ」

 アホ毛をしゅん、と撓らせてまるで頬でもぶたれて叱られたように力なくぼそぼそと呟いた。
 属性がゴリラとかボス猿のせいか、イヌとの相性が限りなく悪い。理屈は不明だが。

「エズラさんは? 相変わらずテント生活なの?」

エズラ > 「なるほど、そういうことだったかよ――」

モンスター、討伐対象――そういう対象でなくとも、苦手なものは苦手、嫌いなものは嫌い――
自分にもそういうものがないわけではないので、一応納得する。

「んん、ああ、相変わらずあの場所にテント張ってるがよ――なに、気にすんな、今日明日に食糧が尽きるってわけでもなし――」

さっきのは保存食にしようとしてたんだ――と。

「……おい、ところで――「オーガの方がまし」ってのは本気で言ってんのか――?」

男の様子が変わる――足を止め、身を低く――視線の先、街道外れ、深い森の奥――犬とは異なる何かの気配。
森の奥が、蠢いている――何か異様なものが近付いている感覚。

ティアフェル > 「ティエフェルの泣き所……それはイヌ……。
 このことはどうぞご内密に……」

 云い触らすようなタイプには到底見えないしそもそも誰にリークするんだ、そんな情報という感じだが。何となく内緒にしていてくれるように眉を下げつつ両手を合わせ。

「そっか。相変わらず野生のエズラだね。なんか似合ってるよ」

 狩りの腕はいいようで、食べ物に困っているという訳でもないらしい。一応良かった、と安堵したが――

「ぇ……? ぁ?! うっそでしょ……?」

 ゴブリンくらいに負からないだろうか、と願いたくなるが――気配を察して身をかがめる相手に倣って慌てて腰を落とし、森の深部から近づいている不穏な影に視線を注ぎ。

 気配を探った可能性として足音や大きさから熊かそれこそオークかオーガか……野犬など比にならないような厄介な手合いでありそうで……。

「ど、どうしよ……逃げる? 隠れる? カチ込む?」

 ひそひそと茂みの影に隠れながら囁いた。

エズラ > はたして、茂みの奥からのっそり姿を現したのは、双角を有した見上げるような巨躯を有するオーガである。
ぼろ布を纏い、丸太をそのまま抱えているような棍棒まで備えているではないか――

「あ~あ~……ったく、ティアが「オーガは平気」なんて言うから……――」

冗談で場を和ませよう――という、男なりの配慮ではあった。
事ここに至って、最早逃げることは難しい――ゆるりとした動きで腰の剣の柄へ手を伸ばす――

「……使えるのは回復だけか?身体強化の類はイケるか――?」

使えるならすぐにオレにかけろ――と後ろ手に手招きする。
無理なら、ともかく相手がまだこちらを向いて、敵か味方か、呆けているうちに仕掛ける必要がある――

ティアフェル > 「うわっちゃぁ~……。ってわたしのせいかいっ」

 噂をすれば影が立つとは良く云ったもの。
『呼んだ?』って感じでナチュラルに森の奥からオーガが呼んでないのにしゃしゃり出て来た。
 中ボスさんといったところのモンスター。
 まるで自分の発言が原因というような揶揄いに小声で文句を云いつつ。

「スキルとしてあるのは回復と状態異常の解除とかだけど――強壮剤なら持ってる、服んで」

 声を低くしながら、技としては使えないが身体能力を上げスタミナを保持し興奮させて痛みなどの感覚を鈍らせる補助的ポーションなら調合技術があり、常備してあって、急いでウェストバックから取り出すと蓋を開けて水薬の小瓶をその手に持たせよう。
 即効性があり、服用すると効果はすぐに表れるだろう。

 そして、ゆるりと首を巡らせて、二人のニンゲンの姿を認めた魔物は――目標を定めたかのように、まずは威嚇のつもりか棍棒を振り被った――

エズラ > 手の中に小瓶を受け取るや、間髪入れずに服用――瞬間、鼓動が早鐘のように震え出すのが分かる。

「こりゃ、上物だ――」

身体強化系魔法を受けた時にも感じる、一種の全能感――
下手な者が放てば、酒に酔う感覚や急激な倦怠感を同時に発生させるが、今のこれは、純粋に身が軽くなった感覚。
おかげで、オーガの振るった棍棒の軌跡も、まるで子供が振り回す枯れ枝のように視認できる――

「少し下がってろっ!」

叫ぶと同時に剣を抜き放ち、棍棒と打ち合う――のではなく、僅かに剣を斜めに、棍棒の軌道を明後日の方向へ。
その勢いで一度身を回転させつつ、オーガの脇腹当たりへと斬り付ける――

ティアフェル >  即効性の薬効が彼の全身を瞬時に駆け巡る。性格難ではあるが、調合技術に関しては一応はプロの端くれ。


「効果は――エズラさんなら恐らく20分! 連続服用はできないから短期戦で!
 ヒールなら飛ばせるから――怪我は気にすんな! ガンガン攻めて!」

 自分の得物、ではないが辛うじて打撃できるスタッフでは、部の悪さを感じた。
 白兵戦に横槍を入れるよりは支援に専念した方が吉と判断して

 今日ばかりは無駄にカチ込んで行かず、いわれる前にはもう後方に飛びずさっていて、状態異常になることはないだろうが、回復の必要は出てくるかも知れない。距離があっても瞬時に飛ばせられるようにヒーリングの術式を編み上げて詠唱を紡いでおく。

 小物程度なら風圧で吹っ飛んでしまう勢いで棍棒を大振りしたお蔭で、一瞬空いた脇を狙って掠める切っ先に赤黒く硬い皮膚が浅く裂かれて鮮血が飛び散り。その痛みが怒りに火をつけたか、空間が震えるような咆哮を上げ、一度は剣でいなされた棍棒をそのまま真横――向きにして彼の首肩付近に振り抜いた。

エズラ > 耳に聞こえた「攻めろ」の声に、言われなくても、と返す暇はない。
風を切って迫る棍棒の一撃を、剣の鍔元に近い場所で受け、両脚を踏ん張る。

「うおおっ……!!」

即効性の薬剤のおかげで、十分に踏みとどまることができる――常ならばあっさりと吹き飛ばされていたに違いない。
手傷を負って興奮状態に陥ったオーガの連撃はなおも続き、時に地を穿ち、細木をなぎ払い――
しかしその全てを、かわし、いなし、受け止める。
その間巧みに位置を変え、一際大きな巨木を背にした瞬間、振り抜かれた棍棒が強かに樹の幹を打ち、相手の動きが一瞬止まる――

「ふんっ!」

伸びきった腕、その関節部に、強かに斬撃を浴びせると、骨を断つまでは出来ずとも、腕の動きを完全に奪う深手を負わせる。
鮮血吹き、絶叫が響き――

ティアフェル >  ヒーラーだから、至極当然のポジションだが――見てるだけ。支援に回っているだけの自分がなんだかもどかしい。しかし、下手に割り込むと相当邪魔になるし攻撃の余波を食らってしまう。

 唇を噛み締めながら成り行きを固唾を飲んで刮目して見。
 オーガのしっちゃかめっちゃかのように見えるが重く正確で速い連打を繰り出す動きについて行き、しかもすべてを無効化している、反射神経に舌を巻いた。
 打撃音に混じって響く、周囲の獣が逃げ出してざわめく茂みの音。慌てて飛び立つ小鳥の悲鳴のような囀り。そして斬撃の音が絡み――

「いっけえぇー!」

 とどめを刺すなら今に見えた。
 腕を切り裂かれてもう丸太のような棍棒を振り抜く力を失い。その代わりに、血と絶叫に塗れながら、耳を塞ぎたくなるような怒号を轟かせながら闇雲に足を踏み抜くように振り上げて、腕を振り回し、拳を突き上げ、でたらめな代わりに読みにくい避けた端から拳が飛んでくるような動きで、全身を使い打ち倒しにかかってきた。

エズラ > 「ぬぐおっ……!!ぐっ!」

ダメージはしかし、オーガの勢いを削ぐには至らぬばかりか、かえって大暴れさせる羽目に。
動きがめちゃくちゃな分、かえって読み辛い――二度、三度、打ち据えられ、思わず膝をついたところへ、突進してくる――

「この野郎っ……!!」

森の中に、思い衝突音が響く――先ほどの大樹が太い幹をひび割れさせ、半ば以上折れてしまうほどの衝撃。
もうもうと土煙が立ちこめ、その奥から――頸椎から真っ直ぐに長い長い棘――ではなく、鈍色の刃を生やしたオーガが、ずるずると倒れ臥した。

「むぐおっ……イテテテテ……――」

程なくして、事切れたオーガの巨体の下から、男が這い出してくる。
何とか仰向けになり、荒い呼吸――全身を強かに打っているので、まともに身動きがとれない様子である――