2019/04/13 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシスター・マルレーンさんが現れました。
シスター・マルレーン > 「よぉ………こいしょっ!」

かぁーんっ、といい音が街道に響きわたる。
硬い木と木がぶつかり合う音と共に、ふー、ふーっ……と、荒い吐息が混じる。
暑い。修道服越しだとなおのこと暑い。というか熱い。
日差しがぽかぽかといい陽気の日。彼女は今日も今日とて街道の柵の補修をしていた。

「なん……でっ!」 コォーン
「私…がっ!」 コォーン
「力仕事……ばっかりっ!」 コォーン
「回って……来るんですかっ!!」 コォーン

ぼやきながら柵の杭を打ち込んでいくシスター。
ぜー、ぜー、っと荒い息。

シスター・マルレーン > 冒険者兼シスターとしての立場で旅をはじめてしばらくが過ぎた。
すっかり冒険も板についたし、戦闘能力も割と洗練され、サバイバル能力もついてきた。
身体も鍛えられているし、いわゆる聖職者としての能力も随分上達した。………教会内での発言力とかそういうものは除いて。

とはいえ、仕事の報酬はある程度教会に持っていかれる。
中抜きじゃないかなこれ、と思うことも時々ある。神よ、聞かなかったことにしてください。

今日も今日とて、教会と懇意にしている町の有力者のお願い、らしい。
いやまあ、人の生活のためになるならいいんですけど。 いいんですけど!!

シスター・マルレーン > 「よいしょ、っと。」

肩にがっしりと木の板を背負って、口に釘を咥え。
先ほどの大木槌ではなくて金槌を腋に挟んで。
その際に、すっかり分厚い修道服も汗まみれになっていることに気が付いて、うわぁ、と顔をしかめる。

「お風呂入りたい………。 報告明日にしたら怒られるかしら。」

遠い目をして空を眺める。空は青く、風は爽やかだ。
もう川にでも飛び込んでやろうかしらん。
あ、投身的な意味ではなく、水浴び的な意味で。
………拭くものしっかり持ってきてないわ、と頭を横に振って己のぼやきを打ち消す。

こーん、こーん、と今度は釘を金槌で叩く音が響き始める。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアルブムさんが現れました。
アルブム > 街道の向こう、王都のある方面からひとりの小柄な人影が歩いてくる。
てるてる坊主のように裾の広がるポンチョ風のローブを羽織り、両手に巨大な木の杖を握り。
野営道具などでパンパンに膨れた雑嚢を背負い。旅姿である。
春にしては強い陽気にあてられ、ちょっぴりバテ気味だ。歩調にやや疲れが滲み、息も荒い。

「ふぅ………ふぅ………」

《かみさま》に指図されて、あてどない旅の途中。旅自体が一種の修行でもある。
小柄なアルブムにとって大荷物を背負っての徒歩旅行はいつだって重労働である。

うつむきがちな視線をくっと凝らして前に向けると。
街道の前方、少し前まで路肩の柵が朽ちていた箇所が、新品の柵に直ってるではないか。
すぐ側には大工業に勤しむ人影も。修繕してくれてるのだろう。
……それよりも。

「………ああ。《かみさま》、あそこで少し休んでもよろしいでしょうか?
 いい? ありがとうございます! ……あ、でも修理の人の許可を貰ってからですね」

少年はまず、独り言めいて誰かと会話する言葉を紡いだのち、

「……すみません、柵を修理してくださってるおねえさん。
 少し、ここで休んでもよろしいですか? 柵にもたれかかって……直してすぐのとこ申し訳ありませんが」

マルレーンに向けても声を発する。声変わりを感じさせない若く甲高い声だ。

シスター・マルレーン > 「ふぅ?」

声が変なのは、釘を咥えているからだ。
声をかけられれば、くるりと振り向いて。目をぱちぱちと二回三回。
その釘を指に挟んで口から離し、くるりと回せば、軽く笑顔を向けて。

「はい、どうぞ。
 修理をしても、人が喜ぶのはずっと先。
 ですから、今こうやって使ってもらえるのを見られるならば、修理した甲斐があるというもの。 ありがとうございます。」

なんて、さらりと言葉にしてどうぞ、と掌を向けて日陰に案内。
長い金髪を後ろで一つまとめた、割と若い女性だ。

「ただ、もたれかかって壊れたらごめんなさいね?」

なんて。壊れるとは思わないけれど、軽い冗談を挟んでウィンク一つ。
ころころと笑いながら、隣で釘を打ち始める。
とりあえずある分は続けちゃいますね。と口にしながら。

「旅の方ですかね? 町はもうちょっと歩きますけど。
 もう起伏も無いですから。 今の時間なら………空が赤くなる前にはつきましょう。」

アルブム > 「ありがとうございますっ!」

無垢な少女めいて快活な声で、お礼の辞を述べる少年。にぱ、と顔に満面の笑みが浮かぶ。
そして重そうな背嚢を地べたに下ろすと、ローブが汚れるのも構わずにぺたりと座り込む。
打ち込まれたばかりの柵の支柱に細い背を預けると、ふぅぅぅ……と長く重い溜息が漏れた。

「……道先案内もありがとうございます、おねえさん。
 ぼく歩くの遅めですけど、きっと夜までには着けますよね。ここで休みすぎなければ……」

雑嚢から水袋を取り出し、ぬるくなった真水を口に含む。軽く洗いで、飲み込む。
そしてまた一息つくと、引き続き大工作業に勤しんでいる女性のほうを真っ直ぐに見上げる。

「……それにしても。おねえさん、神職の方ですか?
 王都の教会とかでよく見るお召し物をされてますが……その服で大工の仕事をされてるのは初めて見ました。
 こういう金槌仕事ってムキムキのお兄さんたちがやるものとも思ってましたし。
 ……なんかすごく暑そうですけど……大丈夫です?」

タイツに包まれた自身の脚を軽くマッサージして疲労を取りつつ、アルブムはマルレーンの姿について問う。
一般的な神職はだいたい教会に引きこもってるものと認識してたので、この女性の働く姿はなんともモノ珍しい。
……自分はまだ『神職?』の修行中の身だから、いくらでも汗をかくけれど。

「でも、街道の安全を考えて柵を作ってくれるのはとってもありがたいです!
 ぼくに力があれば手伝いたいくらいです! ……今はたぶん、かえって邪魔になるだけでしょうけど」

ぐったりと背を杭に預けながら、苦笑いを向ける。
子供と言って差し支えないアルブムの体格である、しっかり打ち込んだ杭が揺らぐことはないだろう。

シスター・マルレーン > 「あっはっは、大丈夫大丈夫。
 それに、しばらく休憩をするなら、帰り道はご一緒しましょうか。」

可愛らしく笑う少年をまるで母のよう………ごほん。
まるで姉のように微笑んで見守りながら、とりあえず柵を完成させていく。

「いやー、私もこの服装はどうかと思うんですが………。」

ここまで返事をして、おっと、と言葉が詰まる。
目立ちたいんでしょうね教会が! とか普通にぼやいてしまうところだった。
相手は子供、子供。
自制心。私の心に自制心。心を必死に落ち着けて。

「……これで人が教会に少しでも足を運んで、信心を深めていただけるなら安い物。
 私がこれで普通の服装をしていたら、誰も教会の者だと気が付かないでしょう。」

大丈夫かどうかの質問には、ふふふだいじょうぶだいじょうぶ、と遠い目をして答えておきましょう。そこは作り笑顔がぎこちなくなった。

「………そう、なんですよね。ええ。ムキムキのお兄さんたちがやりますよね。
 いやまあ、いいんですけどね。」

とほー、と肩を落とす。なんやかんやバリバリの肉体派シスターである。
ちょっと恥ずかしい。汗もたっぷりなので、近づかれるとそれも恥ずかしい。

「ふふ、………ま、私も頼まれごとですから。
 ちゃんと終わらせますよ。 街道と言っても獣などは出ますから、ここから離れないでくださいね。」