2017/05/09 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシトリさんが現れました。
■シトリ > 王都から北東へ伸びる街道……といっても、ここは王都から歩いて10分もしない程度の近郊。
道沿いに農家の家屋や田畑も点々と見受けられるが、管理されておらず雑草が伸び放題になっている空き地もある。
サワサワと短い草が朝風に鳴るその中に、褐色の少年が立っていた。
右手に青銅製の曲刀を抜き、誰もいない空間に向けて構えながら。
「…………………」
すぅ、はぁ、と深呼吸を続ける少年。
時刻は朝の8時頃。早い時間である。田畑には農家の影もぽつぽつ見えるが、街道に人通りはほぼ見られない。風も涼しい。
「………はっ! ………やあっ! ………はっ!」
おもむろに剣を振り上げ、まずは右上からの袈裟斬り。次いで左上から同様に薙ぐ。そして返す刀で、切り上げ。
刃に草が触れるも、切れ味が悪いのか、切断には至らない。
シトリは3回の斬撃を繰り出すと、元の通りに構え直し、一呼吸。
「………ふっ! ………やあっ!」
そしてまた、同じ動作を1セット。いわゆる素振り、剣の練習である。
街中で剥き身の曲刀を振るわけにはいかない。しかし、愛用の刀と同じ重さを持った模造刀は、まだ買えていない。
そのため、こうして都の外まで足を運び、鍛錬するしか無いのだ。
■シトリ > まだ子供と呼んで間違いはない、小さく細っこい体格。その手に握る剣も同様に小ぶりだ。
薄い刀身のシミターは、同じ長さの長剣などと比べれば一回り軽い。それでも……。
「……ふうっ! ふんっ………っやあ! ………はぁ、はぁ、はぁ…」
20セットも素振りをこなした頃には、すっかり汗だくだ。露出した腕や脇腹に、澄んだ雫が伝う。
構え直しから次の斬撃に入るまでにつく呼吸も、2回、3回と徐々に回数を増している。
「………っ! ……んっ! くっ!」
30セット目に入ると、もはや元気な鬨の声を上げる気力すらなく。白い歯を食いしばってるのも見て取れるだろう。
もともと太刀筋が良い方でもなかったが、この頃には剣の勢いも明らかに衰えている。細い木の枝すらも切れないであろう。
いつもなら、50セットくらいは余裕でこなせたのだが。
■シトリ > 「………っあああ! チクショーっ! やっぱ集中できねえよ!!」
繰り返してきたルーチンを無視し、乱暴な剣筋で左上から袈裟斬りを放つシトリ。ビュッ、とかすかな風鳴りが響く。
刀身は足元の雑草をこすり続け、汁がついて曇っている。それを拭うこともせず、鞘に収めた。
全身から滴る汗もそのままに、シトリは野原の真ん中に立つ1本の樫の木に向けて歩き始めた。
荒ぶる息を整えながら、周囲をキョロキョロと警戒しながら……。
「……う、うう……昨日からずっとこうだ……なんで……」
木の傍までたどり着くと、樹皮に片手をつき、もう片方の手で自らのズボンのウェストを引っ張る。
その中身、つまり自らの股間を覗き込むと、おへその下では小さな肉の突起が硬く張り詰めて持ち上がっていた。
先端まで褐色の皮に覆われているが、下着に擦れ続けたせいか、普段より全体がやや赤みを帯びているようにもみえる。
「今まではたまにしかこうはならなかったのによ……昨日からずっと硬いままじゃんよ……。
……アイツに……会ってから………」
熱く脈打つ己の男性器を恨めしく眺めながら、シトリは弱々しい声で呟く。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にリンさんが現れました。
■シトリ > 昨日、楽器弾きの少年……リンと名乗っていた青髪の少年……彼と出会ってから、シトリの世界は大きく変わった。
酒場で出会い、彼の持つ弦楽器の音色を聞くために共に個室へ入り……その後しばらくの間の出来事は、正直記憶が曖昧だ。
まるで夢の中のコトのようで、詳細を思い出すことができない。だが、今までしたことのない体験をした、というのだけは確か。
そしてその後、彼と語らい、彼から教わった幾つもの知識は、シトリにとっては未だにショッキングな内容だった。
――曰く、おちんちんは排尿するためだけの器官ではなく、快感を得、子を成すための使いみちがあること。
――曰く、おしりは排便をするためだけの器官ではなく、おちんちん同様に快感を得ることができること。
――曰く、男と女が性器をつなぎ、精を相手の胎内に放つことで、子供を妊娠すること。それがセックスと呼ばれること。
――曰く、男同士でも、女同士でも、セックスに似た行為はできること……いや、実際に彼とシトリはそれをやった。
――エトセトラ、エトセトラ……
「……子供を作るのに、大人たちがそんなことをしてたなんて。オレ、知らなかったし……」
曖昧な記憶の中でも、自分のおちんちんが、おしっこではない何か……白濁した粘液を吹く瞬間の光景は、強く覚えている。
自分がそのような液体を出すこと自体驚きだった。しかし世の男はみな、その事実を知っていたし、その快感を知っていたのだ。
「……うう、オレ……また……」
ぴくん、とズボンの中で陰茎がひとつ頭を振った。
■リン > 《アクリス》を提げて街道をぼんやりとふらついていると、
街道近くの樫の木の近くで、背中を向けて項垂れている小さな姿が視界に入った。
冒険者風の褐色の少年なんて、そう多くはないし、見間違えることはないだろう。
「やあ。具合でも悪いのかな?」
そろそろと後ろに近寄って、気付かれるにせよ気づかれないにせよそう声をかける。
自分のしでかしたことが彼を未だ困惑に陥れているというのを想像していないような軽さだった。
■シトリ > その場にしゃがみ込み、木の幹に左肘を付く。
震える右手をズボンの中に差し込み、中で脈打つ己の男性器にそっと触れる。
しかしそのままでは着衣が汚れることに気づき、改めてズボンを脱ごうとして………。
「………んひっ!!!?」
突然掛けられた声に、シトリは飛び上がるほどに驚き、その勢いでおもわず尻もちをつく。聞き覚えのある声だ。
「り、リン……」
声のしたほうを向けば、昨日会ったばかりの青髪の少年。シトリに色々なことを……本当に様々なことを教えてくれた、素敵な人。
もっとも、リンとの出会いが結果的に、今の彼の懊悩につながっているのだけれど。
「……あ、い、いや。大丈夫、大丈夫だぜ! ちょっと剣の朝練しててよ、疲れただけさ……はふぅ……。
リンこそ、ここで何やってるんだ? キミもなんかのトレーニング?」
シトリは地にへたり込んだままで声を張り上げる。大げさな手振りで額の汗を拭いながら。
未だ張り詰めたままの股間はズボンの下で主張を続けているが、隠す余裕はない。
■リン > 何かやましいか恥ずかしいことをしていると人間というのはそういう驚き方をするものだ。
尻もちをつくシトリを、柔和な笑みを作って見下ろす。
「そう。鍛錬中だったんだ。冒険者は身体が資本だものね。
ぼく? 単なる気まぐれな朝の散歩だよ」
そう言って、相手の近くの地べたに座り込む。
持ち上げた足、靴のつま先がちょいちょいと股間の膨らんだ布地をつつこうとする。
「で、剣は剣でもこっちの剣ってわけ?
いや、剣にしちゃ小振りすぎるかな?」
喉を鳴らしておかしそうに笑う。
■シトリ > 「剣って……うわっ、わ、な、なんだよ!! やめろよ……へ、変態っ!!」
へたり込むシトリの傍に座り、おもむろに脚で股間を弄ろうとしてくる相手に、シトリは思わず脚に力を込めて飛び退いてしまう。
どさ、と大きな音を立ててお尻から着地し、しばし痛みに顔をしかめるも、すぐに憮然とした表情でリンを睨みつける。
「変態、ヘンタイッ!! スケベっ!! 武器の剣の練習だっつーの!!
ちょっと年上で、ちょっと育ったおち……おちん、ちん……持ってるからって、いい気になんな!!」
ぎゅっと脚を閉じ、揶揄された部位を隠しながら、思わず声を張り上げる。昨日と同じ、性徴に乏しい子供の声。
さすがに声が聴こえる範囲にはいないだろうが、周囲の田畑にはすでに仕事を始めている人影もある。すぐに声は窄まり気味になる。
「………ご、ゴメン。
だ、だけどよ、リン。昨日キミに教わったり、してもらったりしたことが……その、オレ、まだいろいろ理解できてなくて。
昨日は良く眠れなかったし、今朝も調子がよくないんだ。ずーっと、頭のなかでキミの話がぐるぐるしてる」
ぽっと頬を赤らめ、俯きながら、ぶつぶつと呟く。
「……なぁ、リン。リンはその……せっくすとか、そういう話、いつごろ、どうやって知ったんだ?」
■リン > 「おお怖い怖い。そんな大声、この天才音楽家の耳が潰れたらどうする」
わざとらしく耳に手を当て、意地の悪そうに唇を歪める。子供をからかうのは楽しい。
飛び退いた相手に、それ以上執拗に何かしようとまではしない。
足を引っ込めて座り直し、相手が声を潜めてぼそぼそと何か言うのに耳を傾ける。
「そりゃ悪い事しちゃったな。
ま、病気でも何でもないし、いつかは慣れてくれるんじゃないかと思うけど……」
自分のことを尋ねられて、さて、と首をかしげる。
「ぼくはこう見えて箱入り息子だからね。一般的な教育は親にしてもらったな。
実地で学んだのは、って話なら……んー、そう、こいつ、《アクリス》がだいたい悪い」
やや言いよどんで、傍らに置いた《アクリス》のケースを掌で叩く。
■シトリ > 「慣れる……ま、まぁそうだよな。大人はみんな知ってることなんだろうし。
オレもいつか慣れてくるんだよな……うん。リンに教わることができてよかったよ」
今は悶々としていても、そういった性知識は大人の常識、世の常識。
いつ、どこでかは分からないけれど、自分もきっと伴侶を得て子を成す。
いずれ知る知識、いつ知っても大差はなかろうし、きっとそのときに悶々とすることは変わらないのだ。
シトリはやや自嘲気味の不器用な笑みを作り、こくりと軽く頷いて礼の意を示す。
「ウチの親はそういうことまったく教えてくれなかったなー。
礼儀のことを少し、あとはひたすら剣術と、自分の身や村の安全を護るための知識ばかり。
……ん、《アクリス》……?」
人名めいた名を呼び、傍らの楽器ケースを叩くリン。その様子に、シトリは一瞬寒気を覚えた。
思い出す。バイオリンの音色が響いた途端、意識が朦朧としたこと。次に気がついたときには、ベッドでリンと抱き合っていたこと。
淡い記憶、それは決して嫌な記憶ではない。
しかし、その状況をもたらした《アクリス》なる楽器には、シトリも今更ながらに不気味なものを感じた。
「……なぁリン、その《アクリス》ってなんなんだ……? ただの楽器じゃないよな?」
■リン > 「ははは。悪い大人につかまる前に
ぼくのような良識派美少年の教示を与れたことを感謝するがいい。
きみの親御さんはあれだ。まだ早いと思ったんじゃないかな?」
殊勝にも礼をするシトリの頭を、うい奴とばかりに軽くぽんぽんと掌で撫でる。
《アクリス》をこわばった表情で見やるシトリに、小さく咳払いをする。
「そう、《アクリス》。
魔族の造った恐ろしい魔法の品の一つ、らしい。
弾けば異界の音を奏で、聞いた人間を狂わせる。
ぼくはこいつに下僕として認められてしまったのさ。
こうして喋っている今でさえも、こいつの呪いに縛られている」
ふいにシトリから視線を外して、広がる草原の彼方に向ける。
その方向に何があるというわけではない。
「昔はこれを弾いて災禍を振りまかずにはいられなかったんだけど、
今はずいぶんと弱体化して、“あの程度”で済むようになった」
つまりは、今向かい合っている褐色の少年を
先日、たまたまうっかり魅了してしまったぐらいにとどまっているということ。
■シトリ > 「まだ早い、かー……ちぇっ、なんか大人に騙されてたみたいで悔しいな」
リンの小生意気な恩着せにはとくに肯定も否定も見せずに流すシトリ。まぁ実際、感謝はしているのだし。
シトリは知らぬことだが、故郷では15歳をもって成人となり、その時点で他の家の女子と契を結ぶことになっていた。
子を成すための知識もその時点で教わるはずだったのだ。当然、同性愛などは考えられもしない世界。
《アクリス》について尋ね、リンが語ってくれるその物語に、耳を傾ける。
……と言っても、彼の言っていることは半分もわからない。
「……まぞく? まぞくって何?」
リンの語り口は真剣で、ごまかしているようには聞こえない。
異界だの下僕だの、狂わせるだの呪いだの、聞き馴染みはないものの恐ろしげな印象を抱かせる言葉の数々。
やはりその楽器は只者でない、ということくらいはわかる。そして、リンがそれを、己の意思に反して持つことになってることも。
「……ううん、よくわかんないけど。その……好きで持ってるわけじゃないんだね。大変だね。
でも、昨日聞かせてもらったリンの演奏は、とてもキレイだったと思うよ。
その……呪いだかなんだかで、頭がモヤモヤするのは今は避けたいから、しばらくは聴きたくないけれど」
率直に感想を述べるシトリ。確かに音色は良かったのだ。
しかし今は、冷静でいたい。冷静な頭で、リンから教わったことを理解したい。
「でも、そんな危なっかしい楽器に嫌な目に合わされて、それでも昨日演奏してくれたリンは、なんというか……。
……強い人だね」