2018/10/18 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にフィオーレさんが現れました。
フィオーレ >  踏み固められた道が夕陽に照らされ、延々と続いている──まだ、自分が辿ったことのない……訪れたことのない、知らぬ街に続く道。
薄青の瞳が、その果てを見通すように見つめていた。 もっとも、長く続く道もすぐに森の中へとまぎれるように消えていく。
 森から茜差す街道へとふらりと出てきたのは、小柄な少女姿。生成りの粗末な服に深緑の外套を纏い、肘には籠を下げている。
 ふわりと流れる風に、銀色の髪が靡いた。
 頭頂のふっさりとした耳が、ぴくりと動く。

「……これくらいあれば、十分…? もう少し、余裕があったほうが…いいかな」

 下げていた籠の中身を見つめて、小さく独りごちた。
 籠の中に納まっているのは、様々な種類の薬草だ。それを煎じて薬にしたり、魔術の触媒にしたり──用法はさまざまである。
 もっとも、自分が摘んできた分で、十分に事足りるのかよくわからなくて、悩んでしまう。
 この時間から再び森に踏み込めば、危険もあるかもしれないのだし。

「欲を、かかない。 己の十分を、知る……うん」

 そう口にするのは、己に言い聞かせる言葉。
 余裕のあるうちに街に戻るべき、そう決めて、少しの休憩をとるために、街道の傍らに坐りこみ、そこを流れていく馬車や人の姿をぼんやりと眺め始めた。

フィオーレ >  人の流れを見るのは好きだった。
 己の知らない物語を持つ人々の生きざまを想像し、思いをはせて少しだけ心が浮き立つ。
 膝に乗せた籠を見つめて。

「本当は、あの高い場所に咲いてる花、欲しかったけれど……手は届かない、なら…諦めるが、寛容」

 指先で摘んできた薬草を選り分けながら、一人でいるとどうしても独り言が多くなるものだと自覚して、淡く苦笑した。

「……使い魔との、契約とか…主様が教えてくださればいいのだけれど……」

 独り言が多くなるなら、語る相手がいればいいという単純すぎる帰結によって出た望みだが、まだ未熟な己には無理だろう。そんな益体もない物思いを抱えて、少し疲れた足を自分のげんこつで、こつこつと叩いて、疲労の回復度を測る。

フィオーレ >  
 しばし──流れる人々の姿を、何となく眺めてしまう。
 来し方行く末を知らぬ少女は、自由に行きかう人々の姿が何となく眩しい。

 少なくとも、今は、この街道を流れる人々と同じであると、そう感じられる気がして、ほのかに唇が笑みの形に揺らいだ。

「……さ、て…」

 帰ろう。その言葉は音にはならなかったけれど、ゆっくりと少女の姿は街道の流れの一つとなる。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からフィオーレさんが去りました。