2019/02/01 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にイルザさんが現れました。
イルザ > 旅人や馬のために用意された休憩所兼水場。
月明かりは強いとはいえ、夜の街道に1人でいるには頼りなく見える少女が、焚き火にあたっている。
吐く息は白い。いつもの着物の上に、首が埋もれるほどふわふわとした白いロングコートを着ての待機。
時間を気にするように月の傾きを見上げ、街道に視線を移した。

そろそろ通っても良いはず。
組織の遣いが報告に来た出発時間から逆算すれば。

「腕動くかな」

体を動かしておきたいが、最中に暗殺対象者が到着しては警戒される。
己の強みは少女であること。
相手の気を緩めさせ、最低限の抵抗の中、事を済ませるのに向いている。
逆に少女であっても女には変わりなく、失敗すれば殺される以上に屈辱的な行為が可能な躯だということ。
――母のように。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にヴィクトールさんが現れました。
ヴィクトール > 「ぁ゛~……さっみぃ……っ」

動き回っていれば、それなりに耐えられるものだが、馬の上でバランスを取る程度では吹き付ける寒風のほうが勝る。
白い息を吐き出しながら、単騎で休憩所へとやって来れば、減速する馬から飛び降りる。
そのまま並ぶ様に少し歩くと、馬留に手綱を結き、ぽんぽんと頭をなでていった。
ここで休めというのを察したのか、直ぐ側の水溜に口を突っ込む馬はしっぽを揺らしながら暫しの休息に浸っていく。
それを見やりながら自分も一先ず暖を取ろうかと辺りを見渡せば、既に野営中の姿が。
白いロングコートは夜にはよく目立ち、背丈から女かと思いながらも、そちらへと歩み寄っていく。

「よぉ、野宿か? 最近は寒ぃったらありゃしねぇよなぁ、悪ぃけど俺も火に当たらせて貰えっか?」

悪人面がニィっと子供っぽく微笑みかけながら、同席を求める。
彼女も旅の途中かなにかか、そう思いながらも……夜に野外と、少々警戒が薄くはないだろうかと思えば、少し訝しく思ってはいるが、今は深く気にしなかった。

イルザ > 近付く馬の足音。
夜といえど旅人や商人が通らないとも限らないが、その場合は組織の者が足止めする手はずになっている。
だからこそ短時間で決めなければ対象者だけでなく、一般人にも怪しまれる。
少女の纏う空気が、人知れずピリリと冷えていった。

だが行うことは‘その瞬間’まで旅人の娘を演じること。
そして手足を出来る限り温めておくこと。
馬に乗った者の姿が見えると、視線を送ったのはその1度きり。
少し離れた距離で馬を休ませている様子がわかるが、気にする素振りは見せずに焚火を見つめる。
振り返るのは、声を掛けられた時で良い。

「どうぞ」

ざっくばらんな声に向けた顔は、不自然でない程度の笑顔。
だが一瞬。本当に一瞬だが、琥珀色の双眸が戸惑いを映した。

(「違う。……足止め失敗したのかな。困ったな」)

戦装束の精悍な男性――――見覚えがない。
1度だけだが、遠くから顔は確認した。こんな容貌ではなかったはずだ。
それに己が狙わされるのは常に反吐が出るような悪事を行う者ばかりで、こんな風に笑う男性がそういった人物には見えない。
思考を巡らせながら、彼が火にあたりやすいように場所をあける。

「夜になると特にね。目的地はもう近く?私はまだもう少しあるから……ここで一晩休んだほうが無難かな」

ヴィクトール > 近づくに連れて、ほんの僅かに……警戒の意識が瞳にモヤとなって映った。
しかし、錯覚とも思えるほど小さく気にせずに馬を止めていけば、焚き火のそばへと向かう。
振り返り、見えた顔は白髪の珍しさもあるが、アクのない可愛らしい顔立ちと言った印象。
これは随分といい女と相席できたものだと思いながら、その笑みにありがとよと答えながら、遠慮なく彼女の隣へと腰を下ろしつつ、相棒たる大剣を傍らに寝かせていった。
魔力への感知に鋭ければ、魔の国に近い瘴気のようなものが鞘から少しだけ溢れているのに気づくかも知れない。
胡座をかきながら、掌を火に翳しつつ言葉に頷いていくと、そちらへと振り返りながら金色が静かに琥珀色の奥底を覗き込む。
先程の笑みとは違い、妙に落ち着いた神妙な面立ちに変わってだ。

「あるってのは……ここで誰か待ってんのか? 俺以外、確実にここに来る誰かってのをよ?」

兄曰く、お前が相手を崩すなら見えたとおりに言えだそうだ。
瞳に見えた戸惑い、そして瞳に映る意志として浮かんだ困惑の靄。
それは自分がここに来ることが、想定外であったことを指し示す。
その上で、先程の言葉に違和感ともいえない一言を拾って、予想に繋げて不意にぶつけるだけ。
あるとは、距離ではなく、用事。
そこに至ったのも、皮肉にも足止めに待機していた仲間の存在だろう。
祟り神と称される王族の異端児、その養子となった男の弟であり、実力は先のティルヒア戦争で数と質で示した戦人。
手を出して目をつけられるのをさけたか、それとも様子を見られただけか、普通ではない視線には獣の様に気づいてはいたが、目の前の少女と繋げれば、それとなく察する。
兄や兄嫁が得意とした、殺しの手口と何処と無く似ていたからで。
問題は、誰を殺そうとしたか。
ここは集落へと通ずる道の一つ、兄はとかく、秘書や参謀、関係者の誰かを殺そうというのなら……野良犬としては見逃せない。
答え方次第、そう言うように、ただじっと見つめるだけで動きはしなかった。