2017/12/09 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にカインさんが現れました。
■カイン > 真昼間のまれびと街道。気持ちの良い風が吹き抜けるどこまでも続いていそうな一本道のただ中、
大きく3mほども上に張り出した岩の麓に座り込んで、一休みする旅人の姿があった。
今日は何かあったのかそれとも単にそういうめぐり合わせなのか、他に人影も見当たらぬ街道を眺めながら水筒の中から水を飲み。
「ふぅ…相変わらず風情はあれど随分長い街道だな」
少しだけ呆れのような声音の混ざった呟きと共に霞んで見える王都の方を見やり。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にイーリスさんが現れました。
■イーリス > 長閑と表現するにふさわしい豊かな自然の中を走る街道。
そんな街道を走る1頭立ての簡素な馬車は、薄汚れた幌を引き、小太りの男の御者が草臥れた馬に鞭を打っていた。
特に急ぐ様子もなく、護衛もつけていないそれは、まだ陽も高い時間だからこその乗合馬車だと知れるだろう。
馬車の荷台は幌が掛かっているから外の様子は知れない。
勿論、外からも然り、ではあるが、この狭く薄汚れた乗合馬車の唯一の客は、硬い木製の椅子の背に身を預けてただただゆられている。
小さな、薄汚れた覗き窓があるが、そこから外を覗いたとて、物珍しい景色があるわけでもないから、
目深にフードを被った細身の男、と思しき人物は、軽く目を閉じているだけだ。
『よぉ、兄さん。あんた、馬車を所望かい?ダイラス行きだよ』
御者の声が聞こえたが、それを気に止める様子は乗客にはない。
一方、御者の男にしてみれば、王都からダイラスまで向かう道のりに、客一人、とは商売あがったりなのだから、
街道沿いで休む旅人らしき人物に声をかけたのは、商売人としては当然なのかもしれない。
馬の歩みを止め、御者は岩を見上げて、愛想の良い、それでいてどこか守銭奴のように狡賢し眼差しで男へと声をかけた。
■カイン > 道行く最中、己を追い越すような恰好でやってくる馬車の姿が目に留まり思わず足が止まる。
簡素といわば簡素ではあるが馬車を用立てられるとなれば、
商人か何かだろうとあたりをつけながら不躾に眺めていると、
聞こえてきた声に緩く笑いながら首を横に振って見せる。
「いや、俺はどちらかというと王都の方なんだが……なんだ、あまり繁盛はしてないようだな。
天下の賭場も今は王都の皆様の琴線にはあまり触れないのかね」
そう軽く言い返しながら何となしにたった一人しかいない乗客へ何処か面白げに視線を送り。
■イーリス > 脚を止めた馬は、軽く足踏みをして嘶く。
返ってきた言葉に、御者はそうか、と声からも解るような落胆ぶりを示す。
王都を出る際、少々大目に金を渡していたというのに、それでもこの客引きめいた行為にご執心だったようで、
ここにきて漸くただ一人の乗客たる人物も、フード越しに呆れた表情と共にため息が落ちる。
御者が声をかけるくらいだ、どれほどの金持ちめいた男かとこちらも少々興味を惹かれ、フード越しに琥珀色の眸を細め、旅人を見る。
おや、という色で瞳が瞬く。
「カインじゃないか。これは意外なところで逢ったな」
見知った人物だったことで、フードを外し、幌から外へと声をかける。
相手の様子を眺めたのち、先ほど耳に聞こえた王都の方、という言葉を思い出したように、
「仕事の帰りかい?」
その程度を聞き、馬を止めるのは差支えないだろう。
御者の男も、知り合いかい、などと口を挟んでくるのだから、御者としてはたいして急ぐ必要性がないらしい。
■カイン > 「賭場に用がある程度に懐具合が温かいなら考えたんだがね。
ま、仕方がないさね。さして金を持ってる身なりにも見えないだろう?」
言いながら指し示す自分の姿はなるほど確かに対して金を持っている様には見えないだろう。
そうこうする内に聞こえてきた声におや、と小さな声を上げ。
「誰かと思えばお前かイーリス。そちらこそ仕事の帰りか何かかい?
…そうだな、約束の件もあるしイーリスがいるなら同乗させてもらってもいいか。
そう大して急ぐものでもない」
そう笑って言いながら男の言葉も聞かずにさっさと馬車に乗り込んで、
見知った女の隣に陣取ればニヤりと笑い。
「案内くらいはしてくれるんだろう?」
■イーリス > 御者もここにきて漸く旅人のなりを、不躾に眺めている。
確かに…そう大金を持っている身なりでもなさそうだ。
となると、声をかけた分だけ損をしたと言わんばかりに大げさなため息を付くのも、
金にうるさい商売人らしいと言えばそうなのかもしれなかった。
「あぁ、私の方は取引の帰りでな。ダイラスまで、幸いにして豪勢な一人旅、さ」
この薄汚い幌を示すように、軽く両手を拡げて見渡せば、茶化す口調と仕草である。
そんな冗談めかした会話の後に、相手が乗り込んでくると、
腰の革袋から幾らかゴルドを掴み、御者の手元へと無造作に差し出す。
そうしておけば、御者の男も文句は言うまい、という配慮である。
「今夜は、麗しい花を護るナイトの仕事はよかったのかい?」
この馬車の行く先はダイラスである。首を傾げて問いかけたのち、
「王都以上の麗しい花も、美味い酒もダイラスにはあるから、楽しみにしているといい」
揶揄するような口振りで離していると、かたん、と荷台が揺れて、馬が歩み出したのが解る。
御者の男はゴルドを懐へと入れると、ここから先は乗客には関せず、という表情になる。
揉め事もその他も、一切関知しない、のが御者なのだから、それはそれでありがたいわけで。
■カイン > 「そりゃまた運がいいやら悪いやら、俺のお陰で一人旅ではなくなってしまうわけだ」
残念だなと言い放ちながらも相手の言葉に喉が鳴る。
隣に座り込んだまま肩を竦めて言い返せば首を横に振って見せ。
「何もいつもいつもあの仕事やってる訳じゃないんだぜ?
たまには外に出ておかなければ訛るってものだ」
それはとてもよくないと笑い飛ばして返しながら、
御者がさして気にした風もなく馬車が進み始めるのを見て取れば、
それはそれで良しと頷きながら相手に向かって手を伸ばし。
「それじゃ、道中その仕事の話でも聞かせてもらうとしてまずは――」
そのまま顎に指を這わせれば己の方へと顔を引き寄せて、
唇と唇を重ねてしまおうと頭を動かす。
そうしてやりたいことだけやれば顔を離し、
何事もなかったかのように談笑を続けていくのだろう。
■イーリス > 「はは、いや、運がいい。幸運さ。君に逢えたんだからな」
そこは素直に相手に逢えたことを、言葉通り、表情を綻ばせて応え。
「そうなのか。ナイト姿の君は良く似合っていたもんだからな。
まぁ…そうだな、たまにはその腕を更に磨くのも悪くないだろ。
…そうなると、どうだ、護衛の話、本格的に考えてくれないか?」
腕を磨くついで程度、という軽い口調で誘ってはいるが、案外表情は真剣そのもの。
彼がどれほどの腕前か、は正直未知数ではある。
だが、それでも、腕の立つ人物を一人でも多く船に乗せていたいし、
出来れば、己の護衛に欲しいところである。
それに。
ふと、真剣な眼差しが、僅かに細められたのは、伸びてきた手に気付き、
そちらへと顔を向ければ、一瞬御者の存在を気にするみたいに、視線が彷徨った後で、
睫毛を震わせ、瞳を閉じれば、触れる唇の感触に僅かに息を詰めた。
そして、離れてしまうと、は、と浅く息を吐くとともに、こちらも何事もなかったかのような涼しげな表情で、
ダイラスの良さはもちろん、本題の船の護衛へのスカウトに勤しむことになろう。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からカインさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からイーリスさんが去りました。