2020/02/14 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシスター・マルレーンさんが現れました。
■シスター・マルレーン > しとしとと雨が降り注ぐ。
こんな日は仕事も何も無い。無いのだ。のんびりと部屋でものを書いたり、祈りを捧げたり。
穏やな空気を感じながら、ただ只管に雨音のみの静けさに浸って。
一緒に旅に出たシスター仲間のことを思い出したり、楽しい仲間を思い出したり。
そんな気分の日もあるのだ。
「よ、っこら、しょー……っと!!」
しとしと降り注ぐ雨の中、人力車とスコップを抱えて歩く修道女が一人。
ボコボコに開いた穴が雨のせいで泥のようになって、馬車の足が取られて危険だという。
いや穴が開いた時点で塞いでおきましょうよ、と思う気持ちはあるのだが、そんなことは上は分かっちゃくれない。
すぐに行って土を使って埋め立て、人が歩けるようにしてくるのです、というありがたいお言葉を胸に、せっせと地面の穴を埋め立てる修道女。 せっせ。
愚痴りたい気持ちはあるが、それはそれ。
人が困っているなら働くことは厭わない。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にネメシスさんが現れました。
■ネメシス > 一頭の大きな馬が地面を踏みしめるような足取りで歩いてくる。
馬上には白銀の鎧の騎士が一人。
暇を持て余し、馬で散歩を楽しんでいた帰り道で雨に降られたと言う状況であった。
「あら、こんな天気なのにお外で作業?
関心ねえ。」
修道女らしき女性の姿を目にすると、拍車をかけては隣へと近づく。
「こんにちは。
雨なのに今から一人でお仕事?」
馬上の騎士は兜を装着しており、おかげで雨が降っても平気な様子。
■シスター・マルレーン > おや。
馬と馬上の騎士が近づいてくるなら、にこりと微笑んでフードを取ってご挨拶。
教会と冒険者ギルド、二つに同時に所属している身ではあれど、だからといってこの国そのものに対して思うところは………無いことも無いが。
とりあえず、おそらくこの国所属の騎士である人間ならば、丁寧に頭を下げてお辞儀を一つ。
「いえいえ、こんな天気ですから、どうにも街道の穴に水が溜まってぬかるんでしまっているようなので。
商人の方が乗られていた馬車が転倒したそうで、教会の神父様がひどく心を痛めていらっしゃるんですよね。」
隣に近づいてくるなら、お馬さんに手を振ってから見上げて。
「今からというか、……まあ、仕事中、ってところでしょうかね?」
フードを取ってしまえばしっとりとした金色の髪は僅かに濡れて。
修道服はよくよく見れば泥まみれなので、一歩下がってお話をすることにする。
■ネメシス > 「へ~…。
その割に寄越すのは貴女ひとりなのね。
街の外は危ないって知らないのかしら?」
馬上の騎士は黒い服で身を包んだシスターを見下ろす。
重たそうなスコップを持ち歩き、力はありそう。
おまけに度胸が据わってそう。
…などと言った感想を抱きつつ、物珍しそうに並走を続ける。
手を振られた馬は鼻息を荒げ、自らの強さを誇示するようであった。
「なになに、今から次の穴でも塞ぎに行く所かしら?」
泥まみれの服は、既に穴塞ぎをした後なのだろうか。
フードの下の整った顔は母性を感じさせ、娘の好みであった。
「私はネメシス。 聖バルバロ騎士団の聖騎士よ。
貴女はなんて言うお名前かしら?」
■シスター・マルレーン > 「ああ………。
私、冒険者もやっているんです。 兼任冒険者で、一人で旅をして人を助ける行いを広げるっていう。
ですから、………言うなら、身を守れない人が一緒に来る方がむしろ危険で。」
言い過ぎですかね、と頬をぽりぽりとかいて、てへ、と笑う。
「教会も予算は少ないですからねー。
自分の身を自分で守れるような人を複数、街道傍の仕事くらいには回せないんですよね。」
苦笑しながら、ホント困っちゃいますけど、あ、これは内緒にしてくださいね? なんてウィンク一つ。
彼女の能力は聖なる力のエンチャント。
修道服の下はチェインメイルこそ着込んではいるが、割と外見だけでは判断が難しい能力とも言える。
とはいえ、特にそれを見せつけるようなこともしないまま、人力車をよっせよっせと引っ張って。
「あ、そうですね。 雨が強くなる前に塞ぎ切っておかないと。
土を入れても入れても、雨の中で泥を大量生産するだけの女になりますからね………。」
遠い目をして、とほー、と自分の身を嘆く。
表情はころころと変わる女である。
「あ、シスター・マルレーンって言います。 ネメシスさんですね。
………私はその、学があんまりないのと、街の外で活動することが多いので、騎士団のお名前などはなかなか伺うことは無いんです、けどー。 なるほど、聖バルバロ騎士団。」
うんうん、覚えた。覚えたゾ。
■ネメシス > 「冒険者?
凄いのねえ。」
毒気を感じさせない笑みからは想像できない単語の出現で驚くネメシス。
それならば一人旅も道理かと納得する。
言い切るほどに腕前もありそうだ。
「そうかしら?
よく分からない行事には派手に予算を掛けているように思うけど。」
ウインクするシスターに子供じみた笑みを返す。
騎士団の一人として王都の権力者層と接した上での感想を口にする。
シスターの力の源は把握できないが、日頃驚かれることが多い境遇だけに
平然と相手してくるシスターの胆力に興味を抱いていく。
「大変そうね、私で良かったらお手伝いするわよ。
私もこう見えて槌を振り回すくらいの力はあるし。」
ネメシスはこのシスターともう少し一緒に居てみたくなってきた。
それならば一肌脱ぐのが道理だろう。
「王都でも最近は手広くやっているから、お偉方は知ってるかも知れないわね。
貴女も興味が湧いたのなら入ってみる?」
早速勧誘を始めるネメシス。
と言っても、本気で誘うわけでもないが。
■シスター・マルレーン > 「あはは、………なんだかんだ生き残ってやってるだけで、歴だけ長いだけですよ。
後は、教会のお使いくらいですしね。」
まあ、自信というものが感じ取れるとすれば、ある程度のそれは感じ取れるかもしれない。
恐怖や緊張が無い、とも言い換えられるか。
まるで平然と人力車を引いたまま。
「………あーあーあー、そこはー、あんまり聞きたくないというかー。
わかるんですわかってるんですよ、上の方は上の方でいろいろな方とお付き合いしなきゃいけないんですからね。
ええ、ええ、お金もきっとかかるんでしょう。
って思っておかないと私帰ってから神父様の頬をたたきたーくなりますから。」
はははは、と遠い目をしながら舌をぺろ、と出す。
冗談をところどころに挟みながらも、思うところはあるのか、渋い顔も一つ。
「あはは、それこそ教会が請け負ったものですからね。
自分で受けておいて、困ったから、ってのも恰好つかないですし。
それに、報酬は善意ですよ。」
フッフッフ、私も善意ですよ、と遠い目をしながら笑うのだ。
無報酬なのだろう。
「あーいや、どう考えても聖騎士って柄じゃないですよ。
学も無ければ品も無い、あるのは力ばかりなり、とよく言われてますからネ。」
にひひ、と自嘲交じりの冗談を重ねながらも。
「でも同じ道を歩くならば、その場まで是非ご一緒しましょう。
騎士の方と歩いていれば、そんじょそこらの盗賊なりも身を隠すでしょう。
私を今襲っても土がたくさん手に入るだけですけどね!!」
くわっ、と、冗談をもう一個ぶっこんで。ころころと笑う。
■ネメシス > 「生き残るだけ凄いじゃない。
この国は危ない国なのよ?」
人力車を引いているこのシスターも相当な修羅場を潜っているのだろう。
動じる様子もないのは、腕がある証と捉えるネメシス。
「別に叩いてもいいんじゃないの?
貴女の代わりなんてそうそういないんだし、
首にはできないでしょ。」
シスターを唆すように悪い顔を見せるネメシス。
相手は呑気に話してくれているが、色々と見てきたであろうことが伺える。
「それなら、私からの善意を受けてもいいんじゃないの?
別に教会に働きかけるわけじゃなくて、貴女個人を手伝うって話だけど。
私のことは誰にも言わなければ分からないじゃない。」
シスターの表情から無償であることは容易に想像がついた。
つくづく損な役回りだ。
「あ~、ウチは聖騎士なのは今の所二人だけ。
やる気さえあれば誰でも入れて稼げる職場よ。
シスターみたいに力がある人なら大歓迎だわ。」
実際は悪行三昧の騎士団である。
シスターが本気で参加するとは思えないのでこちらは冗談交じりに舌を動かし。
「そうね、私と居れば賊は手を出してこないかも知れないわね。
でも、皆が皆お金目当てとは限らないわよ?
シスターみたいに良い体をしている人はそれだけで需要があるわ。」
笑みの絶えないシスターに思ったままを口にする。
ネメシスもまた、シスターの身体を魅力的に思っている一人であり。
出会い方が異なれば襲い掛かってきたやも知れない。
■シスター・マルレーン > 「そうですねー、そうですねー。
いやー、もうちょっと長いこと人のために働く方がきっと性に合ってると思うんですけどねー。
あはははは、冗談ですよ冗談。 流石に神父様はそれ以外のことで人の為に働いていらっしゃると思います。
ダメですよ、そんなこと言ってたなんてバラしたら。
次の私の依頼がすっごいのになるだけなんですから。」
ははは、と笑っておいてから、少しうんざりしたのか溜息を一つ。
とはいえ、根本が善良なのだろう、唆されてもころころと笑うだけで。
「そうですねぇ………
いやまあ、こうやって一緒に歩いてお話して頂けるだけでも、私としては大分楽というか。
雨の中で土を掘ってると、何やってんだろう、って少し意識がふわーっとどこかに行っちゃうような感覚でして。」
てへ、と笑いながら、ですから助かってますよ、なんて付け加える。
「あ、そうなんですねぇ。
………いやまあ、流石に3つの草鞋を履くのは身体が死ぬと思いますけどね。」
相手が冗談交じりであることは分かるから、ウィンクをぱち、っと送って。
「………あー、そうなんですかね。自分では、まあ、イマイチよく分からないんですが。
いやもう、まあ、経験はあるというか。 依頼で闘技場に出た時にひっどい罵声とか汚いヤジとかうけてるんで理解こそしてますけど。
依頼中にわるーい薬を飲まされたこともまあありますけど。」
とほほー、と肩を落とす。理解はしていて覚悟もあれど、やはり不安は尽きない様子。
■ネメシス > 「言わないわよ。
言う時はシスターにもう少し良くしてあげなさいって釘を指すときかしら。
それも私がやると変なことになりそうだから頼まれでもしない限り止めておくけどね。」
騎士団の名を出して干渉でもすれば、良くてシスターが腫れもの扱いされることになる。
その程度は流石に予想がついていたので、シスターのため息に楽しそうに瞳を細めた。
愚痴を零している間もシスターは毒気がまるでなく、なんだか心が現れるような空気さえ感じさせる。
「ならいいけど。
私も今の時間は凄く楽しいわ。
この国で聖職者らしい人がいるなんて思わなかったもの。」
お互い今日の事は口外しないだろうと思っているだけに、ついつい口を滑らせる。
「教団か冒険者業が出来なくなった時にでも来たらいいわ。
その時は私のサポート役に回ってもらおうかしら。」
今の仕事が順調なうちは決してやってこないであろうから、
再就職先の一つとして案内する程度に止める。
「まあ、それは仕方ないわね。
シスター、服の上からでもわかる位に良い身体してるもの。
おまけに顔も性格も良いとあったらね。
でもって身持ちは固そうだし。
強引にでもって気持ちになるのもわかるわ。」
手綱を握りながらうんうんと頷いている。
どう見ても自己紹介と言うか、自らもそういった目で見ていることを告げているのだが。
■シスター・マルレーン > 「そうですね、そうですね。
絶対角が立ちますからね。 別にまあ、人の為にならないことを無理やりやらされたりしなければ、仕方ないかな、と思うところもありますし。」
楽しい、と言われれば表情を綻ばせて。
雨の中、少しでも楽しいと思える時間は大切ですからね。なんて、したり顔で告げる。
さっきまで雨の中に何やらせるんじゃー、くらいの勢いだったことは無かったことにした。こほん。
「………そうです? 聖職者らしい方は、きっと、いるんじゃないかな、って思ってはいるんですけど。
私なんかよりもっとずっとたくさんの人の心を救える方だって。」
それは本音だ。
教会の腐敗を考えながらも目を背けて、目の前の仕事に没頭する自分のことは、どちらかといえば好きではない。
願望じみた希望を口にしながら、少しだけ困ったような笑顔を向けて。
「あはは、その時が来たら考えましょう。
………ですけどー。 いきなり身体をじろじろーって見られたらお仕事につくのも不安になりますよー?」
なんて、うりうり、と相手の足を肘でつついて笑う。
冗談だと思っているようで、ころころと。
「あ、でも顔も性格も良い、って言ってくれましたね。
褒められちゃいましたね。 ありがとうございます。」
なんて、頬を押さえてウィンク一つ。 冗談を交えながら喜んで見せて。
「でもネメシスさんも、お若そうですよね。 私よりも……?
それで騎士をやってるんですもの。 凄いですよね。
この国、仰る通り生き残るだけでも大変ですから、責任あるお仕事はもっと大変でしょう?」
自分のことをひとしきり話せば、見た目的にはちょっと若そうに見える相手を見上げてそのまま思ったことを口にする。
責任、という辺りは、ちょびっと苦笑いを浮かべながら。
■ネメシス > 「人のためにはなってるわね。
シスターが直した道のおかげで流通も保たれることでしょうし。」
となれば、この道を通る旨味が増えるわけで。
ふふ、と邪悪な笑みを僅かに浮かべるも。
人の前なので直ぐに取り澄ましてしまう。
「まあ、そういう人も居るかもしれないわね。
でも、そんな人だと私の心には響かなかったわ。」
シスターの表情から、苦悩の一端を垣間見る。
そして、今の自分のあり様をあまり肯定していない様も。
ネメシスは身を乗り出すと、シスターの顔を覗き込みながらにっこりとほほ笑んだ。
「え~、見られなれてるでしょ?
見るだけならいいじゃないの。
人助けだと思って。」
足を突かれると、子供っぽい表情を浮かべて。
この間も凝視こそはしないものの豊満な胸元に時たま視線が向いてしまう。
「お礼には及ばないわ。」
ウインクを貰い、満足そうな表情を見せる。
「その通りなのだけど…。」
どうしよう。 本当のことをそのまま全て口にするのは流石に不味そうだ。
ネメシスは一瞬、曇天を見上げた。
シスター達が信奉する神とは別の神から啓示を受け、悪名高い騎士団を率いている。
「でも、私たちはシスターほど縛られることはないの。
必要だと思ったことをその場その場でやっていくだけだから。
それに、こう見えて私結構強いのよね。」
と、こちらもウインクをして見せる。
産まれも育ちも何もかも特殊な存在だけに、暈して暈して当たり障りのない答えを返した。
■シスター・マルレーン > 「怪我をする人がいなくなれば、それが一番ですよね。
街道を通って、今から街に入るというところで怪我をするなんて、気分が落ち込む以外の何物でもありませんし。
品物が壊れてしまったなんて、落ち込むどころじゃありませんしね。」
のほほん、と呑気に彼女の思いを口にする。
人がいいのか鈍感なのか、邪悪な笑みには気が付かない。
「………伝わらなければ意味がありませんものね。
もっともっと、伝わるようにがんばらないといけませんね。」
相手の言葉に少しだけ表情を固くしてから、また微笑む。
伝わらない、人々に伝わっていないことしかしていない状況を憂う。
憂いつつも相手に微笑みを返して、返して。
「どこが人助けですか。」
ツッコミをぺちりと足に入れた。高さ的に足が丁度よかった。
騎士様の足に堂々とツッコミを入れているのに気が付けば、怒ってないかな、と見上げて、てへ、と舌を出して誤魔化そうとする。した。
憂いの表情を浮かべている暇もない。 もう、と腕を組んで少しだけ頬を赤くする。
分厚い修道服ごしにも分かるふくらみは、じーっと見られればそれはそれで腕で隠すのだった。流石に恥ずかしいですってば、と一言。
「そりゃまあ、この国で騎士やるなら、ある程度は強くないと絶対無理ですよね。
ああ、でも、縛られないのはいいかもしれませんね。
大事だと思うものの為に動くこと自体は分からなくはないですよ。
やはり、組織にたくさん属していれば属しているほど、身体にべたべたと見栄やら体裁やら、いっぱい張り付いて身動きがとりにくくなりますもんね。」
ははは、よく分かりますははは、と乾いた笑顔で答えつつ。
■ネメシス > 「シスターの言う通りだわ。
怪我をするなんて可哀そうですものね。」
シスターの言葉に同調し、頷いて見せるネメシス。
決定的に立場も考え方も異なるなあと、心中で納得する。
はたして、後日実態を知るような事があればどうなるだろうかと。
「難しいわね。
食うや食わずの人たちにはまず食べさせてあげることから
始めないと聞く耳持たないわよ?」
分かりきっているだろうと内心思いつつも、この国を見て回ったうえでの感想を述べる。
それはシスターの頑張りではどうにもならない領域にまで話が広がってしまうのだが。
「何よ、ケチ。」
足に手が触れても、ネメシスは口元を膨らませるだけ。
怒ったりすることもなく、むしろ誤魔化しの表情に笑みを浮かべる。
顔を赤らめて体を隠せば、その表情の良いとばかりに今度は顔を眺めて。
「そうねえ。 特にシスターの居る所はそういう張り付いたものが多そうね。」
細かいところまで口にすると、恐らく見解の相違などが生じそうであった。
渇いた笑みのシスターに相槌を返す程度で留めていると、遠方から騎馬が一騎やってくる。
遠目にそれがどういう意味かを理解したネメシスは、手綱を握りなおして。
「悪いけど、この辺りで失礼するわ。
シスターも安全には気を付けてね。
元気ならまた会いましょう。」
そういうと、馬が地面を割るような勢いで駆け抜けていった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からネメシスさんが去りました。
■シスター・マルレーン > 「そうですよね………まずは食べさせるところから。
そうなると、まずはお金の工面から始めないとダメですよね………」
相手の言葉を素直に受け止め、ううん、と唸る。
雨に濡れながら人力車を引いて悩むことではないけれど、それでも、それでも、それでも。
この国でその考えは、ただただ砂の上に棒を立てているだけであろうけれども。
「ケチじゃないでーすー。 普通でーすー。」
頬を膨らませながら、笑みを浮かべる相手にほっと一息。
怒られたらどうしましょう、とちょっぴり焦ったのは内緒です。
「あー、ええ、まあ、そうですね?」
あはは、と笑いながら、梅に乗って走っていく姿を見送る。
ありがとうございました、と見送りながら、人力車をよいせ、とまた引き始めて。
この国で出会う人には、様々な人がいる。
それを本当の意味で理解するのは、まだ先のよう。
彼女はただ目の前の土を掘って、その先から目を逸らす。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシスター・マルレーンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアルマさんが現れました。
■アルマ > 置いていかれた。
エサ?生贄?まあ色々言い方はあるが結果として置いていかれたのだモンスターの群れの中に。
今夜は王都から別の都市への隊商護衛の仕事を見つけ、応募したところ無事に護衛メンバーの1人に選ばれ、前金を聞いた金額より少し多めに握らされ、隊商の馬車にのせられ揺られ、時々同じ護衛のメンバーに小突かれ、雇い主の愚痴を聞き、順調に街道を進んでいたはずが――…是である。
さて現在は街道のほぼど真ん中、灯りは無いけど周囲に敵影もなし。
簀巻きにして外に放り投げられて、生餌にされなかっただけ良かったが初めて死ぬかと思った。
行き成り背中を蹴られて馬車の外へアウト。
転がり落ちている間に馬車は速度をあげてもうダッシュ。
起き上がりに1匹の魔獣に首を狙われて、危くそのまま天国へと旅立ちかけたが、魔獣の胴体に蹴りを入れて回避して、相手がこちらを警戒している間に唱喚魔法を唱えられる隙が出来ておかげで焼き払えた。
勿論殺してなんていないし、殺せるほどの威力はなく、偶然リーダー格の魔獣に炎があたって、とこれ以上は長くなるから割愛、一先ず現在明かりもなく魔力も半分ほどで道半ば……たぶん王都だと思う方向に向けて歩いている最中であるが、お腹がすいた。
「でも、ありえない。行き成り蹴り出されて囮よ?何匹か馬車追いかけてったけどほんと知らないよ、しーらない……。」
知らないのである。
馬車がどうなったかは知らない、知りたくも無い。
今はそれより本当にどうしたものか?虎の子の角砂糖を齧りながら、がっくりと両肩を落とし、引き攣った笑顔を浮べて、尚且つ猫背で全力で元気なく途方にくれる。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にティネさんが現れました。
■ティネ > 夜気の中をどこからかふよふよと漂ってくる淡く光る飛行物体。
遠目にはウィル・オ・ウィスプかなにかに見えるかもしれない。
それは蝶羽根の小さな妖精だった。
「どーしたのそこのきみ。こんなところに一人はあぶないよ。
迷子?」
疲弊した少年とは対照的なのんきな声。
白い彼の目線の高さ、手を伸ばせば触れそうなほどの距離まで飛んで近づいてくる。
警戒心のようなものは見受けられない。
■アルマ > 視線の片隅に不意に見えた燐光?淡く光る飛行生物?精霊?妖精?に思わず「うへぇ?」と驚くべきか悩むべきか軽快すべきかはたまた逃げるべきか、諸々が入り混じる混沌とした声をあげると、思わず……最終的に逃げようと結果付けたところで、気がつけば指先で触れられそうな距離まで詰められた。
流石に注意力散漫であろう、自分にクレームを諸々出したくなるのを抑えて、いまさらではあるが少しだけ後退り距離をあけた後に夜の闇に包まれた中で輝く何かに返答をする事にする。
「あの、迷子……なので、は、なくて……ちょっと散歩していたら、こんなところに……。」
言葉途中で正直に答えるのを止めたのは、視線の先のそれが酷く無警戒に近づいてくるから余計に相手に対して警戒し、まさかモンスター?と心の片隅で疑っているからで、手を横にヒラヒラさせて、にこーっとつくったような笑顔を向けて、全力で迷子ではないし、迷子ではないと、偽ってみせる。
もし実際に攻撃してくるモンスターであればこの距離まで詰めてこないだろうし、と思ってはいるのだが、万が一友好的に見えて何処か見知らぬ場所へ誘う系だったら、困るが故に嘘をついたのだった。
■ティネ > 「むー」
あきらかに心の壁を作られているのを感じ、妖精はちょっとむすっとした表情になる。
純朴な子供だと自分の存在に疑問を抱かれないことが多いのだけど、
多少世俗にすれた相手ならこういうこともよくある話だ。
「あ、道に迷ってるわけじゃないんだ。よかったー。
じつはボク迷ってるんだ。案内してよ。王都まで。
飛び回るのも疲れちゃってさ~ いいでしょ?」
ぬけぬけと言い放つと、勝手に頭や肩に乗っかろうとする。
敵意や害意は感じることはできないだろう。ただ、馴れ馴れしい。
■アルマ > 心の壁の厚さは現在の燐光を巻く何か――…良く見れば妖精、との物理的距離とイコールである、かなり、いや滅茶苦茶警戒している、先程までの件もあってか余計にである。
これ以上後退りはしないが、変わらず作ったような笑みは変わらず変えられず、一先ず、肩や頭に乗ろうとするので掌で払おうと手を軽く持ち上げに掛かるが、でもそれも何だか可哀そうに思えて、結局手で払うことはせずその手で妖精の頭を一撫でしてみる。
よく見ればとても愛らしい妖精に思えるが、だから余計にこの妖精が人のサイズだったら、と為るべく顔に出さないようにするが失礼な事を思いながら、ちょっとだけ困った顔。
何せ、絶賛迷子なのだが、迷子なのだが、相手も迷子のようで、迷子と迷子が被ってしまった自体にどうしようもない方向に物語が進み始めている事に嵌り始めている予感がし始めている。
「ざんねんだなーアルマさんは美人しかエスコートしてはいけないって、誓いを立ててるんだ。妖精さんが……身長が同じくらいだったら、思わず肩といわずお姫様だっこくらいしちゃうんだけど……。」
実際になられてお姫様抱っこをねだられたらどうしよう?
と、思うがそれは有り得ないかと心の中で溜息を一つつくと同時に、言葉だけ残念そうな声色にして、悩む素振りを見せるためにかっくんと小首を傾げて唸る。
■ティネ > 「ふわ~」
少年の思惑を知ってか知らずか、撫でられれば表情をほころばせる。
警戒する彼とは正反対に、人に育てられた小鳥のような様子だ。
実力行使に出られない限りは、図々しく肩の上に座り続けるだろう。
現状なんの役にも立たない感じだが、相変わらず淡く翅を光らせているので
少なくともランタン代わりにはなるだろう……
「なにそれー、小さいけど美人だよ? 麗しのレディーだよ?
同じ大きさかぁ……うーん、なれないわけじゃないけど、うーん……
ちょっとむずかしいんだよね~ 君がいいっていうならやるけど」
意外なことにどうにかする方法はあるらしいが、やや気乗りしない様子だ。
■アルマ > あっ可愛い。
素直な感想は口に出ることは無いが、作り笑顔とは違うものを表情に浮べてしまう事で感づかれてしまうだろうか。
悪意や敵意が無ければ、此処に至るまでのアレが無ければ、無闇矢鱈に警戒しないのだが、妖精が何か仕出かしたわけでもない無関係だから八つ当たり、だともわかっているがどうしても警戒はしてしまうのであった。
「美人じゃないなー美人よりも可愛い系だとはアルマさん思うがね!おっと、なれるのならーとは思うけども……。ん、でも、妖精さんが迷惑なら望まないし、そもそも、お姫様だっこしてほしいの?とも思うわけで。あと、難しいのなら、と思いもするよ?でもその為に多大な何かを必要とするとかだと、ほら大きくなったら、嬉しいけど、その分何も見お返し出来ないし。」
ふむ、妖精さんの提案には傾げている首を更にくくくと角度を深めて傾げる事で、無理にとは言わないけども見てみたいけども、でもそれがいい!それでいい!って思うほど浅ましくも無いよ?と複雑な少年心を演出してみる、と同時に歩くのを止めて妖精さんと話をしてみる心算である。
――…王都まで道案内は無理だけどもね。
■ティネ > 「よくしゃべるねえ~君。アルマっていうんだね。ボクはティネだよ~。
じゃあもっとかわいいって言って~。かわいがられるの好き。
ボクはそんなにお姫様抱っこにこだわりはないかなぁ~。アルマがしたいっていうなら別だけど~。それともされたい方?」
試しにやってみる~? などと軽く言って、アルマの肩にへばりついたままなにやら念じ始める。
『呪い』が入り込んでくる得も言われぬ感覚とともに、肩の妖精がゆっくりと大きくなり、
女性の肉付きを感じられるほどに重くなりはじめ……
逆に、アルマの体が小さくなり始めるだろう。
一言で言えば、徐々に背丈を奪われている。
もし、アルマが少しでも拒絶する意思を示すなら、この効果はすぐになかったことになるだろう。
■アルマ > だって、こんな時間にこんな場所で光源は妖精さんのみ。
喋らないと不安に陥るし疑心暗鬼にもなるでしょ?といいたかったが言葉をグっと飲み込むことにする――…それだけ不安であり、不安である事は迷子である事に容易に繋がりかねないからである。
だからナニ?と言われると困るが一度ついた嘘を嘘でした!何てキッパリ認められる程、賢くは無いのである。
「あっ、とゴメンネ、自己紹介まだだね。僕の名前はアルマ・アルストラ、ティネさんね?憶えた憶えた。」
そう、自分でアルマさんと言っておきながら彼女に名前を名乗られて慌てて名前を名乗りなおす、フルネームで。
と、本来なら此処で一つ頭を下げたいところであるが、肩に乗る彼女に何かを言う間でもなく、徐々に視界が低くなってくるし、ゾワゾワくる感覚ががが……。
「でもね、いや、是なんだし。やるならね?最初から、こうする、って説明をだね?説明大事だよ説明……。」
流石にレジスト、身体に残る半分ほどの魔力を抵抗に回し、彼女に敵対するに至るわけではないが、笑みも絶やさないけども薄く唇を開いて軽やかに1小節歌を唄いあげる、妖精ならニュアンスくらいは通じるかもしれない、風を呼び招く唱喚魔法。
妖精の悪戯めいた力を完全にはねると同時に白髪の短い髪の切れ目から髪が伸びて、根元は白、髪先は黄色と鮮やかにグラデーション色掛かる後ろ髪へと変化する、それと同時に属性は無から風に、歌声が終わる頃には変身は終わる。