2018/11/29 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にルーシディータさんが現れました。
ルーシディータ > まだ街にほど近い、街道──。
そのせいだろうか、行きかう人々や馬車の動きも、どことなく余裕を持っているように見えた。

その街道の傍らにて、竪琴を手にした少女が一人佇む。
雪白の如き髪を長く伸ばし、黄昏色の薄紫の瞳は人の流れを観察するように眺めやる。
時折琴の弦を調律するように締め、そして音を確かめるように爪弾いた。

「──……よい、旅のお話を持っていらっしゃる方と、お目にかかることができればいいです、けれど…」

楽師にして歌い手として日々己の研鑽を積む少女は、新たな物語を紡ぐために。そして、インスピレーションを得るために、人々とのちょっとした邂逅の機会を得ようと、こうして人の多き場所へと出向く。
こうして旅に流れる人々の横顔を眺めるだけでも、まだ知らぬ世界の広さへの、様々な想像が過るのだ。

もしかすると、旅の途上の怪我や病に疲れた人々もいるかもしれない。
そういった人々にちょっとした癒しや安らぎを与えることも、己の役割と思う部分もあった。

ほろり、と柔らかな音色が一音。街道に響く。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > 随分と空気も冷たく、山も森も木々は葉を落とすようになってきた時期。
冬前の狩りもこの辺りで終わりだろうか、そんな事を考えながら山へと入り。
それなりに満足するだけの獲物を手に、街へと降りてきたのが数日前。

獲物を捌いて店に売り、それなりに懐も温かく。
さて戻ろうかと街道を歩いていく。この辺りは何度も通り、通いなれた道。
なの、だけど。

「………?」

耳に届くのは、一つの音。この辺りを歩いていて、ついぞ聞かないような響き。
不思議そうに顔を上げて辺りを見渡す。行きかう数人の人々の姿に目をやりながら。
やがて、その音の主らしい人影が、一つ見つかれば。

これから始まる(かもしれない)事の邪魔はせぬよう、ゆっくりと近くへと。
きっと、今の音が一つ零れただけ、ではないはず。そんな期待も込めながら。

ルーシディータ > しばし、特に何も考えることなく、指が覚えている練習曲を爪弾いた。
竪琴の音色が街道をゆるゆると流れ、時折、吟遊詩人とみてか馬車の脚を緩める人もいる。
元気な、旅商人の子供が、興味をもってまとわりつこうとして、おひねりを要求されるかと危惧した親に慌てて引きはがされて、去っていく。
その様子に、くす、と小さく笑みを零し、その様子を見送る視線の移動程度では、指が覚えた曲を奏でるには何の支障もない。

声は乗せぬまま、どことなく楽し気に、穏やかな表情にて、少女は己の愛用の竪琴を奏で──街道に、しばし旋律を響かせた。
しかし、結局は指慣らしの練習曲。
奏でながら人々の動きを眺めやりつつ、余韻を以て響いていた最後の一音をそっと指で弦で抑えて消すと、そっと満足の如き吐息。

ふと。
その音色に耳を傾けていてくれたのかもしれない人の姿を視界に収め、少し驚いたように薄紫の瞳を瞬かせ、ややあって、身にまとった外套の裾をわずかに持ち上げるように、礼を。

「………お耳、汚しでございました」

僅かに恥じらうように頬を染め、首を傾げた。

ルシアン > 時折、街道の側でこのような芸を披露する人が居ないわけでは、ないのだけど。
ある時は曲芸だったり、力試しだったり。勿論、歌唄いもその中には含まれる。
最初はその類かな、とも思ったのだけど。

特に歌声を乗せるでもなく、曲としてもそう長い物でもない。
音楽には疎いせいもあり、それがどういう曲かもよく分かりはしなかったのだけども、
不思議と最後まで、聞き入ってしまった。曲が終わるなら、自然とパチパチと拍手を。

「…楽師さん?それとも、吟遊詩人の人かな…? 今ので終わり?」

ふわりと衣をなびかせ、此方へと礼をしてくれたその姿に、小さくため息をついて。
銀にも見える程の真っ白な髪が特に印象的な少女である。
何か言わないと、と少し緊張しながら。

「良かったら、もう1曲お願いできないかな?…もっと聞いて見たいけど…」
ダメ、だろうか。相手にはこれも仕事、なのだろうし。
そんな事を思いつつ、少し遠慮がちにそんな言葉を。

ルーシディータ > 街に近いとはいえ、街道の只中。
本来ならば、街や酒場にて己が芸を振舞うのが常なのだろうけれど、歌や楽器のような芸事は周辺住人の機嫌が悪ければうるさいと追い払われることも少なくはない。
ゆえに、こうして街道の片隅にて練習をする。

ただ、滑らかに弦に指を滑らせることを目的とした練習曲ゆえ、音の高低の移り変わりの技術を魅せることに関しては秀でていても、決して情緒的なものではない。
ゆえに、修練の欠片を見られていたようにも感じて、いささか気恥ずかしく。

「……未だ、修行中の楽師に、ございます。 今のは、ただの指慣らし、で」

そう告げる表情は人形のように、やや硬めに無機質ではあるが、リクエストともいえる言葉に少し驚いたよう。
頬に指を触れさせ、少し考えるような仕草ののち、ほんのわずか。
淡く淡く、表情を緩ませた。

「ご所望であれば、喜んで」

ただの練習曲に、拍手をくれた。その礼にとばかりに、竪琴を再び抱くようにして、今度は街道に直接腰を下ろし、膝と肩に竪琴を固定するように置けば、指慣らしではなく、両手で奏で始める──。

ルシアン > 修行中、と言う少女に目をぱちぱちとさせて。
演奏の上手い下手を判断できるほど耳が肥えて(?)いるとは言えないけれど、
それでも先ほどまでの曲は…聞いていて、心地よく感じた。
だからこそリクエストなんかを頼んでしまったわけで。

「…! 感謝する…」

そして願いが聞き遂げられ、ぱっと表情を明るくする青年。
今度は通りすがりなどでなく、しっかりと聞いておこうと口を噤んで。

少女は先ほどまでの何処かゆったりとした様子でなく、しっかりと姿勢を整えている。
その傍で、様子を静かに見つめながら…その響きに、聞き入ろうと。

ルーシディータ > 首と肩で竪琴を慈しむように支え、張られた無数の弦へと指を滑らせる。
演奏用の付爪ではなく、己の指で直接弾くため、柔らかな音色は出やすいが、すぐに爪が傷ついて激しい曲も何曲も奏でることができないことが、やや悩みではあるものの、緩やかな曲調であれば何の問題もない。
ゆるく、首を左右に振って。

「いいえ。 歌を乞われるは、歌い手としての…誉れ、です」

前奏のうちにそう柔らかに答えると。
今度は。
己の声も、奏でる音に乗せていく。
高く低く、語るように謡うは、旅の空の白鳥の物語。
ここが旅の街道であるがゆえに、自然と意識が導かれたのかもしれない。

ありふれた。眠りを誘う曲調は、長く歌い継がれたもの。
その紡ぐ旋律の中に、歌い上げる声音の中に、織り込んでいくのは心安らがせる、まじない。
静かに、高らかに、柔らかに歌い上げて、表情は淡く上気し、どことなく幸福そうに硬い印象の面輪が和む。

「……ご清聴、いたみいります…」

ルシアン > 奏でられたのは――先ほどまでの曲とは、言葉通りに質が違うもの。
少女の声も乗ったその曲。歌い継がれ、どこかの酒場か何かでも聞いた事のある響き。
だけれども、それはこんな空の下で聞くのは、とても新鮮で。

楽器の音にも負けずに、共に高め合うように響く少女の歌声に聞き入ってしまう。
物音一つ立てる事も失礼に当たるような緊張と、同時に穏やかになっていく気持ち。
最後の盛り上がりの響きが、辺りを震わせる余韻として残って…それもやがて静かに消えた。

「…………素敵な歌だったよ。こんなところでこんなのを聞けたことと、楽師様に会えたことに感謝を」

自然と、拍手も大きくなって。いつの間にか辺りに数人、同じように聞き入る人々も。
その人たちも口々に満足気な感想を。同時に、賞賛の拍手は惜しみなく少女へ送られるはず。

そんな人たちも又、改めてそれぞれの行き先へと散っていくはず。
最後まで残った青年なのだけど、落ち着いたところで少女の傍へと。
何処か少し、ぽやっとしているような。まだ少々、余韻が残っているような表情かもしれず。

「ええと…改めて、感謝を。すごくいいものを聞かせてもらっちゃったよ。
 …僕はルシアン…ルシアン・エヴァリーフと言う。もし良ければ、楽師様のお名前、教えてもらえないだろうか…?」

自身の胸元に手をやりつつ、ふんわり微笑みながらそんな事を。