2017/04/07 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にカインさんが現れました。
■カイン > 「――ああ、ここまででいい。ありがとよ、また縁があればまた」
夜半と言っていい時間帯。天井に月が煌々と輝く頃合い、王都から暫し離れた場所。
別の国へと続く道の交差点で一人の男を下ろし、王国とは別方向に馬車が走り去っていく。
残された男は吹き抜ける風に帽子を抑えながら分かれ道に建てられた看板を確認し、軽く唸り。
「方角は判るがこれじゃどれだけ歩けば良いのかさっぱり判らないな。困ったもんだ」
誰も見ていないと言うにわざとらしく大きくため息を付きながら、肩を竦めて小さな愚痴。
とはいえ周りを見回せど民家の灯りも何もあったものではない有様では無理なからぬことやもしれないが。
■カイン > 「何せ王都に行くのも――あ?どれくらいぶりだ?時間に頓着がなくなるのはよくねえな。
今度メモ買うかねえ、長続きした事は無いんだが。下手に寿命が長いとコレだからいけねえ」
自分の横着癖を生来の種族のせいにさり気なく転嫁しながら足元に置かれた年季の入った背負袋から、
一枚の紙切れを引き抜いて手元で広げた刹那、男の周りにどこからともなく突然炎の塊が虚空から燃え上がる。
空気を熱する音と共に男の手元を照らした光は王都近辺のものと思われる地図の詳細を照らし出した。
「この場所がこっちだから…徒歩だと夜通しとまではいかんが結構かかるな。
乗り合い馬車か何かの足は――この時間じゃ流石に望み薄かね」
うんざりと言った様子を隠しもせずに、再び周囲にちらと視線を向ければ昼間ならば頻繁に行き交って
いただろう人影の残滓すら今は感じられない静寂に包まれている。お手上げだと言わんばかりに片手を上げ、
左右に振れば文字通り魔法のようにフッと炎が消え失せる。文字通り魔法か何かのように。
■カイン > 「歩いていくだけならそれこそ大した問題じゃないが、時間がかかるのはどうしてもかったるいな」
大きく二度目の嘆息と共に、乱暴に地図を背負袋に突っ込んでから肩に担ぎ上げ、
帽子を軽く抑える。遮る所の何もないこの場所はともすれば身につけていたものを吹き飛ばしていく程度には風が強い。
空を見上げてみれば満天の星空とその中に浮かんだ穴のような月の姿に思わず喉が鳴る。
夜道を歩く肴としては申し分無いかもしれないが、物言わぬお供では少々寂しい。
改めて視線を道の先に向けて後ろ頭を引っかいた。
「もっと早くに出るべきだったぜ。人生うまくは行かないもんだなあ。
上手いこと言ってたらこんな所にいやしねえが」
愚痴に愚痴を重ねながらも外套をはためかせ、男は歩き出す。
王都への道行きがせめて穏やかなものであることを祈りながら、分かれ道を後にしたのだった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からカインさんが去りました。