2017/07/05 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にペインテイルさんが現れました。
■ペインテイル > 薄曇に覆われた月と星の輝きは街道を照らすには聊か頼りない。
時折吹く風も生暖かく、夜行性の獣の鳴き声すらない、今夜のメグメール街道は何処か何かが欠けていて、勘の良い人間であれば違和感以上に恐怖を覚えるような、そんな状況下にあった。
原因は街道に潜む1匹の魔獣にあった。
今夜の夜空の様に黒い毛並みに覆われた狼と良く似た魔獣。
黒曜石の球体をイメージさせる丸くつるりとした感情を移さぬ目玉を左右に蠢かせ、獲物を探し求め街道を駆ける1頭の魔獣、その速さは狼や野犬などと比較にならぬ早さであり、足裏の柔軟な肉球はかける足音を吸収し、全くと言っていいほど音を立てていない。
まるで走る影、そんな魔物が街道を我が物顔で獲物を探しかけ抜けるのだから、餌食になりたくない小動物や矮小な魔物は刺激や巣に隠れ引きこもっているのだろう。
今宵の街道は一際危険である。
周囲の野生動物も吹く夜風もが街道を利用するものに警告していた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にレナ=ミリイさんが現れました。
■レナ=ミリイ > 月明りのない街道は普段よりも一層闇に包まれており。
種族柄、夜目が人間よりは利く身体でも、普段より視界が制限されていることに変わりはなく。
注意深く目を凝らしながら道を歩き。
「静かすぎる、虫の気配もしないなんて……まぁ、無駄足にならなくて済むか」
一人、暗闇に溶け込んでいくような小さな声でつぶやく。
普段であればこのような日に外を出歩くことなどしない。
それも、最近になってペインテイルと呼ばれる魔物が現れたとなればなおさらだろう。
それを置いてわざわざ足を運んだのは酔狂な貴族から、ペインテイルの子供をさらってきてほしいと依頼を受けたためで。
改めて依頼内容を思い出せば思わずかぶりを振るが、一度受けた依頼、まして久しぶりにましな報酬の仕事なのだからあきらめるわけにもいかず。
背負っていたクロスボウを両手に抱えて注意深く対象の気配を探し。
■ペインテイル > 生ぬるい夜風は不愉快ではあるが、今夜は芳しき匂いも運んできた事に魔獣は口元を吊り上げ牙をむき出しにしてニタァと嗤う。
その匂いの主は辿るまでもなく、直に感情のない虚ろな眼に映り、次第に映る姿は次第にハッキリとそれがミレー族であり、まだ若い個体だと認識し、直にもそれは「獲物」であると理解する。
遠めに見えたその姿、その手には危険な道具を持っているが、眉間にでも突き刺さらなければ問題のない道具だと記憶しており、それに怖気づく事無く、丁度少女の正面から夜風を舞い上げ、鋭い爪で街道の道を蹴るたびに土煙をあげ、その距離が互いがハッキリと視認できるような距離まで詰めると、その爪で脚で力強く地面を踏みしめ、蹴り、真正面からミレー族の少女に向けて飛び掛る。
音を消し地を踏む前足で、その両肩を狙い地面に押したおそうと、特徴である巨大な耳は既に臨戦態勢を終えており、先端は五枚に別れて鋭い爪と化していて、それすらも振り上げて……。
■レナ=ミリイ > 「っ、来た!」
暗闇の静寂を打ち破る獣の足音が耳に届けばすぐに音の聞こえた方向を向き。
まだその姿は見えないがクロスボウをしっかりと構える。
徐々に足音が大きくなってくるも、一寸先まで包む闇のせいでなかなかその姿を捕らえることが出来ず。
ようやく対象が見えた時点では一射の機会しかない距離まで詰められており。
「いま……く、ぅあ!」
落ち着いて狙いを定め、引き金を引いて太い矢を放つも、暗闇と土煙に距離感が狂い、おまけに相手が速度を落とさず飛び出したことでその矢は相手の頭のすぐ横を飛びぬけていき。
外れたことに気づいた刹那、相手が飛び出してくれば既に避けることもかなわず。
鋭い爪が肩に食い込む激痛とともに地面に仰向けに押し倒されてしまい。
■ペインテイル > 獲物を視界に捕らえてからの魔獣の行動は明らかに武器を想定した動きであった。
遠方から視認した獲物が持つ殺傷の力のある道具に対して、横合いから襲撃するのではなく、正面より襲撃する事で狙いをつけやすくし、その分相手の狙うべき対象を絞らせる。
真っ直ぐに走れば正面に来るのは頭部、頭部であれば万が一射撃されても耳を使い放たれた矢を掴むか、叩き落せる自信はあった。
それに想像通り獲物が放った矢は掠める事もなく、結果無傷である。
――まあでも飛び掛る刹那に弱点でもある腹部を曝け出したが、それは良しとしよう結果として足元に今夜の獲物を捕らえる事ができたのだから。
「オォォォン!!!!!!」
そして、頭部を薄雲に隠れた月に向け、首を反らし勝利の咆哮をあげ、空をビリリを震わせ、満足げな表情と不敵な笑みさえ浮べて勝利に酔いしれる。
隙だらけの喉を曝け出しても今宵掴まえた獲物は己の物であると周囲に宣言をしよう……ただ、それは連絡の意味も有り、その咆哮が鎮まる事には街道の近くの茂みよりガサガサと音を立たせ、何かがその中から小さな目玉を輝かせ、じぃと咆哮をあげる魔獣と獲物の姿を見つめよう。
それは目玉のサイズからして、ペインテイルの幼体である。
それも人の姿をしていない珍しい生粋のペインテイルの子供であった。
そして魔獣の雄は獲物を小さな同族に見せ付ける為にか、直に行動をとろうとはしない、ただただ組み伏せた獲物の両肩に爪を食い込ませた状態で体重をかけ、呻く声を堪能しているようでもある。
■レナ=ミリイ > 「く……離せ……この!」
爪が食い込む方から血を流しながらも、何とかこの危機から逃れようと相手の耳を掴んでもがき。
人間と比べれば力には自身があるものの、体格は少女のものでしかなく、それ故に一度のしかかられるとなかなか相手を押しのけることもできず。
投げ返すことが出来ないと判断すればクロスボウで近距離から打ち込んでやろうと考え、視線を周囲に走らせるも。
倒された際の衝撃でクロスボウは離れた位置に飛ばされており、おまけにすぐ近くの茂みには依頼の対象である魔獣の様態の姿が見え。
抵抗する術がないとなれば襲いかかる恐怖を何とか抑え、気丈に相手をにらんで耳を強く握り。
■ペインテイル > 放せと叫ばれても放す理由なぞ魔獣には欠片もない。
だが爪を食い込ませすぎて、あまりに甘美な香りが甘露な赤い蜜が抜け落ちてしまうのは聊か勿体無い気がした。
魔獣はミレーの少女のが叫んだ通りにまず右足から、次に左足をその両肩から下ろす。
己の耳をつかまれた所で痛みなどない、不愉快にもならない、気にかける程でもない。
だから怒りすら瞳に浮べず、丸い球体状の無機質な瞳でじぃとミレー族の少女の値踏みする為に見つめると、鼻先を少女が身につけている革鎧に近づけ、ほんの僅か口を開けると鋭く並ぶ牙を見せながら、革鎧の端を咥え込み、顔を大きく左右に振り乱して、邪魔な革鎧を剥ごうとする。
その様子、それが始まると二頭の小柄なペインテイルの幼体が茂みからのそりと姿を見せ、成体とは違いつるりとした眼ではなく、瞳孔も確りとある瞳で組み伏せられている獲物を見つめ、口端から唾液をぼたぼたと垂らし、地面に痕を残したまま少女の方に近づいていく。
■レナ=ミリイ > 「や、めろ!」
重いクロスボウの弦を引き上げる自身の握力で握り締めても痛みすら感じていない様子の相手に圧倒的な力の差を感じ。
もともと軽さを重視していた革鎧は相手の力にもよるが、牙によって簡単に破壊さらはがされていき。
「ぃ…や」
もはや万策尽きた状態で防具すら剥され、おまけにこちらに近づく数匹の足音が聞こえてくれば食われる恐怖を瞳に浮かべて。
相手の下で小さく手が震えて。
■ペインテイル > 成獣が1頭に幼獣が2頭。
魔獣の目的は狩の仕方を教える為であり、その柔肉の味を教えるためでもあった。
顔を左右に振り見出し、革鎧に穴を穿つほど強く咥え込んだまま首を振る事で獲物の身体を守る邪魔な革鎧を引き剥がすと、大きく横に顔をふり、辺りに引き剥がした革鎧を投げ捨て、これから肉を喰らおうか、と言う時に不意に興味を失ったようにその身体から身体を完全に退けて、魔獣は茂みに向けて歩き出す。
無論小さな獣も一緒に茂みに消えていき、残るのは魔獣がいた痕跡としての爪痕と引き剥がした革鎧と、無防備になった少女だろう……。
魔獣の気配も直に溶け込むように消えていき、それに安堵したのか蟲の鳴き声も夜行性の生物達のざわめきも街道に甦って……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からペインテイルさんが去りました。