2019/02/17 のログ
ルシアン > 近づいていけば小動物ではなく、もう少し大きい存在らしいと察して。
獣でなければ、まさか人だろうか?なんて少し思案しつつも、そっと樹の穴の中を覗き込む。

布の塊…の中に、確かに誰かいる様な。身じろぎするような動きを見て撮れば。
少しだけ、思案した後に口を開く。

「…そこに誰かいるのか?そこは休むには辛いだろ…それか、行き倒れなら少しは助けられるが」

若干、その穴から離れつつ。万一にタチの悪い存在だったら、と備えながらも。
声に反応はするだろうか。それとも、本当に行き倒れで危ないか…?
色々思う所はあり。

サナ > 覗き込む気配を、気のせいだろうかと身動ぎを止める一瞬。
気遣うような柔らかい声が降ってきて、動揺に肩が小さく揺れる。
生きている、其れは確かなよう。

「……幻聴…?」

そんなに不味い状態だろうか。意識はしっかりしている心算だったのだけれど。
ぽそりと零した声は息が混ざって不明瞭に曇る。

数呼吸の間をおいて、のろりと貌を上げる。フードは目深で、覗くのは顎くらいなもの。
声がしたと思ったところより、もう少し離れられていたらしく、最初に見たのは月明かりに照らされ、闇より僅かに濃く染まる影。
少し視線を上げると、鼻先位までは露に。

「……とても、寒くて、歩くのが面倒になっていた。
 貴方は……。」

「…………幻覚?」

困ったときに差し伸べられる手。深夜。現実味が余り無い。

ルシアン > 起き上がってきた人影の姿に、とりあえず最悪の状況ではないらしいとまず安堵。
声に少々元気が無さそうに聞こえるのは、疲労の為だろうか。
少なくとも、急に危害を加えられるような事は無いだろう。そんな判断で、ゆっくりと近づいて様子を伺ってみる。

此方も寒さ避けのフードで顔が見にくいはず。被り物を背におとし、自分の顔を晒しながら。
幻?と聞かれれば、一瞬きょとんと。次いでくすっと軽く笑ってみる。

「一応、幻よりしっかりしてるとは思う。足もあるし、お月様の光で影が出来たりもするしね。
 ・・・其処は寒くないか?そんな所に居たら、体が休まるどころじゃないだろうに」

なんなら触ってみるか?と、そっと手を差し出してみる。
声の調子からして、恐らく女の子…あまり抵抗されないよう、ゆっくりと指先で相手の頬辺りに触れてみて。

背負っていた荷物の中を探り、何やら筒のようなものを取り出す。
次いで小さなカップも探し出し、筒の中身を注いで。
もう一つ、ガラスの小瓶も取り出せば、カップの中へと数滴。

「ほら、良ければこれを。少しは温まるはずだ」

此処に来る前の街で入れてきた熱々の茶。まだ冷え切らず、ほのかに温かみが残っていて。
その中に数滴のブランデーを垂らしたもの。それを差し出してみる。

サナ > 警戒されていると、思いつかない。
むしろ己も警戒しても良いのかもしれないけれど、柔らかな声に自分の認識のほうを疑った。

落とされたフードに、人だった、と。音無く唇が動く。

「…そうだね。ちゃんと影も、足もある。……この中は、少し暖かいんじゃないかと、思ったのに。」

寒い、と不服そうに訴える。
差し出された手を、フードの下の双眸がじっと見て。
外気にさらされた頬に触れられた瞬間だけ、小さく首を竦める。
思ったより冷たく感じず、むしろこちらが指の小さな接点から体温を奪うよう。
膝を抱えていた手がほどけ、伸ばしかけるが空を切る。

行き場を失くした手先に、カップが差し出される。
ガラス越しの温みは分からなかったけれど、膝からもう片方の手もほどけて両手で包むように受け取る。

「…有難う。」

癖になっているのか、フードを取ることに気が回らない様子。
すん、と。近づけた鼻先を鳴らして。一口舐める。
ほのかな暖かさに、喉を通る、ブランデーの熱。コップを傾けて少しずつ飲み。気持ち回る酒精。
然程強くなさそうな。寧ろ弱いんだろう。白い頬に血色が少し戻る

「……あったまる。」

ルシアン > きちんと言葉が通じるなら、そこまで警戒する事も無いか。
そんな気楽な考え。渡した飲み物に口を付ける様子を見て目を細める。

寒い、と呟く少女。まあ、それはそうだろう、なんて感想も持つのだけど。
自分自身もこの夜にこんな場所に一晩は居るつもりになれないのが正直な所。
少女の傍へと近寄り、穴の傍の樹の幹へと腰を下ろしつつ。

「どこかの街に行く途中か?他に同行する人とはぐれた、とか…?」

あるいは身寄りがないのか、とも思うのだけど。
少なくとも、一人だけで女の子が歩いているようなのは少し違和感がある。
ゆっくりとした調子の口調で尋ねて見ながら、さてどうするかと思案して。

「とりあえず、其処から出てこないか?何ならこっちで火をたく事も出来るしね」

街道傍では少し目立ってしまうかもしれないが、この辺りなら大丈夫か。
少女へ手を差し出して、こっちへおいで?なんて。

サナ > 「落ち着けそうな場所を探して、いる途中。同行者はいないよ。稀に少しだけ道行きを一緒にすることがあるくらい。」

何か目的があるわけでもない。
見上げる会話から、目線の高さが近づくと、先ほどより表情がよくわかる。

「夜と同じ色だね」

髪や、目の色。
覗き込もうと腰が浮きかけるが、そうするには不自由な体勢で。
差し出された手に、冷えた手をそろりと乗せる。

「……火種があるの、」

地面に膝をついて、洞から身体を出す、と。
中はそれでも風を塞いでいたんだろう。
外気の冷たさに、借りた手をぎゅうと握り締める。
片手にはコップ。

「――――――……。」


「……あたためて。」

身体で身体を。つまり、冷え切った身体で体温が欲しい、と。鬼でしょうか、という強請り。

ルシアン > 「そっか。…この辺りだと、あまりそういう場所は無いかもしれない。もう少し行けば小さい町があるにはあるけど…」

それにしたって歩いていけば朝になってしまう程度。どうしたもんかな、なんて首をひねりながら。

「ん…僕のこと?この辺りだと、そんな多くは無いかもね?」

前髪の先を指でつまんでみて。水に濡れた烏の羽のような、深い黒。
くしゃり、と髪を軽く書き上げつつ。

差し出した手に重ねられた、小さな手の感触。
自分も冷えているとはいえ、ここまで歩いて来ればそれなりに温まっているはずで。
少女の冷えた手には、少しでも温かさが伝わるだろうか。

「ん、薪になりそうな枝なんかもありそうだしね。……え?」

穴から出てきた少女の姿。身に着けている物は、確かにこの寒空では厳しそうで。
こっちへ、と風を避けられるよう、道の外れのくぼ地へと誘いながらも…
そんな言葉に、思わず素っ頓狂な声。

「………あのね。初対面の男に、キミみたいな子がそういう事を言うんじゃないの」

何となく、言おうとしてる事は察したのだけど。同時に字面は何とも妙な方向に捉えられるもの。
軽く困ったような、悩むような、そんな顔。ただ…とはいえ、この場所ではやはり寒さが答えるのも分かる事で。

「…ほら、じゃあこっちにおいで?…まあ、大きめのマントだしね」

地面に座り、いくらか探した枯れ枝に小さな火を起こす。
自分の隣を手招きして…マントの裾を広げて。
隣にやってきてくれるなら、若干緊張しつつも、少女をその中へと入れようとするはず、で。

サナ > 「詳しい。…貴方はどこかからの帰り道、なんだよね。遅くなって良いの、
遠くの国の出身なのかな。馴染んでいるのに」

夜の色に溶けて、不明瞭なのが少し残念にも思える。視線を切って、
触れた手からじわじわ体温を貰う。

樹の洞は一人前に足りない感じだったが、並べそうな窪地に誘われて、瞬きを繰り返す。
探せば意外としのげる場所もあるのかもしれない。

「……ん。
だって、寒い時に、まだ暖かい飲み物を差し出してくれる、男の人だよ。
……―――なんて言えば良いの、」

違う言葉、が。思い浮かばずに。
間をおいて、-----唇を少しおかしそうに緩めて笑った。
気が付いたと、言うように。
コップを傍らにおく。

火がともされると闇が和らぐ。薄布に伝う温みにこわばりが自然と緩んでいく、のを感じる。
望んだ熱を、差し出してくれる人の傍らに膝をついて。
ひたり、と。冷えた指が肩先に触れる。上から、だと、少し寒そうに思える。
脇へ両腕を差し入れて、ぴとり、と上肢を合わせた。

―――――体温が、氷のようかもしれない。

ルシアン > 「まあね。少しでも早く、とは思ったけど…どうせつくのは明日になるし。大差ないよ。
 ん…そんなとこ。ご先祖の人たちの特徴が出たみたいだね、これは」

火を起こせば、少女の姿も先ほどよりははっきりわかる。
幼く思えていたけれど、自分とも大差ない程度、か。
焚火の火が銀の色の髪を照らす様子に、ほんの一瞬目を奪われたりもする。

「……行き倒れを放っておいたら、こっちの寝覚めが悪くなるってだけだよ。
 まあ…他に適当な言い方も、思いつかない…か?」

誤魔化したのか、多少照れ臭くなったのか。少々ぶっきらぼうな言い方をしながら。

マントの中に入ってきた少女の体温に、ぎょっとしたような顔。
すっかり冷え切ってしまっているのが分かればどうしたもんだろうかと。
あらかじめ集めておいた枯れ枝をもう少しくべて、火の勢いを大きくする。
…腕を回され、抱き寄せられるようにされたなら冷たさだけでなく、柔らかさや重みなんかも感じられてしまうのだけど…

「…もう少し待ってて。お茶も少しは温められるから」

火に鉄の容器をかけ、その中に先ほどのお茶を。少しずつ温まっていくはず。
…冷え切った身体は、そっと肩に手を回してもう少し抱き寄せてあげようと。体温が、伝わっていくはずで。

サナ > 「…宿もしまってしまうよ、野宿しそうに見えない、けれど、手慣れているね。
……先祖返り、って言うんだっけ。……他にも何か、引き継いでいるの」

ご先祖様から。

「おかげであたたかいよ。
……裏路地、貴方が歩くと大変なことにならないの、 ……腕力にも自信がある?
……他の言い方思いついたら教えてみて」

助けてほしい人がいて、悪い人がいたら、どうなるんだろうか。
緩く首を傾げながら、小さくお礼を付け加える。

最後は揶揄いも少し混ざって遊ぶよう。

びっくりした彼がうっかり己を突飛ばしたりとか、飛び上がったのが無い様子に目を見張る。
驚いているようではある、ようだけれど。
布越しのうにゃりとした感触は、少々足りない大きさも伝えてしまうかもしれないけれど。
密着といえる。

「…手慣れているね、旅することが多いの、」

背中の、外気に露出したほうは、火の暖かさが伝搬してくる。
ぱちぱちと草木が燃える音が会話の合間に被さる。

引き寄せる腕には軽い手ごたえ。脚が膝へこつんと触れる。
フードが引っかかって後ろへと解け。銀糸の髪がぱさりと広がる。
双眸は温みのほうに気を取られて影に伏せられ。

ルシアン > 「旅には、慣れてる。それに山に獲物を狩りに行く事もあるからね。
 野宿くらいはできないと。まあ、あまり好き好んでって事ではないけどさ。
…んー…どうだろうね?何かあるかもしれないし、無いかもしれないし」

元々此処とは他所で生まれ育った身。旅慣れている事が役に立つのはちょっとだけ、誇らしく。
ご先祖の事を聞かれればわざとらしくすっとぼけてみたり。…実際には「色々ある」のだけど…。

「…全部が全部、こうしてあげられるわけじゃ無いのは分かってるさ。今一つ寝付けなくなる日もあるかもね。
 ……それはそれとして。ほら、さっきよりは熱いから、気を付けて?」

所詮は気まぐれ、あるいはめぐりあわせの話。は、と小さく息を付きつつ。
お礼の言葉には小さく頷きながら、温めたお茶を差し出した。今度は軽く湯気が立つくらい。
先ほどより、もう少しは温まるはず、で。

「ええと…僕はルシアン。ルシアン・エヴァリーフ。君の事は何て呼べばいい?
 ……これから、行く当てはあるの?まさかこの辺に住んでるって訳でも無いよね?」

少しずつ、温かさがお互いに伝わってくる。冷え切った体が温まる感覚も分かるかもしれない。
さらりと流れた髪や、表情を同じマントにくるまりながら間近で見れば…やはり、少し落ち着かないのだけど。
やや心配そうにかける言葉。生来のお人よしであったりするわけで。

サナ > 「…獲物を狩りに?狩って、捌いて、食べるの。
猪とか熊とか……?

秘密のにおいがする、」

獲物を狩りにと聞いて思い浮かぶのは、小動物よりも猛獣寄りの。
曖昧にぼかされた表現に肩を震わせ小さく笑う。

「……偶々貴方が見つけてくれた幸運、なんだろうね。
……うん、有難う…。」

もぞりと身を起こし、腕の中で身体を捩じる。
抱き締め合う密着から、背を合わせる位置へと。
零して火傷に繋がったら大変だから。
両手で受け取ると、掌に柔らかな熱が拡がる。
ふ、と表面を吹き冷ましてひとくち、ふたくち。暖かなお茶を飲み。

「ルシアン…。サナ、だよ。当ては無い。適当に安宿にいったり、廃墟に潜ったり、野宿したり。前からだから、大丈夫」

奪うばかりだった体が少しずつ、内側からも外側からも温まる。
表情を柔らかく綻ばせて、 暖かくなったからか、眠気が意識を絡めとる。

流石に眠ってしまっては、と。裾を引いて行こうと誘う。
何処まで一緒にいったのか、街の入り口か、もう少し奥かは成り行きによるもの、で。

ルシアン > 「ん、そうだよ。捕まえるのは大変だけどね。熊も猪も美味しいんだよ?
…秘密、ねー?そういうのは…無いと思うよ?多分」

山で、狩人しか食べられないもの、なんてものも確かにあるわけで。
わざとらしく誤魔化せば、なおさら怪しいかもしれないけど。そこまで織り込み済みな口調であったりするわけで。

「まあ、流石にびっくりはしたけどね。…でも僕も、こうやってサナに会えた幸運には感謝しないと。
 …そっか。じゃあ…眠くなる前に、何処かもう少し良い所を探そうか?」

お互いに暖かさを分け合えたなら、少女と一緒に立ち上がって。
近くの街まで、となるか…とにかく、同行する間もたわいもないおしゃべりを。

道が分かれるときには、また会おうね、なんて。
不思議な少女との出会いに感謝しつつ立ち去っていくのだろう。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からサナさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からルシアンさんが去りました。