2017/01/30 のログ
エルフリーデ > 言い淀む言葉、何が間違っているというのだろうかと思うことも出来ないほどに、意識がふらつく。
向けた銃口が彼の胴体へと傾いたところで、手の力がすっと抜け落ちていき、するりと掌から銃がこぼれ落ち、指先がトリガーガードに引っかかると、その重みで手も地面へと落ちていった。

「っ……何を…」

剣がひきぬかれると、その痛みに意識が再び焼け落ちていく。
失血死させるつもりなのかと思った矢先、彼が傷口を塞ぎ始めるのが見えれば、治癒の理由を問いかける。
痛みが一つ消え、蹴りを叩き込もうと思えば出来る状況ではあるも…それでも彼は治療を続けていた。
そんな無防備な相手に不意打ちを掛けれるわけもなく、されるがまま傷を塞がれていく。
断続的に襲う痛みで、意識は失わなかったものの、傷が治れば訝しげに彼を見上げているだろう。

アラン > 「……よし、治療完了」

最後の剣を引き抜き、傷を治療する。
未だに血が彼女の服や肌を汚してはいるものの、痛みや意識の朦朧はもう消えているだろう。
怪訝な顔でこちらを見上げる彼女に苦笑いを返して地面に座る。

「『何故治療した』って所か…うーん、そうだなぁ…」

彼女と視線の高さを合わせ、彼女の考えを看破したかのようにそう告げる。
暫く考える素振りをして次の瞬間考えがまとまったように彼女の方を見る。

「お嬢ちゃんが可愛かったから、とかでいいかな?」

調子の良さそうなことを言いながら笑顔でそう返す。
勝者の余裕と言わんばかりに気の抜けた顔をするものの
その顔色はいいとは言えず、少しばかり青白く思えるだろう。

止血した左腕からも血が滲み、冷や汗を掻く。
彼自身、それなりに体力を消耗していたようだ。

エルフリーデ > 傷が治れば、痛みもなく、失われた血の分もあってフラフラはするものの、先程のような危険な状態からは脱していた。
地面に座り込む彼を見やりながらも、身体を起こせば座り込み、治療の理由を待ちわびる。

「……お褒めの言葉はありがたく受け止めさせていただきますわ。でも、だからといって悪行を見過ごすわけには参りませんの」

青白くなり、冷たい汗を滴らせる彼の笑みに呆れたように笑いながら立ち上がれば、拳銃を片方収めながら、千切れ飛んだ彼の手の方へと歩いて行く。
それを拾い上げると、再び彼の元へと戻れば、千切れた手を彼の膝の上へと起き、銃の排莢フレームを引いた。
魔石が収まったままの増幅弾が吐き出され、それをキャッチすれば、掌に魔力を集め、先程までよりも大きな魔法陣がそこから広がっていく。

「叡智を司りし神々よ、我が名、エルフリーデに従いてその御力を翳さん。今を刻みし者の時を司り、破滅の時を止めよ」

掌の中で魔石が砕け散ると、周囲に冷気の混じった魔力が溢れかえる。
彼の身体やちぎれた手にその魔力が纏わりつくと、失血が止まり、体温の低下や痛みがピタリと停止していくのが分かるはず。

「…わたくしの魔術で貴方の身体に流れる時を一時的に止めましたわ。然るべき治療を受ければ…生き永らえますわ」

彼の治療に対する返礼といったところだろうか、術を行使した後、もう片方の銃も収めながら改めて彼をじっと真っ直ぐな瞳が見つめる。

「貴方はそこに隠れている悪党と同類ですの? それとも違うというのなら…彼らと決別なさい。それがわたくしに出来る…貴方への恩赦ですわ」

悪事を見逃すことは出来ない、だが彼がこれ以上悪事に加担しないというのなら別。
彼女の中にある真面目な部分が許せる譲歩を語りかければ、彼の答えを待つ。

アラン > 「ツンツンしてるなぁ…もっとこう、顔を赤くして照れたりとかしてもいいんだよ?」

先ほどまで戦い、損傷をさせた相手へ無理を言い放つ。
彼女が自分の腕を膝の上に置けば、冗談交じりに「うえっ」と小さく呟く。
そうこうしているうちに彼女の大きな魔法陣が展開され、冷気の混じった魔力が纏わりつく。

「あぁ…すまない。助かる」

彼女の言葉を聞けば、真剣な眼差しで礼を伝える。
真っすぐとこちらを見つめる瞳に少し居辛さを感じつつ、彼女の問いを聞けば口を開く。

「俺は…そうだな。出来れば…お嬢ちゃんみたいに正義の味方でありたい。
 しかし、傭兵ってのは生きづらいもんなんだよ。……いい事ばっかりやってりゃ、明日を生きれる訳じゃないし」

左腕の止血をしている布を剥がしながら、彼女の問いにそう答える。
出血や痛みが止まっているからか、すぐに布を剥がし終えて赤く染まった断面が露出する。
そこにちぎれた腕の断面をくっ付け、治療魔法で回復を図る。

「…そういうお嬢ちゃんは何で悪党である俺を助けたんだい?」

腕の治療を続けながら彼女に告げる。
物陰に隠れている賊達と同じと思ったのなら、何故失血や痛みを止める魔法を施したのかと
顔を俯き、目を合わせずに彼女に問う。

エルフリーデ > 「戦場でなければ、ご期待に答えたかもしれませんわね」

こうも血生臭いと、恥じらうなんて感情がなかなか浮かび上がらない。
治癒魔法が使えない自分で、出来る彼への施しとすれば、こうして痛みを止めて、治療までの時間を稼ぐ応急処置程度のこと。
これもかなり力の消費が激しいものであり、少し表情に疲れが浮かんだ。

「……そう、生きるためですのね。それでも他者を傷付け奪えば、いつか、貴方が全てを奪われる日が来るかもしれませんのよ。それは分かっていらっしゃって?」

望んだことではない、そう語る彼に目を伏せながら理解は示した。
けれど、悪事は悪事だと、彼に説き伏せる言葉は説教にしては彼の身を案じた言葉。
治癒魔法で結合させようとすれば、雑菌の繁殖や組織の破損の広がりが抑えられているのもあり、思うよりは治癒速度は上がるはず。

「貴方に施しを受けたからですわ。それに、わたくしが貴方の命を奪える状況にあっても、貴方はわたくしを助けましたわ。元より悪に満ちていらっしゃるなら、そのようなこと、なさいませんわ」

そこにいる悪党達とは何か違う、だからこそ彼に選択肢を投げかける。
失血と魔力の大量消費が体力を更に奪えば、ぐらりと世界が揺れる。
口元に手を当てながら両膝から地面に崩れると、戻すことはなかったが、顔色の悪さは消えない。

アラン > 「はは、お堅いねぇ」

彼女の言葉を聞けば、軽く笑いながら立ち上がる。
傷の手当も住み、腕を回してしっかりと接合したことを確認する。
回復魔法を学んでいて良かったと心から思いながら、頬を掻いて彼女を見据える。

「……あぁ、そうだな。因果応報、悪いことは周り回って自分に返ってくるもんだしな。
 忠告ありがとうな。お嬢ちゃん」

彼女の言葉を聞いて、目を細めれば、少しばかり怪訝な顔をする。
何かを言い出そうとしたのを抑えたように口を動かし、彼女の言葉に同意を示す。
治癒魔法での結合は無事に終了し、千切れてたとは思えない程によく動いている。

「恩義の意識が高いんだな。親の教育か?それとも宗教的な…」

腕を組んで、その言葉を聞けばそう返す。
何はともあれ、しっかりとした性格だと考えていれば彼女が両膝を崩して地面に突っ伏している。
その様子を見て、焦りつつ彼女に手を伸ばす。

「大丈夫…そうじゃないな。少しゆっくりしましょうや先輩」

半ば強引に彼女の手を引き、肩を貸す。
強気な彼女なら心配の言葉を掛けてもやせ我慢するだろうと考え
無理やりにでもケアし始める。

そろそろこの騒ぎを聞きつけた王都の騎士団なり兵隊なりが来るはずだ。
彼らに彼女を引き渡すか…などと考えつつ、周囲を見渡す。

エルフリーデ > 「そうですわ、だから貴方のように…人に恩を掛けられる方が道を踏み外してはなりませんわ」

怪訝そうな顔を見せれば、少しばかり首を傾げたものの、同意する彼に満足気に年相応な笑みを見せた。
しっかりと結合された腕の様子に、安堵の吐息と共に肩の力が抜けていく。

「そうですわね…ノブレス・オブリージュと、父にも母にも…気品ある者の心得を教えを受けましたわ」

力があるものが、無き者を助け、導く。
力を持つ責任を果たす言葉を、さも当たり前のように紡ぐと、力は抜けて膝から崩れる。
強引に引き寄せられる掌、彼の肩に腕が掛かると、クスッと微笑みを浮かべた。

「やはり…悪党ではございませんのね。先程は失礼しましたわ…あの様な物言いでは、傷付けてしまいましたわね」

悪党と罵ったことへの謝罪を紡ぐと、うなだれるようにして頭を下げる。
彼が周りを見渡すと、麓の集落から出てきた兵員達が馬にまたがり、こちらへと駆けてくるのが見えるだろう。
こちらにも見えれば、彼の手を小さな手がしっかりと握りしめる。

「……貴方は彼らに仕方なく従った、望んだわけではないのでしょう? 私がそういいますわ」

彼に罪を着せるのは、望まなかった在り方としれば重たく感じる。
彼が無実となる理由になると語ると、警備兵達があっという間に周囲を囲むだろう。
悪党はあちら、彼は嫌々従ったのだと、彼に伝えたとおり、彼の存在を庇いながら今宵の出来事に幕を閉じるだろう。

アラン > 「おっ…さっきの傲慢そうな笑顔よりそっちの方が似合ってるよ。お嬢ちゃん」

笑顔を見せる彼女を見れば、また軽口を叩く。
先ほどの賊を圧倒していた時に見せた笑顔よりそちらの方が可愛いと
肩の力が抜けた彼女を支え、その顔を見下げる。

「貴族の義務って奴か?父と母か……」

弱きを助け、強きを挫く。
ノブレス・オブリージュ、父と母という単語が自分にとっては重く感じ、声のトーンが低くなる。
彼女の在り方が昔の自分のように思え、懐かしいと感じつつ、少し心配になる。

「はは、あの状況だ。悪党と思われても無理はないさ。
 謝る必要はない。ただ、ほっぺにチューぐらいはして欲しいけどね」

笑いながら彼女に返せば、馬に跨った兵員が見えて安堵の息を漏らす。
兵員たちに彼女を受け渡して上手いこと逃げようかなどと考えていれば、手に柔らかい感触が当たる。
驚いた様子で手の方へ視線を映せば、彼女の小さな手が自分の手を握りしめていた。

「……あぁ、そういう事にしてくれ。………アラン。アラン・アークライト。
 傭兵のお兄さんだ。お嬢ちゃんの名前、聞いてもいいかい?」

周囲を取り囲んだ兵隊を見れば、思わぬ救済に乗っかりつつ、自己紹介を始める。
彼女の小さな手を自分の大きな手で握り返す。
大きくて厚い手。小さな手を包み込むように握り、掌の熱を伝える。

エルフリーデ > 「っ…笑顔なんて、先程も今も変わりませんわ」

大分心が緩んできたところでの軽口に、少しだけ頬を赤らめながら視線をそらす。
そんなに変な笑顔を浮かべていたのだろうかと思うと、少しばかり恥ずかしさも込み上がってくる。
彼の呟く言葉にも、恥じらいのほうが強くて そうですわ と、返事を返すのが精一杯だった。

「…そう言って頂けると、助かりますわ。って……しませんわよっ、そんなことっ! 婚前に軽々しくすることではありませんのっ」

とても固い貞操観念溢れる返答を吐き出しながら、真っ赤になって頭を振る。
悪い人ではないけど、言葉を選ばない破廉恥な人だとか思いつつ、彼の手を握りしめる。
自己紹介の言葉に、徐々に頬の熱を下げていけば、深呼吸を一つしてから、改めて微笑む。

「アラン様ですわね、私はエルフリーデ・ミュンヒハウゼンですわ。今は…まだ所属を決めていない魔法銃使いですの」

取り囲んだ兵士達に、悪党はそこの柱に隠れた輩だと指差す。
裏切ったなだの何だのと喚きながら逃げようとする悪党達が取り押さえられていく中、握り返された掌に気付くと頬を赤らめるのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアランさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からエルフリーデさんが去りました。