2018/10/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にジェネットさんが現れました。
ジェネット > ぽっくぽっくと地面を叩く蹄の音。
馬に跨り、大槍と大盾で武装した黒ずくめの重装騎兵が一騎、街道を闊歩している。
ひとつ異様なところを挙げるならば、その騎兵の駆る馬には首がなく、騎兵には脚が無いこと。
――ケンタウロス。異国から来た亜人の女騎兵は、今日も今日とて日銭を稼ぐため街道警備の仕事に励んでいた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にグライドさんが現れました。
ジェネット > 「……魔物も賊も出ないな。道を外れない限りは安全、か。
 しかし、分かってはいたがこの視線ばかりは慣れんなぁ……」

往来を行き交う行商人や旅人たちは、物珍しそうに、時に嫌悪を込めて半人半馬の騎兵を眺めていく。
魔族扱いされることもある我が身だが、露骨にそう見られるとやはり不満に思ったりはする。

グライド > (傭兵の依頼を終え、戻る途上。
街道を通るのは何時もの事だが、今夜普段と違う事と言えば
街道警備にやたらと目立つ騎兵が一人、配備されて居る事、か。
其の蹄の音に、まさかこんな夜分に馬か、と考えた物だ、が。)

――――……ほう、一体一人、かと思いきや、そうでもないのかい。

(近付いて漸く気付いた、其の珍しい姿――人馬一体。
珍しげな視線を向けるのは他の連中と変わらないだろうが、思わず傍へと寄って声を掛けよう
全身鎧、俗にいうフルプレートを纏い、巨大な盾を背負った、如何にも傭兵と言った出で立ちが
相手の顔部分を見上げる、か)。

ジェネット > 「ん、何だ。行き来の邪魔になるだろう、止まるなら脇に寄れ、脇に」

傭兵風の巨漢が物珍しそうに寄ってきたかと思えば、立ち止まって声を掛けてくる。
王国との関わりはそう強くないケンタウロスを、好奇心から近づいて見てみようという輩も少なくはない。
話の上手な相手ならば多少は仕事の息抜きに相手をすることもあるが、この巨漢についてはそれ以前に往来を滞らせそうだ。

「ほら、こっちだ。すまんな、行っていいぞ」

男を路肩に誘導し、苛立たしげに貧乏ゆすりしていた商人風が牽かせる馬車を進ませる。
兜のバイザーを上げ、眉間にシワを寄せて男を見下ろし

「で、何か用か?」

グライド > おっと、コイツはすまねぇな。

(言われて、ふと後ろを振り返れば丁度馬車の往来。
指摘の儘に一度道に脇へと寄れば、馬車が通り過ぎるのを見送ってから
改めて人馬一体の騎兵を見上げれば、バイザーを挙げた姿に、また感心した様に驚いて見せ。)

へぇ、中身が美人たァ、コイツもまた驚きだ。
いや、なに、単に物珍しげにじりじろ見て立ち去ってくのも嫌なモンだろうと思ってよ。
御苦労さんの労いって奴だ。

(特段何か用が在った訳じゃない、が、見世物扱いは嫌な物だろうと。
肩を竦めて見せ、それから、己もまたフルフェイスのヘルムを外しては
密閉から解放されて、ふぅ、と大きく息を吐いた)。

ジェネット > 「なんだ、ナンパか?」

奇特なやつめ、と蹄で地面を叩く。
言っていることは確かにその通りだが、その真意がいまひとつ掴めず。
男がヘルムを脱いで一息ついたのを見て、休憩したかったのかと結論を出す。

「まあ、な。慣れたものだが、やはりじろじろ見られるのは好きにはなれんものだ。
 お前は見たところ戦士か何かのようだが、そんな格好で徒歩か?
 中々忍耐強いのだな」

人間の身でフル装備のまま街道を行き来するのは大変だろうに。

グライド > おう? はっは! ナンパで良いなら是非ってトコだな

(一寸紡がれた台詞を聞けば、軽快に笑う
奇特なもんさ、と自ら肯定して見せながら、脱いだヘルムを腰元の留め具へと引っ掛けては
一度周囲を見回して、この場所がどの辺りに為るのかを一度把握しよう
夜の街道は、歩いた距離感を中々つかみづらい物だ。)

まぁ、其の辺りは仕方ねぇさ。
何せ幾ら異人種が多いとはいえ、此処じゃ御前さんみたいなのは珍しいからな。
あー、俺様は仕事帰りって奴だ、傭兵稼業でな。 コイツは服みてぇなモンさ。
俺様は平気なんだが、コイツで馬にでも乗ると、大抵はへばっちまうんでなぁ。

(寧ろ、徒歩以外の選択肢が余り無い、とも言う。
其れほどの鎧が頑丈に、そして重く出来ており)。

ジェネット > 「ぬかせ、馬を口説く変人がどこに居るかよ
 ……もう少し、そうだな、軽装の人の脚で歩いて三時間もすれば王都に着く辺りだろうさ」

きょろきょろと周囲を見回す男に、そっと現在位置を教える。
遊牧民の出だけあって、夜でも場所の把握は手慣れたもの。
ほとんど相違なく正しい位置を割り出した。

「らしいな。耳がある尾がある角がある、程度の違いで目くじら立てて亜人だなんだと騒ぐ人間は気が小さいものだ。
 そういうところでは帝国のほうが懐が広いのかもな」

なんて、思わず不満を零す。

「軟弱な馬を選ぶからそうなる。多少遅くても脚の太い、力自慢を選べ。
 それか草原にでも遠征してケンタウロスの娘でも口説いてこい、今が良いかもしれんが老いたら膝が潰れるぞ?」

グライド > おっと、そりゃあ御前、唯の馬にゃ興味何ざねぇが
其の馬の上っ面が美人とくりゃ話は別だぜ? 喋れるしな。
――3時間か、ま、問題ねぇ距離では在るが…。

(此処に居るかもな、何て笑いながら己を親指で示しつつ
己が進むべき方向を見やって、少しばかり考える。
此の儘歩けば王都まで辿り着くのは問題無いだろう、ならば急ぐ事も無い。)

なぁに、帝国も大して変わらんさ。 力の無い奴は、力の在る奴を怖がるからな。
肉体的にも能力的にも大抵は異人の方が上とくりゃ、仕方のねぇ事さ。

(王国よりはマシ、と感じられるのかも知れないが。
結局のところ、他の種族を排斥し、奴隷を扱い、なんてやっている時点で同程度だ、と。
そうして、ふと相手の胴体、馬の身体を僅か見やる。
他の一般的な馬で在ったりと、相手の肉付きや骨格を比べて見ては――
成程、と、納得するように頷いて。)

馬なんてそう選べんるもんじゃねぇって、俺の持ち馬じゃないからな。
そう言う力の在る奴なんてのは、大抵騎士団の方に引っ張られちまってるし
何より足が遅いんじゃ、戦いにゃ向かねぇだろう? ――クク、だが確かに、ソイツは良い発想だ。

(特に、この国は戦火が長く続いている。
馬が何事にも重要な存在で在るとはいえ、優秀な個体は優先的に戦場へと投入され
一般民が使えるのは、其のおさがりの様な馬ばかりだ。
相手の忠告には、そんな事情と理由も在ると語りつつに――ふと、改めてその顔を見上げれば
くつりと笑った後で、人差し指で相手を示して見せ。)

―――……目の前に、頑丈で、強くて、負けん気の強そうな良い娘が居る訳だ。
口説いたら、背中にでも乗っけて貰えるか?

ジェネット > 「喋って顔が人ならなんでも良いのか、節操なしだな人間は。
 なのになぜ魔族やミレーの連中とは仲良くできんかね、私などよりよほどヒトに近いだろ、あいつら。
 ――乗り合い馬車でも停めるか? その装備で今からじゃ到着は陽が登る頃になるだろ」

本当に色狂いだな、などと苦笑して。
話してみれば意外と気安いこの男に少しだけ肩入れして、完全に往来が絶える前に馬車を呼ぼうかと提案する。
当人が歩き慣れていると言うならいいが、手間はどうしても必要でない限りは適宜切り捨てるほうがよい。
特に時間に関わる問題は、切れるところを切るべきだ。生き物の命というのは思うより短いのだから。

「力の優劣で存在の価値が決まるなんて当然のことだろ。
 それを怖がるくせに人間同士で貴族だの平民だのと優劣を付けたがるのはいまいちわからん。
 …………おい、まさか馬体に盛っちゃいないよな?」

価値観について小難しい話をしてみれば、男は行き交う馬と私の馬体を見て頷いている。
そういう趣味か、と少し後ろに下がって距離を開け

「なら仔馬から育てろ、お前がいい主人になるなら馬も頑張ってお前を乗せるだろ。
 訓練されたよい馬がぽんぽん手に入るというのはまずありえないんだ、手間を掛けてやらんと駄目だぞ。
 足が遅い馬だって、愛情を掛けてやれば立ち回りで駿馬より強いこともある」

馬が争いで足りないと言うのはわかった。わかったが、なら育てようという発想は無いのだろうか。
ちゃんと育ててやれば馬もよほど性格の悪いヤツでなければ主の期待には応えてくれるのに。

「おい、人を指差すな。確かに私は頑丈で強いが、私の背に乗せるのは私が認める強い騎士だけだぞ。
 お前がどのくらい強いのか知らんが、口先だけで背を預けるかよ」

グライド > 其れは俺の話じゃねぇから何とも言えんな、御前も言っただろ、俺様は変人だとよ。
一括りに歴史と文化だって言っちまえば其れまでだが、御前達ケンタウロスも、外敵と在れば戦うだろう? そう単純じゃねぇのよ。
―――いや、構わねぇ。 俺は夜中の乗り合いには、よっぽどの理由が無いと乗らないって決めててなぁ。

(色狂いだのと言われれば、大きく笑い飛ばして仕舞うだろう。
別に肯定もしないが否定もしない、気に入れば口説く、そんな単純な思考には変わらないのだし。
ただ、馬車を頼むかについては断るだろう、夜、己の様なゴツイ全身鎧が乗れば
他の客は委縮するだろうし、何より寄合馬車は互いの距離が近く、狭い。
同乗者が、善良な市民である保証など何処にも無いのだ。)

力の優劣が絶対じゃねぇ、其れは結局国や地域次第って事だ。
だが貴族にも力はあるぜ? 権力や財力って奴がな。
俺は其れを否定は出来ねぇ、其れを得る為に努力した奴が居るって事は、間違いねぇからな。

(其れ自体は決して悪しき物じゃない――問題は、其の力の使い道だ。
優劣を付ける其の理由が、保身で在ったり搾取で在るならば、其れは務めを果たして居ないと言う事だ、が。
――何故か後退する様子に、一寸片眉跳ね上げれば。
紡がれた言葉に意味を察して、嗚呼、と一声響かせて。)

盛っちゃ居ないが、馬の胎から赤子を引っ張り出す手伝いなんかはしたぜ、昔にな。
だが御前さんの場合は、何せ上っ面が美人だからな、ソッチは別だ。

(其れは正直な感想だ、間違い無く美人の部類に入れなければならない。
ただ、今見て居たのは違う理由だと、笑いながらも其れだけは訂正しておきつつ
馬を育てる、と言う部分に関しては、少々厄介だと首を横に振った。)

ずっと手間かけて見てやれんなら出来る、が、俺様は傭兵だからな。
下手をすりゃ、暫く王都に戻って来ない時も在る、そうすると、だ
今度は、其の間世話を任せられる奴ってのが居なくてなぁ…。
仔馬を戦場連れ回す訳にもいかねぇ、かと言って置いて行くにゃあ難しい。
其処までやって、いざ戦場で足を折られちまえば、其れだけで終わりに為っちまう…そうなると、中々手を付ける気にゃならねぇのさ。

(何か組織に所属し、後ろ盾が在るのならば話は違っただろう
だが、結局己は傭兵稼業、誰かと組む事は在れど、己を助けるのは己だけだ。
そんな人間に、戦場で死なせる為に馬を育てると言うのは、中々難しい
――元々農夫だったのさ、と、一言付け加えるだろう。故に、馬は己にとって「使い捨ての道具」とはならないのだ。)

――だがよ、既に鍛え上げられて、他よりも余程頑丈そうで、負けん気も強い。
そんなのが目の前に居るなら話は別だぜ。 そりゃあ、気に入られるかってトコは在るが…。
さて、試してみるか? ケンタウロスの背に乗るってなら、其の位は証明しねぇとウソってモンだぜ。

ジェネット > 「ほう、馬の扱いには慣れているか?
 だが、そうだな…………確かにずっと付いててやれんなら、馬も不安になるだろうし。
 戦場だと怪我も多かろうしな、それは仕方ないこととはいえ人間一人には重いか」

馬を知り、そして大事に想って居るがゆえに、馬を持たない。
ちゃんと自分の生き方を決め、その上で付いてこられないなら最初から飼わないという男の考え方は好ましい。
気性に合わず、体格や血筋だけで望まずして軍馬にされた馬なども見たことがある身としては、そういう優しさは好感が持てる。

「それに人間では馬の言葉がわかるまいしな。なおのこと大変か。
 ほう、農夫だったなら馬とも親しく生きてきたのだろう? その優しさも道理か」

しみじみと頷く。
軍馬ともなれば、老いるより先に走れなくなることがほとんどだろう。
彼らの、「それしか知らぬ」ゆえの悲しさも考えてくれる男に、優しい視線を向け

「草原の偉大な戦士、コーサー氏族の妾子ジェネットだ。
 こんな街道でいざ試合、というわけにも行かんだろう、お前の一番の武勇伝を聞かせろ、それで考えよう。
 嘘を吐いた時は、馬に蹴られてなんとやら、と肝に刻むのだな?」

腕を組み、どっかと脚を畳んで座り込む。
騎手の資質はよし。自分本位で馬を顧みない男ではない。
では、次は実力だ。

グライド > 馬ってのは相棒だ、それは農業でも戦場でも変わらん。
其処までして馬に乗りたいのかって言うなら、なら俺一人で良いってなる訳だ。

(結局のところ、無理やり馬に乗る、なんてのは人間側の我儘でしかない。
育て上げた上で戦いに向かぬ気性で在ったなら、恐らく其れだけで無意味になって仕舞うだろうし
なによりも、戦いに赴いて怪我を負い、恐れる様になって仕舞った馬も多く見て来た
そうなって仕舞えば、少なくとも軍馬としては死んだも同然だ。
馬と親しかったかと言われれば、昔の話だが、と一言注釈を付けながらも頷いて見せ。)

俺様はグライド、家名はクラウス。 しがない農夫の出で、今は傭兵なんざやってる身だ。
武勇伝…武勇伝なぁ、さて、色々在ったもんで、如何話したもんやら。
――闘技場で、素手で鎧ごとぶち破って来るような奴と戦って、勝ったにゃ勝ったが盾をぶっ壊されて困ったとか
後は、何処ぞの山ン中で山賊に囲まれた時、妙にそいつらの頭と気が合って、朝まで一緒に酒飲んでたとか
そう言う話なら幾らでも出来るんだがな?

(名乗りは、其の時だけは居たって真摯に告げたが。
其の後武勇伝を問われれば、どちらかと言えば武勇伝と言うよりも、笑い話と言った経験談なら
其れこそ山の様に出てくると告げて、豪放に笑おう。
そうして、其れからまた少しばかり考える。 座り込んだ相手の前、少しばかり時間を貰っては。)

―――俺様の唯一の自慢は、何かを倒したとか、栄誉を貰ったとか、そういう事じゃねぇ。
村を焼かれてから、この年に為るまで、こうやって生き延びて来た事だ。
世の中よ、強い奴なんてのはごまんと居る。 其れこそ怪物みたいな連中がな。
だが、そんな連中がわんさか居る戦場から、生きて帰って来た事…其れが、俺様が唯一胸を張れる事だ。
傭兵ってのは騎士と違う、死ぬ事に名誉なんて欠片もねぇからよ。
強くなる理由はたった一つだ…俺様自身が、生き残る為に必要って事さ。
だから、具体的で誰かを愉しませるような武勇伝何ざ、多分無いぜ。
強さの証明ってなら、俺様が、今ここにこうして、五体満足で生きてるって事だけだ。

(――ドラゴンを討伐した。 魔獣を退治した。 村を救い、感謝された。
或いは戦場に赴き敵兵を殺して賞賛された。 謀略に巻き込まれながら反撃した。
――そんな絵物語に為る様な、冒険活劇的な話は、きっと大した物は無い。
ならば、自らの実力を、強さを示す何よりの証拠が在るとすれば――其れは、己自身に他ならない。
座り込む女の傍へと歩み、距離を詰めれば、其の目前でゆっくりと屈み込み。
其の眼をじっと、真直ぐに見やっては。 ――少なくともその語りに、嘘の介在する余地は無い、と知れるだろうか)。

ジェネット > 「ああ、そうだ。馬も生き、物事を考え、心を持った生き物だ。
 それを便利だからと道具だと扱う輩は思いの外多かったが、お前はそうではないようだ
 …………実に気に入った」

育ててやったのだから乗せて当然、潰れるまで尽くして同然という輩は多く見た。
そういう奴のところの馬は、可哀想に疲れ切った顔でそれでも主しか知らぬがためにその生き方に甘んじ、そして死んできた。
それが自然ではない、人間の我儘な行いだと承知の上で、馬の資質を鑑みて軍馬という生き方を否定するでもない。
好ましい価値観に、自然と頬が緩む。

「いや、昔のことでも忘れていないのならそれでいい。
 クラウス氏族のグライド、か……」

目を閉じ、その名を記憶に刻む。
好ましい戦士だ。そして、続く武勇伝に期待して耳を傾け、

「…………なんというか、華のない話だな」

その武勇伝は、期待していた騎士然としたものではない。
泥臭く、馬鹿げていて、荒々しい話。それだけ聞けば、己が背に乗せるには不適としか言えなかったろう。
なにしろ、騎馬として背に乗せる騎士を求めてやってきたのだ。
上に乗るのが山賊と盃を交わしたなんて、そんな豪快な輩というのはなにか違う。
だが、続く話に不満げな表情は引き締められ

「…………生き延びたのが自慢、か。
 いや、私自身王国の騎士物語に当てられてそんな簡単なことを忘れていようとはな。
 うむ、クラウス氏族のグライド。お前は私の認める勇士だ。
 死は名誉だが、名誉のために死ぬのは馬鹿のやること。生きることこそ、お前の最大の武勇だと言うならその通りだ」

目を見つめ、深く頷く。
草原の民は生と死を重んじる。
生きることをこそ自らの武の証左とする男に、草原の女として感じたのは懐かしさと、畏敬。

「いいだろう、コーサー氏族のジェネットがクラウス氏族のグライドを背に乗せることを認める。
 仮契約だ、お前よりよほど相応しいものが居ればそちらに行くし、逆もまた然り。
 四六時中お前と共に居てやるわけでもないが、一緒にいるときくらいは乗せてやろう、グライド」

グライド > ―――結構悲しくなるもんだぜ、足が折れて、もう動けなくなっちまった馬ってのはな。

(――馬にとって骨折は致命的だ
決して治癒しない訳では無い、だが、馬は自らの怪我を理解せずに歩こうとする
大人しく安静にして居る事が出来ない、だから、怪我が治癒しない。
そうなって仕舞った馬が如何なるかは――敢えて、告げるまでも無いだろう。
放って置いても傷から病が入り込み、苦しむだけなら――一瞬で、終わらせるモノなのだから。)

―――……はっは…! 騎士様みたいな華々しさはなぁ、其れは間違いねぇよ。
だが、騎士の生き方と傭兵の生き方は違う、傭兵は、死ねば何も残らん。
何かを全うしたいなら、這ってでも生き延びるのが俺達だ…勿論、否定する連中も多いがなぁ。
――…だが、其れでも俺様は胸を張るぜ、根も生き方が正しいとは言わねぇが、間違っているとは思わんよ。

(それは、恐らく己なりの信念と言うやつだろう。
決して崇高とは言えない、されど、自らの行いに決して後ろめたさは無い
其れが己にとっての生き方であり、傭兵として培われて来た心構えなのだから。

だから、目の前の相手が、そんな己を認め、そして頷いたなら
口端を、また元の様ににぃと吊り上げ、笑みを戻しては。)

―――……ようし、仮契約でも御眼鏡に叶ったなら良いって事さ。
俺より相応しい奴が見つかったんなら、別にそっちを選ぶのは御前さんの自由だからな。
だが、まぁ契約が続くうちは、よろしく頼むぜ、ジャネット。

(勿論だ、と、四六時中拘束はしないと告げよう、何せ己の道具では無いのだ。
代わりに、右手を差し出し、改めてのあいさつだと、軽く握手を求めれば

――もし、相手が其れに応じたなら、其の刹那。 開いたバイザー越しに顔を寄せ、軽く其の唇を、奪って仕舞おうとする、か)。

ジェネット >  「わかるとも。頭はヒトに近しいが、身体は馬も同然だ。
 それに昔から馬とは関わる機会も多かったしな。
 走れぬ苦しみも、そして苦しませるくらいならいっそ一思いに終わらせてやるヒトの悲しみも…………わかるさ」

氏族に居た頃だって、妾やケンタウロスではない妾子が乗るための馬はいた。
兄弟のように育った彼らが戦で怪我をして苦しむのは辛かったし、せめてと苦しまないよう送ってやるのは悲しかった。
それを分かっているこの男は、馬にとって――ケンタウロスにとっても、悪くないパートナーたりうる。

「傭兵はな。私も今は傭兵崩れみたいなものだが、だが私に乗るからには名誉と誇りを約束しよう。
 お前が死んでも何かを世界に残すような。ああ、だが無論私は騎手をむざむざ死なす無能ではないぞ!
 お前が傭兵であり、その生き方を貫きながら誰かに認められる命の歴史を刻めるよう、このジェネットが助力しよう!」

自信満々に鎧の胸を拳で叩き、相手の生き方を認めた上でその生涯に自分の色を添えて彩るのだと宣言する。
笑みには不敵な笑みで応え、馬の耳が上機嫌に動き回り

「せいぜい目移りしないよう励んでくれよグライド、我が仮の主よ。
 もしお前こそ我が生涯の伴と認めたときには、それこそ私から四六時中つきまとってやるがな!」

わはは、と豪快に笑いながら右手を固く握り交わし、

「――――!?」

不意打ちで唇を奪われ、目を白黒させる。

グライド > まぁ、ケンタウロスってのは、厳密に馬とは違うのかも知れんがな?
だが、人間の事も、馬の事も良く判るんだろうよ。

(無論、全ての命がそうであると言う心算は無い。
自分達に害を為せば、其れは敵であり、排除すべきだからだ。
だから其の中でも、人と共に歩む事の出来る存在は、矢張り特別なのだろう。
果たして、、王国の騎士物語に憧れたらしき目の前の相手にとって
己が本当に相応しい乗り手かどうかは、まだまだ誰にも判るまい。
けれど、少なくとも相手が、何よりも頼もしき戦士で在る事に代わりはなさそうだ。
胸を叩いて決意を示す様子に、からからと笑って頷いてみせれば。
交わされた握手を固く握り返し、為された契約を確かにして――)

はっは、精々そうさせてもらうが、俺様は俺様だ、今更気負う物なんざ何もないぜ。
今まで通り、此れからも、俺様らしく生きていく…ただ其れだけだ。
だが、そうだな…、……偶には、良い所を見せるかも知れねぇな?

(きっと、大きく何かが変わる事は無いだろう。其れが、己だ。
だが、少なくとも相手の存在が重しになる様な事も無い、其の位の気概は持ち合わせていると、主張して置けば

――重ねた唇、女が唐突と驚愕に反応できないで居るのを良い事に
座り込んでいる其の体躯を、人間の身体を、其の腰元へ片腕を回して抱き寄せながら
更に深く口付けを深めて――舌を、絡め取って仕舞おうとする、か)。

ジェネット > 背に乗せると認めた男。
思っていたのとは多少違うが、悪いことにはなるまいと言う確信はある。
これから彼と駆けるにおいて、騎士でない姿こそがしっくりと馴染むことが無いとも言えない。

「ああ、お前らしく生きろ、それでいい。
 私はそれを見極めて、お前のいいところ――」

抱きすくめられ、深いキス。
主と認めかけた男の狼藉に、しかしうっとりと目を細め。

「こ、好色なご主人め…………騎馬を女として見るなど、変態だぞっ」

グライド > (――口付けに、或いは手にしていた槍や盾が振るわれるかとも思ったが。
帰って来たのは言葉だけ、其れは、己を咎める様な響きでは在ったが
けれど明確無い抵抗も、嫌悪も、少なくとも其の表情からは伺えなかった、か。
舌を奪って、柔く吸い上げてから、漸く一度解放する。
改めて女の瞳を眺めれば、何処か陶酔すら感じられるその色合いに、ふ、と小さく笑い。)

―――……ケンタウロスは、確か人間を浚って嫁にするんじゃなかったか?
そう考えりゃ、別にお互い様だと思うんだが…其処ントコは、どうよ。

(あくまで、伝え聞いたような話では在るが。
傭兵として渡り歩いていると、そんな噂話位は耳にする事が在る、と。
互いに鎧姿、女の背へと触れれば、硬質な、金属同士の接触感が伝わるだろう
そして、腰元から掌が、ゆっくりと鎧姿の上を辿り――其の人間の身体、下腹の辺りに沿う。
決して直に肌へと触れて居る訳では無い、けれど、まるで其の場所を意識させるかに柔く、触れ合う音を響かせれば。)

それに、言っただろ? 完全な馬にゃ流石に女としての興味なんざねぇがよ
ジェネット、御前さんは上半分が、手を出したくなる位には良い女なんだってな。

(きっと、囁く響きだけは何処か、戯言めいてはいるけれど。
今座り込んでいる道の端、時間的に既に誰も通らぬが、往来には邪魔に為らぬ草葉の陰で
――ふと、相手の鎧を、外して仕舞おうとする、か。)

―――……ケンタウロスの女には、胎が二つ在るってのは…本当か?

ジェネット > 「そ、それは確かに、する。私の母もそれで嫁いだ人間だし……
 いや、でもお互い様って、お互い様か!?」

はぁ、ふぅと呼吸を整え、涙のにじむ目で唇を奪った騎手を見る。
正当な戦争の戦果として、雄は人間や亜人の女を、雌は強い男を連れて一族に加えることはある。
が、別に騎手と私は戦って居ないし、まして勝敗も無いはずだ。
がちゃがちゃと鎧の上から身体を撫で回す男の手をぐいと引き剥がし、ムッとした顔をしてみせる。

「……褒め言葉は褒め言葉として受け止めるが、流石に街道で盛る雄はちょっと引くぞ。
 見られなければいいとか、そういう問題じゃなくてだな。
 いや、まあ、認めた雄が求めてくれるのは悪い気分じゃないが。
 だからこそ雰囲気をだな、考慮してもいいだろう!?
 あああるとも、胎は2つあるしその気になれば2つの胎に子を抱えることも出来るが今はそれはどうでもいいだろう!」

お前も私も眠気で気が変になっているのだ、今からお前を最寄りの宿まで乗せていくから頭を冷やせと捲し立てて、無理やり馬鎧と鞍に覆われた背にグライドを積み込む。

「揺れるが気にならぬなら寝ていろ、馬鹿ご主人!」

ぱからぱからと、近場の宿へと蹄の音が駆けていくのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からジェネットさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からグライドさんが去りました。